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いつか、いつも‥‥‥いつまでも。|あらすじ感想と評価解説。高杉真宙がラブコメディで抜群の魅力を発揮した演技を披露!

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『いつか、いつも……いつまでも。』は2022年10月14日(金)より全国ロードショー!

ある男女が出会いと家族とのふれあいを通して、自身の失ったものを取り戻していく姿を描いた『いつか、いつも‥‥‥いつまでも。』。

脚本家・矢沢由美の10年越しの企画を実現した物語。メインキャストに高杉真宙と関水渚を迎え、さらに石橋蓮司、芹川藍、水島かおり、DJ松永ら錚々たる個性派、ベテランが名を連ね脇を固めています。

映画『いつか、いつも……いつまでも。』の作品情報


(C)2022「いつか、いつも……いつまでも。」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
長崎俊一

【キャスト】
高杉真宙、関水渚、水島かおり、小野ゆり子、DJ松永、佐藤貢三、中島歩、江頭勇哉、芹川藍、石橋蓮司

【作品概要】
ひょんなことから一緒に暮らすことになった一人の女性と家族のつながりより、男女の恋を通してそれぞれが失いかけた自分を取り戻す様を描いた物語。

監督を務めたのは、『西の魔女が死んだ』(2008)『8月のクリスマス』(2005)を手掛けた長崎俊一。

「賭ケグルイ」シリーズ、『前田建設ファンタジー営業部』(2020)『異動辞令は音楽隊!』(2022)『超・少年探偵団NEO Begining』(2019)の高杉真宙が主演を担当、ヒロイン・亜子役を『町田くんの世界』(2019)「コンフィデンスマンJP」シリーズ、『ウェディング・ハイ』(2022)、ドラマ『元彼の遺言状』(2022)の関水渚が努めます。

映画『いつか、いつも……いつまでも。』のあらすじ


(C)2022「いつか、いつも……いつまでも。」製作委員会

海辺の診療所で祖父とともに働く医者の青年・俊英。ある日突然、彼の前に憧れの人とうり二つの女性・亜子が現れます。

ある意味“こじらせ女子”な面を見せる亜子。そんな彼女に振り回され、俊英が理想とした女性像は遠いものとなって消えていきます。

そんな思いとは裏腹に、俊英と彼の家族のもとで厄介になることとなった亜子。諦めきれない夢と現実の間でもがく亜子の素顔を見るうちに、これまで何の思いもなく淡々と毎日を過ごしてきた俊英の中で、ある変化が見え始めていきます。

そして亜子もまた、俊英一家との温かい生活の中で自分自身を見つめ、取り戻していくのでした。

映画『いつか、いつも……いつまでも。』の感想と評価


(C)2022「いつか、いつも……いつまでも。」製作委員会

普通に考えるとまず出会うことなどないだろう男女が、ひょんなきっかけで出会い、お互いの気持ちに近づいていくというラブコメディー・ドラマ。

恋愛というポイントに絞ると、現実的でない話にもかかわらず「よくある恋愛ドラマ」と片付けられがちとなってしまいますが、本作のドラマには見過ごしてはならない重要なポイントがあります。

それは時代的な設定を主人公、そしてヒロインの性格やバックグラウンドに描いていることにあります。

主人公の俊英は端正なルックスを持ち、医者という人もうらやむステータスを持ちながら、元カノとなんとなく「恋愛ごっこ」をするなど、毎日を「成り行き」に任せて過ごし、その生き方に何の疑問も持たないけれども、心の中ではどこかにモヤモヤした気持ちを抱えた男性。

そんな彼が出会うのは、同じように成り行きで人生を歩んできた女性・亜子。2人は出会うことがなければ、きっとそのままモヤモヤしたものを心に抱えたままに、日々をどうにかやり過ごす人生を送っていたに違いありません。


(C)2022「いつか、いつも……いつまでも。」製作委員会

ここで重要なのは、2人がそれまでそれぞれ歩んできた道が、自身の本位ではないにもかかわらず、「それなりの人生だった」と自身、そして周囲が感じている点にあります。

かつて70年代、日本には「一億総中流」というスローガンが叫ばれた時期がありました。

近年では2021年、立憲民主・枝野幸男元代表が第49回衆議院選挙の演説で「1億総中流社会を取り戻す」という演説を行い注目されましたが、近年の新卒就活生の希望として、大企業への就職希望が増えていることからも、この傾向は社会的にも大きな志向となっているようです。

本作の物語はその傾向の良し悪しは別としながらも、恋愛の物語、家族の物語を通してこのような近年の傾向に対する自身の思い、希望、意向の重要性を語っているようでもあり、今を生きる若者たちへ充実した人生を生きるためのヒントを示しているようでもあります。

『いつか、いつも‥‥‥いつまでも。』そのタイトルとともに物語をたどれば、いわゆる「胸キュンラブコメディー」とはまた違った景色を見ることもできるでしょう。

まとめ


(C)2022「いつか、いつも……いつまでも。」製作委員会

近年「胸キュンラブコメディー」では絶対的な存在であるといっても過言ではない高杉真宙ですが、本作は物語の少女コミック的なカラー、テンポ感じに合わせた演技を見せる中で、ふっと生々しい感情が現れるシーンが見られており、俳優としての変化の兆しのようなものも感じられます。

どうしてもルックスのイメージが先行しがちな高杉ですが、展開の中でふっと現れるそのシーンからは、瞬間いい意味で「胸キュンラブコメディー」であることを忘れてしまいそうな印象すら見えてきます。

ヒロインを務めた関水渚も物語におけるヒロインの人物像を体当たりで演じていますが、そこには高杉の強いリードによるところも多く感じられ、物語の主軸たるゆえんを強烈にアピールしており、意外に男性からの目線において、共感を覚えるポイントも多く見られることでしょう。

映画『いつか、いつも……いつまでも。』は2022年10月14日(金)より全国ロードショー



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