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Entry 2022/08/20
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『よだかの片想い』あらすじ感想と評価解説。松井玲奈・中島歩が紡ぐ“受け入れる”愛に気づく物語|山田あゆみのあしたも映画日和6

  • Writer :
  • 山田あゆみ

連載コラム「山田あゆみのあしたも映画日和」第6回

今回ご紹介するのは、顔にあるアザで悩み続けてきた女性が、とある出会いを通して自身のコンプレックスと人生を見つめ直そうとする姿を描いた映画『よだかの片想い』。

島本理央の同名小説を『21世紀の女の子』(2018)の安川有果が監督。『アルプススタンドのはしの方』(2020)の城定秀夫が脚本を手がけています。

主演は『幕が下りたら会いましょう』(2021)の松井玲奈。さらに『偶然と想像』(2021)の中島歩、『猫は逃げた』(2022)の手島実優が出演しています。

それでは、2022年9月16日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開される『よだかの片想い』の感想・見どころを紹介していきます。

連載コラム『山田あゆみのあしたも映画日和』記事一覧はこちら

映画『よだかの片想い』の作品情報


(C)2021 映画「よだかの片想い」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
島本理生『よだかの片想い』(集英社文庫刊)

【監督・脚本】
安川有果

【脚本】
城定秀夫

【キャスト】
松井玲奈、中島歩、藤井美菜、織田梨沙、⻘木柚、手島実優、池田良、中澤梓佐

【作品概要】
原作は、これまでにも『ナラタージュ』(2017)や『Red』(2020)、『ファーストラヴ』(2021)が映画化されてきた小説家・島本理生の小説。

主演は松井玲奈。初主演映画『笑う招き猫』やNHK連続テレビ小説『まんぷく』への出演を経て、その唯一無二の輝きはさらに磨きがかかっています。

そして飛坂を演じた中島歩は『いとみち』(2021)、『偶然と想像』(2021)、『愛なのに』(2022)といった話題作に出演し続けています。

監督は『21世紀の女の子』(2018)、『蒲田前奏曲』(2020)などで知られる安川有果。また脚本を、100本を超える劇場公開映画・映像作品を監督してきた城定秀夫が担当しています。

映画『よだかの片想い』のあらすじ


(C)2021 映画「よだかの片想い」製作委員会

理系大学院生の前田アイコ(松井玲奈)。彼女の顔の左側にはアザがあります。幼い頃、そのアザをからかわれたことで向き合うこととなり、恋や遊びには消極的になっていました。

しかし、編集者の友人の薦めで「顔にアザや怪我を負った人」をテーマにしたルポ本の取材を受けて話題となってから、状況は一変。

本の映画化の話が進み、友人の編集者・まりえ(織田梨沙)の紹介で、監督の飛坂逢太(中島歩)と出会います。

初めは映画化を断っていたアイコでしたが、話をするうちに彼の人柄に惹かれていきます。飛坂への片想いを自覚し、不器用に距離を縮めていくアイコ。

しかし、飛坂の元恋人の存在、そして飛坂は映画化の実現のために自分に近づいたという疑心暗鬼が、アイコの「恋」と「人生」を大きく変えていくことになり……。

映画『よだかの片想い』の感想と評価


(C)2021 映画「よだかの片想い」製作委員会

顔にあざのある女性アイコが、映画監督の飛坂と出会い恋に落ちたことをきっかけに、自身を見つめ直していく姿を描いた映画『よだかの片想い』。原作は島本理生による人気同名小説であるだけに、小説ファンも注目の作品です。

本作は小説の独特な空気をそのままに、かつ映画独自の登場人物の描き方や、心理描写を繊細に表す映像演出などを用いて、新たな作品として再構築しています。

中でもアイコを演じた松井玲奈の繊細な演技が印象深く、本作の大きな魅力となっています。周りに気を遣うナイーブさと暗さ、その中に芯を曲げない強さと純粋さがあるアイコそのものでした。

恋をしたことで、アイコは変化していきます。飛坂の人懐っこさや自然体な人柄に惹かれて、「この人ならそのままの自分を受け入れてくれる」と感じ、心を開いていきます。

ですが、飛坂の元恋人の存在がきっかけとなって2人の間には距離ができ、アイコは「自分を受け入れてほしい」という自身の本当の思いに気付くのです。そして、自分のことを受け入れられていなかったのは、他の誰でもなく自分だったことを自覚していきます

松井はとあるインタビューにて、本作を下記のように語っています。

これは、自分が周りから受け入れられていないという思いを感じながら生きていたけれど、ずっと周りの人たちは自分のことを受け入れてくれていたということに気づいていく物語でもあるんです。

アイコの変化は飛坂のことを好きにならなければ起きなかったものですが、無理に自分を変えなくてもいいというメッセージも本作から受け取ることができました。

今の自分を受け入れて、素直に周りに目を向けることで、希望や優しさを感じられるような一作になっています

まとめ


(C)2021 映画「よだかの片想い」製作委員会

本作は、全体のトーンとして光に包まれているようなふわっとした発光感ある映像が印象的です。ですが、アイコの心の闇を描いた場面にはジャパニーズホラーの味わいすらにじませるダークさがあり、その明暗の使い分けも見どころのひとつです。

先に述べたアイコ役を演じた松井のみならず、飛坂役を演じた中島歩の絶妙な演技にも注目です。

飛坂のキャラクターは独特で、すぐ傍にいるのにつかみきれないような存在感でした。ついこんな男性に翻弄されてしまう、共感する人も多いのではないでしょうか。

映画『よだかの片想い』は2022年9月16日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開です。

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山田あゆみのプロフィール

1988年長崎県出身。2011年関西大学政策創造学部卒業。2018年からサンドシアター代表として、東京都中野区を拠点に映画と食をテーマにした映画イベントを計13回開催中。『カランコエの花』『フランシス・ハ』などを上映。

好きな映画ジャンルはヒューマンドラマやラブロマンス映画。映画を観る楽しみや感動をたくさんの人と共有すべく、SNS等で精力的に情報発信中(@AyumiSand)。





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