吸血鬼となった天才医師が開く「スパイダーマン・ユニバース」の新たな扉
「スパイダーマン」シリーズに登場する、人気ヴィランの1人である吸血鬼マイケル・モービウス。
難病に苦しむマイケルが血液研究の末に、怪物の力を手に入れたことから始まる、ダークヒーローの誕生を描いた映画『モービウス』。
人命を救う「天才医師」と、人の生き血を吸わないと生きていけない「怪物」の、二面性に苦悩するマイケルは「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」の、今後の重要なキャラクターになりそうです。
新たな吸血鬼の映像表現も面白い、本作の魅力をご紹介します。
映画『モービウス』の作品情報
【日本公開】
2022年公開(アメリカ映画)
【原題】
Morbius
【原作】
ルイ・トーマス、ギル・ケイン
【監督】
ダニエル・エスピノーサ
【脚本】
マット・サザマ、バーク・シャープレス
【キャスト】
ジャレッド・レト、マット・スミス、アドリア・アルホナ、ジャレッド・ハリス、アル・マドリガル、タイリース・ギブソン
【作品概要】
スパイダーマンに登場する、代表的なヴィランであるマイケル・モービウスを、アメコミ『モービウス・ザ・リヴィング・ヴァンパイア』を原作に実写映画化。
主人公のマイケル・モービウスを、テレビシリーズ「アンジェラ15歳の日々」で人気となり、2013年に『ダラス・バイヤーズクラブ』で「アカデミー賞」の助演男優賞を受賞したジャレッド・レト。
マイケルの親友であり、敵対するマイロを、『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)で、ジャックを演じ圧倒的な存在感を見せたマット・スミス。
監督は『ライフ』(2017)のダニエル・エスピノーサ
映画『モービウス』のあらすじとネタバレ
血液研究で多大な功績を残している、天才医師のマイケル・モービウス。マイケルは、生まれながらに血液の難病を抱えており、幼少期はギリシャの病院に入院していました。
幼少期のマイケルの、隣のベッドに同じ年齢の患者が入院してきます。マイケルは、隣に入院して来た子供に「マイロ」と一方的に名前を付けます。
マイケルとマイロは、同じ血液の病に悩まされていることから、すぐに意気投合します。ある時、マイロが装着していた救命装置が故障した際、マイケルがボールペン一本で修理をします。
その様子を見ていた、担当医師のニコラスは、マイケルを医者の道に進めさせる為、大学に推薦します。残されたマイロは「君の病気を必ず治す」と書かれたマイケルからの手紙を受け取ります。
ですが、その手紙が窓の外に落ちてしまい、地元の子供達に手紙を取られ、マイロは馬鹿にされます。マイロも松葉杖で子供達を殴り反撃しますが、近くを通ったニコラスに止められます。
マイロは、ニコラスに止められた後も倒れた子供を殴り続け、ニコラスはマイロの中の暴力性に恐怖を抱きます。
25年後。ニューヨークの病院に勤務するマイケルは「人工血液」を発明し「天才医師」と評判になります。ですが「ノーベル賞」を辞退するなど、その難解な性格が災いし、研究が思うように進みません。
同じ医師で、マイケルの研究をサポートしているマルティーヌは、マイケルの性格に呆れながらも、その才能を信じています。
しかしマイケルが、吸血コウモリと人間のDNAを配合した、新たな血清を作ろうとしていることを知ったマルティーヌは「危険すぎる」と反対します。
マイケルは、成長して社会的に成功し、現在は研究に出資をしてくれている、マイロに会いに行きます。マイロも病気が進行しており、現在もニコラスの治療を受けていました。
マイケルが研究している新たな血清が、実は違法の可能性があることを知ったマイロですが「協力する」と申し出ます。
マイロが準備した貨物船に研究機材を持ち込み、マイケルはアメリカの法律が適用されない海域で、マルティーヌと共に新型の血清の実験を開始します。
マイケルは自身の体内に血清を投与し、マルティーヌがデータを収集していました。そこへ、船員である傭兵が実験場に入って来た為、マルティーヌと口論になります。
マルティーヌが気付くと、マイケルの姿が消えていました。
映画『モービウス』感想と評価
血液の病に苦しむ天才医師が、吸血鬼の能力を手に入れたことで始まる、苦悩と戦いを描いた映画『モービウス』。
本作の主人公モービウスは、スパイダーマンに登場する代表的なヴィランです。
根は善人だったのに、研究の失敗で怪物になってしまうというのが、スパイダーマンのヴィランの特徴です。
では『モービウス』は、スパイダーマンを知らないと全然楽しめないのか?というと、そんなことはありません。
本作の序盤は、コウモリの能力を手に入れながらも、自身で抑制が出来ないマイケルの姿を通して「怪物化していく恐怖」が物語のメインとなっています。
人間が別の動物の能力に目覚めていく不可解さは、1986年にハエ男を題材にし、社会現象を巻き起こしたホラー映画『ザ・フライ』に近いですね。
さらにFBIの捜査官も登場し「ここから、吸血鬼モービウスの恐怖が前面に出される、ホラー映画になるか?」と思いましたが、マイケルの親友、マイロも吸血鬼の能力に目覚めて以降、展開は一変します。
吸血鬼の能力を封じたいマイケルと、目覚めた能力で暴れ回りたいマイロとで、考え方の違いから決裂が起き、2人は戦うことになります。
全く同じ能力を持ちながらも、善と悪に分かれて対立するという構図は『アイアンマン』のアイアンマンとアイアンモンガー『ブラックパンサー』のブラックパンサーとエリック・キルモンガー『ドクター・ストレンジ』のストレンジと悪の魔術師軍団など、マーベルの映画化作品、シリーズ1作目のお約束とも言えます。
ホラーテイストが強めだった前半と違い、後半ではダークヒーローとしてのモービウスが描かれています。
マイケルとマイロは、吸血鬼の能力を使う時だけ、顔が怪物のように一瞬だけ変化し、凄まじいスピードでぶつかり合った際に生じる衝撃波が、スピードが生み出すパワーを表現しています。
『モービウス』における戦闘時の視覚的な表現は、これまでのヒーロー映画に無かった斬新さがあります。
マイケルが気流に乗って空を飛ぶ場面や、コウモリを操り攻撃するなど、新解釈の吸血鬼映画として、ホラーでもないヒーロー映画でもない、独自路線の作品に仕上がっています。
本作成功の要因は、マイケル・モービウスを演じたジャレッド・レトのハマり具合です。
病に苦しむ、痩せた体の不健康な天才医師という前半と、吸血鬼の力で筋肉のついた体に変貌した中盤以降、そして完全な吸血鬼と化し、もう元の人間に戻れなくなった後半、3段階で吸血鬼に変化していくマイケルを、肉体改造を取り入れ見事に演じ分けています。
ここ最近は、ハッキリ言って役に恵まれず、不遇とも言える期間が長かったですが、新たに生まれたダークヒーローであるモービウスが、ジャレッド・レトの今後の代表作になるのではないでしょうか?
まとめ(エンドクレジットの場面について解説)
スパイダーマンを知らなくても本編は楽しめる『モービウス』。
本編は楽しめますが、マーベル作品恒例のエンドクレジットの場面に関しては、やはりこれまでのスパイダーマン作品を観ていないと分からないでしょう。
ここでは、エンドクレジットの場面で何が起きていたか?を、解説します。
「ヴァルチャー」ことエイドリアン・トゥームス登場の意味は?
本作のエンドクレジットの場面で『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)に登場したヴィラン「ヴァルチャー」こと、エイドリアン・トゥームスが登場します。
実は公開前からエイドリアンを演じる、マイケル・キートンの名前が発表されていたこともあり、登場することは知らされていたのですが「どういう登場の仕方なのか?」が重要でした。
エイドリアンが本作に初登場する場面では、ニューヨークの空に暗雲が立ち込めていたので、明らかに『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022)で、ドクター・ストレンジがマルチバースの扉を閉じた後の話でしょう。
『スパイダーマン:ホームカミング』と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)で展開された物語で、MCUにはスパイダーマンが存在します。
ですが『モービウス』や『ヴェノム』(2018)は「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」で展開されている物語で、この世界にスパイダーマンはいません。
エイドリアン・トゥームスはMCU側のキャラクターですが、本作で「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」の世界に来てしまったということですね。
一体何が起きたのかは分かりませんが、ドクター・ストレンジはしょっちゅう魔法を失敗するので、またやらかしたのでしょう。
そして『モービウス』のラストで、マイケルとエイドリアンは顔を会わせ、組むことになります。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で、「ヴェノム」ことエディ・ブロックは、MCUに行きましたが、何もせずに「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」へ帰ったので、2つのユニバースのキャラクターが、『モービウス』でとうとう顔を会わせたことになります。
この際にエイドリアンが言っていた「全てはスパイダーマンに関係がある」とは、どういう意味なのでしょうか?
今後もMCU作品は「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」に影響を与えるのでしょうか?
謎だらけではありますが、『モービウス』は、2つのユニバースの新たな扉が開いた、重要な作品であると言えます。
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