Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2024/04/26
Update

『プロミスト・ランド』あらすじ感想と評価解説。映画監督 飯島将史が熊狩りに挑むふたりの青年の“まっすぐすぎる生き様”を描く

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『プロミスト・ランド』は2024年6月14日(金)MOVIE ONやまがた、鶴岡まちなかキネマにて先行公開、6月29日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

作家・飯嶋和一が1983年に発表した小説「プロミスト・ランド」を映画化した『プロミスト・ランド』が2024年6月14日(金)MOVIE ONやまがた、鶴岡まちなかキネマにて先行公開、6月29日(土)ユーロスペースほか全国順次公開されます。

本作が長編デビューとなる飯島将史監督が、東北地方を舞台に禁じられた熊狩りに挑む2人の若者を描きます。

主演は『青春ジャック 止められるか、おれたちを2』(2024)の杉田雷麟と、『』(2023)の寛一郎。

小林薫、三浦誠己、渋川清彦ら豪華ベテラン俳優陣が出演します。

禁をおかして熊狩りに向かう若者たち。彼らは白い雪に包まれた森の中に奥深く入っていきます。それは、彼らが自分と正直に向き合うための旅でもありました。

青年たちが本当に手に入れたかったものとは何だったのでしょうか。

映画『プロミスト・ランド』の作品情報


(C)飯嶋和一/小学館/FANTASIA

【公開】
2024年(日本映画)

【原作】
飯嶋和一

【監督・脚本】
飯島将史

【キャスト】
杉田雷麟、寛一郎、三浦誠己、占部房子、渋川清彦、小林薫

【作品概要】
本作の舞台でもある山形県庄内地方のマタギ衆に密着したドキュメンタリー「MATAGI マタギ」の飯島将史監督の長編劇映画デビュー作。

第40回小説現代新人賞を受賞した飯嶋和一による小説「プロミスト・ランド」を原作に、2人の若者が禁じられた熊狩りに挑む姿を描きます。

主演を務めるのは、『青春ジャック 止められるか、おれたちを2』(2024)の杉田雷麟と、『』(2023)の寛一郎。近年活躍目覚ましいふたりが、自分の心と向き合いながら雪深い森へと入っていく悩み深き青年たちを演じます。

小林薫、三浦誠己、渋川清彦らベテラン実力派が脇を固めます。

映画『プロミスト・ランド』のあらすじ


(C)飯嶋和一/小学館/FANTASIA

マタギの伝統を受け継ぐ東北の山間の町で、高校卒業後に家業の鶏舎を継いだ20歳の信行。

閉鎖的な暮らしにうんざりしながらも、流されるまま日々を過ごしていたある日、マタギの親方の下田から今年の熊狩りを禁止する通達が役所から届いたことを聞かされきます。

違反すれば密猟とみなされ、マタギとして生きる道を閉ざされてしまうため、町のマタギ衆は仕方なく決定に従います。しかし、信行の兄貴分である礼二郎は、頑なに拒み続けました。

やがて礼二郎は信行を呼び出し、2人だけで熊狩りに挑む秘密の計画を打ち明けますが…。

映画『プロミスト・ランド』の感想と評価


(C)飯嶋和一/小学館/FANTASIA

厳しい土地で黙々と鶏舎を掃除し、餌をやり、玉子を集める20歳の信行。自分を押さえ付ける父への反発心も手伝い、鬱屈した生活を送っています。

ある日、役所から熊狩りの禁止令が出たことから、マタギは厳しい立場に追い込まれました。マタギ衆が状況を受け入れる中、若い礼二郎だけが反発し続けます。

熊狩りにもともと嫌悪感を抱いていた信行は、礼二郎からの熊狩りへの誘いを一度は断りますが、やがて一緒に山へと向かいます。

流されるがままに家業を継ぎ、単調な毎日を送っていた青年のエネルギーが、熊狩りという非現実的な冒険に飛び出す決意へと向かったのはごく自然なことでした。信行の揺れ動く思いを、杉田が繊細に表現しています。

マタギとして生きる道を理不尽に閉ざされたことに怒り、禁をおかしてでも熊狩りに行くことを選ぶ熱い男・礼二郎を、独特の雰囲気を醸し出す寛一郎が演じます。画面に映える横顔を見ていると、彼がいかにスクリーンに愛されているかを感じさせられます。

マタギの親方・下田役の小林薫の威厳ある演技にも、ぐっと引きつけられます

強い力で下の者を押さえ付けるのと同時に、しっかりと守ろうとしている年長者たち。消えつつある文化を守っていこうと苦悩する彼らを、社会がどんどん片隅に押しやっていく現状が浮き彫りとなっていきます。

小林らベテラン勢の迫力に応えるかのように、若手の杉田雷麟、寛一郎が渾身の演技を見せています。山に入ってからの、ふたりきりの緊迫感ある濃密な演技には脱帽です。

雪深い森の中を、黙々と歩を進める若いふたり。大自然の中で自分の正直な気持ちに向き合う青年たちの姿を見ているうちに、熱い思いがこみ上げてくるに違いありません

まとめ


(C)飯嶋和一/小学館/FANTASIA

地面に深く残る雪、冬枯れた木々、吹き付ける北風。ドキュメンタリー化のように、長回しで雄大で厳しい冬の風景が映し出されます。

そして、説明しがたい情熱に突き動かされ進んでいくふたりの若者。

画面いっぱいに広がる大自然に、ちっぽけな人間が必死で対峙するさまが感動を呼ぶ一作です。

精一杯の勇気を振り絞って熊狩りに挑んだ青年たちが、狩りの後も足を踏ん張って生きていこうと決意するさまに心揺さぶられることでしょう。

『プロミスト・ランド』は2024年6月14日(金)MOVIE ONやまがた、鶴岡まちなかキネマにて先行公開、6月29日(土)ユーロスペースほか全国順次公開です。



関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『モリのいる場所』あらすじネタバレと感想。評価の高い画家熊谷守一の日常を描く

日本を代表する名優、山崎努と樹木希林の初共演作『モリのいる場所』。 30年間、ほとんど家から外に出たことがない伝説の画家・熊谷守一夫妻の晩年を描いた作品です。 家から外に出ない熊谷守一=モリの家には、 …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】THE UPSIDE最強のふたり|リメイクとオリジナル版はどこが違うの?変更点を比較解説

大ヒット作『最強のふたり』をハリウッドでリメイク! 本国フランスで2011年の興行No.1を獲得し、日本でも翌年に大ヒットを記録した『最強のふたり』。 そのハリウッドリメイクとなる映画『THE UPS …

ヒューマンドラマ映画

映画『死神遣いの事件帖 傀儡夜曲』あらすじと感想評価。鈴木拡樹が邦画時代劇の3枚目ヒーローに“変身”

映画『死神遣いの事件帖 傀儡夜曲』は6月12日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー! 映画『死神遣いの事件帖 傀儡夜曲』は、同じ世界観の物語を映画と舞台で公開&上演する【東映ムビ×ステ】プロジェ …

ヒューマンドラマ映画

映画『愛が微笑む時』ネタバレ結末感想とあらすじ解説。感動の名作を主題歌担当のマーク・シャイマンの調べに乗せて

名優ロバート・ダウニー・Jr主演の感動のフアンタスティックなコメディ『愛が微笑む時』。 バスの事故で亡くなったはずのマイロ・ハリソン・ペニー・ジュリアが幽霊となり、赤ちゃんのトーマスに取り憑いて成長を …

ヒューマンドラマ映画

映画『スプリングブレイカーズ』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も

今回取り上げるのはハーモニー・コリン監督による映画『スプリング・ブレイカーズ』です。 海と熱い太陽の地で繰り広げられる青春物語と思いきや、その正体は過激で死臭がにおい立つ不思議な作品。本作の魅力をコリ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学