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Entry 2021/10/18
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映画『幕が下りたら会いましょう』感想評価と内容解説。松井玲奈が今を生きる女性の葛藤と真っ直ぐさを演じる

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『幕が下りたら会いましょう』は2021年11月26日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。

映画『幕が下りたら会いましょう』は、本作で商業映画監督デビューを果たした前田聖来による「今を生きる女性」に光を当てた作品です。

本作は、劇作家志望の女性が突然妹を亡くしたことをきっかけに、改めて自分の人生を見つめなおす物語。 

主演は本作が初の単独主演となる松井玲奈。共演にしゅはまはるみ、筧美和子、日高七海をはじめ個性的なキャストが集結しています。

映画『幕が下りたら会いましょう』の作品情報


(C)avex entertainment Inc

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
前田聖来

【脚本】
前田聖来、大野大輔

【キャスト】
松井玲奈、筧美和子、日高七海、しゅはまはるみ、江野沢愛美、木口健太、大塚萌香、目次立樹、安倍乙、亀田侑樹、山中志歩、田中爽一郎、hibiki、篠原悠伸、大高洋子、里内伽奈、濱田のり子、藤田秀世、出口亜梨沙、丘みどり、袴田吉彦

【作品情報】
本作は、松井玲奈初の単独主演作です。松井玲奈は、これまでNHK連続テレビ小説『まんぷく』(2018)、『エール』(2020)をはじめ、映画は『はらはらなのか』(2017)、『21世紀女の子』(2019)『今日も嫌がらせ弁当』(2019)など多数に出演している、幅広く活躍中の人気女優です。

母役に『カメラを止めるな』(2017)のしゅはままるみ。妹役に『犬猿』(2018)の筧美和子。劇団員の早苗役に『飢えたライオン』(2018)『ステップ』(2020)の日高七海が出演しています。

本作の監督を務めた前田聖来は、2000年ごろまで女優活動を行ったのち、大学へ進学し自主制作映画を始め、現在は出版社で会社員として働きながら映像制作を行っている新鋭監督のひとりです。

MOOSIC LAB 2018では、長編部門作品として監督・脚本を務めた『いつか輝いていた彼女は』が注目を集めました。

本作が商業映画デビューとなった前田監督が、オリジナル脚本を2年という歳月をかけて細かな調整を重ね、完成にこぎつけた渾身の一作となっています。

共同脚本に『アストラル・アブノーマル鈴木さん』(2019)『ウルフなシッシー』(2018)で注目を集める小野大輔、撮影に『本気のしるし 劇場版』『岬の兄妹』(2018)の春木康輔らが集結しています。

映画『幕が下りたら会いましょう』のあらすじ


(C)avex entertainment Inc

売れない劇団「劇団50%」を率いる劇作家の斎藤麻奈美(松井玲奈)は、母(しゅはまはるみ)が経営する実家の美容室を手伝いながら、冴えない日々をおくっていました。

そんな中、妹の尚(筧美和子)の死の知らせが突然届きます。

麻奈美は尚が死んだ当日にかけてきた電話に出なかったことや、過去のわだかまりなど、後悔や葛藤を抱えながらも尚の死と向き合おうとしますが、予期せぬ出来事が次々に待ち受けていました。

映画『幕が下りたら会いましょう』感想と評価


(C)avex entertainment Inc

突然身近な人を失ったとき、いつでも会えると思って伝えていなかった想いが行き場をなくします。本作は、そんな想いを抱えた女性が主人公の作品です。

また、現代で夢を追いかけながらも迷いや葛藤を抱えて生きる、まっすぐな女性の姿を描いています。

自分自身に向き合う物語


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主人公の麻奈美は、突然死んでしまった妹の尚に対する自分の気持ちのやり場に困り、憤っていました。

遺品整理に妹の部屋へ行ったときも、彼女の死の間際の様子を知ったときも、悲しみというよりはどこか冷静で上の空な様子です。

その憤りを解消するために行うことになった舞台も、周囲の介入によって思惑通りに行かず…。

そんな中で新たな出会いや、友人の思いやりに触れて、麻奈美は自身を見つめ直します

麻奈美にとって人生の大部分を占める舞台という存在。しかしそこでも自分を見失いつつあった彼女が、改めて舞台と向き合う中で、大切な存在や譲れない思いに気付き始めます。

妹に本当に伝えたかったこととは……。自分の進むべき道とは……。

迷いながらも前に進もうとする彼女の姿から、自分に正直に生きることの難しさと尊さを感じられる作品となっています。

本作はエンドロールの途中にあるシーンまで観て、完結します。ぜひ、途中で席を立たず最後まで観ることをおすすめします。

印象的なシーンと撮影の苦労


(C)avex entertainment Inc

前髪を姉に切ってもらい家を出た妹の尚が、美容室のガラス越しに麻奈美をみているシーンが印象的でした。

表情までははっきりと読み取れませんが、その立ち姿から、なにか言いたげな尚の様子が映し出されています。物語が進むうちに明かされる尚の人物像や、麻奈美との関係性がこのショットから読み取ることができます。

また、麻奈美の妹への思いが表現された舞台上のシーンでは、麻奈美の心境をセリフだけでなく照明や舞台装置をつかって表現していて、印象的です。

本作は、2021年1月31日~2月15日の2週間で撮影されおり、緊急事態宣言の影響を受けています。

本来栃木、群馬での撮影が開始されていたところを、東京都内のみに変更せざるを得なかったそうです。また、時間制限や感染対策を徹底した中での撮影は苦労が多かったのだとか。

しかし、そんな苦労や違和感はなく、踏切の点滅するライトや舞台上での光に包まれた空間など、工夫を凝らした映像表現が作品の世界観を際立たせていたと感じました。

前田監督初の商業映画として、説明的な箇所はあるものの今後のさらなる活躍に十分に期待できる作品となっていました。

まとめ


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家族でもささいなことでこじれてしまったり、取り返しのつかない間違いが起こることはあります。言わなくても伝わるだろうという甘えや、いつか伝えればいいと思っていても、突然それが叶わなくなることもあるのです。

そんな、やり直したいことが思い浮かぶ人ほど、この作品を観て主人公を自分に置き換えることができるのではないでしょうか。

本作には主人公を含め女性がメインで複数人登場し、現代を生きる女性の葛藤や強さを感じられる作品となっています。

また、楽曲を書き下ろしで手掛けたバンドJamFlavornoの女性ボーカルMA’LILの歌声が物語ともマッチしているので、そちらも注目して観てはいかかでしょうか。

『幕が下りたら会いましょう』は2021年11月26日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開







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