映画『花束みたいな恋をした』は、2021年1月29日(金)よりロードショー。
『東京ラブストーリー』『最高の離婚』『カルテット』など数々のヒットドラマを手がけてきた脚本家、坂元裕二。
坂元裕二のオリジナル脚本を、菅田将暉と有村架純の主演で映画化したのが、映画『花束みたいな恋をした』です。
監督は、坂元脚本のドラマ『カルテット』の演出も手がけた、『罪の声』の土井裕泰。
偶然な出会いからはじまった男女の5年間を細やかに切り取り、どこにでもいる人たちの特別な物語として描き出しました。
2021年1月29日(金)より公開の映画『花束みたいな恋をした』のあらすじと見どころを、ネタバレ込みでご紹介します。
映画『花束みたいな恋をした』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本映画)
【脚本】
坂元裕二
【監督】
土井裕泰
【キャスト】
菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、中崎敏、小久保寿人、瀧内公美、森優作、古川琴音、篠原悠伸、八木アリサ、押井守、Awesome City Club PORIN、佐藤寛太、岡部たかし、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫
【作品概要】
『東京ラブストーリー』(1991)、『Woman』(2013)、『カルテット』(2017)、『anone』(2018)など、多くの連続ドラマを手掛けてきた脚本家・坂元裕二が、2020年の東京を舞台に書き下ろした最新作。
菅田将暉と有村架純がダブル主演を務めます。
監督を担うのは、『罪の声』(2020)の土井裕泰。ドラマ『カルテット』で坂元裕二と組んで以来、映画では初タッグを組みます。
映画『花束みたいな恋をした』のあらすじとネタバレ
2015年
大学生の山音麦 (菅田将暉)は、Googleストリートビューに自分が写っているのを発見し、人生最大の喜びを感じていました。
しかし、その熱も冷め、いまは道端で交通調査のアルバイトをしながらぼんやりと暮らしています。お笑いコンビ・天竺鼠のワンマンライブにも行きそびれてしまうほどに、彼は燃え尽きていました。
一方、映画や小説が好きな大学生、八谷絹(有村架純)は、お笑いコンビ・天竺鼠のワンマンライブに行こうとしたところ、知人の男性と出会ってご飯を食べに行くことに。
結局彼は別の女性と街へ繰り出し、絹はライブにも行けませんでした。
ある夜、絹と麦は、終電に駆け込もうと改札へ向かいますが、乗りそびれてしまいます。
そこに居合わせたサラリーマン、会社員風の女性、絹、麦の4人は、カフェで時間を潰すことにしました。
その店で麦は、押井守を発見し、3人に伝えますが、サラリーマンと会社員の女性にはピンと来ません。
押井守を見たこと、そして彼を知っている人に出会えたことを、絹は内心喜びます。
カフェを出て、サラリーマンと会社員の女性は二人でタクシーに乗り込みました。気まずい空気のまま帰ろうとする麦に、絹は、押井守を見た興奮を伝えました。
麦と絹は居酒屋に入り、お互いのことを話し始めます。履いているスニーカー、好きな小説、映画の趣味、行きそびれた天竺鼠のライブなど、共通点が多い二人。
麦が趣味で作った、ガスタンクの映像を編集した「劇場版ガスタンク」の話題で盛り上がり、絹は「劇場版ガスタンク」を見るために、麦の部屋へ上がります。
麦の部屋の本棚に並べられた本は、絹の本棚とそっくり。そこにあったスケッチブックには、麦が描いたイラストが。絹はそのイラストが好きだと告げ、その言葉は麦の心に響き渡りました。
雨で濡れた絹の髪を、麦はドライヤーで乾かします。「劇場版ガスタンク」を観ながらこたつで寝てしまった絹に、麦はそっと毛布をかけました。
友達のような、恋人のような微妙な距離感のまま、二人は何度かデートを重ねます。
終電間際のファミレスで、麦は絹に告白をして、ついに付き合うことになりました。帰り道、二人は初めて手をつなぎ、唇を重ねます。
恋の楽しさにかまけていたこともあり、就活に出遅れていた絹。彼女の両親は、就職浪人を許さないという厳しい考えの持ち主で、連日の圧迫面接もあって絹は追い詰められていました。
麦は同棲を提案し、彼らは多摩川沿いのマンションに引っ越します。ふたりの同棲生活がはじまりました。
年越しも実家には帰らず、初詣で訪れた神社で、捨てられていた黒猫を拾います。猫には「バロン」と名付け、二人で飼うことに決めました。
2016年
大学を卒業し、フリーターになった二人。麦は知人の紹介で、イラストを描くバイトを、絹はジェラート屋で働いています。
二人は慎ましくも穏やかな幸せを感じていましたが、絹の両親には就職を勧められ、麦の父からは実家の新潟へ帰らないなら仕送りを止めると言われる始末。
イラストのバイトも、単価をどんどん下げられ、麦は絹との生活のために就職を決意します。絹も就活を始め、歯科医院の受付の仕事に就きますが、麦の仕事は決まらないままでした。
映画『花束みたいな恋をした』の感想と評価
本作が描くのは、どこにでもある、多くの人が体験した、ありふれたラブストーリー。それなのに、特別な輝きを放ち、心にグッと迫ってくるのはなぜなんでしょうか。
まるでドキュメンタリーのように、恋のささやかな喜びや滑稽さを汲み取り、丁寧に紡ぎあげて行く本作。
その丁寧さが、鑑賞者の記憶をつつき「いつか味わった恋」として追体験させてくれます。
『カルテット』でもそうでしたが、本作でも坂元裕二と土井裕泰のコンビは、少しの優しさを加えながら、人生の苦味を巧みに描きます。
付き合いたての麦と絹の二人が、海でデートをする場面では、幸せの絶頂をただただ楽しむ麦と、これが「絶頂であり、恋の終わりが始まった」と感じている絹の姿を対照的に映し、二人の今後を予感させてくれました。
まるで、『卒業』のラストシーンでの、笑顔のダスティン・ホフマンと、浮かない表情のアン・バンクロフトの二人のように、「始まりへの希望と終わりへの不安」を感じさせてくれます。
また、初めは、互いを分身のように感じ、イヤフォンを分け合って一つの音楽を聞いていた麦と絹。
現実や生活に追われることで、いつしか分け合う行為に喜びを見出せなくなってしまい、相手が求めていることすら見失ってしまいました。
2020年のはじめまでの物語として描かれている本作ですが、物語のラストでは、新型コロナウイルスの影響をうっすらと匂わせます。
馴染みのパン屋の老夫婦がトイレットペーパーを買えたか心配する絹や、営業職で忙しかったはずが、テレワークなのか家でゆっくりとネットサーフィンをする麦。
実は、トイレットペーパーのセリフは、撮影後に坂元が書き足したものだそう。押し付けがましくなく、的確に時世を取り込む坂元ならではの、現実世界への橋渡しでした。
まとめ
主演の麦役の菅田将暉と、絹役の有村架純が、市井のカップルを等身大に演じました。
垢抜けない印象の麦と絹を、親近感を覚えるキャラクターに仕立て上げ、本作への没入感を高めてくれます。
絹がふとした瞬間に見せる満面の笑顔、麦の全力の泣き顔に、心揺さぶられる方も多いことでしょう。
有村架純のキュートさは、映画館で同じ回に鑑賞していた女性客が、告白されて笑顔を浮かべる絹を見て「かわいい……」と口にするほどの破壊力でした。
また、本作の劇場販売のパンフレットも、絹と麦が取ってあったお笑いライブのチケットや、演劇のダイレクトメールなどが挟んであるという、遊び心満載な作りとなっており、ぜひ手にとってみていただきたいものになっています。
映画『花束みたいな恋をした』は、2021年1月29日(金)よりロードショーです。