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Entry 2021/03/09
Update

映画『バトルロワイアル』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。少年少女殺戮の殺し合いが国会を巻き混む社会的議論となった“鎮魂歌”|SF恐怖映画という名の観覧車142

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile142

前回のコラムでご紹介させていただいたように、「藤原竜也」と言えば「デスゲーム」と言うイメージが強く存在します。

今回は社会現象にまで発展し、「デスゲーム」のイメージを植え付けただけでなく、「映画俳優」としての藤原竜也の転機となった映画『バトル・ロワイアル』(2000)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『バトル・ロワイアル』の作品情報


(C)2000バトル・ロワイアル

【公開】
2000年(日本映画)

【監督】
深作欣二

【キャスト】
藤原竜也、前田亜季、山本太郎、塚本高史、高岡蒼佑、栗山千明、柴咲コウ、安藤政信、ビートたけし

【作品概要】
高見広春による同名小説を『仁義なき戦い』(1973)などで有名な日本映画の巨匠、深作欣二が映像化した作品。

藤原竜也を始め『キッズ・リターン』(1996)の安藤政信や『キル・ビル Vol.1』(2003)の栗山千明など若手俳優が出演したことでも話題となりました。

映画『バトル・ロワイアル』のあらすじとネタバレ

新世紀の初め、国家は「新世紀教育改革法」通称BR法を制定。

それは1年に1度、全国の中学生の中から1つのクラスを抽出し最後の1人になるまで殺し合わせる法律でした。

中学3年生の七原は中学の修学旅行に不登校の親友、国信を連れてきていました。

旅行先に向かうバスの中で眠気に襲われたクラスメートたちは気づくと兵隊に囲まれた校舎の中にいます。

パニックを起こす生徒たちの前にかつてB組で担任を務めていたキタノが現れます。

キタノは転校生の川田と桐山を紹介すると、B組が今年のBRに選ばれたことを告げ、最後の1人になるまで殺し合うようにと告げます。

ルールの説明の最中、クラスメートたちはパニックを起こし中川が兵士によって腕を撃たれてしまいますが、そのままルールの説明が継続されます。

この場所は住民を退去させた無人の島であり、各人の首に付いた爆弾付きの首輪で居場所を管理され、1日4回島内放送で発表される危険エリアに留まると首輪が爆発。

このルールを聞いた国信は悪態をつき、説明を聞こうとする生徒の元淵と揉み合いに発展。

その騒動を見たキタノは国信を快く思っていなかったこともあり、国信の首輪を爆破し殺害しました。

ルールの説明が終わると水、食料、地図、コンパス、そしてランダムに入れられている武器が入ったバックが各人に渡され、出席番号順に校舎を出発させられます。

七原がバッグを持ち外に出ると、そこにはボーガンで首を貫かれた天堂がいました。

赤松がボーガンを持ち校舎から出た人を襲っていることに気づいた七原は赤松を転倒させ、出てきた中川を連れて逃走。

ボーガンを落とし慌てている赤松を見た新井田は赤松のボーガンを拾いますが、彼が自分に襲い掛かろうとしたことで図らずともボーガンを撃ち殺害してしまいます。

洞窟内で七原は兵士に撃たれた中川の腕を止血し、バッグの中身を確認すると七原の武器は鍋の蓋で中川の武器は双眼鏡でした。

七原は国信の仇を討つために、国信の想い人だった中川を守り抜くことを決心します。

転校生の桐山を危険視する沼井は5人で桐山を殺害しようとしますが、恐るべき戦闘力で桐山は全員を殺害しマシンガンとリボルバーを奪取。

午前6時、島内放送で死亡者が発表され、残り28人であることと新たな禁止エリアが発表されます。

今の場所が禁止エリアとなることを知った七原は中川と共に逃げる最中で大木に襲われ、揉み合っている最中に大木の武器の手斧が大木の頭に刺さり死亡してしまいます。

さらにリボルバーを持つ元渕に襲われますが、元渕はショットガンで武装する川田に射殺されました。

川田と七原が対峙している最中に、女子生徒の北野と日下がメガホンで争いを止めるように叫んでいる声が島内に響き渡ります。

七原は駆けつけようとしますが、川田にその危険性を諭され制止されます。

北野と日下は駆け付けた桐山によって殺害され、その様子を核に新下川田はゲームから七原と中川の2人で降りる方法は自殺しかないと七原に忠告するとその場を去って行きました。

クラスでも悪女として有名な相馬は清水と出会いますが、清水は相馬を常日頃から恨んでおり銃で相馬を脅迫します。

しかし、相馬がスタンガンを使い銃を奪ったことで形勢が逆転し、清水は射殺されました。

撃たれた傷が悪化し中川が体調を崩したことで、七原は地図に載る診療所へと中川を背負い連れて行きます。

診療所は川田が籠城していましたが、戦闘の意思を持たない七原であることを確認すると診療所内に残された抗生物質を使い中川を治療しました。

武器が探知機の杉村は、物資を集める三村、飯島、瀬戸を見つけます。

杉村は千草と琴弾を探していると三村に言い、彼が情報を持っていないことを知ると三村のアジトから出て行きました。

ハッキングの技術を持つ三村は首輪にマイクがつけられていることに気づくと、島に残されていたパソコンを使いプログラムを書き始め、飯島と瀬戸に肥料や除草剤を集めさせます。

陸上部の千草は島でもランニングをしていましたが、自身に付き纏う新井田に見つかり言い寄られます。

千草は拒否しますが加熱した新井田がボーガンを千草に撃ってしまったことで千草は怒り、新井田をナイフで殺害。

千草はその騒動に気付き現れた相馬に撃たれますが、逃げ切ることには成功しました。

相馬に撃たれた傷は致命傷であり、意識を失いかける千草のもとに彼女の想い人である杉村が現れます。

杉村の好きな相手が自身でないことを確認すると千草は死亡しました。

夜になり、熱の下がった中川と七原は川田が3年前のBRに参加し恋人を殺して生き延びたことを知ります。

怪我により留年したことで今回のBRに強制参加させられた川田は恋人が最期に残した笑顔の意味を知るまで絶対死なないと決意していました。

川田はこの島を出る方法を知っていると2人に話すと、その方法を教えるまでの保障として七原にリボルバーを譲渡しました。

診療所周辺に桐山に追われる織田が現れます。

織田を殺害した桐山は診療所内の七原たちの存在に気づくと診療所を襲撃。

武器の差から不利を感じた七原は川田たちを逃すため自身が囮となり逃走します。

騒動に気付いた杉村の支援もあり、七原と杉村は海に飛び込み桐山から逃げることに成功。

一方、三村は飯島と瀬戸に何のために肥料や除草剤を集めているのかを聞かれるとマイクを手で塞ぎ、集めた物資で爆弾を作り校舎を爆破しBRのシステムを奪取した上でクラスメートと島から逃げる計画を立てていることを話しました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『バトル・ロワイアル』のネタバレ・結末の記載がございます。『バトル・ロワイアル』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

2日目の正午、怪我だらけの状態で目を覚ました七原は灯台に立て篭もる委員長の内海の前で目を覚まします。

杉村がここに運んだことや残り16人になったことを知る七原は、三村が自分を探していたことを杉村の伝言として伝えられます。

内海は5人の女子生徒と灯台に立て篭っており、その中には七原が事故で殺害してしまった大木の死を見ていた榊がいました。

榊は七原に提供しようとしていた食事に毒を入れますが、味見をした有香が死亡してしまいます。

疑心暗鬼を起こした内海たちは互いに殺し合い、榊だけが生き残りました。

異常事態を感じ施錠された部屋で騒ぐ七原を解放した榊は、自分が内海たちを死に至らしめてしまったことを後悔すると灯台から飛び降り自殺しました。

バラバラになってしまった際の避難場所として定めていた神社に身を寄せる川田と中川。

七原を心配する中川は川田の静止を振り切り、神社を出てしまいます。

神社の外で相馬と出会い危機に陥る中川でしたが、何故か現れたキタノを見た相馬は逃げ出します。

キタノは満身創痍の中、武器を集め現れた七原の姿を確認すると静かに去って行きました。

探知機を使い琴弾が隠れている倉庫を見つけた杉村は、隠れている琴弾に声をかけます。

しかし、杉村のことを良く知らない琴弾は恐怖を感じ杉村を撃ってしまいました。

致命傷を負った杉村が実は自分を好きで守ろうとこの場所にやってきたことを知った琴弾は後悔しますがその場に現れた相馬によって射殺。

琴弾の銃を奪いその場を去ろうとする相馬でしたが、桐山に撃たれ死亡しました。

生き残りは七原のグループ、三村のグループ、そして桐山の計7人となり、七原たちは内海から聞いた三村のアジトへと向かうことにします。

三村はシステムをハッキングするプログラムを完成させ実行に移します。

禁止エリアを無効化しトラックで爆弾を校舎に突っ込ませようと動き出しますが、現れた桐山によって飯島と瀬戸が殺害されると三村は爆弾をその場で起爆し死亡しました。

爆発した廃墟にたどり着いた七原たちは桐山に遭遇。

川田は爆発によって視力を失っている桐山から反撃を受けながらもショットガンで射殺しました。

残り3人になり、川田は生き残るために利用したと七原と中川にに告げると銃を向けます。

2発の発砲音を首輪のマイク越しに聞いたキタノは川田の優勝を兵士たちに報告し帰投させました。

キタノ以外がいなくなった校舎に川田が現れます。

キタノは川田に「首輪の外し方を知っていただろ」と言うと反則を咎め銃を向けますが、その場に生き残っていた七原と中川が現れます。

キタノは学校でみんなにからかわれ、家でも娘に嫌われ居場所がなかったことからB組を巻き込み無理心中を企んでいました。

キタノは自分を唯一からかわなかった中川に異常に執着しており、彼女に近づこうとします。

中川は銃を向けますが引き金を引けない彼女にキタノは銃を向けると、反射的に七原がキタノを殺害してしまいます。

しかし、キタノの銃は水鉄砲であり、元から3人を射殺する気はありませんでした。

キタノは電話で娘に今までの態度を叱責し、隠し持っていた本物の銃で電話を破壊すると死亡。

ボートを奪い島から出た3人でしたが、桐山により致命傷を負わされていた川田は七原に運転を任せると、かつて自身が殺した恋人の笑顔の意味が分かったと言います。

最期にいい友達ができて良かったと2人に言い残し川田は死亡しました。

数日が経過し、全国指名手配された七原と中川は2人で前へ進んでいくことを誓いながら駅の雑踏へと駆けていきました。

映画『バトル・ロワイアル』の感想と評価


(C)2010「BR3D」製作委員会

1997年に日本ホラー小説大賞を受賞した高見広春による小説「バトル・ロワイアル」は、中学生同士が殺し合いをすると言う衝撃的な内容によって面白さは認められつつも大批判を浴びることになりました。

そんな話題小説を深作欣二が映像化した本作も上映に際し国会で議論の的になるほどの問題作となりますが、そのことが話題を呼び大ヒットを記録しました。

本作では、原作の持つ「デスゲーム」としての面白味と、若手俳優と深作欣二監督だからこそ出すことの出来る中学生の「リアル」な反応が人気の秘訣となっていました。

「デスゲーム」作品の原点

生死を賭けた争いを強要される「デスゲーム」と呼ばれるジャンル。

原作者である高見広春はスティーヴン・キングによる、最後の1人になるまで歩くことを強要される人間たちの戦いを描いた「死のロングウォーク」から構想を得ているため正確には「デスゲーム」作品の初作ではありません。

しかし、ルールを基に参加者同士の直接的な殺し合いを描いた作品は「バトル・ロワイアル」を題材としていることが多く、「デスゲーム」作品の原点であることは間違いありません。

深作欣二によって映像化された『バトル・ロワイアル』は、同じ「デスゲーム」であり本国で大ヒットを記録した映画『ハンガー・ゲーム』(2009)に影響を与えるなど、世界で強い影響力と人気を持ち続けています。

深作欣二と俳優によって作り出された「リアル」

原作では主要人物による「バトル・ロワイアル」を勝ち抜くための戦略や心理戦に焦点が当てられており、主要人物の心理と行動に「デスゲーム」としての魅力があります。

しかし一方で、各人の行動や立案があまりにも中学生離れしており、中学生という設定に違和感を覚える部分も多くありました。

深作欣二が映像化した本作は、原作の物語の大筋をなぞりつつも登場人物の動きが中学生としての「リアル」が追求されており、エンタメ映画の巨匠から見た違和感のない「バトル・ロワイアル」が作られていました。

10代を中心に起用された俳優たちも若手俳優ゆえに中学生としての「リアル」さが強く感じられ、大人たちに「デスゲーム」を強要される理不尽さの演出を強く後押ししています。

まとめ

原作では「バトル・ロワイアル」の開催理由を表立っては「市街地戦の情報収集」としていましたが、映画版では「少年犯罪の抑止」のためとされており大きな設定の差異が存在します。

奇しくも映画の公開年には衝撃的な少年事件が発生し、本作が事件の起因となりかねないとして上映を禁止する法律の制定を議員が中心となって広めており、深作欣二監督による先を見た皮肉のようなものを感じさせます。

少年・少女時代は精心の確立に大きな影響を与える時期であるとされています。

健全な教育のために大人が強く縛り付けるべきなのか、それとも自由な自立による成長を傍観するべきなのか、社会問題となった本作『バトル・ロワイアル』はエンターテインメントとしてだけでなく、社会問題を深く考えることにも繋がる名作でした。

次回は「B級映画ザ・虎の穴ロードショー」!

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いかがでしたか。

次回は連載コラム「B級映画ザ・虎の穴ロードショー」にて、マーベル・コミックスの大人気映画シリーズ「X-MEN」の区切りとなる映画『ニュー・ミュータント』(2021)をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

次回もお楽しみに!

【連載コラム】「B級映画ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

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