Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/07/26
Update

映画『お姉ちゃん、弟といく』あらすじ感想と評価解説。江口のり子主演で描く“個性派女優”に相応しい青春ドラマ|インディーズ映画発見伝14

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第14回

日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」

コラム第14回目では、吉田浩太監督の映画『お姉ちゃん、弟といく』をご紹介いたします。

ユニークなキャラクターで引っ張りだこの江口のりこが主演を務め、青春エロティック映画に定評のある吉田浩太監督のデビュー作。

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『お姉ちゃん、弟といく』の作品情報


(C)シャイカー

【公開】
2006年(日本映画)

【監督、脚本】
吉田浩太

【キャスト】
江口のりこ、中村邦晃、菜葉菜、森本73子(声の出演) 

【作品概要】
『愛の病』(2018)、『好きでもないくせに』(2016)、『スキマスキ』(2015)など青春エロティック映画に定評のある吉田浩太監督のデビュー作『お姉ちゃん、弟といく』。本作は2008年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞受賞、2006年C02フィルム・エキシビジョン主演女優賞受賞しました。また、2006年ドイツ・ニッポンコネクション日本映画3位にも選出されました。

主演を務めた江口のりこは映画『金融破滅ニッポン 桃源郷の人々』(2002)でデビューし、『月とチェリー』(2004)で初主演を務めました。独特の存在感で様々なドラマ・映画に出演。吉田浩太監督とはデビュー作の『お姉ちゃん、弟といく』ほか、『ユリ子のアロマ』(2010)にも出演しました。

弟役には『夜が終わる場所』(2012)の中村邦晃、同居人の沙希役には『モルエラニの霧の中』(2021)の菜葉菜が出演。

映画『お姉ちゃん、弟といく』のあらすじ


(c)シャイカー

森下なお(江口のりこ)は、女友達の梅野沙希(菜葉菜)とアパートをシェアして暮らしています。

なおの25歳の誕生日、母親から電話があり、弟・康太郎(中村邦晃)が訪ねてきていないかと聞かれます。来ていないと答えたなおでしたが、その後康太郎が訪ねてきます。

康太郎が泊まることになり、寝静まった夜、なおは康太郎がなおのパンツに顔をあて匂いを嗅いでいるところを目撃します。なおはその様子を見て自身も欲情するのでした。

次の日、3人で出かけることになり、なおはスカートを履き康太郎に見せつけます。ボーリング場でなおはこっそりパンツを脱ぎ、康太郎のカバンに入れます。そして何食わぬ顔でボーリングを続けます。揺れるスカートはいつ見えてもおかしくなく、弟を誘う姉と弟の欲望の向かう先は…

スポンサーリンク

映画『お姉ちゃん、弟といく』感想と評価


(C)シャイカー

姉弟の近親相姦、同性愛など様々な題材を取り上げ、主演の江口のりこさんの独特の色気や画面から匂い立つ性と欲望が印象的な映画『お姉ちゃん、弟といく』。

吉田浩太監督のデビュー作でもある本作は、妄想と欲望、危険な関係をすれすれのところでとどめて直接的な描写をしません。また、音楽やカメラワークでコミカルさを演出しています。危険な関係に対するハラハラチとコミカルな選出が映画全体に緩急をつけ、観客が楽しめる見やすい映画となっています。

深夜、パンツに顔をうずめ匂いを嗅ぐ康太郎の姿、パンツを脱ぎボウリングをして弟を誘うなお。世間的に彼らの行動は“変態”と捉えられ、不快に感じる人もいるでしょう。しかしその変態性をあえて描いているのです。

監督2作目となった『ユリ子のアロマ』(2010)でも、17歳の男子高校生徹也(染谷将太)の汗の匂いに惹かれてしまうアロマセラピストのユリ子を江口のりこが演じています。誰にも理解されない“変態性”を描き、肯定する姿勢は『お姉ちゃん、弟といく』に通ずるものがあるように感じます。


(c)シャイカー マコトヤ ワコー

しかし、その“変態性”は劇中においても理解されることはなく、『お姉ちゃん、弟といく』でも「変態!」と叫ぶ場面が描かれています。自身の変態性を理解しながらもおさえることの出来ない、自分でもどうすればわからないどうしようもなさも印象的です。

まとめ


吉田浩太監督(C)Cinema Discoveries

江口のりこ主演の青春異色ドラマ『お姉ちゃん、弟といく』。

本作で監督デビューした吉田浩太監督は、『お姉ちゃん、弟といく』以降、様々なフェティシズムや性の有り様を題材に映画を撮っています。人々に理解されない変態性を扱い、人間のどうしようもなさも肯定する姿勢は観客にとっても見やすい映画になっています。

また、デビューしてまもない江口のりこさんの画面から匂い立つような欲望と艶かしさが印象的であり、江口のりこさんの演技も必見です。

吉田浩太Twitter

次回のインディーズ映画発見伝は…


(C)zampanotheater

次回の「インディーズ映画発見伝」第15回は、うえだ城下町映画祭 第18回 自主制作映画コンテスト ノミネート作品から渡邉高章監督の『別れるということ』を紹介します。

次回もお楽しみに!

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら




関連記事

連載コラム

映画『仮面ライダーゼロワン』ネタバレ感想評価レビュー。最終回後のストーリーを描く決定版|邦画特撮大全79

連載コラム「邦画特撮大全」第79章 今回の邦画特撮大全は劇場版『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』を紹介します。 2020年12月18日より公開された『仮面ライダーゼロワン REAL×TIME …

連載コラム

映画『トータルリコール(1990)』ネタバレあらすじと感想。続編もあるポールバーホーベンの謎を残した演出|すべての映画はアクションから始まる18

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第18回 日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はア …

連載コラム

『Cosmetic DNA』“映倫先輩”に会いにいく【自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦1】

連載コラム『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』 第1回「『Cosmetic DNA』“映倫先輩”に会いにいく」 ほとんどの方、初めまして。一部の方、いつもお世話になっております。長編インディ …

連載コラム

『写真の女』あらすじ感想と評価レビュー。日本の前衛映画的な作風で描いた串田壮史監督の独自性|OAFF大阪アジアン映画祭2020見聞録10

第15回大阪アジアン映画祭上映作品『写真の女』 2020年3月15日(日)、第15回大阪アジアン映画祭が10日間の会期を終え、閉幕しました。グランプリに輝いたタイの『ハッピー・オールド・イヤー』をはじ …

連載コラム

映画『スパロークリーク』あらすじネタバレと感想。元ネタがレザボアドックスだけにB級ファンなら見逃すな!|未体験ゾーンの映画たち2020見破録4

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第4回 映画ファンにとって新年初の大イベント、劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」が、今年も1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷 …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学