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Entry 2018/10/28
Update

『サンセット大通り』あらすじネタバレと感想。映画結末の大女優の鬼気迫る演技は必見

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

ハリウッドを舞台にした近年の映画といえば、夢を追う男女の恋を描いた『ラ・ラ・ランド』が記憶に新しいですが、今回ご紹介するのはハリウッドの光と闇を描いた『サンセット通り』。

映画史に輝く普及の名作の魅力を解説して行きます。

映画『サンセット大通り』の作品情報

【公開】
1950年[日本公開:1951年](アメリカ映画)

【原題】
Sunset Boulevard

【監督】
ビリー・ワイルダー

【キャスト】
ナンシー・オルソン、ウィリアム・ホールデン、グロリア・スワンソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム

【作品概要】
監督はオーストリア出身、『深夜の告白』(1944)『七年目の浮気』(1955)などサスペンスからコメディまで多くの名作を生み出したビリー・ワイルダー。

青年脚本家の主人公を演じるのはビリー・ワイルダー作品『第十七捕虜収容所』(1953)でアカデミー主演男優賞を受賞したウィリアム・ホールデン。

サイレント時代を代表する女優グロリア・スワンソンが強烈なインパクトを放つ“落ちぶれた女優”ノーマ・デズモンドを演じます。

本作はアカデミー賞11部門にノミネート、脚本賞、作曲賞、美術監督・装置賞 白黒部門の3部門を受賞。

同年公開の同じくハリウッドを舞台にした作品『イヴの総て』に苦戦しましたが映画史を代表する傑作とされており、アメリカ国立フィルム登録簿に登録された最初の映画の1本です。

映画『サンセット大通り』のあらすじとネタバレ


©文輝堂

ハリウッドのサンセット大通りにある豪邸のプール。背中と腹に銃弾を撃ち込まれた男の死体が浮かんでいました。

死体を取り囲む警察や新聞記者たち。射殺されたのはB級映画の脚本を2本しか書いたことのない脚本家でした。

話は遡って、その殺人事件から半年前。ハリウッドの安アパートに住む脚本家のジョー・ギリスは書き上げた脚本を採用してもらえず、借金に苦しんでいました。

ある日、取立屋に追われたジョーが逃げ込んだのは、サンセット大通りにある寂れた豪邸。そこに住んでいたのはサイレント映画時代の大女優ノーマ・デズモンドでした。

執事マックスに促され屋敷に踏み入れたジョー。彼は銀幕への復帰を目論むノーマに、復帰作として書いた『サロメ』の脚本を読むように言われます。

サイレント時代の女優の彼女は、とうの昔に忘れ去られた存在でした。ですが執事マックスによってその事実を隠され、今でも大勢のファンが復帰を待ち望んでいると信じていました。

現在の生活に嫌気がさしていたジョーは彼女の要求を受け入れ、以降、住み込みのゴーストライターとしてノーマに“囲われた”生活を送るようになります。

ジョーはノーマの思い込みっぷりに唖然とします。執事のマックスは彼女を女神のように扱い、ファンを装ってノーマに手紙を送ることまでしていました。

ノーマはジョーに高価な服を買い与え、恋人のようにふるまおうとします。

しかしジョーがそれを拒否すると取り乱し、自死未遂を起こします。ジョーはノーマから離れることができず、ずるずると関係が続きます。

以下、『サンセット大通り』ネタバレ・結末の記載がございます。『サンセット大通り』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ある日、ノーマに撮影所から連絡があります。

それは彼女が所持する古い自動車を撮影のために貸して欲しいというものでしたが、彼女は自分への撮影依頼と勘違いし、ますます妄想が激しくなります。

『サムソンとゲリラ』を撮影中の名監督セシル・B・デミルに会いに行き、脚本と自分自身を売り込むために美容に執念を燃やしたりするノーマに辟易するジョー。

そんな中ジョーは、若い脚本家ベティと密かに2人で脚本を執筆することになります。

それに気がついた執事マックスは、自分はノーマをスターに育て上げた映画監督で最初の夫だという事実を明かし、ベティとの関係をノーマに悟られないよう忠告します。

しかしノーマはジョーの行動に気がつき、相手がベティだと知ると電話をかけて彼女を呼び出しました。

ジョーはノーマの行動を恐れてベティに別れを告げました。そして彼はノーマに世間から忘れられた存在である事実を突きつけ、別れて出て行くと言い出します。

ノーマは逆上し、出て行かないでと懇願しますが、背を向けるジョーに銃口を向けます。

2発の弾丸に倒れプールに落ちたジョー。事件に気がつき、豪邸の周りには警察官や新聞記者が大勢集まりました。

ところがノーマはその事態を映画の撮影だと勘違いします。

ノーマの腰をあげるために最後の嘘をつくマックス。「宮殿のシーンの撮影です」ノーマはサロメを演じながら、しずしずと階段を降りてゆきます。

「また撮影に関わることができて嬉しいわ!どんなに恋しかったか。これこそが私の人生、スター以外ありえないのよ。」

映画『サンセット大通り』の感想と評価


©文輝堂

フィルム・ノワールの特徴の1つである、主人公のモノローグでストーリーが進行する『サンセット大通り』。

また美しい陰影のコントラストもそのジャンルの効果です。この照明に浮かぶ狂気に満ちたノーマ・デズモンドの表情は、一度見た観客は忘れられないものにちがいありません。

本作が後世に与えた影響を計り知れず、カルト界の名匠デヴィッド・リンチ監督の2001年公開の『マルホランド・ドライブ』は、本作『サンセット大通り』を下敷きにしており、また松本清張の『幻華』は本作の印象に基づいて描かれています。

今は落ちぶれたサイレント時代の女優のスキャンダルを騒ぎ立てるという、華やかなイメージのハリウッドの暗部に焦点を当てたところが見どころになります。

このノーマの役は、“すでに忘れられた存在という事実を認めることができず、復帰を夢見ているサイレント時代の大女優”というキャラクターのキャスティングは、女優選びからたいへん難航したそうです。

そんなノーマ役を演じきったグロリア・スワンソンは、1928年公開の『港の女』でアカデミー賞主演女優賞を受賞しているサイレント時代の伝説的女優です。

スワンソンは、1934年に公開された『空飛ぶ音楽』から表舞台に姿を現していませんでしたが、本作で銀幕にカムバックしました。

ノーマに懇願され困惑する劇中に登場するセシル・B・デミル監督は、実際に監督本人に演じており、またグロリア・スワンソンを発掘した張本人でもあります。

ノーマの元夫で元映画監督のマックスを演じるのは、エリッヒ・フォン・シュトロハイム

シュトロハイムは『国民の創生』(1915)のD.W.グリフィス、セシル・B・デミル監督と並ぶサイレント映画時代の巨匠であり、またその完全主義者っぷりと作品への出費の凄まじさから異才と言われた芸術家です。

その他にもチャップリン、ハロルド・ロイドと並ぶ三大喜劇王の一人であるバスター・キートン、ライターで女優のヘッダ・ホッパーが本人役で出演していたりと、それまでのハリウッドの歴史が詰まったといっても過言ではない作品です。

結末にノーマがサロメを演じながら階段を降りてゆくシーンは、ほんとうに息をのむ狂気の迫力。

忘れられたことを認められず、最後までカメラと照明を追った生粋の女優であるノーマの姿は切なく、そして無慈悲なまでの描き方をした本作は時を超えて人々を驚愕させるでしょう。

まとめ

映画史には欠かせない名作といえる『サンセット大通り』。

映画の冒頭、道路に書かれた“サンセット大通り”の文字に落葉樹の落ち葉が降りかかり、かつての大女優の落ちぶれた一抹の寂しさを象徴した表現から物語は始まります。

本作と同じくフィルム・ノワールを代表する作品『マルタの鷹』(1941)。

そしてを『サンセット大通り』を手がけたビリー・ワイルダー監督の1944年公開の『深夜の告白』など。

この時代ならではのフィルム・ノワールの緻密な映像表現と美しいコントラスト、重厚な物語を鑑賞してはいかがでしょう。

ぜひ、お楽しみください。

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