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Entry 2021/08/04
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映画『アナザーラウンド』感想評価と解説レビュー。マッツ・ミケルセン主演で飲酒をすると仕事の効率が良くなるという仮説に挑んだコメディ作品⁈

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『アナザーラウンド』は、2021年9月3日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほかにて公開

人生に刺激を失い、冴えない毎日を送る4人の男が、飲酒により人生の輝きを取り戻すコメディ『アナザーラウンド』。

ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと、仕事の効率が良くなる」という仮説を、身をもって証明しようとする主人公マーティンを、デンマークを代表する人気俳優、マッツ・ミケルセンが熱演しています。

4人の中年男性は、血中アルコール濃度を一定に保つ実験を通して、本当に人生の輝きを取り戻せるのでしょうか?

「第93回アカデミー賞®」にて「国際長編映画賞」を受賞するなど、世界各地で映画賞を総なめにしている、本作の魅力をご紹介します。

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映画『アナザーラウンド』の作品情報


(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

【公開】
2021年公開(デンマーク映画)

【原題】
Druk

【監督・脚本】
トマス・ビンターベア

【共同脚本】
トビアス・リンホルム

【キャスト】
マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン、マグナス・ミラン、ラース・ランゼ、マリア・ボネビー、スーセ・ウォルド

【作品概要】
「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、仕事の効率が良くなる」という仮説を実証しようとした、4人の男の悲哀を描いたコメディ。

主演は、テレビドラマ『ハンニバル』(2013)のハンニバル・レクター役で世界的な人気を獲得したマッツ・ミケルセン。

マッツ・ミケルセンは、『ファンタスティック・ビースト3』(22年公開予定)『インディ・ジョーンズ5』(22年公開予定)など、大作映画の出演が決まっている注目俳優です。

監督と脚本のトマス・ビンターベアは、『偽りなき者』(2012)以来、マッツ・ミケルセンと組むのは2度目となります。

『偽りなき者』は「第65回カンヌ国際映画祭」で、マッツ・ミケルセンが最優秀男優賞を受賞しています。

映画『アナザーラウンド』のあらすじ


(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

高校で歴史を教える教師のマーティンは、いつからか人生に「楽しさ・面白さ」を感じなくなり、無気力な毎日を送っていました。

マーティンは、夜勤ばかりの妻、アニカとはすれ違いの毎日を送り、子供達とも、まともにコミュニケーションを取っていません。

また、マーティンは、高校での歴史の授業も無気力になっており、身の入らない授業をしていた為、生徒から「授業内容が理解できない」と批判され、保護者にも呼び出される事態となります。

ある時、マーティンは職場の同僚で、心理学の教師、ニコライの誕生会を友人達と開きます。

誕生会には、体育教師のトミーや、音楽教師のピーターも参加していました。

ニコライは、結婚した妻との間に幼い3人の子供を授かっており「毎日、子育てが大変だ」と愚痴をこぼします。

お酒がすすむニコライに合わせるように、トミーとピーターもお酒を飲みますが、車で来ていたマーティンだけは、飲酒を拒みます。

しかし、ニコライから「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」と聞かされ、マーティンもその場に合わせるように、お酒を飲み始めます。

当初は「少しだけ」と自分に言い聞かせていたはずのマーティンでしたが、楽しい雰囲気に飲まれ、次第に酔っぱらってしまいます。

友人達と久しぶりに楽しい時間を過ごしたマーティンは、次の日に「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、仕事の効率が良くなる」というニコライの言葉を試す為に、少量のお酒を飲んで高校で授業を行います。

お酒を飲んで授業を行った事を、マーティンはニコライにだけ話すと、ニコライは「それは大きな一歩だ」と興奮した様子を見せます。

「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、仕事の効率が良くなる」というのは、ノルウェー人哲学者の立てた仮説で、マーティンとニコライ、トミー、ピーターの4人は、その仮説を証明する為の実験を開始します。

ニコライは「馬鹿な実験で終わらせない為、論文にまとめる」と決め、以下のルールを作ります。

・アルコール濃度は常に0.05%に保つ
・飲酒が心と言動に及ぼす影響を、証拠として集める
・飲酒は勤務中のみ
・ヘミングウェイに習い、夜8時以降と週末の飲酒は禁止
・飲酒により人生が豊かになり、向上した事を論文化する

マーティン達が教師として働く高校は、酔っぱらった生徒達が問題を起こした事で、校内飲酒に関する取り締まりが厳しくなっていました。

実験がバレてしまうと、4人は解雇される可能性があります。

危険な実験ですが、やがて4人は飲酒により仕事への喜びと、人生の楽しさを取り戻すようになります。

ですが、ニコライが「実験の次の段階」として、血中アルコール濃度を無制限に設定した事で、4人の実験は制御不能となっていきます。

そして実験は、ある悲劇へと繋がっていきます。

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映画『アナザーラウンド』感想と評価


(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、仕事の効率が良くなる」という、お酒好きからすると共感してしまう仮説を、実証しようとした4人の教師の姿を描いた映画『アナザーラウンド』。

ただ一般常識として、教師が飲酒した状態で授業をする事に、抵抗を感じる人もいるでしょう。

また、舞台となる高校は、生徒が飲酒事件を起こした事で、校内飲酒に関する締め付けが強化されており、マーティン達は飲酒して授業を行った事がバレると、解雇されてしいます。

では、何故そうまでして、マーティン達は実験を行うのでしょうか?

それは、人生を長く生きてしまったが為の喪失感にあります。

本作の序盤、生徒達の前で授業を行うマーティンは、全く身が入っておらず、淡々と授業をこなします。

その為、授業内容が生徒達に全く届いておらず「授業が分かりにくい」と、保護者も巻き込んだ問題になります。

それでも、マーティンは目の前の問題に全く反応せず、遠い目をしたままです。

家庭でも、家族とのコミュニケーションが全く無く「老後も支え合って生きていく」と誓い合ったはずの妻、アニカともすれ違いの毎日。

そんな、人生に喪失感しか抱いていないマーティンが、久しぶりに楽しさを感じたのが、ニコライの誕生日です。

酔っぱらった中年男性4人が、子供のように戯れるという、何とも言えない場面が展開されるのですが、作品前半で、心すら失ってしまった様子のマーティンが、作中で初めて笑顔を見せる印象的な場面です。

この事をキッカケに、マーティンは人生に再び刺激を取り戻す為、「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、仕事の効率が良くなる」という実験に取り組むようになるのです。

ただ、実験と言うのは完全に建前で、本音は「ただ飲みたいだけ」というのが、4人のやりとりから分かります。

特にニコライの「飲酒量が限界を超えた時、心が浄化されるかもしれない」という台詞は、お酒好きの心に突き刺さる名言ではないでしょうか。

それでも、飲酒をした状態のマーティンは、生徒の心を掴み、面白く楽しい授業を展開させます。

適度に飲酒したことが、いい結果に繋がった訳ですが、本作は「お酒を飲んで仕事をしよう」と推奨している作品ではありません。

逆に後半では、過度な飲酒が人生に及ぼす危険性を描いており、お酒との距離感を考えさせられる内容となっています。

お酒は好きな人からすると、人生を豊かにする必需品である事は間違いないのですが、苦手な人からすると、迷惑でしかない嗜好品かもしれません。

ただ、お酒は年齢の離れた人達のコミュニケーションを円滑に繋ぐ力がありますし、気兼ねなくお酒が飲める関係性は一生モノです。

本作のラストシーンは、そんなお酒の持つ魅力を感じる、楽しく素晴らしい場面となっています。

映画『アナザーラウンド』は、虚無感を抱くほどマンネリになってしまった日常に「あなたなら、どう向き合うか?」という、問題定義の含まれた作品です。

ただ、お酒が好きな人と、そうではない人だと、作品の評価は間違いなく違ってくるでしょうね。

まとめ


(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

映画『アナザーラウンド』は、主人公のマーティンの他にも、一緒に実験を開始する3人も魅力的です。

まず、実験を論文にまとめる事を提案する、心理学の教師ニコライは、妻とは喧嘩ばかりで、おねしょばかりする息子達に頭を悩ませる毎日です。

「くだらない実験で終わらせない」ことを名目に、実験内容を論文にまとめますが「酒を飲みたいだけ」というのが、一番見え見えになっています。

次にマーティンの古くからの親友、体育教師のトミー。

彼は2匹の愛犬と暮らしていますが、1人暮らしだからこその寂しさを見せることがあります。

少年サッカーのコーチをしていますが、その優しさが、子供達に慕われており、決して孤独ではなかったことが、ある場面で分かります。

音楽教師のピーターは、自分に恋人がいないことに長年悩んでいます。

ですが実験を通して、その悩みを解決させるキッカケを掴みます。

この3人とマーティンの、お酒を巡る何とも言えない、どうしようもないやりとりが本作の魅力です。

特に作品中盤で、4人でタラを買いに行く展開は、お酒好きなら誰もが身に覚えのあるような、なかなか痛々しい場面となっています。

愛すべき4人の男の姿を通して、人生の本質を問う人間賛歌でもある映画『アナザーラウンド』。

マーティンを演じた、マッツ・ミケルセンの演技力が、随所に光る作品でもあります。

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