『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』で『ジュラシック』シリーズは完結
1993年、スティーブン・スピルバーグが『ジュラシック・パーク』を発表してから29年。監督や主人公を変えながら続いてきたこのシリーズは、6作めとなる本作でついに完結します。
実際の時間軸と同じように進んできたこのシリーズ。特に2015年からのこの『ジュラシック・ワールド』シリーズは、オーウェンとクレアというふたりの男女を中心に展開してきました。
本作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』では“初代”『ジュラシック・パーク』の登場人物、アラン・グラント、エリー・サトラー、イアン・マルコムの3博士が加わり、シリーズファンにはたまらない豪華な展開となっています。
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CONTENTS
映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』の作品情報
(C)2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.
【公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Jurassic World: Dominion
【監督】
コリン・トレボロウ
【製作総指揮】
スティーブン・スピルバーグ、アレクサンドラ・ダービシャー、コリン・トレボロウ
【キャスト】
クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、サム・ニール、ディワンダ・ワイズ、マムドゥ・アチー、B・D・ウォン、オマール・シー、イザベラ・サーモン、キャンベル・スコット、ディーチェン・ラックマンほか
【作品概要】
(C)2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.
『ジュラシック』シリーズのおさらい
『ジュラシック・パーク』(1993)
【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】サム・ニール、ローラ・ダーン、ジェフ・ゴールドブラム、リチャード・アッテンボロー、B・D・ウォンほか
【物語】インジェン社の社長ジョン・ハモンドは最新のクローン技術によって恐竜たちを現代に蘇らせました。コスタリカ西方の島にテーマパークを建設、一般公開に先がけ専門家3名を招き園内を案内させますが、高圧電流の柵にトラブルが発生し獰猛な肉食恐竜が獲物を求めて暴れだします。
『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(1997)
【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】ジェフ・ゴールドブラム、ジュリアン・ムーア、リチャード・アッテンボロー、アーリス・ハワードほか
【物語】閉鎖されたジュラシック・パークの近くにあるイスラ・ソルナ島は“サイトB”と呼ばれる恐竜の繁殖地。そこでは今も恐竜たちが多く生息しています。インジェン社の新社長ピーターは会社を立て直すため新たなパークをアメリカのサンディエゴに建設、そこに恐竜たちを移送するつもりです。それを阻止するためジョン・ハモンドは、かつてパークから生還したイアン・マルコム博士らをサイトBに送り込みます。
『ジュラシック・パークⅢ』(2001)
【監督】ジョー・ジョンストン
【出演】サム・ニール、ウィリアム・H・メイシー、ティア・レオーニ、アレッサンドロ・ニヴォラ、トレヴァー・モーガンほか
【物語】研究資金不足に悩まされている古生物学者アラン・グラント博士は、支援を申し出た事業家ポールとその元妻の希望でサイトBへの同行を渋々承諾します。しかし本来の目的は行方不明になった息子を探すことで、着陸しない約束だったのに飛行機は島に降り立ってしまいます。
『ジュラシック・ワールド』(2015)
【監督】コリン・トレボロウ
【出演】クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ヴィンセント・ドノフリオ、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン、オマール・シー、B・D・ウォン、イルファーン・カーンほか
【物語】インジェン社を買収したサイモン・マスラニは新たに高級リゾート施設としてジュラシック・ワールドを運営しています。施設の責任者クレア・ディアリングはマスラニから、新たに開発された「インドミナス・レックス」の防壁について、ラプトルの調教に成功しているオーウェン・グレイディに意見を聞くよう指示されます。オーウェンが現場に向かうとレックスの姿が見えず…。
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(2018)
【監督】J・A・バヨナ
【出演】クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ジャスティス・スミス、ダニエラ・ピネダ、ジェフ・ゴールドブラム、B・D・ウォン、ジェームズ・クロムウェルほか
【物語】ジュラシック・ワールド事件から三年後。放棄された島の火山活動によって恐竜たちの生命に危機に瀕していましたが、救出するか否か世論は割れていました。恐竜保護団体を設立したクレアはハモンドの盟友・ロックウッドの資産管理を任されているイーライ・ミルズの依頼を受け、恐竜たちを救出すべくオーウェンや仲間とともに島へ向かいます。
完結編『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』
今回の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は『ジュラシック・ワールド』シリーズの3作目です。
監督は『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレボロウが再びつとめましたが、彼はシリーズ3作すべての脚本に関わっています。そしてこのシリーズは、恐竜が隔絶された島から放たれ、人類と恐竜が共存する世界へと変化するというビジョンのもとで製作されていったのです。
製作総指揮はもちろん、シリーズの生みの親であるスティーブン・スピルバーグ。彼がマイケル・クライトンの原作に興味を持ち映画化の権利を獲得してから30数年、途中14年も新作が公開されない期間もありましたが、ようやく完結の時を迎えました。
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映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のあらすじとネタバレ
(C)2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.
4年前に解き放たれてしまった恐竜たちは世界中に散らばり繁殖を続けています。
人々は恐竜に襲われる恐怖と隣り合わせで生活し、ある者は保護を訴え、ある者は闇で売買する…そんな世界になっていました。
恐竜保護団体の代表であるクレアは密猟者の農場に忍び込みその証拠をつかもうとしますが、ナーストケラトプスの子どもを見つけると仲間の制止を無視して持ち出してしまいます。気づかれて追跡されますが、恐竜の群れに助けられなんとか逃げ切ることができました。
そんなクレアはオーウェンとは微妙な関係のまま、彼の建てたロッジでメイジー・ロックウッドと3人で暮らしています。オーウェンは恐竜保護区で働きながらクローンであるメイジーを守り、また近くの森に住むヴェロキラプトルのブルーとその子供ベータを見守っています。
14歳になったメイジーは相変わらず町に出ることを禁じられ、会話する相手はオーウェンとクレアのみ。そんな日々に不満を募らせています。
ある日機嫌を損ね自転車で家を出たメイジーは、彼女をつけ狙っていた何者かに拉致されてしまいます。そして彼らはベータも捕獲して連れ去ってしまいました。怒ったブルーはオーウェンの前に姿を現します。現場を目撃していたオーウェンは、必ず取り戻すとブルーに約束します。
その頃アメリカ中西部の農場では巨大化したイナゴが大量発生し、古生植物学者で土壌科学者のエリー・サトラー博士が調査に訪れていました。そこでバイオシン社に疑いを持ったエリーは、発掘調査中のアラン・グラント博士をたずね協力を仰ぎます。バイオシン社で講演活動をしているイアン・マルコム博士からの招待状があるのでいっしょに来てほしいというのです。エリーへほのかな思いを抱き続けているアランはそれを承諾し、ふたりはバイオシン社の本拠地、恐竜保護区のあるイタリアのドロミーティ山脈へ向かいます。
到着後、彼らは広報担当のラムジーに案内され、ここでは優秀な若者が学んでいると説明されます。そしてバイオシン社CEOのルイス・ドジスンが現れふたりを歓迎しますが、エリーは違和感を拭えません。
その後ふたりは講演を終えたイアンと久し振りの再会を果たします。エリーとイアンはバイオシン社の疑惑についてSNSでやりとりしていたらしく、監視カメラや盗聴に気をつけながら会話しています。イナゴのサンプルがあるのは地下6階のL4であることを告げ、そこに入るためのアクセスキーを渡してイアンは離れます。
そのころ地下のラボにはルイスと遺伝子工学者ヘンリー・ウー博士がいました。ヘンリーは自分が開発したイナゴによって被害が出ていることを気に病んでいます。そんな彼にルイスは、これからラプトルのブルーの子どもと、クローン人間であるメイジー・ロックウッドが手に入ると伝えます。
クレアはかつての仲間で現在はCIAで働いているフランクリン・ウェブに相談し、マルタ島で恐竜の闇市があることを教えてもらいます。そこにはオーウェンと以前いっしょにラプトルを調教していたバリーも潜入しています。
そのマルタに到着したメイジーは身柄を謎の女性ソヨナ・サントスに引き渡されます。ソヨナは密売人とバイオシン社の間で暗躍する人物。その場面をベータを運んできた貨物パイロットのケイラが見ていました。金で動くケイラですが、メイジーの姿にはなにか引っかかるものを感じていました。
クレアとオーウェンもマルタに到着し、それぞれ闇市へと潜入します。そこでは様々な恐竜が売買されており、恐竜同士を戦わせる場所もあります。クレアはたまたま出会った英語を話すケイラに親近感をおぼえ、メイジーの写真を見せて探していると伝えますが、ケイラは立ち去ってしまいます。
オーウェンとバリーは、ソヨナと密売人が兵器として開発されたアトロキラプトルを複数体取引する現場をおさえます。捜査員たちが一斉に取り囲みますが檻を積んだトラックは走り出し、路上に仕掛けたトラップによって横転してしまいます。
闇市の中に逃げた密売人を追うオーウェンでしたが、犯人が恐竜の檻を開けたため大混乱に。何人もが食われ、犯人自身も犠牲となってしまいます。オーウェンたちはトラックから落下した檻の確保に向かいますが、少し離れたところからソヨナが檻を開けるスイッチを操作してアトロキラプトルを放出させ、対象として捜査員たちにレーザーをあてて攻撃開始の合図をしてしまいます。
捜査員が襲われバリーも絶体絶命の危機でしたがオーウェンに助けられます。ふたりは昔のように息を合わせて一頭檻に確保することに成功します。ソヨナがルイスに「あの子の“両親”が現れた」と電話で報告すると、彼の返事は「殺れ」でした。ソヨナはオーウェンへ二頭、クレアへ一頭を標的設定します。
クレアは建物から建物へ飛び移って逃げ回り、車の荷台に落ちてしまいます。それを見ていたケイラはすかさずその車に乗り込み発進させました。クレアを助けようとマルタの町中を猛スピードで走るケイラ。荷台のクレアは鉄パイプで応戦し、なんとか振り切ることができました。
一方オーウェンはバイクで走り回りますが、町の広場には闇市から出てきた大型のアロサウルスとカルノタウルスがいて通行人を襲っていました。クレアから、海岸から輸送機で飛び立つのですぐ来るように連絡があり、オーウェンは2頭のアトロキラプトルに追いつかれそうになりながらやってきました。そしてなんとか飛び乗ることに成功し、ラプトルはバイクとともに海へ落ちていきました。
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映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』感想と評価
(C)2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.
まずは、よくぞ29年もかけてこのシリーズを納得のいく終わり方にしたなぁというのが最初の感想です。
147分という若干長めの尺でもわかるように、この作品には多くの要素がギュウギュウに詰め込まれています。
恐竜たちの描き方
CGやアニマトロニクスを駆使した恐竜たちの生き生きとした姿にはもちろん目をみはるものがありますが、『ジュラック・ワールド』シリーズの人気者・ヴェロキラプトルのブルーとその子どもベータを必要以上に推しすぎない姿勢に好感が持てました。(もちろんしっかりおいしいところは持っていきます)
それよりもより多くの新しい恐竜たちを見せることに注力しているところは、“ジュラシック世代”と呼ばれる新たな恐竜の研究者が生まれるきっかけになったこの『ジュラシック』シリーズの使命を感じます。
中でも羽毛をもったものや赤い羽根をもったピロラプトルなどいままでのシリーズになかったファンタジックなビジュアルの恐竜は、ヨーロッパの山間部の景色とも相まって新たな魅力を添えています。
いままでになかった舞台
これまでシリーズではコスタリカ西方の島々とアメリカの一部しか出てきませんでしたが、今回はアメリカの中でも大西洋岸北西部、テキサス州西部、ユタ州、サンフランシスコなど雰囲気のちがう場所で撮影し、そこからマルタ島、そしてドロミーティ山脈とおよそ恐竜映画と結びかない景色の中で物語が展開していきます。
特にマルタ島はよく映画にも登場する美しい街並みですが、そこで大暴れする恐竜たちの姿は最終章にふさわしい驚きを与えてくれました。
また建物から車の荷台に落ちてきたり、ドロミーティ山脈の琥珀の採掘坑などスピルバーグ監督のインディ・ジョーンズシリーズを彷彿とさせるようなアドベンチャー気分も味わえます。そういえばアラン・グラント博士のこだわった帽子もインディ・ジョーンズぽかったです。
シリーズならではの見どころ
シリーズを通して成長していくキャラクターを見るのもこういったシリーズものの楽しみのひとつです。
『ワールド』シリーズで最も変貌したのはクレアでしょう。最初は鼻持ちならない金の亡者のようだった彼女も、ジュラシック・ワールドの崩壊を経験して恐竜を守る側の人間へと変わっていきました。オーウェンに対して素直になれないのは相変わらずでしたが、本作以降はきっとふたりの関係も変わっているでしょう。
前作では頼りなかったフランクリンやトガッていたジアが少し大人になったりして、そんな変化を見られるのもシリーズものならではの面白さです。
でも全6作のシリーズを通して作品に影響を与え続けた人物、それはヘンリー・ウー博士です。遺伝子を操作して恐竜を復活させ、雇い主に請われるままに次々とハイブリッド恐竜を生み出してきたマッド・サイエンティストとでもいうべき人物が、本作でこんなに罪悪感に苛まれるとはちょっと都合がよすぎる気もしますが、彼こそがこのシリーズのテーマを体現しているのでここは問わないことにします。
科学の誤った使い方への警鐘。それこそがこのシリーズのテーマだったので、ヘンリーの変化はそれを身を持って教えてくれるのです。
レガシーキャスト
本作には『ジュラシック・パーク』からアラン・グラント役のサム・ニール、エリー・サトラー役のローラ・ダーン、イアン・マルコム役のジェフ・ゴールドブラムが揃って出演しています。それもオブザーバー的な立ち位置ではなく、ガッツリメインキャラとして冒険する役というのはうれいい限りです。
出演についてはスピルバーグから直々に電話で相談を受けたとローラ・ダーンが語っているとおり、こういったレガシーキャストの登場はともすると浅薄な印象になってしまいがちですが、時間をかけて熟慮された脚本によってその不安は払拭されました。本作で3人が再び共演する、というニュースだけでもワクワクしたのに、本当に楽しんでいるような関係性がスクリーンから伝わってきてそれは感動的ですらありました。
壮大な伏線回収
バイオシン社のCEO、ルイス・ドジスンは『ジュラシック・パーク』に登場していました。あの作品でパークの警備システムをオフにしたデニス・ネドリーは、恐竜の胚を盗みライバル社であるバイオシン社に売ろうとしていたのですが、その相手がルイス・ドジスンだったのです。ルイスはデニスにシェービングクリームの缶を偽装した容器で胚を運ぶように渡していました。
それが本作ではルイス自身の手で持ち運ばれるシーンが出てくるのです。そしてその後ルイスはディロフォサウルスに襲われて殺されてしまうのですが、乗り物の中でディロフォサウルスに毒を吐かれて襲われるという死に方はデニス・ネドリーと全く同じです。29年越しの伏線回収に恐れ入りました。
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まとめ
(C)2022 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.
最初の2作以降はマイケル・クライトン原作の物話ではありませんが、『ジュラシック・ワールド』シリーズになってからの方がよりクローンや科学技術などクライトンの目指したテーマに沿った展開に戻ってきた感があります。
1作めの『ジュラシック・パーク』の食堂でのシーンで「恐竜と人類、6500万年前に隔てられた2つの種が、突然一緒になった。何が起こるか、どうやって予測できるか?」と言うアラン・グラント博士のセリフがありますが、まさにそれを具現化したのがこの『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』だったのです。
そして本作は映画の可能性についてもひとつの光を与えてくれました。約30年前のジュラシック・パークを観て映画業界を志した者、そしてシリーズを観て恐竜に興味を持ち学者になった“ジュラシック世代”の若者たち。1本の映画が、ひとつのシリーズ作品が人生に影響を及ぼし、それが次の世代へとつながっていく…。
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、そんなうねりを感じさせてくれるシリーズの完結編としてベストに近い作品です。