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Entry 2023/05/15
Update

『法廷遊戯』映画原作ネタバレあらすじ感想と評価考察。法廷モノ本格ミステリーでキンプリ永瀬廉が魅せる‟罪と罰”の在り方

  • Writer :
  • 星野しげみ

五十嵐律人の小説『法廷遊戯』が映画化決定!

作家であり弁護士である五十嵐律人の小説『法廷遊戯』が、『神様のカルテ』(2011)『白夜行』(2010)『桜のような僕の恋人』(2022)の深川栄洋監督によって映画化されます。

主演は永瀬廉(「King & Prince」)、ヒロインに杉咲花、謎の死を遂げる天才児を北村匠海が演じます

法律家を目指してロースクールに通う、 久我清義と織本美鈴。2人の“過去”を告発する差出人不明の手紙をきっかけに、 彼らの周辺で不可解な事件が続きます。清義が相談を持ち掛けたのは、同じスクールに通う異端の天才児・結城馨。真相を追う3人ですが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して──?

映画『法廷遊戯』は、2023年11月10日(金)から全国公開。映画公開に先駆けて、小説『法廷遊戯』をネタバレありでご紹介します。

小説『法廷遊戯』の主な登場人物

【久我清義(くがきよよし)】
法都ロースクールから司法試験に合格して弁護士になる。児童養護施設の出身。

【織本美鈴(おりもとみれい)】
清義のスクール同級生。清義と同じ児童養護施設の出身。

【結城馨(ゆうきかおる)】
清義のスクール同級生。学生のうちに司法試験を合格した超逸材。

小説『法廷遊戯』のあらすじとネタバレ


五十嵐律人:『法廷遊戯』講談社 (2020/7/15)

法都ロースクールの模擬法廷で、『無辜ゲーム』というゲームが始まろうとしています。

この法都ロースクールの最終学年には約20人の学生が在籍しています。司法試験突破をめざす彼らですが、ロースクールの実績は5年続けて合格者ゼロ。本気で法律家を目指しているのかと疑いたくなる学生たちの中で、真剣に法律家を志す優秀な学生はほんの一部だけでした。

司法試験合格を期待される法都ロースクールのエースと言える、久我清義(くがきよよし)と織本美鈴(おりもとみれい)の2人。それにもう1人エース級の結城馨(ゆうきかおる)の3人が学校側の期待を背負っています。

結城馨は学生でありながらすでに司法試験を突破している超逸材な人物でした。この『無辜ゲーム』の発案者も馨です。『無辜ゲーム』とは加害者・被害者・審判者の3名からなる変則的な裁判のゲームを指します。(「無辜」とは「むこ」と読み、罪のないこと。また、その人のこと)。

ゲームは、例えば誰かが人の金を盗むといった行為をすることで、加害者の犯行となって始まります。犯人はゲームであることを示す天秤のマークを現場に残さなければなりません。

金を盗まれた被害者には、無視(泣き寝入り)するか、通報するか、無辜ゲームを受けて立つかという3つの選択肢が与えられます。裁判官にあたる審判者に対して、被害者は加害者の犯行を立証。犯行の手順を説明して、証人から証言を引き出し、犯人を指名します。

犯行の立証、犯人の指名が終わると、審判者による勝敗の宣告がされます。立証が充分であれば、告訴者の勝利となり、敗者である犯人には罰が言い渡されます。無辜ゲームの罰は同害報復(目には目を)を基本としているため、たとえば窃盗への罰なら「被害者に金一万円を払う」ことになります。

逆に立証が不十分だった場合は、告訴者の敗北となり、告訴者に「金一万円」の罰が与えられます。誤った犯人を指名した場合はもちろん、正しい犯人を指名していたとしても、犯行の立証に不足があった場合は告訴者の負けです。

そして疑わしきは罰せず。冤罪を防ぐためには必要な措置で、学生たちは「無辜の救済」と呼んでいました。学校側もエリートの馨が発案ということもあり、『無辜ゲーム』の存在を見逃しています。

ある日、その剣先は清義と美鈴にも向けられ、2人は『無辜ゲーム』をすることになりました。

清義は、16歳の頃に起こした児童養護施設の施設長をナイフで刺した事件を暴露されます。名誉棄損の被害を受けた告訴者として、審判者の馨に『無辜ゲーム』の開廷を申し入れました。

清義を貶めようとした犯人を捜し出し、清義は無辜ゲームに勝利。しかし、清義は犯行に用いられた児童養護施設での集合写真や傷害事件を報じる新聞記事をどうやって手に入れたのか?と気になり、犯人の同級生に尋ねました。その答えは「正体のわからない何者かから与えられた」でした。清義は、誰かが過去の罪を暴こうとしているという気がします。

次の日の朝、大学に行く途中の電車の中で清義は、痴漢被害にあったふりをしようとしている女子高生を見ました。ターゲットの男性のスーツの襟元には弁護士のバッジがついているのを見つけた清義は、女子高生に待ったをかけました。

女子高生の名前は佐倉サキ。生活が苦しそうで訳ありな様子のサキから、清義はほろ苦い過去の犯罪を思い出します。

サキの一件で大学に遅れていった清義。美鈴が欠席していると知り、授業業終了後彼女のアパートへ向かいました。

そこで知ったのは美鈴の被害でした。それは清義よりももっと悪質でした。住んでいるアパートのドアスコープにアイスピックが突き刺されたほか、自転車をパンクさせられるなどといった嫌がらせ行為に加え、ネット記事の投函というものもありました。

記事が報じていたのは女子高生による痴漢詐欺。記事そのものは美鈴とは無関係のようでしたが「美鈴の過去を知っている」というメッセージだと捉えると不気味です。

清義はネット記事ポスティングの現場を押えようと張り込み、失敗に終わります。ですが、美鈴のアパートの住人が怪しいとにらんだ清義は、美鈴の上の部屋に目をつけました。

そしてその部屋を利用していた浮浪者を取り押さえた結果、彼が投函の実行犯とわかりました。しかし、金で雇われたその浮浪者「何でも屋の佐沼」でさえ、クライアントの正体は知りませんでした。

清義と美鈴の過去の罪を知るその黒幕はそれから姿を現さず、清義と美鈴は無事に法都ロースクールを卒業しました。その後、清義と美鈴は司法試験にそろって合格。一方の異端児、馨は大学に残り研究者(法学者)になる決断をします。

約1年後。司法修習を終えた清義のもとに、結城馨から「久しぶりに、無辜ゲームを開催しよう」と、メールが届きました。

無辜ゲームの詳細は分からず、清義は無辜ゲームにかこつけた同窓会なのだろうと思います。別の地方で司法修習を受けている美鈴も出席するとあって、断る理由もなく出席することにしました。

当日の土曜日、清義は母校の法都ロースクールへ行きました。模擬法廷の扉を開けると、同級生の姿は見当たらず、胸元にナイフが突き刺ささり仰向けに倒れた馨が倒れていました。血まみれの馨のそばには美鈴の姿もありました。

ぺたりと座り込んだ美鈴は、清義の顔をまっすぐ見つめて言いました。「私が殺したんだと思う? 私のことを信じてくれる? もう少しで、警察がここに来て逮捕される。お願い、清義。私の弁護人を引き受けて」。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『法廷遊戯』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『法廷遊戯』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

清義は美鈴の裁判に集中するため、すぐに自分の事務所を構え、事務員として電車の中で知り合った佐倉サキを雇いました。

美鈴が逮捕された事件の状況からみて、誰がどう見ても美鈴が犯人だと思え、実際に美鈴は殺人罪で起訴されましたが、美鈴は無罪を主張。弁護人である清義は被告人の美鈴に接見することができます。

当然、真相を話してほしいと伝えました。しかし、美鈴は味方である清義に対しても、黙秘をし続けます。頭のいい彼女のことですから、黙秘にも意味があると思い、清義は自力で真相を探ることにしました。

過去の事件

清義と美鈴が児童養護施設にいた頃、美鈴は施設長の喜多から性的な暴行を受けていました。当時高校生だった清義は偶然その事実を知り、美鈴を助けるべく行動に出ます。暴行の場面を録画することで、喜多の罪を証明するつもりでした。

しかし、録画を担当するはずの仲間が土壇場で逃げてしまいました。そうとも知らず清義は喜多に立ち向かい、逆上した喜多と揉み合いになって、最終的には脅すために用意していたナイフを突き刺す結果となってしまいました。

「喜多は美鈴に性的暴行を与えていた」という清義の主張を裏づける証拠はなく、大人たちは彼を少年院に送る手続きを進めましたが、清義はあっさりと解放されました。喜多が「自分に責任がある」と清義を庇う供述を調査官にしたためです。

喜多が僕を庇う供述を調査官にしたのは、自己の意思に基づくものではなく、美鈴に脅されたからでした。脅迫には、隠し撮りした映像を用いたと言います。

喜多の部屋に仕掛けたカメラで、自分が押し倒されている様子を撮影していました。清義が動く前に、賢い美鈴はすでに映像を自分で撮っていたのです。

それは、自分の将来を諦めたくなくそのためなら、手を汚したって構わないという、美鈴の強い決意の表れでした。

清義は傷害の罪、美鈴は脅迫の罪。高校三年生の夏に、選択を誤った清義と美鈴は、既に一つずつ許されざる罪を犯していたのです。

その後、2人は法律に興味を持ち勉強しようとしますが資金がありません。2人はお金を稼ぐために痴漢詐欺という犯罪に手を染めます。

ある日、彼らが痴漢詐欺のターゲットに選んだのは現職の警察官でした。痴漢行為をしたと男の手を掴んだ美鈴に対して男は警察手帳を見せました。その瞬間、美鈴は逃げようとして、誤って2人揃って階段から落ちました。

騒ぎが大きくなり、美鈴は逃げることはできませんでした。美鈴に残された選択肢は、罪を受け入れるか、罪を押しつけるかの二択で、美鈴は後者を選びました。

その警官は、傷害罪でも起訴されました。しかも、破廉恥な行為の証拠として、警官が着ていたジャケットの胸ポケットに入っていた、電車で撮った盗撮映像が保存されペン型のカメラあげられました。

それは万が一の場合に備えて清義が用意したもので、彼はそのペンを倒れてる警官の胸ポケットに入れて、現場を立ち去ったのです。

ペン型のカメラは、盗撮の常習性を裏付けるものでした。盗撮と痴漢は、密接に関係しています。無実を主張しても言い訳としか受け取られない証拠を、清義は捏造したのです。

結果その警察官は、警察を懲戒免職されて、妻とは離婚。服役中に精神を病んで、自ら命を絶ちました。実はその警官こそ、馨の父親だったのです。離婚を機に母方の姓に変えて結城姓になっていたので、清義たちも気づきませんでした。

裁判も近づいてきた頃、清義には事件の全貌が見えかかっていました。結城馨の目的は父親の復讐だったと考えれば、一連の事件に説明がつきます。

たとえば、無辜ゲーム。美鈴に嫌がらせを仕掛けていた黒幕が馨であることは、彼が雇っていた佐沼から確認できました。馨は佐沼に命じて美鈴の部屋を盗聴させていました。その目的は、清義と美鈴の罪を確かめること。

馨は無実の父親を裁いた司法機関も恨んでいましたから、馨は「正しい復讐」を模索していたといえます。

清義の考える馨の1つの動機は「馨は美鈴を殺そうとした」ということ。そこから導かれる真相は、「返り討ち」だったり「過去の罪を暴露されるのを危惧して口を塞いだ」といったもので、いずれにせよ美鈴に無罪判決が下されることはないと思えます。

また、馨は『無辜ゲーム』の審判者でした。学生時代に清義が名誉棄損で告訴者になった一件で、犯人に施設の写真や新聞記事といった物証を与えた黒幕は馨だったのです。言うまでもなく美鈴への嫌がらせも、無辜ゲームの枠組みから大きく逸脱したもので、天秤バッヂの目指すところから大きくかけ外れたものでした。

清義が事件について、あれこれ考えている頃、それまで黙秘を続けていた美鈴が、馨を殺していないと言い出しました。しかも、それが結城くんとの約束だったからと。

第一から第三公判期日

検察の冒頭陳述は清義の想定した通りのものでした。「被害者の結城馨は、罪を犯して服役していた父親は冤罪だと信じ、父親を陥れたのは被告人・美鈴だと思い込んでいた。復讐を決意した被害者・薫は、被告人・美鈴に嫌がらせを仕掛けます。犯人を突き止めた被告人・馨は、被害者・美鈴を呼び出して罪を糾弾。だが、話し合いはもつれ、結果的に被告人・美鈴は被害者・馨を殺害するに至った……」。

検察側は確定した過去の判決が冤罪だったと認めることができません。「信じていた」「思い込んでいた」という表現は、それゆえにつけ足されたものです。

また、検察が父親の前科や無辜ゲームでの嫌がらせについて把握しているのは、弁護側が事前に明かしていたためで、弁護側もそれらの事実を前提とした主張をするつもりだということを示しています。

公判は第二回、第三回と進み、すべての証人尋問が終わり、被告人質問が始まりました。清義が問い、美鈴が答える。2人は打ち合わせたとおりに、裁判をひっくり返すシナリオを紡ぎあげていきます。

事件当日、模擬法廷内の様子は録画されていました。模擬法廷に備え付けてあるビデオカメラが使用され、馨がカメラを回していました。

撮影した映像を清義に渡すようにと馨から言われたという美鈴。映像はSDカードに記録されていましたので、裁判長は内容を確認して判断するため、SDカードの提示を命じました。

101号室法廷のモニターに、模擬法廷の映像が映し出されます。模擬法廷で向かい合っている馨と美鈴。馨の右手にはナイフが握られています。美鈴が馨の正体を知ったのは、このタイミングでした。そしてもつれ合うように倒れ込む2人の姿が映りました。

実は馨の目的は父親の無実を証明することにあります。そのためには権力に圧し潰されない環境で、真実を公にする必要があり、美鈴を被告人とした刑事裁判で、それを証明しようとしたのです。自ら被害者になることで、美鈴を刑事裁判に送り込む。それこそが馨の真の目的でした。

判決宣告当日

公判開始時刻の30分前。清義は、裁判所の地下にある接見室でパイプ椅子に腰かけて、アクリル板を隔てた向こう側にている美鈴と対峙します。

SDカードの映像が公開された時点で、明確な証拠があるとして、美鈴に殺人罪が適用されるはずはありません。今なら事件についての一切を黙秘していた美鈴の意図もよくわかります。

警官佐久間悟の冤罪を認めさせるためには、揉み消しようのない状況で真実を訴える必要があり、美鈴は沈黙によって、検察を起訴へと誘導したのです。弁護人である清義にも黙っていたのは、清義に打ち明ければ反対されると確信していたからでしょう。

すべては馨のシナリオ通りに進んでいました。実は馨は父親が痴漢をしたとされる事件現場にいたのです。父親が潔白であることも、美鈴が加害者であることも、最初から全てを見ていました。しかし、家族である馨の証言には信憑性が認められません。

馨は父親の無実を証明するため法律を学び、加害者である清義と美鈴を追ってロースクールに進学しました。「無辜ゲーム」を利用して、清義と美鈴の罪を確かめました。

馨が模擬法廷で絶命したのはロースクール修了から約1年後で、馨の父である佐久間悟が首を吊ったのは、その約1か月前のことでした。馨は父親が再審を望んでいなかったため、父親がこの世を去るのを待って、計画を実行に移しました。再審を請求できるのは本人のみで、その人物が亡くなってはじめて親族に権利が移るからです。

馨のシナリオでは、遅れて模擬法廷に入ってきた清義が揉み合っている2人を発見するという展開だったはずです。馨は目撃者と証拠を捏造することで、殺人未遂の状況を作り上げようとしたのです。

しかし、美鈴は証言台の前で馨に覆い被さるように押し倒し、馨が右手に握っていたナイフを突き刺した……。事件のあらましを語り、「結局、美鈴が馨を殺したんだ」と清義はきっぱりと言い切りました。

児童養護施設での喜多の事件の時、清義は美鈴のために喜多に立ち向かい、美鈴は清義のために喜多を脅迫しました。また、痴漢騒動の時、清義が警官の背中を押し、そのせいで2人は階段から落ちました。事件の一部始終を現場で目撃していた馨は、清義には傷害の罪があると知っていました。

当然、この複雑怪奇な法廷遊戯で、馨は清義の罪も明らかにするつもりでした。そんなことになれば清義はもはや弁護士ではいられなくなりますから、美鈴は清義を守るために馨を殺したのです。

清義は事件の全容を解明しました。これによって、馨の死の真相は伏せられ、美鈴は無罪となるでしょうが、清義は悩みます。

罰が赦しであるとすれば、それを拒絶した美鈴はいつまでも罪人のままです。美鈴の選択もまた罪の償いの在り方なのでしょうが、「罪には罰を」で清義は裁きを受け入れる決意を固めました。

警察に行くと告げる清義に、美鈴は涙が止まりません。「僕も、美鈴と一緒に生きたかった」。泣き崩れた美鈴を残して、清義はパイプ椅子から立ち上がりました。

清義は罪を認めて、罰を受け入れる道を選びました。美鈴は罰を拒否して、罪と向き合う道を選びます。どちらが正しい道なのかは、神様にしかわかりません。

法壇の背後の大きな扉が開き、裁判官と審判員が入って来ました。法廷が静寂に包まれるのを待ってから、裁判長は判決の主文を言い渡しました。

「主文。被告人は無罪」。

小説『法廷遊戯』の感想と評価

五十嵐律人の小説『法廷遊戯』は、法律家を志した3人の若者の複雑怪奇な人生ドラマを描いています。

ロースクールで法律家を目指す成績優秀で将来を期待された3人ですが、ある殺人事件によって、3人のうちの久我清義は弁護士になり、織本美鈴は被告人になり、結城馨は謎だけを残して命を失いました

なぜ美鈴は馨を殺害したのでしょう。「殺していない」と言う美鈴のために、清義は弁護人を引き受けますが、調査をするうちに、美鈴と一緒に背負った過去の罪が浮かび上がってきます。やがて判明する殺害された結城馨の正体に驚き、ますます自分たちが犯した罪の深さを思い知ることになりました。

痴漢詐欺をしていた美鈴と清義の2人の標的となった馨の実父は、世間からの信用も無くしやがて自ら命を絶ちました。美鈴と清義の計画を目撃した馨ですが、法律は人が人を裁くことに気が付き、父親の無念を晴らすために、加害者2人と司法に報いを受けさせようとしたのです。

学校で行われていた『無辜ゲーム』に清義と美鈴が参加させられた時から、馨の復讐が始まったと言えます。

『無辜ゲーム』はいわば、人が人を裁く裁判ゲームです。「目には目を、歯には歯を」という言葉に表される罪に対する同害報復は、無辜ゲームでの罪に対する罰の基準でした。馨は美鈴たちが犯した罪を深く知ってもらいたく事件を起こし、法廷での裁判に持って行ったのです。

罪を罪と認めながら、罰の受け止め方が明らかに異なる清義と美鈴。どちらの選択が正しいのかは、作中にあった通り、神様でないと分かりません。

いったい、人が裁く法の裁きとは何なのでしょう。それぞれの良心に委ねられた罰を受けることになった結末から、司法制度の落とし穴や罪と罰の意味、それに弁護士バッチでもある天秤の意味が問われる斬新な法廷ミステリーでした。

映画『法廷遊戯』の見どころ

小説では過去と現在が入り混じって起こった事件を巡り、3人の若者の苦悩が交錯します。映画ではこんな複雑な関係の3人を、永瀬廉、杉咲花、北村匠海がそれぞれ演じました

永瀬と杉咲は本作で初共演。永瀬と北村はスペシャルドラマ『FLY! BOYS,FLY! 僕たち、CAはじめました』(2019)以来、4年ぶりの共演です。さらに、杉咲と北村の共演も『十二人の死にたい子どもたち』(2019)以来、4年ぶりとなりました。

同窓生のような若手キャストを束ねるのは、深川栄洋監督。監督はこの映画で「法律は何を守り、何が守れなかったのか」をを描いています。

また、原作者の五十嵐律人も、「法律は社会の根底に流れるルールであると同時に、不安定で理不尽な世界を生き抜くための武器となる」「事件の謎が解き明かされたとき、法律や裁判の印象が変わっていたら、そして、黒と白の間にある灰色について考えていただけたら、とても嬉しい」と語りました。

監督も原作者も、皆の安全を守り平等であるべき世の中にするために作られた法律が、決して全て正しいと言っているわけではありません。

人間が裁く法律だから、裁ききれない正義もあるのです。そんな正義を貫こうとしているのが、主人公の久我清義で、「King & Prince」の永瀬廉が演じています。

弱虫ペダル』(2020)や『真夜中乙女戦争』(2022)など、立て続けに主演を務めた永瀬廉。等身大の若者の生き様を演じるにあたり、‟罰を受ける潔さ”をどのように魅せてくれるかと、期待は高まります。

映画『法廷遊戯』の作品情報

【公開】
2023年(日本映画)

【原作】
五十嵐律人:『法廷遊戯』講談社 (2020/7/15)

【監督】
深川栄洋

【脚本】
松田沙也

【プロデューサー】
橋本恵一、本郷達也

【キャスト】
永瀬廉(「King & Prince」)、杉咲花、北村匠海

まとめ


(C)五十嵐律人/講談社 (C)2023「法廷遊戯」製作委員会

五十嵐律人の第62回メフィスト賞受賞作『法廷遊戯』。2020年夏にエンタメ界に激震をもたらせた長編法廷ミステリーをご紹介しました。

法廷を舞台とした復讐劇によって、三者三様の人生ドラマが展開します

映画では、『白夜行』(2010)や『桜のような僕の恋人』(2022)の深川栄洋監督が、法律家をめざす3人の若者が選ぶそれぞれの道を切なく描きだしました。

法の元で裁かれる罪とそれによって与えられる罰。それぞれの「罪と罰」の受け止め方が招く結末に涙することでしょう。

映画『法廷遊戯』は、2023年11月10日(金)から全国公開





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