Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ファンタジー映画

Entry 2022/06/25
Update

【ネタバレ】鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成(2022映画実写3)|あらすじ結末と感想解説。原作通りの壮大なクライマックスを迎える最終作

  • Writer :
  • 糸魚川悟

終わりに向かって動き始めた陰謀、壮大な逆転劇を見逃すな!

全世界で累計発行部数が8000万部を越えるヒットとなった、2001年連載開始の人気漫画『鋼の錬金術師』。

伏線を無駄にすることなく、全巻で作り上げられた壮大なスケールの物語が人気の『鋼の錬金術師』は、張り巡らされた伏線の多さゆえに尺が限定される映画化での完全再現は難しいと言われていました。

今回はそんな困難とされた映画化で物語をラストまで描き切った実写化シリーズ完結作『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』の作品情報


(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
曽利文彦

【脚本】
曽利文彦、宮本武史

【キャスト】
山田涼介、本田翼、ディーン・フジオカ、蓮佛美沙子、本郷奏多、黒島結菜、渡邊圭祐、水石亜飛夢、山田裕貴、舘ひろし、藤木直人、山本耕史、栗山千明、佐藤隆太、仲間由紀恵、新田真剣佑、内野聖陽

【作品概要】
荒川弘による漫画『鋼の錬金術師』を『ピンポン』(2002)の曽利文彦が実写映画化したシリーズ第3作。

山田涼介やディーン・フジオカなどのレギュラーキャストと前作からシリーズに参加した山本耕史や舘ひろしに加えて、本作には『バトル・ロワイアル』(2000)の栗山千明や「TRICK」や「ごくせん」シリーズで人気の仲間由紀恵が出演しました。


映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』のあらすじとネタバレ


(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

アメストリスを旅するホーエンハイムはエドとアルの師匠であるイズミと出会います。

イズミは過去に流産してしまった自身の子供を人体錬成してしまったことで「真理の扉」を開いてしまい、複数の内蔵を代償として失っていました。

イズミが「真理の扉」を開いた過去を持っていると知ったホーエンハイムは彼女が「人柱」候補となっていると言うと、「約束の日」にアメストリスの全ての人間が死亡すると言いました。

グラトニーの体内の空間に入ってしまったエドとリンは変身したエンヴィーと戦いますが、エドがこの空間から出る方法に気づき休戦となります。

生きている自分自身を外の世界に人体錬成すると言う手法でグラトニーの世界の外に出たエドとリンとエンヴィー。

アルは「お父様」の言いつけを破ってしまい怯えるグラトニーの案内で、大総統府地下にある「お父様」のアジトを訪れており、外に出たエドたちと再会します。

「お父様」はホーエンハイムと同じ顔をしていましたが同一人物ではなく、エドとアルがホーエンハイムの息子と知ると二人に身体を大事にするようにと言いつけます。

しかし、「お父様」はリンには興味がなく、エンヴィーに捕まえさせたリンに自分の中の「賢者の石」を埋め込みます。

リンは強い精神力で死を免れますが、リンの中に「お父様」の感情の一部であり「ホムンクルス」の源である「グリード」が侵入し、精神が乗っ取られてしまいます。

リンを救うためエドは反撃を試みますが錬金術が発動せず、駆けつけたスカーの錬金術とメイの錬丹術のみが発動しました。

スカーの機転によって逃げ果せた4人は、スカーの兄が調べていた文献に何かが残されていないかを調べます。

スカーの兄の文献に残された暗号を解くと、過去にアメストリスで内乱や虐殺のあった場所を繋いでいくと巨大な「賢者の石」の錬成陣が出来上がることが分かります。

「お父様」は建国以来、この「国土錬成陣」の完成のために行動しており、「約束の日」とはこの「国土錬成陣」が完成する日のことでした。

途方もない量の「賢者の石」の錬成のためにアメストリスに住む全員の命が失われることに気づいた4人は、「お父様」の野望を打ち砕くために行動を始めます。

エドはまだ虐殺や内覧の起きていない唯一のポイントである北方のブリッグズに向かい、要塞を指揮するオリヴィエ少将と会いますが、「お父様」に先手を打たれ隣国との戦闘が始まってしまいます。

エドと会ったオリヴィエは要塞の指揮を解任されてしまいセントラルへと呼び出されます。

マスタングが既に軍の中枢部は全て「お父様」の手先であることを伝えており、オリヴィエはブラッドレイに上手く取り入り幹部に昇進。

その頃、アルはイズミとの電話によってホーエンハイムと再会し、「約束の日」のことを問い詰められたホーエンハイムは全ての真実を話します。

数百年前、クセルクセス国王のもとで奴隷として働いていたホーエンハイムは実験室の掃除中に、ホーエンハイムの血によって産まれた生物と出会います。

「フラスコの中の小人」と名乗る生物の提案でホーエンハイムは奴隷の身分から脱するための知識を彼から教わることになります。

「フラスコの中の小人」の知識によってクセルクセス王に身分を引き上げられたホーエンハイムは王に「フラスコの中の小人」と接見させます。

王は「フラスコの中の小人」に不老不死の術の知識を求め、彼の言うがままに「国土錬成陣」を作り出してしまい、王を含めたクセルクセスの100万人を越える人間は「賢者の石」の代償となり死亡。

錬成陣の中央にいたホーエンハイムと「フラスコの中の小人」は50万人分の賢者の石を体内に宿し、その日以降死ぬことの出来ない身体になっていたのでした・

一方、グリードとなったリンと再会したエドは「ホムンクルス」のリーダーでありブラッドレイの息子を擬態していたプライドと対峙。

影を操る「プライド」の苛烈な攻撃に圧倒されますが、実はエドはアルとホーエンハイムと既に再会しており、ふたりの力を使いプライドを土の壁に閉じ込めます。

「約束の日」、列車で移動中、ブラッドレイの乗る列車が橋の上で爆破されます。

列車の爆破はマスタングの指示であり、セントラル全体を巻き込んだマスタングによるクーデターが始まりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』のネタバレ・結末の記載がございます。『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

マスタングの動向を知ったオリヴィエは大総統府内の「お父様」を支持する勢力を制圧。

しかし、爆破を生き延びていたブラッドレイが現れ、次々とオリヴィエの配下を倒します。

その場にリンと彼の護衛であるフーが駆けつけブラッドレイに挑みますが、「最強の眼」を持ったブラッドレイには歯が立ちませんでした。

満身創痍となるふたりでしたが、フーとオリヴィエの部下であるバッカニアの命を賭けた攻撃によってブラッドレイに負傷を負わせると、ブラッドレイは川へと落ちていきます。

ホーエンハイムの血の情報を使い彼と同じ姿となっている「お父様」のアジトでエンヴィーを倒したエドとマスタングでしたが、封印から逃れたプライドと負傷したブラッドレイが現れます。

するとエドとアル、イズミとホーエンハイム、そしてプライドとブラッドレイによって強制的に「真理の扉」を開かされ、代償として視力を失ったマスタングがひとつの部屋に強制転移されました。

ホーエンハイムの攻撃によって真の姿を現した「フラスコの中の小人」はアメストリス人全員を代償とした「国土錬成陣」で、「真理の扉」を開いたことのある5人の「人柱」を利用し再度「真理の扉」を開くことで「神」を自身の中に取り込もうと画策。

日食と同時に「国土錬成陣」が起動し、「人柱」を除いた全アメストリス人は失神。

「神」の力を手にし、錬成陣を封じる力と圧倒的な破壊力でホーエンハイムたちを圧倒する「フラスコの中の小人」でしたが、日食の月輪が現れたことで不安定となります。

実はホーエンハイムは各地を放浪する中で自身の中の賢者の石を「国土錬成陣」の要所要所に配置しており、日食の月輪が出ることで「賢者の石」の生成を阻止する錬成陣を構築していたのです。

ホーエンハイムによる錬成陣によって失神した全アメストリス人が目を覚ますと「フラスコの中の小人」は体内の「神」を抑える力を失い、暴走を始めます。

その頃、「フラスコの中の小人」による錬金術を封じる技を解除するために、兄の残した「裏国土錬成陣」の完成を急ぐスカーでしたがブラッドレイと遭遇し戦闘になります。

重傷を負いながらもスカーを圧倒するブラッドレイでしたが、たまたま日の光が刀に反射した隙を突かれスカーに敗北。

ブラッドレイはスカーに感謝を述べると死亡し、スカーは「裏国土錬成陣」を完成させました。

錬金術の力が復活し、エドはプライドを倒すとアルやイズミ、ホーエンハイムと共に「フラスコの中の小人」に総攻撃を仕掛けます。

「神」の力の暴走によってエドの機械鎧が吹き飛び、ホーエンハイムもすべての「賢者の石」を失うと、アルはエドの窮地を救うために自身を代償としてエドの腕を人体錬成します。

腕を取り戻したエドはリンの協力のもとに弱った「フラスコの中の小人」にトドメを刺しました。

「フラスコの中の小人」は「真理の扉」の前に連れ出されると「思い上がった存在に絶望を与える」と言われ、「真理」によって「真理の扉」の中に引きずり込まれました。

戦いが終わり、ホーエンハイムは残った自分の命を使ってアルの人体錬成を求めますが、エドは命を使った人体錬成をしないと言うともう一度自分自身を「真理の扉」の前に送ります。

アルを人の戻す代わりに代償を求める「真理」に対し、エドは「真理の扉」自体を指し示し誰もが持つ「錬金術」を使う能力を代償とすることを告げると、「真理」は「正解だ」とつぶやきアルの肉体を錬成させました。

ホーエンハイムは肉体を取り戻したアルの手を握ると勝利を称え合う一同のもとを静かに去りました。

数日後、エドとアルの母親トリシャの墓の前でホーエンハイムは命を落とすと、向こう側で待っていたトリシャと共に手をつなぎ歩いていきます。

ウィンリィのもとに戻ったエドは再び旅に出かけますが、去り際にウィンリィに告白しふたりは結ばれることになりました。

映画『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』の感想と評価


(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

原作を再現した壮大なスケールの逆転劇

漫画『鋼の錬金術師』の魅力は単行本全27巻で描かれる、第1話から最終話までに巻き起こる全ての事柄に一本の筋が通った物語にあります。

そんな大人気漫画の実写化に挑んだシリーズの完結編となる本作では、尺の都合でどうしても描くことの出来なかった部分は多くあれど、メインとなる「国土錬成陣」をめぐる物語を完結まで描き切りました。

「イシュヴァール殲滅戦」を含む各地で起きた内乱や虐殺の全てが、「お父様」による「国土錬成陣」へと繋がっていく最終章。

主人公のエドやアル、マスタングやスカーなど「お父様」の手のひらで踊らされていた人間たちが、「国土錬成陣」完成の阻止に人生を捧げて生きるホーエンハイムと共にリベンジを仕掛けます。

原作の持つ全てを管理され生死すら思惑通りに動かされてきた人間たちによる壮大な逆転劇の面白味が再現された本作は、熱いクライマックスを上映時間中楽しめる作品でした。

完結編からの新キャストが見せる原作キャラの完全再現


(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

前作であり完結編の前編でもあった『鋼の錬金術 完結編 復讐者スカー』(2022)からシリーズに参加した山本耕史や舘ひろしなどの名優たちは、他のキャストが考えられないほどの原作再現度で話題となっていました。

中でも主人公たちの父親であり味方となる冗談好きのホーエンハイムと、シリーズ内で巻き起こる惨劇の全てを操っていた「お父様」の両役をひとりで演じた内野聖陽の演技は実写化品としての本作の評価に繋がっています。

後編となる本作には新たに山本耕史演じるアレックス・ルイ・アームストロングの姉オリヴィエが登場。

前評判の段階から完全再現とまで言われていた栗山千明によるオリヴィエは気高さと強さの両方を兼ね揃えた、まさに原作のオリヴィエそのままであり、俳優陣の演技が本作の「実写映画」としての魅力を高めていました。

まとめ


(C)2022 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会

豪華俳優陣を起用して大人気漫画の物語をラストまで描き切った『鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成』。

完成度の高い原作をそのままベースとしたことで原作の持つ魅力が俳優陣の演技によってより高まり、「鋼の錬金術師」の新たな一面を見せてくれる作品に昇華されていた本作。

原作既読の方は昔を懐かしみながら、そして原作未読の方は壮大なスケールの物語を本作で味わってみてはいかがでしょうか。


関連記事

ファンタジー映画

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生|感想とあらすじ。映画の見どころの紹介も

映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の劇場公開は、11月23日(祝・金)より全国ロードショー! 『ハリーポッター』を生んだJ・K・ローリングが新たにスタートしたスピンオフ的前日談シ …

ファンタジー映画

映画『ヴィジョンVision』ネタバレ感想。結末に見せたキャストの演技力とは

“Vision”とはいったい何か? 18歳にして初めて18ミリカメラを手にし、30年を経た河瀬直美監督。 『あん』(2015)や『光』(2017)に続き、今や世界で高い評価を受ける監督が、再び故郷奈良 …

ファンタジー映画

映画『エンドレス・ポエトリー』感想レビュー【ホドロフスキー監督】

アレハンドロ・ホドロフスキー監督の『エンドレス・ポエトリー』は、11月18日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。 世界に潜むマジック・リアリ …

ファンタジー映画

映画『神様メール』動画無料視聴はHulu。ネタバレあらすじと考察

もしも、神様が限りなく今の人間に近い生活を送っていたら…? そんな設定の下、新約聖書をテーマに、キュートな女の子が人間界に余命宣告のメールを一斉送信するという、鬼畜生な展開でありながら、どこかシュール …

ファンタジー映画

エンドレス・ポエトリーあらすじ考察と評価!公開日と劇場は?

日本公開日が2017年11月18日になるアレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作『エンドレス・ポエトリー』。 今作は自身の幼少期を題材にした『リアリティのダンス』の続編にあたる作品で、今から映画ファンの …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学