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【中国映画祭電影2019】柳島克己トークイベントリポート。『駐在巡査 宝音(ボヤン)』の撮影秘話を語る

  • Writer :
  • 石井夏子

百花繚乱の魅力を放つ最新中国映画、厳選6本を一挙上映する中国映画祭「電影2019」が2019年3月6日(水)に開幕。

そして3月7日(木)には、ヤン・ジン監督の映画『駐在巡査 宝音(ボヤン)』がジャパン・プレミア上映されました。

内モンゴルの人民警察官を描いた本作の撮影監督は、北野武監督作品などで知られる柳島克己。

上映後に行われた、柳島氏による質疑応答イベントの様子をお伝えします。

柳島克己トークイベント

中国映画に初参加した経緯

本作ではじめて中国映画に参加することになった経緯を問われた柳島氏。

「元オフィス北野の市山(尚三)さんの紹介でした。元々はヤン・ジン監督が日本で撮影するというお話があったものの、いろいろな事情で延びてしまって、そのうち内モンゴルで撮影するということに。何人かの撮影スタッフを連れて行こうと思ったのですが、2ヶ月ほど待ってもなかなか撮影日程が決まらず、一度スタッフをバラしたのです。それでも監督がどうしても来てほしいというので向かったのがクランクイン3日前でした。監督にも現地で初めて会いました」

何度もとん挫しながらも実現したのが撮影開始3日前、と驚きの舞台裏を披露しました。

ロケハンも行かず、数カ所以外は、初めて行く場所での撮影だったという本作。

2ヶ月前に脚本をもらっていたのですが、現地に行ったら内容が随分変わっていて…。日本語に翻訳されたものもない中での撮影でした」と続けました。

内モンゴルについての感想

撮影場所となった内モンゴルについては「モンゴルの南にある中国の自治区。だいたい日本の3倍くらいの広さで、その西の方、モンゴルとの国境地帯の800人くらいの町をベースに撮影しました。僕が行ったのは9月23日。向こうは10月でも雪が降ったり、天気がよければ溶けてしまったりするのでつながりが大変でした」と明かしました。

さらに柳島氏はこう続けます。

「ひょっとしたら寝泊まりはテントかもしれないと少し期待もしてましたが、ちゃんとしたホテルでした(笑)。ただ撮影場所までそこから3時間、往復6時間かかる。はじめは珍しくて楽しかったですが、それが毎日続くとだんだんしんどくなってきました。それと現場にはいつも山羊とラクダと馬がいて、とても風が強く乾燥しているので、乾燥した動物のフンが風に乗って転がってくるんです。ホテルで顔を洗うと耳の中までグリーンになってるような気がして(笑)」

話を聞くだけでは微笑ましいエピソードですが、実際に体験したら笑いごとではいられませんね。

今後の作品づくり

また、これからの作品づくりについてはこう語りました。

「この作品は1年4ヶ月前くらいに撮ったんですが、実はヤン・ジン監督から去年もオファーがあって、今度はパキスタンで撮ると。僕らは“日本映画”というくくり方をするところがあるのですが、例えば東南アジアの国々も一国だけでは撮れないので、いろいろな国で撮ったり合作や一緒に出資することが多い。去年、日中映画共同製作協定が結ばれて、これからは中国と一緒に物語をつくっていくということが増えていくのではないかと思います。日本のスタイルを通そうとすると問題もあるでしょうが、全部受け入れるのでもなく、その辺のさじ加減をコントロールしていけば全然問題はないのではないでしょうか」

実体験を踏まえて持論を述べる柳島氏の眼差しは、国を越えた広い世界を見据えていました。

なお、中国映画祭「電影2019」は東京では3月7日で終了、3月9日と3月10日は会場を大阪の梅田ブルク7に移して行われます。

柳島克己プロフィール

写真学校を卒業後、1972年に三船プロダクションに契約社員として入社。

1982年からフリーの助手となり、1987年に初めて映画の撮影を担当します。

『3-4×10月』(1990)『あの頃、いちばん静かな海。』(1990)『ソナチネ』(1993)ほか、北野武監督作品を16本担当

その他に深作欣二監督『バトル・ロワイアル』(2000)、行定勲監督『GO』(2001)、滝田洋二郎監督『阿修羅城の瞳』(2005)、西川美和監督『ディア・ドクター』(2009)、『夢見るふたり』(2012)、西谷弘監督『真夏の方程式』(2013)、森義隆監督『聖の青春』(2016)などがあります。

映画『駐在巡査 宝音(ボヤン)』の作品情報

【原題】
片警宝音

【監督】
ヤン・ジン(杨瑾)

【撮影監督】
柳島克己

【キャスト】
ボヤンネメフ(宝音尼木胡)、バダマー(巴徳瑪)

【作品概要】
殺伐としたモンゴルの砂漠の風景を壮大に撮りあげたのは、北野武監督作品などで撮影を務める柳島克己です。

中国では2018年12月19日に公開。

映画『駐在巡査 宝音(ボヤン)』のあらすじ


©Haining Blue Hometown Production Co., Ltd

ウラド放牧民族の宝音(ボヤン)は人民警察として、1672㎡にも及ぶ広範囲の地域をバイクに乗って見回っています。

仕事といえば放牧民たちの間のいざこざを解決したり、鉱石工場で働く人たちの登録など穏やかな案件ばかり。

そんな宝音の日常は静かに流れますが、外地から来た女性が殺されるという事件をきっかけに、平穏な日々が少しずつ変化していき…。

まとめ

ヤン・ジン監督の映画『駐在巡査 宝音(ボヤン)』にて、撮影監督を務めた柳島克己

3月7日(木)のジャパン・プレミア上映後に、柳島氏への質疑応答イベントが開催されました。

中国映画に初めて参加した柳島氏は、撮影までの経緯や、内モンゴルでの撮影エピソードを語って下さいました。

柳島氏の、これからの作品作りにも目が離せません。

中国映画祭「電影2019」は東京では2019年3月7日で終了、3月9日と3月10日は会場を大阪の梅田ブルク7に移して行われます。

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