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Entry 2021/06/28
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映画『猫、かえる Cat’s Home』あらすじ感想と評価解説。モトーラ世理奈の主演で描く“猫”がつなぐ男女の思い出|インディーズ映画発見伝12

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第12回

日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」

コラム第12回目では、今尾偲監督の映画『猫、かえる Cat’s Home』をご紹介いたします。

『風の電話』(2020)、『ブラック校則』(2019)のモトーラ世理奈主演、猫がつなぐ男女の思い出を描く映画。

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映画『猫、かえる Cat’s Home』の作品情報


(c)SHINOBU IMAO

【公開】
2020年(日本映画)

【監督、脚本、製作】
今尾偲

【キャスト】
モトーラ世理奈、品田誠、木下愛華、小野孝弘

【作品概要】
今尾偲監督は2000年、フリーランスのディレクターとして独立し、番組、PV、企業PR、映画予告篇、ショートフィルムなどのディレクターなど多岐に渡って活動しています。

主演を務めるのは、『少女邂逅』(2018)で映画デビューし、『ブラック校則』(2019)、『おいしい家族』(2019)、『風の電話』(2020)など出演作が続くモトーラ世理奈。共演者には『眉村ちあきのすべて(仮)』(2020)、『飢えたライオン』(2018)などに出演し、監督としても活動する品田誠。『猫は抱くもの』(2018)の木下愛華、『子どもたちをよろしく』(2020)の小野孝弘など。

映画『猫、かえる Cat’s Home』のあらすじ


(c)SHINOBU IMAO

リナ(モトーラ世理奈)は別れた恋人・浩(品田誠)のアパートへと向かいます。

別れる際に、2人が飼っていた猫のイブは浩が引き取ることにしていましたが、突然浩が猫アレルギーになってしまい、リナが引き取ることになりました。

しかし、目を離した隙にイブが外に逃げ出してしまい、2人は探しに出ますが……。

映画『猫、かえる Cat’s Home』感想と評価


(c)SHINOBU IMAO

鼻歌を歌うモトーラ世理奈の場面から始まる本作は、テレビ番組やCMの映像演出を手がけてきた今尾偲監督ならではの映像センスが印象的です。独特な存在感を示すモトーラ世理奈のアップを効果的に用いてリナの心情を演出しています。

リナは別れた恋人のアパートへ向かい、猫アレルギーになった浩に代わって猫のイブを預かることになりました。付き合っていた頃は一緒にイブを飼っていた浩が突然猫アレルギーになるはずはなく、猫アレルギーには理由がありました。

移り気で構ってやらないとすぐ拗ねる、そんな男でも好きだったというリナ。浩のアパートを訪ねるか迷っていたリナでしたが、自分の気持ちに整理をつけてきちんとお別れするためにやってきました。

イブを2人で飼うことにした日、イブと共に過ごした日々。イブがつなぐ2人の思い出を回想しながらイブを抱き抱え、帰るリナの姿は爽やかでエモーショナルな印象を与えます。

また、移り気でどこか情けないけれど優しい浩を演じた品田誠も魅力的で、嫌いになれないけれどきちんとお別れしようとするリナの心情に共感する人もいるでしょう。

爽やかで短い映画ですが、イブがつなぐ男女の思い出と、次に進む姿をエモーショナルに描いています。

まとめ


今尾偲監督(c)Cinema Discoveries

猫がつなぐ男女の思い出を描いた映画『猫、かえる Cat’s Home』。劇中に登場する猫が可愛いのはもちろんのこと、めきめきと存在感をあらわしている新鋭女優モトーラ世理奈を、アップなどを用いて様々な角度から印象的に映し出す演出が爽やかでエモーショナルな雰囲気を醸し出します。

説明しすぎることなくイブがつなぐ2人の思い出を、回想シーンを挟んで観客に伝える演出も爽やかであり、テレビ番組やCMの映像演出を手がけてきた今尾偲監督ならではの映像センスといえるでしょう。

別れ、思い出、そして過去との決別を爽やかに描く映画になっています。

次回のインディーズ映画発見伝は…

次回の「インディーズ映画発見伝」第13回は、同じ名前を持つ3組の男女が偶然同じカフェで待ち合わせたことから巻き起こる騒動を描く、ごとうたつや監督の『約束の時間』です。

次回もお楽しみに!

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