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Entry 2022/08/16
Update

映画『2046』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。近未来SF小説を描く主人公をウォン・カーウァイ監督と トニー・レオンで描く秀作!

  • Writer :
  • からさわゆみこ

「欲望の翼」「花様年華」に続く1960年代シリーズ作品。前2作のエピソードを散りばめながら描く。

今回ご紹介する映画『2046』は『欲望の翼』(1992)、『花様年華』(2000)のウォン・カーウァイ監督が、続編として制作しました。

1967年代の香港を舞台に、かつて愛した女性が忘れられず、刹那的に女性関係を繰り返す小説家が、主人公に自分を投影させた近未来SF小説「2046」を執筆していく様を描きます。

トニー・レオンが第24回香港電影金像奨で最優秀主演男優賞、チャン・ツィイーが最優秀主演女優賞を受賞し、ニューヨーク映画批評家協会賞では外国語映画賞を受賞しました。

本作の注目すべき点は、日本のトップアイドルとして不動の地位を確立し、テレビドラマで主人公を演じれば、高視聴率を獲得する木村拓哉が出演し、演技の実力を世界に知らしめたことです。

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映画『2046』の作品情報

(C)2004 BLOCK 2 PICTURES INC.

【公開】
2004年(香港映画)

【監督・脚本】
ウォン・カーウァイ

【原題】
2046

【キャスト】
トニー・レオン、コン・リー、フェイ・ウォン、木村拓哉、チャン・ツィイー、カリーナ・ラウ、チャン・チェン、ドン・ジェ、マギー・チャン

【作品概要】
映画『2046』は第57回 カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の出品作品です。

ウォン・カーウァイ監督の1960年代シリーズで、全作品に出演するトニー・レオンとマギー・チャンの他に、カーウァイ監督の『恋する惑星』(1994)のフェイ・ウォンも出演。

また、『秋菊の物語』(1992)でベネチア国際映画祭の女優賞を受賞したコン・リー、『HERO』(2002)、『LOVERS』(2004)のチャン・ツィイーといった、世界で活躍するアジアを代表する女優が出演します。

映画『2046』のあらすじとネタバレ

(C)2004 BLOCK 2 PICTURES INC.

「“2046”では壮大なネットワークで地球を覆っている・・・。時々、怪しげな列車が“2046”を目指して出発していた」と若い男は回想します。

その“2046”に向かう乗客の目的は、無くした自分の記憶をみつけるためです。2046では“何も変わらず”残っているからです。

しかし、それが本当なのか噂なのか誰も知りません。なぜなら2046から戻ってきた人間は、誰一人としていなかったからです。

ところが回想していた若い男は2046を抜け出し、戻ろうとしていました。彼はどのくらいの時間が経ったのか、感覚が無くなり寂しい感覚に陥ります。

車掌も2046から戻ってきた人間は初めてだと驚きます。そして、その理由を訊ねましたが、彼はあいまいなことしか答えませんでした。

それでも2046に向かった理由はあります。昔、恋をし突然姿を消してしまった女性が、そこで待っているのではないかと思ったからです。

でも、彼は彼女を見つけられず、彼女が自分を愛してくれていたのか、考えずにはいられなくなりますが、それは、彼女にとって誰にも言えない、“秘密”だと思うようにしました。

「全ての記憶は雨に濡れている」

左手に黒手袋をしている女性が階下へ降りてくると、上ってくる男と出くわします。彼女は「ここへはもう来ない約束」と言います。

男はシンガポールにいても将来がないから、2日後の船で香港へ帰ると告げ、彼女に一緒に来てほしいと言います。

彼女は「私の過去も知らないくせに」と反発しますが、男は「話したくなければ言わなくていい」と食らいつきます。

2人は店に行き、彼女はテーブルにカードを広げ、お互いにカードを引き男が勝てば行くと言いますが、男はハートのジャック、彼女はスペードのエースを引きます。

男はそれを見て彼女の“拒絶”だと理解しました。男がその女性と会うのは、その晩が最初で最後でした。

男は1966年の末に香港へ戻りますが、すぐに暴動が勃発しました。彼は湾仔(わんちゃい)のホテルを定宿にし、新聞にコラムを載せる仕事をしました。

原稿料は1000文字で10香港ドルと、生活は苦しいものでした。男は生活のために執筆の内容を選ぶ余裕もなく、官能小説を書くようになります。

そんな暮らしの中で男は、女遊びを覚え“一生続く恋などない”と、一夜だけの関係を重ねていきました。

1966年12月24日、男はシンガポールに渡った64年に親しくなった、ダンサーのルルと再会しますが、彼女は彼を覚えていませんでした。

ルルは昔の名前と言って去ろうとしますが、本当に会ったことがあるのかもう一度聞きます。彼女は男が“死んだ恋人”に似ていると、ダンスを教えてくれたと話しました。

男はルルとよく一緒に賭場へ行き、彼女が一財産失い借金を背負ったため、男と彼の友人で金を出し合い、香港に帰国させたと話します。

そして、“死んだ恋人”がシンガポールの華僑で裕福な家の息子で、結婚するはずだったこと、彼ほど愛した人はいないと言っていた…そんな話をしました。

酔いつぶれた彼女をホテルへ送り帰ろうとした時、彼女の部屋の番号にふと、見覚えがあることを思い出し、この出来事が「2046」を執筆するきっかけとなりました。

2日後、男は部屋の鍵を返しにルルの部屋を訪ねますが、支配人はルルという女性はおらず、ミミという女性ならいたが越して行ったと言います。

そして、再び男は宿を訪ね、2046号室が空いていたら借りたいと申し出ます。支配人は男を怪訝そうに見て「ちゃんとした人物にしか貸していない」と言います。

男が新聞に記事を書いてると言ったとたん、態度は一変しましたが、2046号室は改装中だと隣りの2047号室を勧め、改装が済んだら移ればいいと提案しました。

ルルは前の晩にその部屋で恋人に刺されて亡くなっていました。

以下、『2046』のネタバレ・結末の記載がございます。『2046』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2004 BLOCK 2 PICTURES INC.

2046号室の改装は終わりますが男はそのまま、2047号室に留まることを決めました。窓格子から外を覗いたり、壁越しに意味の分からない言葉を話す女性の声を聞きます。

彼女はホテルの支配人の娘で、彼女がつぶやいていた言葉は片言の日本語です。同じホテルに日本の企業から、仕事で香港に来ていた“タク”という日本人が滞在していました。

彼女は彼と恋に落ちていました。2人は長い間付き合っていましたが、日本人嫌いの父親から、付き合いを反対され別れさせられました。

タクは彼女の気持ちだけは知っておきたいと、愛しているのか嫌いなのか尋ねますが、彼女はうつむいたままです。

そして、タクが「俺と一緒に行かないか?」と聞いても彼女は、目をそらしたまま何も答えず、諦めた彼は「さよなら」と日本へ帰国します。

それから彼女は片言の日本語で、独り言をつぶやくようになりました。タクは帰国したものの再び香港へ戻り、父親のワンと話し合おうとしますが、ワンは頑なに拒みました。

やがて、彼女は心を病み“問題”を起こし病院へ入れられました。

1967年5月22日、香港では夜間外出禁止令が発令されました。爆弾事件が多発し市民は怯え、景気も悪化していきます。

このことをきっかけにチャウは小説「2046」を書き始めます。愛を求める男女が“2046”を目指す物語です。

“2046”とはチャウにとって部屋番号でしかなく、未来を描いているようで実のところは、自分自身の生き様を投影させたもので、彼と関わった人物を登場させていました。

香港の騒動は9月に収束し、市民生活が正常に戻ると同時に、空室だった2046号室にバイ・リンという女性が越してきました。

チャウの同僚ピンは壁のすき間から、彼女の部屋を覗き見して、彼女を仲介してほしいと頼みます。しかし、チャウが取り合わずにいると、ピンは勝手に彼女の部屋を訪ねてしまいます。

初めてバイ・リンの姿を見たチャウは、彼女の美しさに一目ぼれします。ピンのことを詫びる贈り物を持って行きますが、彼女は受け取りを拒みます。

チャウが執拗に手渡そうとすると、彼の頬を叩く気の強い女性でした。扱いやすい女だと思われたくないと、強気な態度をします。

チャウが贈り物を強引に手渡し帰ると、リンはプレゼントを見て、まんざらでもない笑顔を浮かべます。

とにかくリンはプライドが高く、恋人のターパオを手玉に取っていました。それに嫌気がさした彼は別の女性とも付き合い、リンに伝えると彼女から激高され部屋を追い出されます。

1967年12月24日、チャウはイブの街に繰り出そうとした時、帰宅したリンと出くわし、チャウは恋人とすごさないのか尋ねますが、彼女は不機嫌そうに部屋へ入ろうとします。

チャウはすかさず食事に誘います。レストランでリンは、こんなイヴになるはずじゃなかったとこぼします。

ターパオは彼女をシンガポールへ連れて行くと約束していましたが、約束は果たされず別れて帰ってきたところでした。

リンはチャウにシンガポールに行ったことはあるか聞き、彼は新聞記者として滞在したことがあると話すと、彼女はシンガポールのことをいろいろ聞きます。

リンはチャウの取り巻きの女性を気にしますが、遊びだけの女に深入りはしないと言います。リンは遊びの関係よりも“いい人”が1人いればいいと言いました。

チャウは有り余る時間で暇をつぶしたり、誰かに貸すこともあると話し、今夜は前半は君に貸して、後半は自分が借りると言います。

リンはそれを体の関係だと誤解すると、チャウは彼女に“飲み友達になりたい”と提案しました。承諾したリンは飲み直すために、別の店へ行きます。

後日、ピンはチャウに新しい彼女ができたと、お披露目パーティーを開きます。チャウは仲間達に奢らせようと、高い料理ばかり頼みました。

ところが彼女は宴会場に来ません。本当に彼女ができたのかどうか、賭けをしていた彼らは、チャウに宴会代金を支払わせます。

一方、ホテルにいたリンは誰かと電話で話し、チャウの顛末を聞いて笑います。ピンと共謀してチャウをハメたのでした。

深夜、チャウがリンの部屋を訪ねると、彼女はピンに来るなと言われたと白状します。この件をきっかけにその晩2人は、体の関係をもちました。

リンがシャワーを浴びて寝室へ行くと、チャウは身支度をして部屋へ戻ろうとしていました。リンが少し動揺していると、チャウは200ドル手渡そうとしました。

リン(自分)は売り物ではないと言うと、チャウは破いてしまった服の弁償だと答えます。しかし、つきまとわれたくないのだと感じたリンは、10ドルだけ貰うことにします。

そして、お望みの時があれば、この値段でいいと言ってしまいます。チャウは承知したという表情で、彼女の横をすり抜け部屋へ戻りました。

心を許しかけていたリンは悔しさをにじませ、涙を流しますがこの日を境に、チャウとは気楽な関係を続けました。

そんなある晩、チャウは月末で金がないとリンの誘いを断ります。リンは“ツケ”にしておくと言っても、チャウはその晩、リンを抱きませんでした。

しばらくしてピンがリンを呼び出し、チャウからのプレゼントを渡します。そして、リンにチャウに惚れているようだが、その気持ちに応えてくれる男ではないと忠告します。

リンはチャウの部屋で待ち伏せし、他に女がいても自分のことは、別格に扱ってほしいと懇願しますが、彼は無理だと断りました。

彼女は「もうおしまいね」と、まとわりつかないかわりに、会いにも来ないよう出ていき、チャウに10ドルを渡します。

チャウはそんな彼女に平然と「気が向いたらいつでも、同じ金額で」と言います。

リンはチャウへのあてつけに、男を連れ込むようになりますが、チャウもまた部屋に女を連れ込みます。リンの心は傷つくばかりでした。

やがてリンは引越し、ターパオと寄りを戻します。クラブでたまにすれ違っても知らんふりし、連絡を取り合うこともしませんでした。

(C)2004 BLOCK 2 PICTURES INC.

支配人の娘ジンウェンが退院し帰ってくると、再び独り言を聞くようになります。彼女はチャウが出かける時に、手紙を出してほしいと頼みます。

ジンウェンは日本人の恋人タクと文通をしていましたが、それが父親にみつかってしまい罵倒されます。

チャウは見かねてタクからの手紙を、自分宛てにするようジンウェンに言いました。タクからの手紙はマメに届き、その情熱的な内容は彼女の心を掴んで離さなくなります。

このことがきっかけで、チャウとジンウェンの交流も親しくなります。ある日、ジンウェンがどうして“官能小説”ばかり書くのか聞きます。

普通の小説だと売れないからと答えると、“武侠小説”なら人気があると勧めてみます。チャウは以前、ある人と2人で取り組んだが、何カ月もホテルに籠り苦労したと話します。

するとジンウェンは自分も書くのが好きだと話し、遊びで書いたものだけど読んで、感想を聞かせてほしいと言います。

彼女が書いた物語はノートに数十冊ありました。ジンウェンがチャウに感想を聞くと彼は「二度と書くな」と答え、なぜなら彼女の文章が上手すぎて、自分が失業するからと褒めます。

その後、ジンウェンはチャウの口述を書き起こす作業を手伝います。つじつまの合わない内容になると、ジンウェンがうまく構成し直してくれます。

有能な助手になりました。チャウの執筆業にも弾みができ、その夏は彼にとって楽しい日々となりました。やがてチャウの心に想いが芽生えてきました。

しかし、ジンウェンは時々「この世に決して変わらないものはものはある?」とチャウに聞くので、彼は彼女の恋人の気持ちを小説にしてみると約束し、題名は「2047」にしようと言いました。

しかし、チャウは書き進めるうちに、主人公が彼女の恋人ではなく、自分自身に置き換わっていることに気がつきます。

“2046”を出た列車に乗る日本人タクは、時間が経つにつれ孤独を感じ、1224-1225ゾーンは凍てつく寒さの区域で、アンドロイドにぬくもりを求めます。

車掌はアンドロイドは心を込め尽くすが、愛してはだめだと忠告し、タクはそんなことはありえないと言いますが、感情は無意識の中で起こるからと答えました。

タクは恋人に似たアンドロイドに「一緒に行かないか?」と尋ねますが、彼女は返事をしませんでした。

車掌は長旅でアンドロイドたちの機能は衰え、感情にタイムラグが発生していると説明しますが、タクは機能の衰えではなく、彼女が自分を愛していないからだと受け入れ、諦めようと決断します。

1968年12月24日、タクからの手紙が届かなくなっていました。ジンウェンはタクに可能性はないから、もう手紙は送らないよう伝え諦めたからです。

可能性はあるとチャウは言い、手遅れになる前に日本まで訪ねて行くよう勧めます。ジンウェンはイヴの夜、チャウが彼ならどうするか聞きます。

彼に電話して直接聞けばいいとチャウは、新聞社の電話を使って国際電話をさせます。彼女は楽しそうに大きな声でタクと話をし、チャウはサンタクロースになった気分に浸ります。

1224-1225区域とは誰もがほんの少し、ぬくもりを求めるクリスマスイヴから、クリスマスにかけた期間という意味でした。

あのアンドロイドが返事をしなかったのは、自分(チャウ)ではなく別の誰かを愛していたからだ・・・と結論しました。

やがて、ジンウェンは日本へ旅立ち、チャウは書き上げた「2047」を彼女に贈りました。

ジンウェンはタクとの結婚が決まり、父親との確執も解けました。彼女からの伝言で「2047」はすばらしい小説だが、結末が悲しすぎるから変えてほしいと言われます。

チャウはやってみますと答え、100時間考えましたが、ハッピーエンドの仕方がわかりませんでした。

1969年12月24日、チャウはシンガポールの賭場に、スーはいないかと訪ねていました。しかし、彼女の消息は不明でした。

チャウが1963年シンガポールにいた頃、人生の意味を見失い賭場に入り浸る、荒んだ生活をしていました。

そこにいたのがプロの賭博師で、イカサマ師という噂から“黒蜘蛛”とも呼ばれていた、“スー・リーチェン”という女性です。

彼女は負けた分を取り返したら、2度と賭場には来ないと約束させ、チャウを助けてくれた恩人でした。

最後の晩、チャウは食事をしながらスーに、かつて愛した女性と同じ名前だと言いました。スーはまだ彼女を愛しているか聞きますが、チャウは話題を変え彼女の過去を聞きます。

カードでチャウが勝てば話すといいますが、チャウは負けます。香港へ発つ日、チャウがスーを訪ねると、最後になると思うから抱きしめてほしいと言います。

チャウは彼女にキスをして「君が過去から解放されたら、訪ねて来てほしい」と言って去りました。

しかし、過去に囚われていたのは“スー・リーチェン”の影を追う、チャウ自身で彼女はそのことに気づいていたのだと悟ります。

“2046”へ向かう目的は無くした記憶を探すこと。なぜなら2046では“何も変わらない”から、それが本当かどうか誰もわからない。誰一人、戻ってきた者がいないから。

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映画『2046』の感想と評価

(C)2004 BLOCK 2 PICTURES INC.

『2046』は『花様年華』の撮影とほぼ同時期に開始していましたが、カーウァイ監督独自の進行スタイルに、キャストのスケジュール調整が難航したり、渡航制限もかかったSARSウィルスの出現などで、完成までに5年という年月がかかりました。

また、2003年に自らの命を断ったレスリー・チャンへの哀悼という形で、レスリーが主演だった『欲望の翼』からのオマージュへと繋がり、完成までに時間がかかった要因のひとつになりました。

ストーリーの時系列は『花様年華』からの流用で、役名やエピソードは『欲望の翼』からの流れをくんでいると観ることができます。

チャウが忘れることのできない女性は、『花様年華』のチャン夫人のことですが、本作で出てくる名前は“スー・リーチェン”だったので、少し混乱します。

結婚してチャン・リーチェンになりチャン夫人ってこと?という素朴な疑問でした。スーは旧姓となりますが、チャウがそこまで知っていたとは・・・と、不自然な印象です。

しかし、カーウァイ監督は『2046』は『花様年華』の続編ではないと公言しているので、深く考えないで観るのがおすすめです。

1960年代シリーズで考えた時に、『欲望の翼』のラストシーンを鑑みると、実は次に続くのは『2046』で、チャウがなぜ女遊びや賭博で身を落としたのか?理由を遡るために『花様年華』があるという観方もできそうです。

“決して変わらないもの”を求めるのが人の性

“決して変わらないもの”は、過去に置いてきたものです。

それがチャウにとってチャン夫人と小説を作り上げ、2人が最初で最後に結ばれたホテルの“2046号室”でのひとときです。

しかし、そこに行ったとしてもチャン夫人がいるわけもなく、もう取り戻せないものなのだと、思い知らされるだけです。

それでも、面影という代替をどこかに求めてしまうのが、人間の浅はかな性なのだとこの作品では訴えます。

それゆえにチャウがジンウェンに「手遅れになる前に」と背中を押した気持ちが、非常に良く伝わりました。

自分がジンウェンにどんどん惹かれていくのを感じながら、「2046」を執筆していく中で叶わぬ恋ということも悟ったからです。

そのことで囚われていた過去から解放され、再びシンガポールへ渡り、賭博師のスー・リーチェンに会いに行ったのです。

チャウが考えた通り恋愛というのはタイミングと、出会う場所で変わるものでした。彼が過去から解放されたとしても、彼女がまだ過去に囚われていれば再会は叶わないのです。

過去に囚われるのは“秘密”があるから

チャウがチャン夫人との恋に囚われていたのは、それが“不倫”という秘密の恋だったからです。

また、お互いに夫婦関係が破綻していたにも関わらず、それをも秘密にしながら惹かれ合い、相手を強く愛していたせいです。

結局、その秘密が足枷になってある意味、安息を得られない“脚のない鳥”のような生き方になっていきました。

賭博師のスー・リーチェンの過去とは、どんなものだったのでしょうか?

黒手袋で隠された左手と共に、その秘密は隠されたままですが、誰にも知られたくない頑なな秘密です。

彼女はその秘密を抱えたまま、土へと還ったのでは? そんなふうにも想像してしまいます。

まとめ

(C)2004 BLOCK 2 PICTURES INC.

映画『2046』は120分強の長編作品でありながら、クリストファー・ドイルの斬新かつスタイリッシュな映像美で観る者の目を飽きさせず、バックに流れるオペラがさらに芸術鑑賞している感覚にさせます。

1967年作家のチャウは常宿の娘ジンウェンが交際する、日本人ビジネスマンのタクを主人公に、愛を求めあう男女の物語「2046」の執筆を始めます。

登場人物たちは永遠の愛を求め「何も変わらない」といわれる“2046”を目指して列車に乗り込む物語です。

ところがその主人公はチャウ自身を投影した者だと気づき、“過去”の記憶そのものが変わらないもので、取り戻すことのできない“愛”だと理解した物語でした。

あの日、あの時、自分に勇気があれば事態は変わっていたかもしれない。そんな後悔を表したストーリーです。

また、刹那的な男と女の関係の中に、厳しい現実を突きつけ、戻るべき場所へ導く、チャウのやさしさのようなものも感じとれました。

自分がやられて嫌なことはしない……。人への恩は仇で返さない、自分の経験は惜しみなく人へ伝える。簡単なようでそれができず、素直になれないのが人間の愛おしさでもあります。

“自業自得”とは、自分で蒔いた種は自分で刈り取る、後悔すること。それは、恋愛や人間関係にはあるものだと、遠回りしている彼らの姿から諭される映画でした。





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