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Entry 2023/04/10
Update

『アナログ』映画原作小説のネタバレあらすじと感想評価。キャスト二宮和也と波留で実写化!ビートたけしの純恋愛観とは⁈

  • Writer :
  • 星野しげみ

ビートたけしの恋愛小説『アナログ』が映画化決定!

古希を迎えたビートたけしが初めて書いた純愛小説『アナログ』。彼がいま理想とする恋愛観や女性観がつまっている小説が映画化され、2023年秋の公開も決定。

監督は、『鳩の撃退法』(2021)のタカハタ秀太が務め、主演の2人に『ラーゲリより愛を込めて』(2022)の二宮和也と『弥生、三月-君を愛した30年-』(2020)『ホテルローヤル』(2020)の波留が抜擢されました。


(C)2023「アナログ」FP(C)2023 T.N GON Co., Ltd.

ビートたけしが自身の理想とする恋愛を描いています。携帯電話を所持せず、連絡先をいっさい明かさずに木曜日に喫茶店で会う約束だけでデートをする2人。果たしてこの恋愛はどうなるのでしょう。

映画『アナログ』は、2023年10月6日(金)に全国公開決定! 映画公開に先駆けて、小説『アナログ』をネタバレ有りでご紹介します。

小説『アナログ』の主な登場人物

【水島悟】
喫茶店『ピアノ』の内装デザインをしたインテリアデザイナー。ある日、喫茶店で出逢ったみゆきに恋します。

【美春みゆき(奈緒美)】
喫茶店『ピアノ』を訪れた女性。携帯電話を所有しておらず、悟とは毎週木曜日に『ピアノ』を訪れる約束をします。

小説『アナログ』のあらすじとネタバレ


ビートたけし『アナログ』(新潮社、2017)

清水デザイン研究所でインテリアデザインを担当する水島悟は、仕事の合間に養護老人ホームに入所している母を見舞いに行きます。悟の父は悟が幼少の頃に病気で亡くなり、以来母が女手一つで悟を育ててくれたのです。

ある日、悟は自分がデザインを担当した『ピアノ』という喫茶店を訪れ、「みゆき」という女性と出会いました。

悟はなぜだか、彼女にとても魅かれるものを感じ、次の機会につなげるためには連絡先の交換をしたいと思いましたが、連絡先を聞いたら、二度と会えなくなるような気がしました。

すると、彼女が「私は木曜日の夕方に、よくここに来ていますよ」と言いました。

すぐに来週の木曜日、ここへ来ることにした悟。彼女の名前はみゆき。悟はそれ以外のことを何も知りません。

そして一週間がたち、待ちに待った木曜日。はたしてみゆきは喫茶店『ピアノ』に来ていました。悟は思い切ってみゆきをディナーに誘います。

行き先は打ち合わせでよく使うイタリアンレストラン。これまであまり女性と食事したことがなかった悟ですが、みゆきとの会話は自然と盛り上がりました。

悟は今度こそと連絡先を交換しようとするのですが……みゆきは連絡先を教えようとしません。

何もなければ、来週の木曜日も『ピアノ』に行くと言うみゆきに、連絡先を交換できれば、という期待を込めて、「もし来週どちらかが、用事ができて来られなかったら、連絡することもできないし、ちょっと寂しいですね」と悟が言います。

「私は、悟さんが来ないときは都合が悪いと思うし、続けて来なければ、来たくても来られないんだって思います。お互いに会いたいと思う気持ちがあれば、絶対に会えますよ。だって、『ピアノ』に来ればいいんですもの」

「そうですよね。お互いそう思って、毎週会っていたら面白いですね」。悟の言葉にみゆきはニコッと笑います。店を出た悟は、「じゃあ来週」と言ってみゆきをタクシーに乗せました。

次の木曜日を待ち望んでいた悟ですが、この週は大阪出張があり泣く泣く諦めざるを得ません。けれども、出張から帰ってきた次の木曜日にはちゃんとデートができ、みゆきとの関係は順調に進みます。

悟には縁のなかったクラシックのコンサートに連れて行ってもらったり、逆にみゆきのリクエストで焼き鳥屋に連れて行ってあげたり……。

みゆきはこれまで焼き鳥屋に行ったことがないと言い、反するようにクラシックには詳しかったりと、不思議な女性でした。何度かデートをしても、悟はみゆきの素性についてはまるで知らないままです。

そんなある日、悟の母親が施設で亡くなりました。葬儀のために木曜日をついやし、またデートはできません。その次の木曜日、やっと会えたみゆきは、悟からは何も聞こうとしませんでしたが、悟の悪友たちから母のことを聞いていたようでした。

悪友の高木が『ピアノ』に行って、悟が来れない事情を伝えたのでしょう。みゆきは母の死を知っています。

やせ細った母の姿、泣きはらした悪友たちの顔など、いろいろな人たちへの思いが浮かんでは消え、悟は声を出して泣いてしまいました。

みゆきは号泣する悟に優しく寄りそってくれました。みゆきこそはかけがえのない女性だと、悟は実感します。

やがて月日は流れ、悟に転機が訪れます。大阪のプロジェクトのため、昇進と引き換えに向こうに常駐することになったのです。期間は短くとも1年。その間、木曜日のたびに東京に戻ってくるというわけにもいきません。

悟はみゆきに結婚を申し込む決意を固めます。木曜日、悟は90万円で買った指輪を懐に忍ばせ、いつもの『ピアノ』へ向かいました。しかし、その日彼女は店に現れませんでした。

みゆきが来なかったのは初めてのことですが、これまで悟が仕事で来られない日がありました。来週にまた機会はあると、悟は思います。

けれども、次の木曜日もみゆきは店に来ません。そして、その次の木曜日も……。3回連続で来ないみゆきは、自分に会いたくなくなったということだと思い、悟はもう彼女のことはあきらめようと思いました。

その日以降、悟は『ピアノ』に行かなくなりました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『アナログ』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『アナログ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

それから1年半後。悟は大阪で、初期から関わっていたホテルのプロジェクトの仕事をしています。順調な毎日ですが、どれだけ仕事で頭の中をいっぱいにしようとしても、みゆきへの未練は消えません。

せめて彼女が来なくなった理由だけでも確かめたいところでしたが、悟はみゆきの電話番号はおろか、住所も仕事も何ひとつ知らないのです。

そんなとき、悟はCDショップのクラシックコーナーで、どう見てもみゆきにしか見えない若い女性が写っているチラシを見つけました。

チラシには、「突如、音楽界から姿を消したナオミ・チューリングのヨーロッパツアー時の音源を入手。最新の技術により見事に復元した名演の数々」と書かれてあります。

悟はすぐにCDを買うと、マンションに帰ってその解説を読みました。

解説によるとナオミ・チューリング(旧姓 古田奈緒美)という女性は、国内外で天才ヴァイオリニストとして人気を博したそうです。オーストリア留学中、ピアニストのミハエル・チューリングと20歳で結婚。ヨーロッパを中心に演奏活動をしていたが、2007年、ミハエルの急死により活動を中止。帰国の後、音楽界から引退していると、書かれてありました。

みゆきにつながる大きな手がかりを得た悟は、煙のように消えてしまった彼女の居場所を突き止めるために動き始めます。

まず悪友の高木に協力を頼みます。やがて友情にあつい彼は驚くべき情報を掴んできました。みゆきは、悟が指輪を渡して結婚を申し込もうとした当日に、交通事故に遭っていたというのです。

おととしの6月4日の夕方、みゆきは事故に遭遇。彼女は自分を嫌いになったわけじゃなかった……悟の心は弾みます。

急ぎ東京に舞い戻った悟は、高木の案内でみゆきの姉・香津美との対面を果たしました。悟にとって重要なのはみゆきの現在の状態。姉によると、みゆきは事故の影響で頭部に障害を負い、下半身は麻痺しているそうです。

想像以上に深刻な状態ですが、みゆきに会いたいという気持ちは揺るぎません。とはいえ、悟にも不安はあります。結局のところ、みゆきとは週に一度会うだけの関係で、ちゃんと彼女の気持ちを確かめてはいなかったのですから。

悟がそんな胸の内を告白すると、姉の香津美は鞄の中から一冊のノートを取り出し、「妹は日本に帰ってきてから、ずっと日記のようなメモみたいなものをつけていたんです。事故に遭った後に部屋で見つけて……よかったら読んでやってください」と言いました。

悟は「2015」と表紙に書かれたノートを受け取ると、少し色あせたページをめくりました。読んでいるうちに、悟の目から涙がこぼれました。日記の中には、『ピアノ』で初めて会った日のことも書かれ、木曜日をみゆきも待ちわびていたことがわかったのです。

悟はみゆきに会う決心をし、病院へ向かいます。姉の香津美が病室に入り「奈緒美、お客さんよ」と、窓際の車椅子に座っている休憩中の女性に声をかけます。

みゆきは外を見たまま動きません。悟はどうしていいか分からず、しばらくじっと彼女の後ろ姿を見ていましたが、思い切ったように、みゆきの正面に回ります。

そしてみゆきに顔を近づけ「ここ、いいですか?」と、『ピアノ』でのデートの時のように声をかけました。

窓の外を見ていたみゆきが、目をゆっくり悟の方に移します。悟の顔をしばらくじっと見ているようだったが、その目には何の感情も浮かんでいません。

みゆきの顔を見つめる悟。みゆきに向けた微笑みはとうに消え、涙が溢れ出します。我慢しようにも声が出てしまう。しばらくの間、悟はみゆきの前で声を出して泣きました。

突然、悟の顔にみゆきが涙を拭おうとするかのように、手を伸ばしました。まるで母の死後会った時のように、彼女は悟の涙を拭こうとし、それに気が付いた悟の涙は止まりません。

添えている悟の手に、みゆきの手が重なります。みゆきは前を向いたままですが、口元が微笑んでいるようにも見えました。

悟はどんなことがあっても、みゆきと結婚して自分が面倒をみようと決心しました。

悟は仕事をリモートに切り替え、みゆきと住むためのバリアフリーの広い部屋を用意します。準備や仕事の引き継ぎなどが済み、ようやくみゆきとの暮らしが始まりました。

再会から2ヵ月後。鎌倉の高台にある悟とみゆきの新居からは、美しい海が一望できます。

現在、心から安心してみゆきの隣で仕事をしている悟。現代的な電子機器を使って仕事をするのを嫌がっていた悟ですが、今それらのおかげで愛する人と生活できるようになっていました。

しかし、AIやコンピューター技術がいくら進歩しても、時折見せるみゆきの微笑み以上の笑顔が作れるでしょうか?

「俺にとって、一番美しく幸せな景色とは、微笑むみゆきの横顔である。いつか犬でも飼って新しい車を買い、みゆきと犬を乗せてどこかへ遊びに行こう」

悟はそんな未来に思いを馳せると、またコンピューターに向かいます。

小説『アナログ』の感想と評価

携帯電話などの連絡先を交わさずに、場所と曜日だけを約束してデートを重ねる男女。小説『アナログ』の主人公は、SNSや情報システムの発達した現代では考えられないようなピュアな恋愛をする2人でした。

タイトルそのままの小説で‟昔ながらの恋愛”を書いたのは、お笑いタレントの大御所ビートたけしです。

常にお笑いを追い求めるビートたけしの恋愛論が、あちらこちらに散りばめられ、彼の人柄がよくわかる小説となっています。

読み進むにつれ、主人公の悟はビートたけしの分身で、ヒロインのみゆきはたけしの理想の女性像ではないかと思えてきます。

連絡先を交換せずに待ち合わせの場所と日にちの約束だけで成り立つ2人の関係。そんなプラトニックな愛を大事に育んできた2人に、ビートたけしが理想とする恋愛の形が映し出されているようです

また、悟の悪友ともいえる友人たちが素晴らしい友情で2人を見守っているのも、微笑ましく描かれていました。

口は悪いけれども本気で悟のことを心配してくれる悪友がいて、心の拠り所となるような彼女がいて、主人公の悟は十分満ち足りた人生を送れることでしょう。

作者のビートたけしの追い求める理想の人生スタイルも、しっかりと盛り込まれた恋愛小説でした。

映画『アナログ』の見どころ

ビートたけしの初恋愛小説『アナログ』。プラトニック過ぎる大人の恋愛を、『天才たけしの元気が出るテレビ!!』でディレクター・デビューをした、タカハタ秀太監督が映画化しました。

ビートたけしの恋愛論をそのまま受け継いで‟悟”演じるのは、『TANG タング』(2022)や『ラーゲリより愛を込めて』(2022)など、さまざまな役と愛の形を演じてきた二宮和也。

連絡先を教えてくれない謎の美女・みゆきは、『弥生、三月-君を愛した30年-』(2020)『ホテルローヤル』(2020)の波留が演じます。

母性本能をくすぐる泣き虫‟悟”の雰囲気は、二宮和也の甘いムードと重なるものがあり、謎多き美女みゆきにどこまで自分の気持ちをぶつけられるのかと、楽しみになります。

映画『アナログ』の作品情報


(C)2023「アナログ」製作委員会(C)T.N GON Co., Ltd.

【公開】
2023年(日本映画)

【原作】
ビートたけし『アナログ』(新潮社 2017)

【監督】
タカハタ秀太

【脚本】
港岳彦

【キャスト】
二宮和也、波瑠

まとめ

ビートたけしの恋愛小説『アナログ』をご紹介しました。この小説は、2023年10月6日(金)に全国公開予定です。

時代に逆らうようなアナログな恋愛観ですが、ある年齢以上の方には懐かしく思えて納得のいくものではないでしょうか

簡単に連絡先を教え合って恋愛ごっこに走る傾向がある現代にこのような恋愛もあるんだよと、優しく教えられた気がしました。

運命の悪戯のような‟すれ違い”も、お互いを思う心さえあればきっと乗り越えていけます。そんな確信を与えて恋愛下手な人を勇気付けてくれる小説ですから、映画もハッピーエンドが期待されます。乞うご期待!






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