Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

コメディ映画

Entry 2021/02/23
Update

映画『まともじゃないのは君も一緒』あらすじ感想と評価解説レビュー。キャスト成田凌と清原果耶の絶妙なバランスで“物語に酔いしれる”

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『まともじゃないのは君も一緒』は2021年3月19日(金)より全国順次ロードショー!

「まともじゃない」一人の塾講師と、青春の悩みを抱えた女子高生が、一つの恋愛作戦に挑むコメディー映画『まともじゃないのは君も一緒』。

『カツベン!』の成田凌、『宇宙でいちばんあかるい屋根』の清原果耶という今旬な若手俳優のコンビにより、「まとも」な恋愛を目指し挑戦する恋愛作戦の経緯を描きます。

監督には前田弘二、脚本には高田亮という強力タッグでオリジナルストーリーに挑みます。

スポンサーリンク

映画『まともじゃないのは君も一緒』の作品情報

(C) 2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
前田弘二

【脚本】
高田亮

【キャスト】
成田凌、清原果耶、小泉孝太郎、泉里香

【作品概要】
『カツベン!』などの成田凌と『宇宙でいちばんあかるい屋根』などの清原果耶というダブル主演によるコメディードラマ。変わり者の予備校講師と悩める思春期を迎えた教え子のやり取りから見えてくる世の常識、非常識を問います。

作品を手掛けたのは『婚前特急』や『わたしのハワイの歩きかた』などの前田弘二監督、脚本を前田監督作品や『そこのみにて光輝く』などの高田亮が担当しました。成田と清原のほかに、小泉孝太郎、泉里香ら個性派キャストが「まとも」な恋愛モデル役を担当、物語の脇を固めています。

主題歌は韓国生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ちで、日本を中心に音楽活動をしているポップクリエイターCharmのソロプロジェクトTHE CHARM PARKが本作のために書き下ろした「君と僕のうた」。


映画『まともじゃないのは君も一緒』のあらすじ

(C) 2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

現在、普通に友人たちと学校生活を楽しんでいた女子学生の秋本香住(清原果耶)は、ある日友人たちとの他愛ない話の中で、一人の同級生が良好な男女交際を行っていることに妬んでいたことを知ってモヤモヤした気持ちになります。

一方、その香住に予備校で数学を教える大野康臣(成田凌)は、自分の興味のあることにはとことんまでのめり込むものの、興味のないことに対してはさっぱり奥手。

独身で恋人もいませんが、結婚願望は持っていました。

そんな康臣はある日香住に、その願望に一歩近づくため「どうしたら普通になれるか」を教えてほしいと頼み込みました。

スポンサーリンク

映画『まともじゃないのは君も一緒』の感想と評価

(C) 2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

恋愛コメディーを通して世の常識、非常識を問う

物語の主題は、ある一組の男女のプラトニックな恋愛模様を通して「まとも」であること、あるいはそうではないことに対する必要性、重要性を問うていることにあります。

これは例えば近年社会的な関心事でもある「学歴社会」「格差社会」などの問題を取り上げたトピックスにも、そのまま当てはまります。

より高い学歴を持つもの、たくさんのお金を稼ぐもの、社会的に高い評価を得るものこそが正常であり高く評価され、いわゆる「まとも」と言われる現状。

しかしそれらを持つことが人間として評価されるという基盤は、近年さまざまな場面において揺らいでいます。

反面、世では個性を高く評価されるようになったといわれている現在において、人それぞれの個を磨くことは非常に重要なことですが、常にそれを評価されているとはいえない状況であることも明らかで、時には「変人」扱いされることも多いかもしれません。

このような構図を描くために、この物語では「個」の象徴として成田、そしてそれを認識する子供の世代として清原を起用して、物語を成立させています。


(C) 2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

成田が演じる大野康臣という人物は、自分の興味があることはとことんまで突き詰めるけど、それ以外のことは全くの無知というまさに「個性」だけで生きているような人間です。

一方の清原が演じる秋本香住は、仲間内では愛想よくしているけど、その「まとも」「普通」という友人が持っているあいまいな定義を窮屈に思い、疑問を呈する学生。

この2人が、これまで全く触れたことのない恋愛という世界に足を踏み入れるという展開の中、非常にぎくしゃくしたアプローチを試みながらいろいろなことを知り、成長していきます。

物語からは「まとも」と言われる世界がやはり非常に窮屈で、「まともじゃない」世界が意外に居心地よいと思えたり、それでも人が「まとも」を保つ一方で「まともじゃない」が追従して異端扱いされざるを得ない、そんな社会構図が見えてきます

これはつまり「まとも」が社会でどのように存在すべきか、「まともじゃない」がどのような立場で現れるべきか、ということを想起させるようなテーマであります。

もちろん「まとも」「まともじゃない」などといった感覚は多かれ少なかれ誰もが両方を持ち合わせているものでもあり、この作品はそういったバランスにどう折り合いをつけて生きていくべきか考えることを提唱していると言えます。

まとめ

(C) 2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会

この物語は、若手俳優の中でも注目株である成田と清原というツートップの、対決ともいえる共演が見どころとなっています。

成田の役どころは、例えば現実と照らし合わせると「どこにでもいそう」「普通にはいない」という雰囲気を絶妙なバランス感覚で表現しています。

「普通にはいない」というのは、まさに大野康臣というキャラクターそのままですが、「どこにでもいそう」という部分は皆が何か心の奥底で同じように心に抱いている、共感できる部分を現しているところにあります。

この2つの性質をうまく生かして、何か人が抱く心の性質をバランスよく表現し、康臣というキャラクターに共感させる性質を作り上げています。

また秋本香住も似たような格好ではありますが、「どこにでもいる女の子」「普通ではいなさそうな思いの持ち主」という2つの性質で、「まともでないことの窮屈さ」を代弁している格好です。

2人の間では、清原の「まともでいなさい」という進言に対し、成田の「まともとは?」という返答が何度も繰り替えされますが、このバランスから見る側は「まとも」「まともじゃない」という感覚への思いを強く印象付けられるわけであり、まさに物語のメッセージを2人の名演で作り上げられたといえるでしょう。

映画『まともじゃないのは君も一緒』は2021年3月19日(金)より全国順次ロードショー


関連記事

コメディ映画

シンクロナイズドモンスターあらすじ!2017したまちコメディ映画祭にて

2017年11月3日より劇場公開されるアン・ハサウェイが主演を務める『シンクロナイズドモンスター』。 職ナシ、家ナシ、彼氏ナシ‼︎巨大な怪獣を操るダメウーマンが、負け犬人生と世界の危機に立ち向かう? …

コメディ映画

映画『サバービコン 仮面を被った街』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

ジョージ・クルーニー監督、コーエン兄弟脚本の人間不信ブラックコメディ『サバービコン 仮面を被った街』が5月4日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて全国ロードショーされています! 1950年代、理想 …

コメディ映画

『ヘヴィ・トリップ』映画感想とレビュー評価。メタル愛満載の北欧のおバカコメディ!?

映画『ヘヴィ・トリップ 俺たち崖っぷち北欧メタル!』は2019年12月27日(金)より、シネマート新宿、心斎橋ほか全国ロードショー! フィンランドの村に住む、若者4人。人にバカにされながらもヘヴィメタ …

コメディ映画

『葡萄畑に帰ろう』ネタバレ感想レビュー。映画結末とワインに込めたエルダル・シェンゲラヤ監督の思いとは

映画『葡萄畑に帰ろう』は、官僚主義を痛烈に笑い飛ばした『青い山 本当らしくない本当の話』(1983)などで知られるジョージア映画界の最長老監督エルダル・シェンゲラヤのヒューマンコメディ映画です。 ジョ …

コメディ映画

映画『グッバイ・ゴダール!』ネタバレあらすじと感想と結末ラストの評価解説。原作アンヌ・ビアゼムスキーの自伝的小説をユーモアと共に描く

アンヌ、19歳。パリに住む哲学科の学生。そして恋人はゴダール! ジャン=リュック・ゴダールのミューズで、2番目の妻でもあり、ゴダール監督作品『中国女』にて、主演を務めたアンヌ・ビアゼムスキーの自伝的小 …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学