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Entry 2022/12/06
Update

ネタバレ『月の満ち欠け』あらすじ結末感想と考察評価。原作小説と映画化の違いとラブストーリーの奇跡を解く

  • Writer :
  • もりのちこ

もう一度あなたに逢いたい。
月が欠けてもまた満ちるように。

第157回直木賞を受賞し、これまで累計発行部数56万部を越えるベストセラー小説、佐藤正午の「月の満ち欠け」が映画化となりました。


愛する妻・梢と娘・瑠璃を同時に亡くし、悲しみに沈む小山内堅の元に、三角という男が訪ねてきます。

三角は、事故当日、瑠璃は自分に会いに来ようとしていたと告げます。そして、娘と同じ名を持ち、かつて自分が愛した「瑠璃」という女性について語ります。

「もう一度逢いたい」という強い想いが、何年もの時を経て起こした奇跡の物語『月の満ち欠け』を紹介します。

映画『月の満ち欠け』の作品情報


(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
佐藤正午

【監督】
廣木隆一

【キャスト】
大泉洋、有村架純、目黒蓮、伊藤沙莉、田中圭、柴咲コウ、菊池日菜子、小山紗愛、阿部久令亜、尾杉麻友、寛一郎、波岡一喜、安藤玉恵、丘みつ子

【作品概要】
佐藤正午の第157回直木賞受賞作品「月の満ち欠け」の実写映画化。監督は、『余命一ヶ月の花嫁』『ノイズ』の廣木隆一監督。

愛する者を亡くした苦しみを背負い続ける主人公・小山内堅を大泉洋が演じます。小山内の妻・梢役に柴咲コウ。

娘と同じ名前を持つ女性に有村架純、物語の重要人物・三角役に単独での映画初出演となる目黒連(Snow Man)が登場。その他にも、田中圭、伊藤沙里と豪華実力派キャストが集結となりました。

映画『月の満ち欠け』のあらすじとネタバレ


(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
2007年、青森県八戸市。小山内堅は、実家に戻り年老いた母と暮らしていました。愛する妻の梢と、娘の瑠璃を交通事故で同時に亡くしてから8年。

小山内は、瑠璃の高校時代の友達・緑坂ゆいとその娘に会うために東京へと向かいます。事故現場に花を手向けた小山内は、ホテルのラウンジで2人と対面します。

ゆいは、懐かしい写真をみせてくれました。瑠璃の18歳の誕生日会。自分と妻の梢、そして瑠璃が幸せそうに笑っています。

小山内は梢と瑠璃との思い出を辿ります。1980年、ジョン・レノンが銃殺されたその年、街はジョンの歌で溢れ、小山内は梢と結婚式を挙げました。

梢とは東京の大学時代に知り合い、同郷だったこともありすぐに打ち解けます。何でも気が合う梢に小山内は、この人しかいないとプロポーズ。

結婚して1年後、瑠璃が生まれました。梢は、夢の中で赤ちゃんから「自分の名前は瑠璃にして」とお願いされたと言います。

瑠璃も玻璃も照らせば光るの「瑠璃」。すぐれた素質や才能をもつものは、どこにいても目立つというたとえ。「すごいね。良い名前だね」。

3人で海までドライブをした日。一度消えてもまた現れる月を見て、瑠璃が不思議がっています。「大丈夫、月は無くなってもまた現れるのよ」梢が言い聞かせています。

瑠璃が7歳の時には、原因不明の高熱で1週間寝込んだことがありました。その後の瑠璃の変化に梢は気付いていたようです。

ある日、瑠璃が小学校の帰り道にいなくなったことがあります。高田馬場駅にあるレコードショップで保護された瑠璃は、「アキラ君に会いに行った」と言います。

小山内は、勝手にいなくなってはダメだと瑠璃を抱きしめます。瑠璃は小山内の愛情をしっかりと感じていました。「パパとママの子に産まれて幸せだよ」。

瑠璃は18歳の誕生日をむかえ、高校卒業を控えていました。そしてあの悲しい事故が起きます。梢と瑠璃が乗った車が事故に遭い、2人とも帰らぬ人となってしまったのです。

なぜその日2人は車で出かけたのか。どこに向かっていたのか。突然の愛する者の死。小山内は故郷の八戸に戻っても現実を受け止めきれずにいました。

事故から1年後。小山内のもとにある男が訪ねてきます。三角哲彦は、梢と瑠璃の仏壇に手を合わせると、涙ぐみながら話しだしました。

「事故に遭ったあの日、瑠璃さんは僕に会いにくる途中でした」。三角は娘と同じ名前を持ち、かつて自分が愛した女性「正木瑠璃」について語ります。

2000年、ジョンが銃弾に倒れた年。小山内と梢が結婚式を挙げた年。三角と瑠璃は出会います。三角のバイト先だった高田馬場にあるレコードショップの軒先でした。

雨宿りをしていた瑠璃に傘を貸したのが始まりでした。瑠璃に一目ぼれした三角は、彼女の姿を探すようになります。

偶然再会を果たす2人。名前を聞く三角に瑠璃は答えます。「瑠璃も玻璃も照らせば光るの瑠璃です」。

名前を知って1週間後。彼女の好きな映画館でふたたび会った2人は、一緒に朝を向かえます。瑠璃色の空を眺めながら、彼女はとても寂しそうに微笑み帰っていくのでした。

瑠璃の肩に傷があるのを不審に思った三角は、「もう会えない」と言う瑠璃を引き留めます。「夫からは逃げられない」と戸惑う瑠璃に「僕が連れ出す。明日駅であなたが来るまで待っています」と約束を交わします。

次の日、高田馬場駅で待つ三角に人身事故のアナウンスが流れてきます。嫌な予感に踏み切りに走り出す三角。事故に遭ったのは瑠璃でした。

三角は、小山内に向き直り真っ直ぐに告げます。「彼女は生まれ変わるために死んだのでは。娘の瑠璃さんは僕に会いにくるという電話で、瑠璃も玻璃も照らせば光るの瑠璃と名乗りました」。

小山内は怒りを覚えます。「なにも関係ないことだ」。娘が他の人だったなんて、冗談でも考えたくありませんでした。

以下、『月の満ち欠け』ネタバレ・結末の記載がございます。『月の満ち欠け』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
東京のホテルのラウンジで、小山内はゆいに頼まれていた絵を見せます。瑠璃が高校時代に描いた一枚の絵です。そこに描かれている人物は若かりし三角の姿でした。

ゆいは瑠璃から三角の存在を聞いていました。前世の恋人「アキラくん」にいつか会いに行くと決めていることも。「子は親を選んでやってくるといいます。私もこの子を見ていて実感したんです」。

ゆいの子供も「るり」という名です。亡き友の名前を付けたと思っていた小山内は、夢の中で「るり」と名付けてとお願いされた話を聞き、妻の梢の時を思いだします。

「俺は信じない」。頑なに信じようとしない小山内に、緑坂るりは声をかけます。「小山内さんもここのどら焼き好きだよね。家族でよく食べたよね」。

ゆいは、さらに話を進めます。「正木竜之介をご存じですね?正木は三角の話した瑠璃さんの夫でした」。正木は小山内の会社に赴任してきた人物で、面倒もみたことがあります。

正木は当時、自ら決めた人生設計に基づいて生きていました。親の期待を背負い社長になり、美しい妻をもらい、跡継ぎを産む予定でした。

しかし、瑠璃との間には子供ができませんでした。正木は、離婚するのも許さず、瑠璃を縛り付け、当たり散らすようになります。

瑠璃が家を出ると決めた日。三角の元へ向かう瑠璃を正木が追いかけます。瑠璃は電車が来ている踏切をくぐり抜けますが、落とした鞄を取りに戻ったところ、電車にひかれて亡くなりました。

正木は、瑠璃を亡くしてもなお、自分の非を認めず、自分の何がいけなかったのか、自分を捨ててまで選んだ男とはどんな人物なのか、瑠璃への執着を捨てきれず生きていました。

そんなある日、赴任先で会った小山内の娘が、妻の瑠璃が好きだった歌を口ずさんでいるのを目にします。しかも、同じ名前です。

瑠璃の生まれ変わりに違いないと察した正木は、小山内瑠璃に近寄ります。「あの男に会いに行くつもりなんだろ。俺も連れて行け」。

強引に連れ出そうとする正木から、体を張って助けてくれたのは親友のゆいでした。瑠璃は、母の梢に「アキラくんの所まで連れて行って」とお願いします。

梢はすべて知っていたようでした。2人が乗る車を正木が追いかけてきます。急ブレーキをかけ止まったところにトラックが突っ込んできました。

ゆいから正木のことを聞いた小山内は、自分を責めます。正木に娘を会わせなければ良かった。前世からの因縁だというのか。

いまさらどうしろというのだ。ゆいは動揺する小山内に、自分の娘「るり」に起きたことを話します。

るりも原因不明の高熱を出し寝込んだ後、急に記憶を取りもどしたかのように三角を探すようになりました。そして、今日、るりは三角に会いに行きます。

「この世の命は皆、誰かの生まれ変わり。失った大切な人といつかどこかで会える。と、梢さんは瑠璃に言っていたそうです」。

ゆいの話を聞いていた小山内は耐え切れない様子で口を開きます。「もうやめてくれ。瑠璃が他の人だったというなら、失ってから8年の苦しみは何だったんだ」。

立ち去ろうとする小山内に、るりが駆け寄ります。「パパごめんね。パパとママの子供に生まれて瑠璃は幸せだったよ」。ひとりでいなくなった瑠璃が発した言葉とまったく同じでした。

「パパ辛い思いをさせてごめんね」。ぎゅっと抱き着くるりに、小山内は瑠璃を感じていました。「いいんだ」。

三角の元へ向かうというるり。生まれ変わりは自分だけとは限らないと言い残しました。

るりは、三角との待ち合わせをしたあの駅へと走ります。走る姿が瑠璃へと変わっていきます。彼は気付いてくれるのでしょうか。

三角は間違うことなく瑠璃を待っていてくれました。抱き合う2人。出会った日を思わせる雨が2人を濡らします。

小山内は、帰りの新幹線で、ゆいから渡されたビデオレターを見ていました。瑠璃の18歳の誕生日会の様子が映し出されます。

梢との馴れ初めを聞かれた小山内は、照れながらも嬉しそうに話していました。あの時、仕事の電話が入り途中で抜けた小山内は、その後に梢が語った秘密を初めて知るのでした。

梢は高校生の時から小山内のことを知っていました。小山内のことが好きだった梢は、後を追いかけ東京の大学に入ったのです。

「パパには内緒。ママの方が先にパパを好きになったの。今でも変わらず好きよ」。梢の想いを知った小山内は、ひとり泣き崩れます。

八戸に戻ると、母の介護をしてくれている荒谷清美が迎えにきていました。清美の娘・みずきも一緒です。

みずきが小山内に、「どこに行ってきたの」と聞いてきました。「東京のホテルのカフェだよ」と答える小山内。

「あの、どらやきの美味しいところね」。みずきはニッコリ微笑み、シーッと内緒の仕草をしてみせました。その仕草は梢そのものでした。

映画『月の満ち欠け』の感想と評価


(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
佐藤正午の直木賞受賞作「月の満ち欠け」の映画化。「もう一度逢いたい」という気持ちが時空を超え巻き起こす奇跡の物語。

この世の命は皆、誰かの生まれ変わりであり、失った大切な人といつかどこかで必ず会える。月が欠けてもまた満ちるように。それは運命にも似た、死生観のひとつです。

突然の事故で大切な人を亡くした主人公・小山内は、現実を受け入れることが出来ず、何年もの間、悲しみの中にいます。

そして、許されざる恋の末、やはり愛する人を亡くした男・三角もまた、やり場のない悲しみに苦しんでいました。

小山内は、最後まで生まれ変わりを信じませんでした。自分の娘が他の誰かなんて思いたくなかったのです。

しかし、娘の瑠璃が、たとえ誰かの生まれ変わりであっても、小山内と梢の娘として幸せだったことを知り、心が救われた気がします。

一方、三角は生まれ変わりがあるということを受け入れることで、愛する人の死を受け入れようとしました。この物語は、大切な人を失った者の再生の物語でもあります。

原作との違い


(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
原作と映画の違う部分として、瑠璃の生まれ変わりの回数が挙げられます。原作では、正木瑠璃の果たされなかった想いは、小山内瑠璃として生まれ変わり、次に先生だった小沼夫妻のもとへ生れ落ちます。

名前は小沼希美と付けられましたが、本当の名前は瑠璃になる予定でした。そして最後は親友だった緑坂ゆいの娘となって現れます。

原作での転生は4回。映画化では、3回となっています。小沼夫妻の娘だった頃が抜かされ、登場人物を減らすことでよりシンプルにそれぞれの繋がりが分かり易く描かれています。

それに伴い、原作とは違う結末を迎えた人物がいます。瑠璃の夫・正木竜之介です。原作では、小沼希美が瑠璃の生まれ変わりだと気付き、自分の罪を償おうと努力します。

正木竜之介と小沼希美の結末は悲しいものでしたが、次の転生へと繋がるものとなっています。

映画化では、瑠璃の死後、正木は後悔どころか、なぜ自分より別の人を選んだのか瑠璃を責め続けていました。その執念で、小山内瑠璃にたどり着いたほどです。正木の存在は、前世からの悪い因縁も続くという教訓にも取れます。

演じたのは、良い人の役が似合う俳優・田中圭。今作では、自分のことしか考えていない冷酷な男を演じています。静かに迫りくる狂気の演技に注目です。

まとめ


(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会
満ち欠けを繰り返す「月」のように、あなたに逢うために何度でも生まれ変わる。数奇で壮大なラブストーリー。映画『月の満ち欠け』を紹介しました。

愛し合っていた一組の夫婦と、許されざる恋に落ちた恋人達。悲しい結末の末、数十年の時を経て互いが繋がる時、未来への希望が生まれました。

生まれ変わっても会いたいと願う人はいますか?あなたの周りにも、前世からの縁が繋いだ人物がいるかもしれません。

そして、大切な人を失い悲しみから抜け出せない時、またいつか必ず会える日がくるのだと信じることは、一歩前に踏み出す力になるかもしれません。



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