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【ネタバレ解説】アパートの鍵貸します|ラストシーンと有名な名言を解説《ビリー・ワイルダー監督×ジャック・レモン×シャーリー・マクレーンのアカデミー賞》

  • Writer :
  • 谷川裕美子

悲哀に満ちたサラリーマンの恋模様を描く極上コメディ

サンセット大通り』(1950)の巨匠ビリー・ワイルダー監督によるロマンティック・コメディの傑作。

出世のために上司にゴマをすり部屋を貸していたお調子者の主人公・バドが、本当の愛に目覚めるまでをコミカルに描きます。

主演を務めるのは『お熱いのがお好き』(1959)でもワイルダー監督とタッグを組んだジャック・レモン。『愛と追憶の日々』(1983)のシャーリー・マクレーンがヒロインを務めます。

出世のために5人の上司たちに日替わりでアパートの自室を貸すバド。サラリーマンのペーソスを漂わせながら、ウィットにあふれたセリフと極上のユーモアで笑わせる傑作コメディの魅力をご紹介します。

映画『アパートの鍵貸します』の作品情報


(C)Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved

【公開】
1960年(アメリカ映画)

【監督】
ビリー・ワイルダー

【脚本】
ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド

【キャスト】
ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ、レイ・ウォルストン、ジャック・クルーシェン

【作品概要】
サンセット大通り』(1950)『お熱いのがお好き』(1959)の巨匠ビリー・ワイルダー監督作品。

密会場所を求める上司らにアパートの鍵を貸して出世を目論む主人公・バドと、エレベーターガールのフランとの恋愛模様を描く傑作ロマンティック・コメディです。

第33回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞をはじめ5部門を受賞しました。

お熱いのがお好き』(1959)でワイルダー監督とタッグを組んで以来何度も同監督作品に出演したジャック・レモンが主役を務めます。

ヒロインには『愛と追憶の日々』(1983)でアカデミー主演女優賞を受賞したシャーリー・マクレーン。

共演はフレッド・マクマレイ、ジャック・クルーシェン。

映画『アパートの鍵貸します』のあらすじ


(C)Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved

大保険会社の平社員のバドは自身の出世のために、複数の上役たちの逢い引きの場として自分のアパートの部屋を貸し出していました。

そんな中、人事部長のシェルドレイクは、バドが思いを寄せていたエレベーターガールのフランを部屋に連れ込みます。

そのことに気づいてショックを受けるバドでしたが、ある日部屋に帰るととんでもないことが起きていて……。

映画『アパートの鍵貸します』の感想と評価


(C)Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved

出世欲で見失っていた人間性を取り戻す人間喜劇

サラリーマンの悲哀を極上のコメディに仕立てた、銀幕の魔術師ビリー・ワイルダー監督の傑作です。

出世のために5人の上司たちに代わる代わる自分のアパートの部屋を貸し出すバド。仕事中でも、予約調整にてんてこ舞いです。その有能ぶりには笑ってしまうことでしょう。

上司たちは揃いも揃っての俗物で、恥ずかしげもなく浮気に勤しみ、バドが風邪を引いていてもおかまいなしに鍵をもぎ取ります。部下のことも女性のことも、同じ人間として見ていません。

しかし、そんな憎たらしい上司たちがバドの前にニコニコと顔を揃えるのを見ると、つい笑いがこみ上げてしまいます。どんなキャラクターにも愛嬌を持たせてしまうのは、ワイルダー監督の優れたマジックの一つです。

昇進させてもらったバドは尚更彼らの言いなりになるしかなく、さらに泥沼にはまっていきます。

そんなバドが恋したのは、若く美しいエレベーターガールのフランでした。

彼女がシェルドレイク部長と不倫関係にあると知ってバドは大きなショックを受けますが、その後、彼の部屋でフランが大量の睡眠薬を飲むという大騒動を起こします。

眠るフランを見つめるバドの深い悲しみに満ちた瞳。同じ事を繰り返す者が多いという医者の言葉を聞いて、彼女が助かることだけを祈り続けます。

一方、苦しむフランに優しい言葉をかけることもなく、逆に叱りつける人でなしのシェルドレイク。出世に目がくらんでいたバドの胸に、人間になれという医者の言葉が突き刺さります

変わらずフランをアパートに連れ込もうとする部長を前にバドは目を覚まし、あっさり会社を去りました。

そして、ラストシーンでフランが耳にした銃声のような破裂音。直前のバドの真剣な表情が浮かび一瞬ヒヤリとしますが、シャンパンのボトルを開けた音だったことがすぐに判明します。

バドが銃で足を誤射したエピソードや、一瞬映った拳銃の映像が効いているのは言うまでもありません。最後まで笑いに包み込むワイルダー監督作品の魅力にはまることでしょう。

有名な名言の意味とは


(C)Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved

ビリー・ワイルダー監督作品の最も大きな魅力は、数々のウィットに富んだセリフにあります。

エレベーターに乗ると人が変わる、というエレベーターガールのフランの言葉や、バドに向かいまっとうな人間=メンチュになれという隣室の医者の言葉には重みがあります。

名言に満ちた本作の中でもっとも有名なのは”That’s the way it crumbles… cookie-wise”というセリフです。直訳すると、クッキーが割れるようにどうにもならないことだという意味になります。

これは、あなたに恋すればよかったとフランから言われたバドの返答の言葉でした。

フランには男を見る目がありません。以前に恋した相手は横領の罪で服役中ですし、今は浮気症のシェルドレイク部長と道ならぬ恋をしています。

彼女自身、恋する相手も時期も悪いという自覚がありました。バドのように誠実な人を好きになれたらいいのにという本心が、つい口からポロリと出てしまったのです。

バドは純粋な男ですが、人生経験から人の心がままならないことをよく理解しています。だからこそ、それなら俺を選んでくれとは簡単に言いませんでした。

作中では、「物事は成り行きだから」という訳がついています。「そううまくはいかないよね」という、フランの気持ちに寄り添うバドの心の温かさが伝わってくる名言です。

ラスト近くで、もう一度この名言は登場します。フランを連れ込むならダメだと言ってバドが鍵を貸さずに会社を辞めたことを部長から知らされたフランが、この言葉を呟くのです。

以前バドが言った名言は、彼女の胸に残っていました。その言葉の奥にあった優しさと思いやりにフランが気づいたことが伝わってきます。

恩知らずだとバドを罵る部長の見下げた人間性と、まっすぐな愛ゆえに仕事も捨てたバド。愚かなフランにも、本当に大切な人が誰なのかわかったのでした。クッキーが割れるのと同じように、ごく自然に。

まとめ


(C)Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved

温かなユーモアで包み込むように、懸命に生きる人々の悲喜こもごもを描く傑作『アパートの鍵貸します』

愚かな行いを繰り返すサラリーマンの悲哀、権力をふりかざす非情な上司、不倫の愛に真実を求める女性。シニカルでありながら決して見捨てることのない温かい目でワイルダー監督は彼らを見つめます。

共に成長したバドとフランは、これからどのような関係を築いていくのでしょう。彼らの幸せなその後に思いを馳せずにいられません。



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