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【ネタバレ】ユリ子のアロマ|あらすじ結末感想と評価解説。江口のりこ×染谷将太が匂いを通じて“極上エロス”を醸し出す

  • Writer :
  • 谷川裕美子

匂いフェチの女性と男子高校生との純愛物語!

デビュー作『お姉ちゃん、弟といく』(2006)で、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008のオフシアター部門で審査員特別賞受賞した吉田浩太監督が手がけた『ユリ子のアロマ』。

男子高校生の汗の匂いに惹かれてしまうヒロイン・ユリ子の姿を、エロティックに映し出します。

『お姉ちゃん、弟といく』で主演を務めた江口のりこと、『ヒミズ』(2012)の染谷将太が共演。

演技派の江口のりこと染谷将太が体当たりで官能シーンに挑んだ本作。画面から目が離せなくなる秀作の魅力についてご紹介します。

映画『ユリ子のアロマ』の作品情報


(C)シェイカー/エースデュース/ゼアリズエンタープライズ/マコトヤ/ワコー

【公開】
2010年(日本映画)

【監督・脚本】
吉田浩太

【編集】
青木勝紀

【キャスト】
江口のりこ、染谷将太、原紗央莉、木嶋のりこ(現・小原徳子)、笠井しげ、外間勝、鈴木ゆか、金子ゆい、美保純

【作品概要】
デビュー作『お姉ちゃん、弟といく』(2006)がゆうばり国際ファンタスティック映画祭2008・オフシアター部門で審査員特別賞受賞した吉田浩太監督が、若年性脳梗塞で倒れた後に撮りあげた復帰第1作。

サロンオーナーの甥の汗の匂いに惹かれてやまないアロマセラピスト・ユリ子の姿を切なく描きます。

主演は『お姉ちゃん、弟といく』で主演を務めた『月とチェリー』(2004)『“それ”がいる森』(2022)の江口のりこ。オーナーの甥・徹也を『ヒミズ』(2012)の染谷将太が演じます。

映画『ユリ子のアロマ』のあらすじとネタバレ


(C)シェイカー/エースデュース/ゼアリズエンタープライズ/マコトヤ/ワコー

匂いフェチのアロマセラピストのユリ子は、サロンオーナーのみずえや顧客から信頼されていました。指名客のアヤメからはアロマセラピーのレッスンをしてほしいと頼まれます。

みずえの甥の高校生・徹也は剣道部員で、同級生のみほに憧れていました。ある日、サロンを訪れた徹也のすえた汗の匂いに、ユリ子はどうしようもなく惹かれてしまいます。

徹也がおばにマッサージをしてもらっている間に、思わず彼の荷物から剣道の小手を取り出して匂いを嗅ぐユリ子。しかし、思いがけず徹也らが早く戻ってきたため返しそびれてしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『ユリ子のアロマ』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『ユリ子のアロマ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

剣道部の同級生のいちとみほが付き合うようになり落ち込む徹也。肩を落として歩く彼の後を、ユリ子はこっそりつけました。

たどり着いたのは廃工場でした。そこで寝入ってしまった徹也のそばに寄ってユリ子は匂いを思い切り嗅ぎ、こらえきれず頭をなめます。驚いて目を覚ました徹也に、ユリ子は必死で謝って逃げ出しました。

その後、サロンを訪れた徹也は、ユリ子に続きをやってほしいと頼みました。てっきりユリ子に相手をしてもらえると勘違いして抱き着いてしまう徹也。倒れてしまった彼女に向かい、悶々する思いを吐露して謝ります。

ユリ子は「匂いを嗅ぎたかっただけ」と言って彼の体中を嗅ぎ始め、徹也はたまらず悶え始めました。

その後も、ふたりは会うようになり、ある日、手をつないで歩いているところを、いちとみほに見られてしまいました。

ユリ子の自宅で散髪してもらった徹也は彼女にたまらず抱き着きますが、ユリ子から拒まれます。

一方、いちと別れたみほは徹也に急接近します。ユリ子は徹也から漂う違う匂いに気づき、険悪な雰囲気になりました。徹也は自分の小手が部屋にあるのに気づき、気持ち悪いと言って部屋を飛び出してしまいます。

アヤメにアロマを教えた後、彼女にマッサージしてもらえたユリ子は、あまりの気持ちよさに寝入ってしまいました。ユリ子の名前を呼びながら、アヤメは切なげに裸の自分の体を慰め始めました。

いちからユリ子のことを聞かれた徹也は、彼女の自宅を教えてしまいます。いちはユリ子が体の相手をしてくれると勘違いしていました。ユリ子はいちを連れて工場近くに行き、徹也が隠れて見ているのを知って目の前でいちの体を触り始めます。

いちから徹也に彼女ができたと聞いたユリ子は学校へ行き、何も言おうとしない徹也に「情けない」と言って立ち去りました。

ユリ子から侮辱されたみほは、腹いせに徹也との関係を書いた怪文書を学校中にばらまきました。ユリ子はその文をみずえに見せて徹也とのことを告白し、店から追い出されます。

みほをめぐり、殴り合いのけんかになる徹也といち。痣だらけのまま家を訪ねてきた徹也に、ユリ子は「誰だっておかしいところはあるじゃない」と言って家中のものを投げつけました。

その後、ユリ子は彼にやさしくキスをして服を脱がせ始め、彼も応えます。

しばらく後。徹也は明るい笑顔で部屋を出ていき、ユリ子も笑顔で見送りました。

映画『ユリ子のアロマ』の感想と評価


(C)シェイカー/エースデュース/ゼアリズエンタープライズ/マコトヤ/ワコー

匂いへの執着と性欲の境目

性欲や本能に振り回される悲しみを丁寧に映し出したラブストーリーです。異常なまでの匂いフェチの主人公・ユリ子は、高校生の剣道部員・徹也の汗の匂いにどうしようもなく魅せられていきます。

高校生という若さに加え、お世話になっているオーナーの甥である徹也への欲望は理性で抑えるべきものですが、ユリ子はどうしても抗うことができませんでした。その果てに、徹也の後をつけるという愚行に出ます。

徹也もまた、獰猛ともいえる激しい性欲に振り回され、ユリ子にすがりつきます。

ユリ子の匂いへの欲望というのは一見異常に見えますが、徹也の抑えようのない性欲とまったく同じ種類のもので、どちらも意志や理性で簡単にコントロールできるものではありません

しかし、徹也の願いとは裏腹に、ユリ子の欲望は匂いへの執着だけで完結しており、体の関係を求めることとはまったく別モノでした。噛み合いそうで噛み合わないふたりの欲望は、絡まり合った末に空中分解してしまいます。

自分の剣道の小手がユリ子の部屋にあるのを見て、「気持ち悪い」と言い捨てて部屋を出ていく徹也。彼の背中を見送るユリ子の絶望感と悲しみ。「誰だっておかしいところはあるじゃない」という悲痛な叫びに胸が締め付けられます。

しかし、同級生らとの経験を経て、徹也はユリ子が心底から自分だけを求めていることに気づきます。ふたりはとうとう結ばれますが、互いの真の姿を受け入れたからこそたどり着けたといえるでしょう。

互いへの理解と信頼が光るラストのふたりの笑顔は、明るい未来を感じさせます。

それぞれの官能を表現する俳優たち


(C)シェイカー/エースデュース/ゼアリズエンタープライズ/マコトヤ/ワコー

作品全体から官能を感じさせる『ユリ子のアロマ』一見無機的なほどにクールな江口のりこが、強烈なエロスを醸し出しています

徹也の匂いに陶然とする表情には思わず目を奪われることでしょう。上気してほんのり色づく頬の色や、とろんとした瞳など、「表情で魅せるエロス」という難しい演技を見事に成功させています。

若い染谷将太のはちきれんばかりの青さと色気もまた素晴らしく、獰猛な性欲に振り回される青年期の苦しみ悲しみを赤裸々に表現しています。

自分から仕掛けながらも、若者の放つあまりの強いパワーに押されて思わず飛びのいてしまうユリ子。江口と染谷だからこそ醸し出せた心がすれ違い続ける官能シーンが、この作品の最大の魅力となっています。

また、サロンオーナーを演じる美保純や、エロティックなシーンを体当たりで演じたアヤメ役の原紗央莉の存在も、本作の官能性を際立たせます。

はちきれんばかりの若さの中に小悪魔的魅力をたたえ、ふたりの同級生男子を手玉にとるみほを演じる木嶋のりこ(現・小原徳子)の姿も必見です。

まとめ

江口のりこと染谷将太という実力派が、奥深いエロスを演じ切った秀作『ユリ子のアロマ』妙齢の女性と男子高校生という禁断の関係を、「匂い」という独特の切り口で映し出します

人は誰しもそれぞれ好みがありますが、その好みが突出していると後ろ指をさされるようになってしまうという現実を、丁寧に掬い取った作品です。

互いのすべてを精一杯抱きしめ、愛することでユリ子と徹也は結ばれました。この先も困難だらけであろうふたりですが、最後に見せた笑顔から今この瞬間にある美しい時間の貴さを教えられます。





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