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Entry 2024/04/24
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『傲慢と善良』映画化原作ネタバレあらすじ感想と評価解説。辻村深月の恋愛ミステリー小説を藤ヶ谷太輔と奈緒が演じる

  • Writer :
  • 星野しげみ

辻村深月の小説『傲慢と善良』が待望の映画化!

朝が来る』(2021)『かがみの孤城』(2022)などが映像化されたことで知られる辻村深月。

このたび執筆されたさまざまな作品から、恋愛ミステリー『傲慢と善良』の映画化が決定し、2024年9月27日(金)に全国公開となりました。


辻村深月『傲慢と善良』(朝日新聞出版社)

ある日突然に姿を消した婚約者の居場所を探す主人公は、必然的に彼女の「過去」と向き合うことになりました。婚約者はなぜ姿を消したのでしょうか。またタイトルにある「傲慢」は誰で、「善良」は誰を指すのでしょうか。

気になることばかりの小説『傲慢と善良』。映画公開に先駆けて、小説『傲慢と善良』をネタバレありでご紹介します

小説『傲慢と善良』の主な登場人物

【西澤架】
婚活を経て坂庭真実と出会って婚約するが、真実が行方不明になる。

【坂庭真実】
架の婚約者。ある日突然消息を絶つ。

【美奈子】
架の友だち。

【坂庭陽子】
真実の実の母親。

小説『傲慢と善良』のあらすじとネタバレ

ある日、坂庭真実が自分のアパートに帰ろうとすると、部屋の灯りがついていて誰かがいるようでした。真実は怖ろしくなり咄嗟に逃げ出し、恋人の西澤架に「助けて。ストーカーが部屋にいる」と電話をします。

架はその頃学生時代の友人の美奈子たちと飲み会をしていました。心配した架は自分の家に来るように言い、それから真実は架と一緒に暮らすことに。それまで結婚に踏み切れなかった架は、この機会を得てそのまま真実に結婚を申し込みました。

2人にとって幸せの絶頂と思われる日々が続きますが、結婚式を控えたある日、架が家に帰ると真実がいなくなっていました。

こんなことは初めてで、何かあったのではないかと架は心配します。次の日も真実は帰ってきませんし、以前真実が住んでいたアパートにも帰った形跡はありません。

群馬にいる真実の両親にも話し、架と真実が住む東京に来てもらいましたが、家族も真実がどこにいるのか、心当たりがないと言います。警察にも連絡しましたが、事件性が感じられないと言われ、捜査はしてくれませんでした。

架が真実の両親に真実がストーカーの被害にあっていたことを話すと、どうしてその時に警察に言わないのかと怒られました。

架はストーカーの犯人は、自分が群馬にいたときにお見合いをして、真実から振ってしまった男性だと真実が話していたことを思い出します。

どうしてその時に犯人を捕まえようとしなかったのか。せめて警察に言えばよかったと、架は自分を責めます。

一方、真実の両親はもしかすると真実が自分の意思で家出をしたのかもしれないと考え、世間体のために、この失踪を大ごとにしたくないようでした。

そんな真実の両親にも嫌気がさした架は、自分で真実の居場所を突き止めようと、真実が行ったという結婚相談所をしている群馬の小野里の元へ向かいます。

真実は数年前までは、群馬県庁で臨時職員として働いていました。しかしそれは、就職試験を受けたのではなく、父親の口利きで結婚までの腰かけとして働いていただけだったのです。

恋人ができない真実は婚活をすることになり、母親の陽子に頼んで知り合いの結婚相談所に登録しました。この結婚相談所で、陽子が高学歴の候補者を最初に見つけますが、候補者のファッションが気に入らず、真実は断ります。

次に、真実は自分で好みの外見の男性と出会いますが、話がどうしても続かなかったため、今度も真実は断ります。

真実の両親の話と小野里の話を聞いて、架はこの結婚相談所で出会った2人はストーカーの犯人ではないだろうと思いますが、念のため2人と会うことにしました。

1人目の彼は確かにカジュアルで社会人とは思えない服装をしていましたが、すでに結婚をし、3人目の子どもがもうすぐ生まれるとのことでした。

2人目の彼はいまだに独身で、確かに会話も続きませんでしたが、失踪した真実のことを本気で心配しているようでした。

どう考えても真実は誰かに誘拐されたように思えず、かといって自分の意思で失踪しているにしてもおかしいと思っている矢先に、架は友人の美奈子たちに呼び出されます。

美奈子は、真実がいなくなる前日に会ったと言いました。

結婚のために仕事をやめる真実の送別会が行われた店に、偶然美奈子たちも飲みに来ていて、真実を見つけて結婚のお祝いを言うとともに、「本当はストーカーなどはいなくて、ストーカーにあっている芝居をして架に結婚に踏み切ってもらったのではないかと言った」と言うのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『傲慢と善良』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『傲慢と善良』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

美奈子たちは勘が鋭く、真実の言うストーカーの被害に矛盾点がたくさんあることを見抜いていました。

架には言わないと約束はしたものの、真実は屈辱で何も言い返すことができません。実際には、美奈子たちが真実に言ったことは当たっていましたから、何も言えないのは当然でした。

真実は架のことを100点の婚約者だと思っているのに、架が真実のことを70点の相手だと言っていた、とも美奈子たちから聞かされ、真実は自信を失ってしまいます。

嘘がバレたこと。自分が70点と架に思われていたこと。真実が失踪したのはこれらが原因だったのです。

美奈子たちから失踪前夜の出来事を聞かされた架は、デリカシーのない美奈子たちに怒りを覚えますが、同時に真実のストーカー被害が嘘であったということを認めざるを得ませんでした。

一方で失踪した真実は、行き場をなくして宮城県の東日本大震災の被災地のボランティア活動に参加していました。そこでは、いろいろな事情を抱えた人々が協力しあって、あらゆる活動をしていました。

最初に真実は写真館で写真を綺麗に修復する手伝いをします。そこで神社で行ったらしい結婚式の写真をみつけ、ここに映っている誰かの思い出をきれいにすることにやりがいを見出します。

写真館の仕事に慣れた頃には次の仕事として地図作りのバイトをし、傷心の真実も少しずつ周囲の人たちとなじんでいきます。

宮城県での地図作りの仕事にも慣れ始めたころ、真実は偶然写真に写っていた三波神社を発見しました。

神社の特徴的な模様を見て、「これは写真館で見た、誰のものかわからない結婚式の写真の舞台だ」と確信した真実は、写真館の人たちにその写真を神社まで持ってきてもらい、写真の持ち主も判明しました。

自分の行動で写真の持ち主がわかったことで、自分の存在意義を感じることができ、真実は感動します。

その日の夕食時、写真館を手伝っている学生に、インスタを見せてほしいと言われた真実は久しぶりに自分のアカウントを見ます。

すると、コメント欄に「ストーカーがいないことはわかっているから話がしたい」というメッセージを見つけます。名前はありませんが、架からだと真実にはわかりました。

どうしていいかわからなくなった真実は、その場にいる人たちに自分がどうして宮城にやってきたかを話します。婚約者から逃げてしまったと言うと、その場にいる人々から「大恋愛をしているんだね」と優しい声をかけられました。

「大恋愛」という言葉を受け、真実は意を決して架に連絡をしました。「今は少しだけ待ってほしい、けれど必ず連絡をします」と伝えます。その言葉を信じた架は、数か月後、宮城にやって来ました。

真実は架に謝り、だけど、架に自分が70点と言われて悲しかったこと、美奈子たちと一緒にいることが苦痛だったことを訴えました。架はすべてを受け入れ、もう一度真実にプロポーズをしました。真実はそれを受け入れます。

その後2人は、地図作りの際に出会った三波神社で、2人だけの結婚式を挙げました。

小説『傲慢と善良』の感想と評価

原作小説は、大きくわけると主人公である架目線で語る章と婚約者の真実目線の章との2部構成となっています。

架目線の章では、架と真実の恋愛事情が描かれていました。結婚に踏み切れないアラサー男の架は、同じく婚活をしている真実と知り合います。

真実のことは可愛いと思いながらも、どこか見下してみている架。そんな傲慢な態度が今まで独身でいた原因と言えるのですが、本人はそれに気がついていません。

そのうちに架は、ストーカーに狙われているという真実に結婚を意識するようになるのですが、その矢先突然真実が失踪。真実を探すうちに善良すぎる彼女の過去を知ることに……。

真実目線の章では、真実からの失踪のあらましが語られます。真実は母のすすめもあって婚活をしていました。

幼い頃から母の言いつけを守るいい子だった真実は、結婚についても母を喜ばそうとする気持ちと、自分が本当に好きになった人と一緒になりたいという気持ちとの葛藤に苦しみます。

そして、架と結婚するために、ストーカーに狙われた芝居をします。挙句の果てについた「嘘」がバレたとき、彼女は逃げ出したのです。

ですが、嫌なことから逃げれば済む問題ではありません。後に残された婚約者の架は、真実失踪の謎を解くために必死になりました。作者お得意の山あり谷ありの恋愛ミステリーが、最初から最後まで展開します。

結婚を前提につき合った相手に対していつも‟傲慢”な態度をとっていた架と、常に親の期待に応えられる良い子になろうとする‟善良”な真実

結婚は2人の問題です。架と真実は失踪事件を経て、本当に自分を好きになってくれた人には、ちゃんと向き合って結婚したいと思うようになりました。

ラストの2人だけの結婚式は架にとっても真実にとっても、苦しんだ挙句の最高の結論と言えます

映画『傲慢と善良』の見どころ


(C)2024「傲慢と善良」製作委員会

原作小説は、結婚式を間近に控えながらもなおかつ交錯する男女2人の気持ちを、ミステリアスに表現しています。

本作の映画化にあたり、監督を務めたのは『東京喰種トーキョーグール』(2017)『サヨナラまでの30分』(2020)を手がけた萩原健太郎。

監督は「“傲慢”さと“善良”さは表裏一体で、きっとその狭間を行き来しながら生涯付き合っていかなければなりません。本作が、完璧じゃない他人や自分を受け入れて前に向かって進む一助となることを願っています」とコメントしています。

また主役の西澤架と坂庭真実を演じるのは、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔と奈緒です。

マイ・ブロークン・マリコ』(2022)や『草の響き』(2021)など出演作多数の奈緒の善良ぶりが楽しみな反面、『そして僕は途方に暮れる』(2022)でダメ男役を演じた藤ヶ谷太輔の、真実との将来をなかなか決めなかった架の「傲慢男」ぶりが見ものです。

映画『傲慢と善良』の作品情報


(C)2024「傲慢と善良」製作委員会

【日本公開】
2024年(日本映画)

【原作】
辻村深月『傲慢と善良』(朝日新聞出版社)

【監督】
萩原健太郎

【脚本】
清水友佳子

【キャスト】
藤ヶ谷太輔、奈緒

まとめ

辻村深月の恋愛ミステリー『傲慢と善良』をご紹介しました。小説を読めば、結婚や恋愛って難しいと思ってしまうかもしれません。ですが、お互いを理解しあった2人が晴れて一緒に将来を築くという結末は、爽やかなものでした。

この小説は、藤ヶ谷太輔と奈緒をW主演に向かえて映画化され、2024年9月27日(金)に全国公開されます。原作のカバーイラストを手掛けたイラストレーターの雪下まゆによる描き下ろしティザービジュアルも、解禁されました。

素敵なティザービジュアルを見て、原作通りの結末となるか、映画への期待も高まります。




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