ふたりの男性ととびきりキュートな女性のコミカルな恋模様
『サンセット大通り』(1950)『アパートの鍵貸します』(1960)の巨匠ビリー・ワイルダーによる傑作コメディ。
『七年目の浮気』(1955)でワイルダー監督と組んだセクシー女優マリリン・モンローがヒロイン・シュガーを、女性楽団に女装して潜入するふたりの楽士をトニー・カーティスとジャック・レモンが演じます。
偶然マフィアが人を殺害する現場を目撃してしまい、命からがら逃げだしたふたりの貧乏楽士は、男子禁制の女性楽団に女装して偽名で潜り込みます。
そこで出会ったのは、とびきりセクシーでキュートなウクレレ奏者のシュガーでした。彼女に首ったけになった彼らは、コミカルな恋模様を繰り広げます。
「アメリカ喜劇映画ベスト100」で第1位を獲得した名作のあふれんばかりの魅力についてご紹介します。
CONTENTS
映画『お熱いのがお好き』の作品情報
【公開】
1959年(アメリカ映画)
【原作】
ロバート・ソーレン、マイケル・ローガン
【監督・製作】
ビリー・ワイルダー
【脚本】
ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
【編集】
アーサー・シュミット
【出演】
マリリン・モンロー、トニー・カーティス、ジャック・レモン、ジョージ・ラフト、パット・オブライエン、ジョー・E・ブラウン、ネーミア・パーソフ
【作品概要】
『サンセット大通り』(1950)『アパートの鍵貸します』(1960)で米アカデミー賞を受賞した巨匠ビリー・ワイルダーが脚本・監督を務めた傑作コメディです。
「アメリカ喜劇映画ベスト100」で第1位を獲得しました。
マフィアの殺害現場を偶然目撃してしまったふたりの楽士が、男子禁制の女性楽団に身を隠して巻き起こす騒動をユーモラスに描いた一作です。ヒロインのシュガーをめぐるコミカルな恋模様も見どころとなっています。
『七年目の浮気』(1955)でワイルダー監督と組んだセクシー女優マリリン・モンローが、ヒロインのウクレレ奏者シュガーを演じました。作中の「I wanna be loved by you」を歌うシーンは名場面として知られています。
マフィアの殺人現場を目撃してしまい、女性楽団に女装して潜入することになるふたりの楽士を演じるのは、トニー・カーティスとジャック・レモン。本作でワイルダー監督に抜擢されたレモンは、その後監督作品の常連となり、『アパートの鍵貸します』(1960)でも主演を務めています。
映画『お熱いのがお好き』のあらすじとネタバレ
1929年禁酒時代のシカゴ。闇クラブで演奏していたバンドマンのジョーとジェリーは、警察が踏み込もうとしていることにいち早く気づいて逃げ出しました。
その後、新たな仕事先に向かおうとしたふたりは、マフィアのスパッツが自分を裏切ったチャーリーら7人を殺害する現場を偶然目撃してしまいます。口封じのために危うく殺されそうになりながらも、ふたりは命からがらその場を逃げ出しました。
一味に追われる身となった彼らは、女装して名前をジョゼフィンとダフネに変え、女性オーケストラの一行に紛れ込んでマイアミ演奏旅行に出発します。
ふたりは、オーケストラメンバーのセクシーなシュガーを一目見て、その魅力の虜になります。列車のトイレで隠れてバーボンを飲んでいたシュガーと、彼らは親しくなりました。
列車の中での演奏練習で、ウクレレを手に踊り出すシュガー。ジョーとジェリーは、彼女のセクシーな歌声とダンスに目が釘付けになります。
ところが、シュガーは踊るうちにストッキングに隠していたバーボンを落としてしまいました。指揮者のスーとマネージャーのビーンストックに叱られそうになりますが、ジェリーはバーボンは自分のものだとうそをついて助け舟を出しました。シュガーは感謝の笑顔を向け、ジェリーもそれに答えます。
夜になり、メンバーたちはパジャマ姿で寝台に入っていきます。ジョーは興奮するジェリーを外に出られなくするために、2段ベッドのはしごを外しました。マネージャーたちは、毛色の違う彼らを怪しんでいました。
深夜になると、シュガーは昼間の礼を言うためにジェリーの寝台を訪ねました。スーがやって来るのに気づいたシュガーは、慌ててジェリーの寝台に入り込んで隠れます。困ったジェリーは、シュガーと酒盛りを始めました。
声を聞きつけたほかのメンバーもジェリーの寝台に押しかけ、パーティーが始まります。いつの間にか女性たちでぎゅうぎゅう詰めになったジェリーのベッド。騒ぎに驚いてジョーが飛び起きました。
シュガーは大きな氷を砕きながら、これまで男性のバンドに入っていたがメガネをかけたテナーサックスにしびれてしまうとジョーに告白します。ジョーは自分もテナー奏者だと興奮して話します。シュガーは惚れた男に金を貢がされた末に捨てられてきた過去を語ります。
25歳になる彼女は、百万長者との結婚を夢見てフロリダをめざしていました。
そのころ、酔った女性たちに背中に氷を入れられたジェリーは、騒動を止めようとして思わず非常ブレーキを引いてしまいます。列車が急停止し、振り落とされた女性たちは大慌てでベッドに散って行きました。
映画『お熱いのがお好き』の感想と評価
ワイルダー監督が魔法をかけた傑作コメディ
監督・脚本は名匠ビリー・ワイルダー、ワイルダー作品常連の喜劇俳優ジャック・レモン、演技派のトニー・カーティス、そして今なお世界中で愛され続ける美しき女優マリリン・モンローが顔を揃えた『お熱いのがお好き』。これで面白くないはずがありません。
テナーサックス奏者で女たらしのジョー、ベース奏者で気のいいジェリーは一緒にさまざまなステージで演奏していましたが、ある日運悪くマフィアが人を殺害する現場を目撃してしまい、追われる身となってしまいます。
ジョーとジェリーが逃げ込んだのは、男子禁制の女性オーケストラでした。女装をして高い声で話し、名前もジョゼフィンとダフネという偽名に変えたふたり。その姿が最高におかしいのです。
彼らの女装を自然に見せるためにモノクロにしたそうですが、その狙いはまさに当たったといえるでしょう。ジャック・レモンは水着姿まで披露する見事な化けっぷりを見せています。
かわいい女性奏者たちに鼻の下をのばしながら、必死に女のフリをする彼らの前に、最高にキュートな女性が現れます。モンロー演じるウクレレ奏者のシュガーです。美しい脚に隠し持っていた酒をマネージャーらに見つかりクビにされそうになったシュガーは、助けてくれたジェリーと仲良くなります。
彼女に本気で恋心を抱いたのはジョーの方でした。シェルの御曹司のふりをして彼女のハートをつかみ、コミカルな恋模様を繰り広げます。
全編に渡り、ワイルダー監督ならではの楽しいユーモアにあふれた笑いがちりばめられています。セリフも笑える秀逸なものばかりです。
女性ばかりの列車で、お菓子屋の夢のようだといって興奮するジェリーに、「俺たちはダイエット中だ」とジョーが言い聞かせたり、シュガーとこっそりお酒を飲もうと思っていたところに押しかけて来た大勢のレディー向かって、ジェリーが「13人は不吉だからひとり帰って!」と言うなど、始終笑いを誘うセリフが飛び出します。
ブラのひもが何度も切れて困っているジェリーの姿や、ボートの運転に不慣れなジョーがバック運転でヨットに向かう姿など小ネタもおかしくてたまりません。
ジェリーが富豪のオズグッド3世と繰り広げるダンスシーンは最高の面白さです。つい男役になってダンスをリードしてしまい、オズグッド3世から注意される姿に笑ってしまいます。
ジェリーに本気で惚れてしまったオズグッド3世のキャラクターも素晴らしく、彼のラストのセリフ「完全な人はいない」(Well, nobody’s perfect.)はアメリカ映画の名セリフベスト100に選ばれています。
ジョーとジェリーを追うマフィアの親分のスパッツ、それを追うマリガン警部、オーケストラを率いるスーと頼りないマネージャーら脇役も皆魅力たっぷりです。最初から最後まで楽しませてくれる傑作コメディの魅力の虜になるに違いありません。
光輝くマリリン・モンローの魅力
本作の主人公はジョーとジェリーですが、番の輝きを放っているのはなんといってもヒロインを演じたマリリン・モンローです。
とびきりセクシーなボディに、甘くやさしい声で、男も女もすべての人たちを魅了します。今はやりの「あざとかわいい」という言葉を超越した、とろけさせるような魅力です。
主題歌「アイ・ウォナ・ビー・ラヴド・バイ・ユー」を歌うシーンは名場面として今なお愛されており、CMなどほかのさまざまな場面で聴いたことがある方も多いことでしょう。
当時精神的に不安定だったモンローは、遅刻を繰り返すなどのトラブルで周囲を振り回し続けていました。しかし、撮り直しするたびに演技は素晴らしくなっていき、最高の一作が完成したといいます。
ワイルダー監督は前作の『七年目の浮気』撮影後、「モンローとは二度とやりたくない」と言いながらも本作でまた彼女を抜擢し、本作の後も「もう二度と仕事をしたくない」と言いつつも、3度目の共作の企画が進んでいたといいます。モンローの類いまれな魅力を表すエピソードです。
ウクレレを弾きながら歌とダンスを披露するシーンや、ジョーに熱いキスを繰り返すシーンなどのモンローならではのセクシーシーンに加え、ジョゼフィンやダフネに打ち明け話をするときのあどけない笑顔にも魅了されます。
やはりこの輝きはモンローにしか出せず、本作の成功は彼女の魅力にあったことを誰もが認めずにはいられないのです。
まとめ
映画の楽しさを知り尽くした巨匠ビリー・ワイルダーによる名作コメディ『お熱いのがお好き』。マリリン・モンローの永遠の輝きを焼き付けた一作です。
ジェリー役を演じた名喜劇役者のジャック・レモンの出世作でもあります。トニー・カーティスと見せる息の合った演技のすべてがキラキラと輝き、観客を魅了します。
マフィアに追われるスリリングな展開をコミカルな笑いで魅せてくれる本作を、何度でも繰り返し観たくなることでしょう。
「アメリカ喜劇映画ベスト100」で第1位を獲得したのも納得の、大傑作コメディの魅力にどうぞ酔いしれて下さい。