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Entry 2020/07/20
Update

大森立嗣らが映画『MOTHER マザー』の撮影舞台裏や制作過程を語る!オンラインシンポジウムイベントレポート

  • Writer :
  • 石井夏子

「“へその緒”を切った後、つまり最小のアイデンティティである“母と子”をずっと描きたかった」

実話をベースにし、既成の価値観では測れない親子のあり方を問いかける感動の衝撃作『MOTHER マザー』が全国公開中(2020年7月20日現在)です。

主演の長澤まさみがシングルマザーの秋子を演じ、社会の闇へ堕ちていく母親に挑戦。また、秋子と内縁の夫になるホスト・遼を阿部サダヲ、息子・周平役を新人・奥平大兼が演じています。

製作は、日本アカデミー賞(主要部門)三冠の『新聞記者』(2019)、『宮本から君へ』(2019)など話題作をおくりだし、現代社会の様々なテーマを世に問い続ける映画会社スターサンズ。

河村光庸プロデューサーが、実際に起きた「少年による祖父母殺害事件」に着想を得て、『日日是好日』の大森立嗣監督とタッグを組み、新たな物語として映画化、社会から孤立していく中で、築かれる母と息子の歪んだ絆が、ひとつの殺害事件を引き起こす物語を描きました。

この度行われたのは、2020年7月3日(金)に公開初日を迎えたあと、「誰かと語りたい!」気持ちになるという多数の声を受けて企画されたオンラインシンポジウムイベント

大森立嗣監督、河村光庸プロデューサー(スターサンズ)、佐藤順子プロデューサー(スターサンズ)、SYO(映画ライター/編集者)らをパネラーに迎え、このシンポジウムへ応募し、抽選で当選した約50名の参加者との“語り場”のレポートをお送りします。

映画『MOTHER マザー』オンラインシンポジウム概要

(C)2020「MOTHER」製作委員会

【開催日程】
2020年7月17日(金)20:00~21:00

【登壇者(敬称略)】
大森立監督、河村光庸 (スターサンズ代表・企画プロデューサー)、佐藤順子(スターサンズプロデューサー)、SYO(映画ライター・編集者)

映画『MOTHER マザー』オンラインシンポジウムレポート

現代的で新しいテーマを描く

まず、本作の企画の成り立ちについて聞かれた河村プロデューサーは「モチーフになった事件の新聞記事に2015年に出会ったことがきっかけ」と述べます。

過去スターサンズが手掛けた映画『かぞくのくに』(2012)では「最大のアイデンティティである“国家”と、最小限のアイデンティティ“家族”というものを描いたが、さらに身近で“へその緒”をきった後、つまりさらに最小のアイデンティティである“母と子”をずっと描きたかった」からだったと明かしました。

加えて、「これまでは母と子の愛憎を描く作品は多かったが、今回の作品『MOTHER マザー』は、それらとは全く異質なもの」「親族同士の殺人は古くはギリシア悲劇、シェイクスピア、そして聖書など定番のようにあった」が「母の誘導によって祖父母を殺害した、という物語は非常に現代的で新しいテーマだと思った」からだと話します。

実事件をフィクションに作り上げる難しさ

(C)2020「MOTHER」製作委員会

大森立嗣監督に本作をオファーした理由について佐藤プロデューサーは、「大森監督は、社会の真ん中から弾き出された人たちの姿を厳しくも誠実に捉える演出をされてらっしゃる方」という印象があったからだとし、その上で「『MOTHER マザー』は、甘い考えでは絶対にチャレンジできない作品だと思っていたので、大森監督の厳しくも優しい視点というのは絶対に必要だと思った」と答えました。

また、実事件をモチーフにフィクションを描く、という難しさに関しては「企画のスタートはあくまで新聞記事ですが、プロットを作るときに脚本の港さんに最初お願いしたのは、事件の起こった土地で、どんな生活があって、どんな人がいる環境で彼(周平)は育ったのかについて取材していただいた」といいます。

つまり、実事件にはインスパイアされてはいるものの、「あくまでも“物語”は、こちらの想像の中で埋めていく作業。この母と息子の関係を映画が断罪してしまうということを避けたかった」と語りました。

大森監督の作家性

(C)2020「MOTHER」製作委員会

実事件と作品との距離の取り方問われた大森監督も、「原作ものの映画を撮るときと同じ感覚なんですが“映画は映画だ”と。あんまり引っ張られちゃうといろいろ間違っていきそうな気がする」「事件は事件で裁判の記録もあり、犯罪者の視点から見てしまいますが(それは)僕の映画では必要ないかなと。一人の人間として秋子(母親)という人間をどう見つめるか、というのを考えています。そして、社会からどこかはみ出てしまった人たちに対して、僕たと全く関係ない人たちじゃないんですよね。同じ社会で生活してきた人たちの中で生まれているわけで、人として、同じ地平で興味を持ちます。その人を見つめるという視点ですね」「今、がんじがらめになっている社会が少しでも良くなっていくヒントがあるんじゃないかと思っている」と想いを明かしました。

その大森監督の作家性について、SYOは、「社会というものが根底にあって、大森監督は、人は間違うものだ、ということをちゃんと描いてくださるところが好きです。人は間違うもので、それが真実であり、生物なんだよということを描かれていると思います」と語った。

長澤まさみのギャップが凄みに繋がる

(C)2020「MOTHER」製作委員会

続いて母・秋子を演じた長澤まさみさんの“ほかの女優とは違った強み”について大森監督は、「経験も豊富だし、もちろん実力もあるし、でも、すごく現場で悩むんですよね」と、そのギャップの面白さを打ち明けます。

そして「肉体がこぼれ落ちるというか。それは俳優にとってはすごく大事です」と、ただいるだけで存在感を感じさせる女優としての凄みを絶賛しました。

参加者からの質問

(C)2020「MOTHER」製作委員会

続いて行われたシンポジウム参加者からの質問では、「見終わって知人におすすめする時、どうやって伝えたらいい?」という問いかけに対して、自身の体験を交えながら「一生忘れられない映画だよ、って勧めてあげてください」と答える大森監督。

「カットされてしまったが印象的なシーン」「一番こだわったシーン」「秋子と周平が歩く“長い橋”に込められた意味」など、観賞後ならではの貴重なトークが展開

また、6歳の子どもと一緒に観てしまったという母親の参加者からは「いまもずっと映画のことを考えていて、これからの自分の子育てについて考えさせられるいい機会になった。」と感想が飛び出しました。

登壇者にとっては観客の感想を直接聞くことができ、観客も制作者を身近に感じられる、貴重な1時間となりました。

映画『MOTHER マザー』の作品情報

(C)2020「MOTHER」製作委員会

【日本公開】
2020年(日本映画)

【監督】
大森立嗣

【脚本】
大森立嗣、港岳彦

【音楽】
岩代太郎

【キャスト】
長澤まさみ、阿部サダヲ、奥平大兼、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、木野花

【作品概要】
母親・秋子を演じるのは、長澤まさみ。2020年で女優生活20周年をむかえる長澤が、役者として、一人の女性として、秋子というミステリアスな役柄に挑み、母親という存在の闇と奥深さを体当たりで表現しています。

17歳の周平役には、映画初出演にして初めてのオーディションで大抜擢された新人・奥平大兼。

そして、秋子と内縁の夫になるホスト・遼を阿部サダヲが演じているほか、物語を彩る個性豊かな登場人物を、夏帆、皆川猿時、仲野太賀、木野花らが演じています。

映画『MOTHER マザー』のあらすじ

(C)2020「MOTHER」製作委員会
 
男たちとゆきずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきた秋子。シングルマザーの彼女は、息子の周平に奇妙な執着を見せ、忠実であることを強制します。

そんな母からの歪んだ愛の形しか知らず、翻弄されながらも応えようとする周平。彼の小さな世界には、こんな母親しか頼るものはなかったんです。

やがて身内からも絶縁され、次第に社会から孤立していく中で、母と息子の間に生まれた“絆”。それは17歳に成長した周平をひとつの殺害事件へ向かわせ…。

何が周平を追い込んだのか?彼が罪を犯してまで守ろうとしたものとは?

まとめ

(C)2020「MOTHER」製作委員会

2020年7月3日(金)に公開初日を迎え、全国公開中の映画『MOTHER マザー』

本作について語り合うオンラインシンポジウムイベントが、7月17日(金)に開催されました。

大森立嗣監督、河村光庸プロデューサー(スターサンズ)、佐藤順子プロデューサー(スターサンズ)、SYO(映画ライター/編集者)ら登壇し、このシンポジウムに当選した約50名の参加者と、映画の裏話や感想などを直接伝える貴重な時間となりました。

誰かと語りたくなる映画『MOTHER マザー』を、ぜひスクリーンでご鑑賞ください。


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