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映画『マザーレス・ブルックリン』あらすじネタバレと感想。エドワードノートンが原作の設定を1950年代に置き換えて描いたノワール

  • Writer :
  • 西川ちょり

恩人はなぜ殺されたのか? 真相を追う探偵の前に現れた巨大な敵とは!?

エドワード・ノートンが監督・製作・脚本・主演を務めた映画『マザーレス・ブルックリン』

フルース・ウィリス、ウィレム・デフォー、アレック・ボールドウィンら超豪華な実力派俳優が脇を固め、『美女と野獣』などで知られるググ・バサ=ローが物語のキーパーソンとなる女性を演じています。

トロント国際映画祭をはじめ、多くの映画祭で高い評価を得たアメリカン・ノワール映画です。

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映画『マザーレス・ブルックリン』の作品情報


(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

【公開】
2019年公開(アメリカ映画)

【原題】
MOTHERLESS BROOKLYN

【原作】
ジョナサン・レセム(『マザーレス・ブルックリン』ミステリアス文庫絶版)

【監督】
エドワード・ノートン

【キャスト】
エドワード・ノートン、ブルース・ウィリス、ググ・バサ=ロー、ボビー・カナヴェイル、チェリー・ジョーンズ、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、レスリー・マン、イーサン・サプリー、ダラス・ロバーツ、ジョシュ・パイス、ロバート・ウィズダム、フィッシャー・スティーヴンス、アレック・ボールドウィン、ウィレム・デフォー

【作品概要】
人気俳優エドワード・ノートンの『僕たちのアナ・バナナ』以来約19年ぶりとなる監督作品。ジョナサン・レセムの原作を、舞台を1950年代に改変して映画化。恩人を殺された私立探偵が真相を調べていくうちに、権力を振りかざす大物政治家にたどり着いていく。共演にはブルース・ウィリス、ググ・バサ=ロー、アレック・ボールドウィン、ウィレム・デフォーらが顔をそろえている。

映画『マザーレス・ブルックリン』あらすじとネタバレ


(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

1950年代、ニューヨーク。

ライオネル・エスログには、突然言葉を発したり、人に触れたりするトゥレット症候群の症状がありました。母親を早く亡くし、孤児院にいたところを、フランク・ミナという男に他の仲間と共に引き取られ、探偵事務所の一員として働いていました。

彼は抜群の記憶力を持っていて、フランクに信頼されていました。ある日、フランクは見知らぬ男たちと何かの交渉に出かけ、その際、ライオネルに、車で後をついて来いと命じます。

あらかじめ打ち合わせしていたとおり、ライオネルは電話ボックスに入り、フランクからの連絡を待ちました。

男たちのアジトに乗り込んだフランクはわざと電話の受話器を外してライオネルに聞こえるようにしました。「なぜあの黒人女を調べた?」という男たちの声が聞こえてきました。

フランクたちは再び車で移動し始めました。途中、見失ってしまい、ようやく車をみつけたと思った瞬間、フランクが背中を撃たれてしまいます。ライオネルは彼を救急病院に運びましたが、すぐにフランクは息を引きとりました。「フォルモサ」という言葉だけを言い残して。

ライオネルはフランクの未亡人ジュリアにフランクの遺品を届けに行きますが、彼女は時計を受け取っただけで、事務所の責任権も放棄して、自身は姉の家にしばらく世話になると語りました。

ライオネルはフランクの死の真相を知るため、夫人が受け取らなかったフランクの帽子をかぶり、フランクのコートをはおって行動に移します。

ライオネルはフランクの言葉を必死に思い出し、事務所のダニーと捜査した結果、ハーレムにあるジャズ演奏で有名な店にたどり着きました。

今回の事件のキーパーソンとなるアフリカ系アメリカ人の女性、ローラ・ローズの父親が経営している店で、ローラはその建物の二階に住んでいました。

ローラーのあとをつけていくと、彼女は市の公聴会へと向かいました。そこには市が計画している都市開発計画に反対する市民が集まっていました。

都市開発という名のもと、市は貧しい地域や少数民族の地域をわざとスラム化させ、大義名分を振りかざし住民たちを追い出していると市民の代表は主張します。市の監督官であるモーゼス・ランドルフは壇上から苦虫を噛み潰したような顔をして市民たちを見下ろしていました。

そんな中、「都市開発という名の計画が実はスラム撤去計画であり、“ニグロ”撤去計画なのだ!」と叫んだ中年の白人男性が会場を追い出され、市民たちからブーイングが起こりました。

ライオネルは会場で取材していた新聞記者の隣に陣取り、何も知らない新人記者を装って、情報を聞き出します。

図書館の資料を調べたライオネルは先ほど、追い出された男性がモーゼス・ランドルフの兄ポール・ランドルフだということを突き止めます。

さらに捜査を続けると、フランクを襲った男たちの正体が明らかになってきました。フランクが残した「フォルモサ」という言葉は「For Moses」のことで、彼らは皆、モーゼスに関わっていました。リーバーマンと呼ばれる男は不動産業界に従事しているようでした。

ライオネルはローズと親しくなりますが、彼がランドルフの手先だと勘違いしたローズの父親から出ていくように言われてしまいます。

ポール・ランドルフに接近したライオネルはポールから「インウッド不動産を調べてみろ」と言われます。ポールとモーゼスの間には大きな確執があるようでした。

不動産屋に着くと「転居希望の書類の提出か?」とたずねられます。すぐに店を出たライオネルでしたが、閉店時間になるのを待っていると、店を出てきた女が書類の束をゴミ箱に捨てるのを目撃します。

女が立ち去ったのを見て、ゴミ箱に駆けつけてみると、それは市民が届けた転居希望の書類でした。市民を騙して地域を乗っ取ろうという明らかな証拠でしたが、ライオネルは何者かに後頭部を殴られます。「個人のゴミ箱は収集車が集めにくるまではその個人のものなんだ」と言った男はリーバーマンの仲間たちでした。

ローラの父親はライオネルがフランクの仲間と知り、非礼をわびます。そんな矢先、ライオネルに電話がかかってきました「ミナ・フランクの部下だな? 封筒はどこだ?」

封筒と言われても一向に検討がつきません。しかし敵は何かが公になるのを恐れているようでした。フランクはそのことでなんらかの交渉をしようとしていたに違いありません。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『マザーレス・ブルックリン』ネタバレ・結末の記載がございます。『マザーレス・ブルックリン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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しかしフランクから何も聞かされていなかったライオネルには検討もつきません。ある日、フランクはローラから衝撃的な話を聞かされます。彼女の本当の父親はポール・ランドルフだというのです。

彼の援助があったから自分は大学にまで進むことができたのだとローラは言い、自身の容姿も白人の血が混ざったものだと語るのでした。

ライオネルはフランクから何かヒントを与えられていたはずだと懸命にフランクの言葉を思い出そうとします。

「妻に帽子を渡してくれ」とフランクが言っていたことを思い出したライオネルが帽子を探ってみると、そこからロッカーのキーが出てきました。

ペンシルベニア駅のロッカーにキーを差し込むと、中に封筒が入っていました。封筒におさめられた書類には驚くべき事実が記載されていました。

敵がローラを狙っているとさっしたライオネルは慌ててローラのもとへ駆けつけ、間一髪で彼女を救います。彼自身も危うい目に合いますが、バーで演奏しているトランペット奏者に救われます。

ライオネルはローラをある場所に連れて行ってくれるようにトランペット奏者に頼むのでした。

ライオネルはモーゼス・ランドルフのもとを訪ねていきました。モーゼスは権力を自分の欲望をかなえるものであると解釈し、それを邪魔しようとする一切のものに大きな怒りを感じていました。

弱者を廃し、街に橋や公園を建設することが市にとって最も有益なことだと彼は信じているのでした。

ランドルフがローラの父親であるという事実をつきつけると、彼はローラーの母親とのいきさつを話し始めました。

ホテルの客室係だったローラの母親を暴力で自分のものにしたこと、その後は手厚い施しをしてローラの母親も従属したことなどを告白したライオネル。そのことが公になればただでは済まないことを彼は十分知っており恐れていました。

フランクはこのことで彼を脅し、金を得ようとしていたのです。

ライオネルはランドルフに言い放つのでした。「街は好きなようにしろ。たが二度とローラには手を出すな」と。

ニューヨークの大手新聞社に勤める記者のもとに、大きな封筒が送られてきました。開けてみると、そこには市の監督官であるモーゼス・ランドルフの様々な悪事を証明する書類が同封されていました。

その新聞記者はランドルフが新入りの新聞記者を装った時に、相手をしてくれた記者でした。

ランドルフは身を隠しているローラに会いにやってきました。「この場所は何?」とローラが訪ねるとランドルフは言いました「フランクのものだ。僕に残してくれた」。

肩を寄せ合って座る二人の眼前には澄み切った海が広がっていました。

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映画『マザーレス・ブルックリン』の感想と評価


(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ジョナサン・レセムの原作は1990年代を舞台としていましたが、エドワード・ノートンは映画化する際、それを1950年代に置き換えました。

1950年代といえば、アメリカでは“フィルム・ノワール”と呼ばれる犯罪映画が、当時の社会に巣食う不安を、光と影が交錯するミステリアスな物語に反映させ人気を博していた時代です。

『マザーレス・ブルックリン』は、ダシール・ハメットが生み出したハードボイルドな探偵サム・スペードをハンフリー・ボガートが演じた『マルタの鷹』などのフィルム・ノワールの名作を彷彿とさせます。探偵が都市を駆け巡り、ジャズが響くムードたっぷりのディテクティブ・ストーリーに胸が踊ります。

エドワード・ノートンが主演も兼任し、恩人の死の真相を探っていく青年探偵を演じています。この青年は、しゃべりたくなくても思わず言葉が口に出てしまったり、同じ言葉を繰り返したりするトゥレット症候群と呼ばれる症状があり、「if,if,if」としょっちゅう言葉を繰り返します。初対面の人にはそうした症状があることを彼はいちいち説明しなければなりません。

人に迷惑をかけたくないからとジャズの演奏を一番前で観ることをためらうこの青年探偵は、不幸な生い立ちの中にも優しさを失わず、その佇まいには清々しささえ感じさせます。

恩のあった人物の死を探っていくというのはハードボイルド探偵もののひとつのパターンであり、後頭部を殴られて意識を失うのはもはや伝統芸ともいえるのですが、そうしたお約束が守られているのも嬉しくなります。

そうした探偵ものの魅力がめいっぱい描かれると共に、映画はその巨大な敵を通して、現在にも通じる問題へと大胆に迫っていきます。

都市開発という名のもとに、気に入らぬ人々を追い出そうとする大物政治家が登場し、当時の都市開発の実態が描かれていますが、ニューヨークという都市は現在に至るまで、こうした開発が繰り返されています。

聞こえのよいスローガンで、住みよい街づくりをしているように見えて、実際のところは弱者を追い出し、一部の人間が利権を得ているのです。

街はどんどん小綺麗に、あるいはゴージャスになっていきますが、土地の高騰により、以前から住んでいた住人たちは家賃や土地代を払えなくなり立ち退かざるをえません。誰かがどこかでがっぱりと儲けを独り占めしているのです。

そして、街が持っていたその土地ならではの伝統や文化もまた少しずつ失われていきます。

エドワード・ノートンが舞台を50年代に設定したのは、そうした事柄で、失われていった文化やコミュニティーに対する愛惜の意味があるのでしょう。

まとめ


(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

そうしたニューヨークで行われている“都市開発”への懐疑の念とともに、エドワード・ノートンは明らかに今のアメリカの政治へと目を向けています

冒頭にウィリアム・シェイクスピアの言葉「巨人の力を持つのは素晴らしいが、その力を巨人のように使うのは暴虐だ」が引用されているように、権力を自身の欲望のために使っているトランプの時代を痛烈に批判しています。

権力者だからこそ、弱者や少数者の意見にも耳を傾け、国民全体の権利を守らねばならないのに、排斥をたびたび口にし、社会を分断させる最高指導者の姿が、アレック・ボールドウィン演じる監督官に投影されているのです。

エドワード・ノートンがなぜこの映画を撮ったのかは明瞭です。しかし、そうした社会派な主張をエンターティメントとして描く手腕は見事といえるでしょう。

それにしてもアレック・ボールドウィン、ブルース・ウィリス、ウィレム・デフォーとなんと豪華な出演者なのでしょうか。ジャズ界の重鎮・ウィントン・マルサリスらが提供した楽曲にも注目です。

ペンジルベニア駅が重要な場所として出てきますが、実際の駅は 1964年に取り壊されており、映画はセットを組み、忠実に再現されています。偉大な建築物を目撃できるチャンスですので建築が好きな人にもおすすめです。

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