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Entry 2020/01/24
Update

映画『サヨナラまでの30分』ネタバレ感想とレビュー評価。新田真剣佑×北村匠海らが歌う別れと成長の物語

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『サヨナラまでの30分』は2020年1月24日(金)より全国ロードショー公開!

かつて死んだはずのバンドマンは、カセットテープの再生時間“30分”のあいだだけ、仮の身体を得てよみがえる……。

若者たちの不思議な出会いと友情、恋愛、そして新たな一歩を踏み出す姿を描くファンタジックな青春音楽劇『サヨナラまでの30分』

W主演の新田真剣佑と北村匠海を筆頭に、注目の若手キャストが集結しました。

映画『サヨナラまでの30分』の作品情報


(C)2020「サヨナラまでの30分」製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
萩原健太郎

【脚本】
大島里美

【キャスト】
新田真剣佑、北村匠海、久保田紗友、葉山奨之、上杉柊平、清原翔、松重豊

【作品概要】
テレビ・映画を含め本作で5回目の共演となる新田真剣佑と北村匠海がW主演を務める青春音楽劇。出会うはずのなかったの二人の青年が想わぬ形で交じり合うことで、新たな世界が広がり始めます。

監督を務めたのは、実写映画『東京喰種トーキョーグール』(2017)で知られる萩原健太郎。また撮影監督を、音楽アーティスト・米津玄師の「Lemon」MVの撮影を手がけた今村圭佑が務めています。

映画『サヨナラまでの30分』のあらすじとネタバレ


(C)2020「サヨナラまでの30分」製作委員会

バンド「ECHOLL」のボーカルで作詞・作曲も手がける宮田アキは、いつものプールの跡地で新曲をカセットテープに録音していました。

しかし、その直後交通事故に遭いアキは死亡。メジャーデビュー目前だった「ECHOLL」も解散してしまいます。

それから一年後、颯太と名乗る青年がバンドメンバーであるヤマケン・重田・森、そしてアキの恋人だったカナの前に現れ、バンドの再結成を迫ってきます。

「見ず知らずの人間・颯太がなぜ、バンドの再結成を迫るのか?」「なぜ、バンドの細かな事情を知っているのか?」と困惑するメンバーたちとカナ。

実は、颯太の中にはアキの魂が乗り移っていました。偶然アキのテープを拾った颯太は、それを再生すると30分だけアキと魂が入れかわるようになったのです。


(C)2020「サヨナラまでの30分」製作委員会

戸惑い、迷惑でしかないと思う颯太ですが、アキが中に入っているときの自分は考えられないほど社交的で、世界を拡げてくれます。

バンドのメンバーは中身がアキだということは知らないまま、颯太と徐々に打ち解けていき、新たな形でのバンド結成を考え始めます。

しかし、恋人アキを亡くしたことへの喪失感が残るカナの心はまだ固まったままです。

アキに協力することで今までにない世界を知ることができた颯太は、自分の意思でカナの背中を押せないかと考え始めます。

実は作曲ソフトでこっそり音楽を作っていた颯太は、ピアノという共通言語でカナとの距離を徐々に詰めていきます。そんな様子を見ていたアキはうれしさと寂しさ、そして実際には何もできないもどかしさを感じていました。

さらに、30分間の入れ替わりという二人の秘密にも思わぬ変化が出てきました。

以下、『サヨナラまでの30分』ネタバレ・結末の記載がございます。『サヨナラまでの30分』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2020「サヨナラまでの30分」製作委員会

“30分”という入れ替わりの制限時間は、カナやバンドメンバーがアキを亡くしたことへの喪失感に比例していました。颯太の中のアキと颯太自身がバンドに活気をもたらし、新たな一歩を踏み出そうとすればするほど、その時間は短くなっていったのです。

アキの存在が颯太によって上書きされるたびに、アキの魂は徐々に消えていきます。そしてアキ自身が「バンドは続けたい」「仲間たちに新たな一歩を踏み出してほしい」と強く思うたびに、本当の別れが近くなっていきます。

その事実を知った颯太は、せっかく仲良くなり、絆が芽生えつつあったバンドのメンバーたちと距離を置き、かつてのように独りきりの世界にこもり始めます。

そんな颯太の姿を見たアキは一大決心をして、バンドのメンバーと一年前には出られなかったフェスにエントリーするように訴えます。

アキが消えてしまうことを恐れていた颯太は、「これ以上、あなたを上書きしたくない」と反論します。

アキは颯太の想いを受け止めたものの、それでも「自分は最後に精一杯バンドのメンバーと生きてみたい」「最後にもう一度だけ、身体を貸してくれ」と頼みこみます。

一度は就職面接に向かった颯太でしたが、アキとの短くも充実していた時間を思い出すと、面接会場から飛び出し、フェスの会場へと向かいます。

そこにはバンドの仲間たち、そして彼女がバンドに戻るために作った新曲を確かに受けっとったカナの姿がありました。

最期の入れ替わりを経たアキは、敢えて“颯太”として振る舞うことで、新たな仲間たちの形・颯太のいるバンドの姿を完成させるのでした。

映画『サヨナラまでの30分』の感想と評価


(C)2020「サヨナラまでの30分」製作委員会

ドラマ・映画を含め、本作で5度目の共演となる新田真剣佑と北村匠海。プライベートでも親しい関係だという二人ですが、今回も阿吽の呼吸を見せてくれます。

どちらもまだ若い俳優ですが、このコンビは今後もさまざまな作品を通じてずっと見ていきたいと感じられます。30代、40代になったとき、二人はどんなコンビネーションを見せてくれるのでしょうか?

本作ではそれぞれにキャラクターに加えて、北村匠海の中に入った新田真剣佑、さらにその新田真剣佑が北村匠海のふりをするなど、「二人三役」「二人四役」ともいえる演技分けを魅せてくれます。

さらに4人組ロックダンスバンド「DISH//」のボーカル&ギターでもある北村匠海はもちろん、新田真剣佑も見事な歌唱シーンを劇中で披露しています。

ちなみに新田真剣佑の歌唱力についてですが、岸谷五朗と寺脇康文の演劇ユニット「地球ゴージャス」の『ZEROTOPIA(ゼロトピア)』にて、共演の西川貴教、柚希礼音に引けを取らない歌声を披露したことでも知られています。また2020年には、同じく「地球ゴージャス」の25周年祝祭公演『星の大地に降る涙THEMUSICAL』も待機中です。

それを踏まえると、新田真剣佑と北村匠海にはライブ会場としてのステージのみならず、舞台としてのステージでの共演してほしいと感じます。

まとめ


(C)2020「サヨナラまでの30分」製作委員会

W主演である新田真剣佑と北村匠海の相性の良さが、本作の物語を牽引することは確かです。そしてバンドシーンが、若き俳優たちの今しか見られない魅力を引き出しています。

また今作最大の収穫の一つとして、ヒロイン・村瀬カナを演じた久保田紗友は見逃せません。

2020年で20歳となり、これまでにもNHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』やドラマ『過保護のカホコ』などに出演している彼女ですが、本作では心の傷と葛藤を抱えながら生きるカナを好演。新田真剣佑演じるアキと北村匠海演じる颯太の間を揺れ動く様を、細やかな演技と表情によって表現しています。

主演二人のみならず、彼女の演技にも注目すべき作品といえます。

映画『サヨナラまでの30分』は2020年1月24日(金)より全国ロードショー公開!





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