映画『哀愁しんでれら』は2021年2月5日(金)より全国ロードショー。
「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画をもとに、『かしこい狗は、吠えずに笑う』の渡部亮平監督がオリジナル脚本で映画化した『哀愁しんでれら』。
土屋太鳳が、狂気に蝕まれていく主人公の小春を、彼女の夫となる開業医役を田中圭、彼の娘役は本作がスクリーンデビューとなるインスタグラマーのCOCOが演じます。
本作『哀愁しんでれら』を原案に、作家の秋吉理香子が『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』(双葉社)として新たな物語を紡ぎました。
本記事では、映画のノベライズとは一味違う仕上がりとなっているコラボレーション・ブック『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』について、あらすじをラストまでネタバレ込みでご紹介します。
CONTENTS
小説『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』の主な登場人物
・福浦咲良(ふくうら さくら)
市役所の児童福祉課で働く26歳の女性。独身。
映画版の福浦⼩春(土屋太鳳)に当たるキャラクターです。
・泉澤孝太(いずみさわ こうた)
41歳の開業医。半年前に交通事故で妻を亡くしました。
映画版の泉澤大悟(田中圭)に当たるキャラクターです。
・泉澤カオリ(いずみさわ カオリ)
孝太の娘で、8歳の小学2年生。
映画版のヒカリ(COCO)に当たるキャラクターです。
小説『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』のあらすじとネタバレ
市役所の児童福祉課で働く咲良には、母親がいません。彼女が幼い頃に出て行ったきり。
酒屋を営む父、祖父、高校生の妹と、4人で暮らしてきた咲良でしたが、ある夜を境に、不幸のどん底に落ちてしまいます。
祖父が脳梗塞により風呂場で転倒。父が車を運転し、祖父を病院へと運ぼうとしたものの、自転車を避けようとして塀にぶつかってしまいます。しかも飲酒運転だったんです。
咲良が父をかばって、自分が運転していたことにしようとしますが、父は自白し、警察に連行されます。警察の無線からは、実家であり父の経営する「福浦酒店」が火災との情報が。家を出る際に、咲良がストーブを倒してしまい、それが出火の原因となっていたんです。
警察署から出てきた咲良は、酔っ払って道路に倒れていた男性を介抱します。
彼の名前は泉澤孝太。病院の院長を務めながら、一人娘のカオリを育てています。妻は半年前に、浮気相手といたところを、交通事故に遭って亡くなりました。
翌日、孝太は、咲良に助けてくれたお礼の電話をかけ、ふたりで会う約束をします。
そこへ、カオリの小学校から電話が。カオリがドッジボールで遊んでいた時、目の近くにボールが当たってしまったそうです。
孝太は慌てて学校へ向かい、先生の対応や、ボールをぶつけた男子児童・渉のことを責め立てます。
カオリは内心、そんな父のことを恥ずかしく思っていました。カオリは、渉のことが気になっていましたが、引っ込み思案のため、うまく話すことができません。
なかなかクラスに馴染めないカオリを引っ張るのが、世話焼きの来美。渉とも仲が良く、何かというと「母親がいないカオリ」を同情するような発言をする来美を、カオリは疎ましく感じていました。
渉と仲良くしたくて、慣れないドッジボールに混ざったカオリ。渉の投げたボールが顔に当たったんです。
大したことがない怪我でしたが、渉を悪者にして騒ぎ立てる孝太を見て、カオリは亡くなった母への思いを募らせます。
一方、咲良は、父の飲酒運転を庇おうとしたことがネットに晒され、市役所では働けなくなってしまいました。恋人の家へ向かうと、別の女性と浮気している真っ最中。
さらには、酒屋の店舗を失ったため、父も無職に。妹の学費や、祖父の入院費のことを考えると、心配事は山積みでした。
あくる日、咲良は孝太と会います。お礼として、お姫様のようなワンピースと靴を買ってもらう咲良。
その後ふたりは、自分たちの身の上を語り合います。孝太はカオリのお迎えのついでにと、咲良を車に乗せました。
はじめは咲良を無視していたものの、徐々に打ち解けて、母親に接するかのように甘え出すカオリ。そんな娘の様子を見て、孝太は咲良との結婚を意識し始めます。
孝太は、咲良の祖父を医療の手厚い病院に移し、父の仕事も斡旋、妹の家庭教師も引き受けてくれました。咲良はそんな彼に、ますます惹かれていきます。
カオリの後押しもあり、咲良と孝太は結婚。三人は幸せな家庭を築きました…。
小説『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』の感想と評価
登場人物の歪んだ心情にぐいぐいと迫っていく本著。咲良、孝太、カオリのそれぞれの視点からストーリーが展開していくため、かれらの多面性が鮮やかに切り取られます。
王子のように爽やかに登場した孝太がモラハラ男だったり、悪魔のように見えたカオリの言動が寂しさの裏返しだったり。
そして、咲良は、シンデレラのように清廉潔白な悲劇のヒロイン…と思わせておいて、実は「幸せ」に固執している自己中心的な人物として描かれているのも興味深かったです。
父をかばうという形をとりながらも飲酒運転を隠蔽しようと企て、また、孝太が大事にしている人形を壊してしまった時には、目撃者であるカオリを口止めするといった小狡さがあります。
この咲良のアンバランスさは、母親に捨てられたことがきっかけとなっているんでしょう。「いい子でいなければ必要とされない」という思いから、「いい子」でいるために自分の悪を嘘で塗りつぶしていきます。
そんな咲良がやっと手に入れた「幸せ」とは、家族3人だけが笑顔でいられる道を探すことでした。
カオリを守るために、邪魔者を排除する咲良。彼女の隠蔽体質は改められることはなく、孝太の財力と立場という強大な力を手に入れたがために、凶悪事件を涼しげにやってのけるモンスターに成長していきました。
映画『哀愁しんでれら』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【監督・脚本】
渡部亮平
【キャスト】
土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、ティーチャ、安藤輪子、金澤美穂、中村靖日、正名僕蔵、銀粉蝶、石橋凌
【作品概要】
「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画をもとに、『かしこい狗は、吠えずに笑う』(2012)の渡部亮平監督がオリジナル脚本で映画化。
主人公の小春を演じるのは、数々の青春映画のヒロインを演じてきた土屋太鳳。
彼女の夫となる大悟に扮するのは、「おっさんずラブ」で大ブレイク以降、最も忙しい俳優として走り続けている田中圭。
娘のヒカリ役でスクリーンデビューを飾るのは、8歳で63万人以上のフォロワーをもち、国内外から注目を集めるファッションインスタグラマーのCOCO。
小春の妹を山田杏奈が、父を石橋凌が演じ、大悟の母に銀粉蝶が扮しています。
映画『哀愁しんでれら』のあらすじ
児童相談所で働く⼩春は、⾃転⾞屋を営む実家で⽗と妹と祖⽗と4⼈暮らし。母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎⽇を送っていました。
しかしある夜、怒涛の不幸に襲われ⼀晩ですべてを失ってしまいます。そんな彼女に手を差し伸べたのが、8歳の娘・ヒカリを男⼿ひとつで育てる開業医の⼤悟。
優しく、裕福な⼤悟は、まさに王⼦様。「ただ幸せになりたい」と願う小春は、出会って間もない彼のプロポーズを受け⼊れ、不幸のどん底から⼀気に幸せの頂点へ駆け上がりました。
シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし”。
しかし小春の物語はそこでは終わりませんでした…。
まとめ
映画『哀愁しんでれら』を鑑賞した秋吉理香子が、別のヒロインの物語として描いた本著『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』。
ノベライズではなく、コラボレーション・ブックということですので、どこまで映画と本著が異なるのか、興味が湧いてきますね。
『哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ』はメリーバッドエンドでしたが、映画のラストはどのような締め括り方をするんでしょうか。
また、土屋太鳳、田中圭、COCOといったキャストたちが、登場人物の複雑な心情の変化をどう演じてみせるのか、期待が高まります。
特に、子役にも踏み込んだ演技が要求される作品になるのは確かですから、娘役のCOCOに注目したいですね。
映画『哀愁しんでれら』は2021年2月5日(金)より全国ロードショーです。