ハリウッドの光と影を映し出す傑作
『お熱いのがお好き』(1959)、『アパートの鍵貸します』(1960)の巨匠ビリー・ワイルダーが、ハリウッドの内幕をシニカルに描く名作です。
売れない脚本家が往年の大女優と出会ったことから、転落していく様をスリリングに描きます。
主演はウィリアム・ホールデン。グロリア・スワンソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイムが共演します。
過去の栄光にしがみつき、時が止まったままの大女優ノーマ・デズモンド。彼女との奇妙な同居生活に引き込まれたジョーの運命から目が離せなくなる、本作の魅力を紐解きます。
映画『サンセット大通り』の作品情報

1950 By Paramount Pictures. All Rights Reserved.
【公開】
1951年(アメリカ映画)
【監督】
ビリー・ワイルダー
【脚本】
チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、D・M・マーシュマン・Jr
【キャスト】
ウィリアム・ホールデン、グロリア・スワンソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム、ナンシー・オルソン
【作品概要】
『麗しのサブリナ』(1954)、『お熱いのがお好き』(1959)、『アパートの鍵貸します』(1960)など、数々の名作を生み出した巨匠ビリー・ワイルダー作品。
コメディを得意とするワイルダーが、ハリウッドの内幕を皮肉たっぷりにシリアスに描きます。
主演は当時無名だったが、後に『麗しのサブリナ』(1954)などの名作で活躍するウィリアム・ホールデン。
サイレント映画時代の大女優グロリア・スワンソンが往年のスターであるノーマ・デズモンドを、彼女を守り続ける執事をスワンソンを撮った経験のある元映画監督エリッヒ・フォン・シュトロハイムが演じます。
本人役で登場する映画監督のセシル・B・デミル、サイレント映画時代のスターだったバスター・キートン、H・B・ワーナーらにも注目です。
映画『サンセット大通り』のあらすじとネタバレ

1950 By Paramount Pictures. All Rights Reserved.
ある日、ハリウッドの売れない脚本家ジョー・ギリスは、借金取りに追われる中、とある大きな屋敷に逃げ込みます。
そこには、隠居生活を送るサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドが、執事のマックスと二人で暮らしていました。
彼女は自分が主演する『サロメ』の脚本を書いていました。彼女から脚本の手直しと執筆を依頼され、金に困っているジョーは住み込みで働き始めます。
やがて、彼は生活の全てをノーマに束縛されるようになっていきました。
ネタバレ部分は下記記事で ↓
映画『サンセット大通り』の感想と評価

1950 By Paramount Pictures. All Rights Reserved.
衝撃のラスト・シーンの持つリアリティー
ベティへの愛によって目が覚めたジョーがとうとう自分に背中を向けた時、ノーマは狂乱の内に彼に銃を向けてしまいます。
ノーマの銃弾に倒れた憐れなジョーは、命を落としプールに浮かぶこととなりました。
ノーマにとって、自分も若返ったと錯覚させてくれる若い恋人のジョーは、自らを輝かせるために必要でした。彼が去って行く時、自分の美も若さも消え失せるように感じていたのかもしれません。
私は大物、小さくなったのは映画の方。出会った頃、ノーマは堂々とジョーに語ります。
しかし、実際に時代においていかれたのはノーマの方でした。時が止まった屋敷の中で、執事マックスの狂気の愛に守られ続けてきた彼女は、自分はまだ世界の中心にいると信じこんでいたのです。
パラマウントのデミル監督を自信満々に訪ね、映画を撮れると信じ切って有頂天になるノーマ。過酷な美容術、美顔に励む彼女を、マックスとジョーは憐れみの目で見つめます。
元々自殺未遂を繰り返すほど不安定だったノーマの心は、ジョーの命を奪ったことによって完全に壊れてしまいます。そんな状態の彼女は、この事件により、再び眩しいフラッシュを浴びることとなりました。
精神が崩壊したノーマには、本能ともいえるステージへの狂気の愛だけが残っていました。
ジョーについての聞き取りにはまったく反応を示さなかったノーマですが、”カメラ”という言葉だけに強く反応します。
すべてを心得ているマックスは、彼女の最後の夢を見事に叶えます。それは同時にマックスの人生をかけた夢でもありました。
最高の幸せを感じて自ら光を放ちながら階段を堂々と降りてくるノーマ。そんな彼女の姿に圧倒され、目が釘付けになる大勢の人々。
このラスト・シーンによって本作は名作となり得たことを実感させられます。
演じるグロリア・スワンソン自身も、時代に忘れ去られたサイレント時代の大女優です。そして、マックス役のシュトロハイムも、異常な完全主義ゆえに映画監督としては短命でした。
そんな二人だからこそリアリティーが生まれ、他を圧倒するこんなにも素晴らしいラスト・シーンとなったと言えます。
このエンディングを描くために本作は作られたと言っても過言ではないでしょう。
ジョーとの出会いも、恋も、殺人も、これまでノーマが辿ってきた長い人生すべては、このカメラを受ける一瞬のためにありました。
もしかすると、グロリア・スワンソンにとっても同じだったのかもしれません。
彼女は本作によって、往年の大女優としてではなく、ノーマ・デズモンドの名優として永遠の輝きを得たのです。
映画こそ私の人生。そうカメラの前に宣言するノーマの神々しさ。
舞台ゼリフのようでありながら血の通った彼女の言葉には、グロリアの素の思いが詰まっているようにしか思えないのです。
ノーマを愛する二人の男の思い

1950 By Paramount Pictures. All Rights Reserved.
冒頭からミステリー感たっぷり。何しろ、プールに浮かんだ死体が喋り出すところから始まるのですから。彼こそが本作の主人公の脚本家ジョー・ギリスです。
半年前にサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドと出会った彼が、この結果を迎えるまでの顛末が、彼自身によって語られます。
金に困っていたジョーは、大金持ちのノーマの依頼により住み込みで脚本を書き始めます。
ノーマから愛を打ち明けられ逃げだしたものの、その後彼女が自殺未遂をしたと知り、見捨てられなくなります。この気の良さが、彼の致命傷となりました。
自分に優しくしてくれたノーマに対する恩義と愛は確かにあったものの、彼女とのいびつな関係を完全に受け入れられるほどには、ジョーは落ちぶれていませんでした。彼にとって、ノーマの待つ屋敷は牢獄だったのです。
その分、若く清らかなベティへの思いは日に日に強くなっていきました。彼女から真実の愛を得たジョーは、ノーマとの生活からの脱却を決心し、その結果命を落とします。
もう一人、屋敷にはノーマを狂信的に愛し続ける男がいました。執事のマックスです。
彼は、過去の栄光の中にノーマを生かし続けることに心を砕きます。他の男との恋を繰り返す彼女を見て、苦しまなかったはずはありません。しかし、嫉妬を乗り越えた別次元に彼の愛はあったと言えます。
半分心の壊れかけた孤独なノーマを守るためには、周囲を嘘で固めるしか方法はありませんでした。実際、素直な彼女は、毎日マックスが書いた大量のファンレターが届くだけで安心して日々を過ごすことができたのです。
なぜ、ここまでマックスはノーマを愛し抜くことができたのでしょう。ヒントはデミル監督の言葉の中に読み取れます。
パラマウントを訪れたノーマを追い返そうとする若いスタッフに向かい、デミルはこう言うのです。”17歳の頃の彼女を知らないのだから仕方ない”と。
素晴らしく美しく、仕事に真摯だった若き日のノーマ。その頃を知っている者達は、彼女にいまだ魅了され、尊敬せずにはいられないのです。
マックスは16歳のノーマと出会い、それ以来彼女を愛することだけに身を捧げて生きてきました。
もし、ノーマが平凡な女性だったなら、マックスの愛に身を委ねて幸せになる道もあったのかもしれないと思うと切なくなります。
しかし、そうなれないノーマだからこそ、マックスの愛は不滅だったのかもしれず、人間の感情の複雑さに思いを馳せずにはいられないのです。
まとめ

1950 By Paramount Pictures. All Rights Reserved.
コメディの天才監督ビリー・ワイルダーが、シニカルにシリアスにハリウッドの光と影を映し出した傑作『サンセット大通り』。
往年の大女優グロリア・スワンソンをはじめ、現実の俳優達と登場人物達の姿がリンクし、現実と非現実が混じり合う幻想的な作品です。
忘れ去られたサイレント時代の遺物として描かれながらも、そこに悲壮感はありません。彼らの確かな実力が発する光に圧倒され、本物の持つ凄味を感じることでしょう。
時代を超えて輝きを放つ、ハリウッドの分厚い魅力に魅了される一作です。






































