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『僕が愛したすべての君へ』あらすじ感想と評価解説。声優の宮沢氷魚x橋本愛が演じるパラレルワールドに生きる夫婦の愛

  • Writer :
  • 谷川裕美子

パラレルワールドを舞台にした夫婦の愛の軌跡

並行世界を行き来することができる世界を舞台にした究極のラブストーリー『僕が愛したすべての君へ』が2022年10月7日(金)より全国公開されます。

乙野四方字による小説『僕が愛したすべての君へ』『君を愛したひとりの僕へ』を原作に、2作同時にアニメーション映画化したうちの1作です。同じ名前の2人の少年がそれぞれの世界でひとりの少女と恋に落ちる姿が描かれます。

2作はそれぞれ独立した物語でありながら、合わせて読むと互いの世界が絡み合っている様子が見えてくる斬新な設定で、TikTokで大きな話題を呼びました。

his』(2020)の宮沢氷魚、『ここは退屈迎えに来て』(2018)の橋本愛が声優を務めます。

主人公夫婦の愛の軌跡に思わず涙せずにはいられない感動作です。

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映画『僕が愛したすべての君へ』の作品情報


(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
乙野四方字

【脚本】
坂口理子

【監督】
松本淳

【編集】
坂元雅紀

【出演】
宮沢氷魚、橋本愛、蒔田彩珠、田村睦心、浜田賢二、園崎未恵、西村知道、平野文、余貴美子、西岡徳馬

【作品概要】
乙野四方字の人気同名小説を原作にしたラブストーリーアニメ。監督は『劇場版 Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ』の松本淳。

無数に存在する並行世界を行き来できる男性が一人の女性を愛し抜く姿を描きます。

主人公の暦を、ドラマ『ちむどんどん』でも注目される『his』(2020)の宮沢氷魚、ヒロインの和音を『ここは退屈迎えに来て』(2018)の橋本愛が演じるほか、蒔田彩珠、余貴美子、西岡徳馬ら実力派が出演します。

映画『僕が愛したすべての君へ』のあらすじ


(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会

もうすぐ人生を幸せに終えようとしている老人の高崎暦。彼の手のひらに映し出されたスケジュールには、「8月17日午前10時 昭和通り交差点」とありましたが、暦にその約束をした覚えはありませんでした。

孫の愛は、どこかの平行世界のおじいちゃんが来てスケジュールを打ち込んだのではないかと言います。

何かの約束のようだからと気にする暦に、妻の和音も「行けば思い出すかもしれないから」と言って行くようにすすめます。

待ち合わせ場所の横断歩道に行った彼に、若い女性が「迎えに来てくれたの」と言って手を差し伸べました。彼もその手をとろうとしましたが、いつの間にか彼女はいなくなっていまいます。

パラレルシフトしたことに気づいた暦は、ここはどこなのかと混乱します。

ここはパラレルワールドが広く認められている世界で、それらの世界を行き来することはパラレルシフトと呼ばれていました。

7歳の時に両親が離婚し、高崎暦は母と祖父母と古い家に暮らしていました。暦は祖父に叱られて気まずくなりますが、その状態のまま祖父は亡くなります。

葬儀が始まる前、飼い犬の散歩に出て転んだ暦は、いつの間にかパラレルシフトしていました。そこは暦が父と暮らすことを選んだ世界で、祖父がまだ元気に生きている平行世界でした。

その祖父から、「暦が失敗してもおじいちゃんは暦を好きなままだ」と言ってもらい、暦の心は救われます。

目を覚ました暦はもとの世界に戻っていました。これが暦にとって初めての平行世界を実感した瞬間でした。

成績のよかった暦は、それゆえに孤独でした。高校では友達を作ろうと意気込んでいたものの、進学校の生徒たちは自分のことに忙しくなかなか親しくなれません。

そんな中、暦はクラスメイトの瀧川和音から突然声を掛けられます。和音はとまどう暦をカラオケに連れて行き、自分が85番目の並行世界から来たこと、そしてその世界で彼女と暦は恋人同士だったことを教えます。

話を聞いて驚いた暦は咳き込みますが…。

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映画『僕が愛したすべての君へ』の感想と評価


(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会

変わらず誰かを愛し続けるということ

パラレルワールドの世界を綴るファンタジーアニメ『僕が愛したすべての君へ』。

平行世界を描く作品は数多くありますが、無数に存在するパラレルワールドを人々が行き来することが広く認知された世界で、その研究施設まで存在するという設定はとても斬新です。

加えて、本作とは異なる視点で描かれるもう1作の『君を愛したひとりの僕へ』と合わせて観ることで、結末がガラリと変わるという大きな仕掛けが施された興味深い作品となっています。

「もし、あの時こうしていたなら」と思い悩んだことのある方はきっと大勢いらっしゃることでしょう。この作品では「もし、ここではない世界に生きていたなら」という視点で悩み傷つき、もがく人々の姿が描かれます。

主人公の暦が初めてパラレルシフトと呼ばれる別のパラレルワールドへ移行する経験をしたのは、祖父を失くした時でした。

叱られた幼い暦は、心が行き違ったまま祖父を亡くしてしまったことに苦しんでいましたが、平行世界でまだ元気に生きていた祖父に温かな言葉をかけてもらったことで心を救われます。

それは、「失敗しても、おじいちゃんが暦を好きなことに変わりはない」という、普遍の愛を伝える言葉でした。この祖父の言葉が、この作品の通奏低音のような大きな役割を果たしていきます

パラレルワールドが無数にあるということは、無数の自分が存在するということです。辛い経験をしなければならなかった自分もいれば、その運命を回避できた自分もおり、自分で自分を羨んだり恨んだりすることも起こり得ます。

また、パラレルワールドで経験する事象は誰にも知られることのない秘密となり、愛する恋人や妻、子どもからも切り離された特別な時間にも成り得るのです。

そんな不思議な平行世界だからこそ生じる心の揺らぎを、この作品は丁寧にすくいとって描写しています。

複雑に絡み合う世界の中で、確かに存在し続ける人間の愛に心揺さぶられる一作です。

まとめ


(C)2022 「僕愛」「君愛」製作委員会

パラレルワールドを行き来できる世界を舞台に、ひと組の男女の年若き頃から老年期までの愛情を丁寧に綴る胸に迫るラブストーリー『僕が愛したすべての君へ』。

数限りなく存在する平行世界に生きる主人公たちの思いも複雑に絡まり合い、壮大な愛の物語が繰り広げられます。

一体どれが本当の自分なのか。目の前にいる妻は、息子は、本当に自分の知るその人なのか。

主人公の暦がそんな不安にとらわれるのと同じく、観るほどにまるで迷宮に迷い込んだかのように感じられる作品です。

そんな不思議で複雑な世界で暦が見つけた「確かなもの」とはなんだったのか。どうぞ最後まで見届けて下さい。

映画『『僕が愛したすべての君へ』は、『君を愛したひとりの僕へ』と共に、2022年10月7日(金)より2作同時に全国公開予定です。





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