ミュータントが選ぶのは人類との“共存”か、“対立”か?
マーベルコミック・人気実写映画シリーズの原点!
マーベルコミックスの人気コミックの待望の映画化作品であり、ウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンやストーム役のハル・ベリーをスターダムに押し上げた記念すべきシリーズ第1作『X-MEN』。
特殊能力を有する新人類“ミュータント”が出現した世界を舞台に、新人類の存在を恐れ迫害する人類を憎むミュータントたちと、それに対抗するミュータントたちの戦いを描きます。
人類とミュータントの関係を覆すべく、過激な思想を持つミュータント「マグニートー」ことエリックは、人類を消滅させかねないある計画を進めます。対して「プロフェッサーX」ことチャールズ率いるミュータント集団“X-MEN”は、計画を阻止すべく動き始めます。
その中で孤独なミュータント「ウルヴァリン」ことローガン、能力に目覚めたことで社会から孤立した少女「ローグ」ことマリーは、ミュータント同士の対立に巻き込まれていきます。
映画『X-MEN』の作品情報
【公開】
2000年(アメリカ映画)
【原題】
X-Men
【監督】
ブライアン・シンガー
【キャスト】
ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ファムケ・ヤンセン、ジェームズ・マースデン、タイラー・メイン、アンナ・パキン、ハル・ベリー、レベッカ・ローミン=ステイモス、ブルース・デイビソン、レイ・パーク、ショーン・アシュモア
【作品概要】
映画『ユージュアル・サスペクツ』(1995)で一躍有名となったブライアン・シンガーが手がけた映画『X-MEN』は、マーベルコミックスで人気を誇る同名コミックを原作としています。
『レ・ミゼラブル』(2012)『グレイテスト・ショーマン』(2018)など多くの話題作・ヒット作に出演し、当時から舞台を中心に活躍していたヒュー・ジャックマンがウルヴァリン/ローガン役に抜擢。
またテレビドラマ『新スタートレック』(1987~1994)などで知られるパトリック・スチュワートがプロフェッサーX/チャールズ役に。マグニートー/エリック役に『リチャード三世』(1995)、『ゴッド・アンド・モンスター』(1998)のイアン・マッケランを起用し、実力派キャストが集結しました。
またストーム/オロロ役には、『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)などのハル・ベリーが演じ、本作を機に世界的に知られるようになりました。
映画『X-MEN』のあらすじとネタバレ
突然変異により、常識では考えられない特殊な能力を持った新人類“ミュータント”。これまでその存在は明らかにされていませんでしたが、広く世間に知られるようになったことで新人類に関する議論が行われ、同時に差別と迫害もより露わになっていきました。
ミュータントについて議論する公聴会にて、上院議員ケリーはミュータントが持つ特殊能力を危険視し「反ミュータント」を宣言します。
その公聴会を見守っていた「プロフェッサーX」ことチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)は、年老いた現在も強大なテレパスの能力を有するミュータントでした。
チャールズは人ごみの中で、見知った人物を見かけます。それはかつての親友にして、金属物質を自在に操作できるミュータント「マグニートー」ことエリック・レーンシャー(イアン・マッケラン)でした。
ミュータントと人類との共生を掲げるチャールズと、人類と敵対する意志を持つエリックは、その意見の違いゆえに訣別したという過去がありました。そしてケリーの発言で世論が「反ミュータント」へと傾く中、チャールズはエリックが何らかの行動を起こす気配を感じていました。
一方、カナダの田舎町にある闇闘技場で、圧倒的な強さを見せる男がいました。
「ウルヴァリン」と呼ばれるその男ローガン(ヒュー・ジャックマン)は、強力な治癒能力(ヒーリング・ファクター)による不死性と、“アダマンチウム”という金属合金で形作られた全身の骨格と爪を有していました。しかし彼は記憶喪失であり、失われた記憶を求め各地を彷徨っていました。
そんなローガンの前に、助けを求める少女「ローグ」ことマリー・ダンキャント(アンナ・パキン)が現れます。
マリーは突如ミュータントとして目覚め、「他人の生命力を無意識に吸収する」というその能力から居場所をなくし、行くあてもなく放浪していました。
初めはマリーを邪険にしたものの、結局マリーを助けることにしたローガン。
しかし突如、驚異的な怪力を持つミュータント「セイバートゥース」(タイラー・メイン)に襲われ、ローガンは気を失ってしまいます。
そこに、目から光線を発するミュータント「サイクロップス」ことスコット・サマーズ(ジェームズ・マースデン)、気象現象を操作できるミュータント「ストーム」ことオロロ・マンロー(ハル・ベリー)が駆けつけ、2人を助けます。
やがてローガンとマリーはスコットらによって、チャールズが管理する「恵まれし子らの学園」へと連れていかれます。
「恵まれし子らの学園」は自身の能力に苦しむミュータントの子供たちに力を制御する術と一般教養を教えるための学校であり、人知れずミュータントによる犯罪に対応するミュータント集団“X-MEN”の本拠地でもありました。
チャールズはセイバートゥースがエリックの指示でローガンを襲ったことを見抜き、何故エリックがローガンを狙おうとしたのかを突き止めようとします。
その頃、どんな人物にも姿を変えることができるミュータント「ミスティーク」ことレイヴン・ダークホルム(レベッカ・ローミン=ステイモス)は、ケリーの側近に化けてエリックとともにケリーを拉致します。
ローガンは学園で過ごす中、ミュータント研究の権威でありテレキネシスとテレパシー能力を持つミュータントのジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)に惹かれていきます。しかし、ジーンと交際しているスコットはその事実を知り、ローガンとの間に溝を作っていきます。
映画『X-MEN』の感想と評価
個性的なキャラクターたちとその能力、多彩なドラマ展開により屈指の人気を誇ったマーベルコミックスの人気作『X-MEN』の初の実写映画化作品となった本作。
コミック同様、本作でも多数のキャラクターが登場し、それぞれの個性にスポットを当てながらも、その人間関係や想いが織りなすドラマが描かれていました。
中でも、チャールズとエリックの相反する想いが印象的でした。
ミュータントの行く末を案じる2人ですが、その思い描く未来は対称的。人類よりも自分たちミュータントが優れていると疑わないエリックが人類を排除を目論むのに対し、チャールズは人類とミュータントの共生を模索します。
一見、チャールズが「善」エリックが「悪」と断じられてしまいそうなそれぞれの想いですが、長きにわたってミュータントが人類から差別と迫害を受けてきたという事実がある以上、単純な善悪で語ることはできません。
とりわけエリックはユダヤ人でもあり、第二次大戦時には家族を失い、自身も強制収容所に連行されたという過去を持ち、ミュータントとして本格的に覚醒する以前から“人類の愚かさ”によって苦痛を強いられてきました。チャールズはそれでも、ミュータントと人類の未来、そして何よりも親友エリックのため彼の計画を止めようとします。
またチャールズとエリックの思想的対立だけでなく、現実社会においても絶えることのない性別や民族、人種や宗教におけるマイノリティに対する差別の光景を、映画は“突然変異によって現れ始めた、新たな人類”としてミュータントの存在を通じて様々な形で伝えようとします。
その後のシリーズでも描かれ続けてゆく人類に対する“絶望”と“希望”は、初の実写化作品である『X-MEN』の時点から、作品の中核を担うテーマとして明確を提示されていたのです。
このように、深いテーマを掲げた本作ですが、‟スーパーヒーロー映画”としての迫力あるアクションシーンの数々も見逃せません。アクションシーンでは特殊能力を持った超人同士の戦いを描くにあたって、当時の最新のVFX技術が駆使され、迫力の映像を作り上げています。
特にケリーの側近に変身していたミスティークが元の姿へ戻る場面での、体表が蠢きながら徐々に元の姿に変化してゆく姿は、驚愕と言い知れぬ恐怖を当時の観客に感じさせ、信じ難い出来事を目のあたりにしたケリーの心境を垣間見る見事な演出となっていました。
また映像により説得力を持たせるため、従来のスタントマンによる生身のアクションやセットを破壊・爆破する従来の演出もうまく組み合わせ、未体験の映像体験に挑んでいます。
まとめ
『X-MEN』という実写化映画第1作を皮切りに、その後多くのシリーズ作品/スピンオフ作品が公開され、いずれも大ヒットを記録した映画「X-MEN」シリーズ。
それには原作コミックの人気や登場キャラクターの多さなど、続編が製作されやすい下地があったことはもちろん、『X-MEN』では劇中では各キャラクターたちの苦悩や葛藤が色濃く描かれており、それらが観客の心を打つドラマを生み出していることも要因に挙げられます。
「人気実写シリーズのはじまりにして原点」……その言葉にふさわしい作品こそが、2000年という20世紀最後の年、そして新世紀という新たな時代への出発を告げる年に公開された映画『X-MEN』なのです。