Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2020/01/28
Update

映画『酔うと化け物になる父がつらい』あらすじと感想レビュー。結末必見の実録エッセイを映像化

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『酔うと化け物になる父がつらい』は2020年3月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。

2020年3月6日公開の『酔うと化け物になる父がつらい』は、同名のコミックエッセイの映画化作品です。

作者の菊池真理子氏の実体験に基づいたこのエッセイは、ウェブサイトに掲載されるや否や「涙が止まらない!」と大反響を呼び、一時サイトが停止するほどの人気を集めました。

主演はNHK朝の連続テレビ小説『ひよっこ』で注目を集め、映画やドラマにひっぱりだこの松本穂香。酒飲みの父親役は、俳優、モデル、ミュージシャンと様々な顔を持ち、他にはない存在感が魅力の渋川清彦が演じます。

単にアルコール依存症の怖さだけを描いた物語ではない、ただのハッピーなファミリームービーでもない。観終わった後に心がふっとほぐされるような映画となりました。

 

スポンサーリンク

映画『酔うと化け物になる父がつらい』の作品情報

 
(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)
 
【原作】
菊池真理子『酔うと化け物になる父がつらい』(秋田書店刊)
 
【監督】
片桐健滋
 
【キャスト】
松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、恒松祐里、濱正悟、安藤玉恵、宇野祥平、森下能幸、星田英利、オダギリジョー、浜野謙太、ともさかりえ
 
【作品概要】
監督・脚本の片桐健滋は、2018年に映画『ルームロンダリング』で「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM FILM2015」にて準グランプリを受賞した新鋭監督。

過去にはフランソワ・トリュフォーの編集で知られるヤン・デデ氏の下で映像を3年に渡り学んでいます。近年では人気漫画のドラマ化『きのう何食べた?』で監督を務め、話題を呼びました。

共同脚本を務めたのは久馬歩。ザ・プラン9結成後、上方お笑いコンテスト優秀賞など数々の賞を受賞し、お笑い芸人として活躍する一方で作家としても、映画、ドラマ、バラエティー番組の脚本を多く手掛けている多彩な人物です。

主演は松本穂香で、その父親役に渋川清彦と、母親役にはともさかりえが扮します。

妹役には欅坂46の元メンバー今泉佑唯。父の同僚に、ファンクバンド・在日ファンクのリーダー兼ボーカルの浜野謙太。

友人役に『散歩する侵略者』や『殺さない彼と死なない彼女』に出演していた恒松祐里など、個性的な俳優が名を連ねています。

映画『酔うと化け物になる父がつらい』のあらすじ


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

主人公のサキは、酒浸りの父親と新興宗教にハマっている母親、素直な妹と四人家族。

酔って帰ってきては玄関で寝てしまう父を布団に連れて行ったり、休日は遊びに行く約束をすっぽかして飲み仲間たちと麻雀に興じる父にうんざりしながらも「これが普通なんだ」と自分に言い聞かせて暮らしていました。

ある日、父の癌が発覚してサキはやり場のない怒りや虚しさを募らせていき…。

スポンサーリンク

映画『酔うと化け物になる父がつらい』の感想と評価


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

重いテーマを軽やかに描く

「この作品をアルコールが題材の暗い内容にしたくなかった」と片桐健滋監督が語るように、今作では酒浸りで迷惑な行動をとる父親とその家族の苦悩が、コミカルに描かれています。

観客の気持ちを重くしすぎないトーンが絶妙です。

本来ならあまりにショッキングで顔をしかめてしまいそうなシーンでもさらりと観ることができたのは、父役の渋川清彦の憎めない笑顔のパワーは勿論のこと、細かな演出とテンポの良さがそうさせています。

そのひとつとして、主人公のサキの心境が吹き出しになって現れる ことが言えます。

もちろん吹き出しにわざわざ心の声を書かなくても松本穂香の繊細な演技だけでその心情を推し量ることはできますが、あえて文字にして可愛い演出をつけることで中身の重さを緩和してくれているのではないでしょうか。

それは、作中でサキが現実逃避のために漫画を描いていたことにも繋がります。

物語は時を刻み、子どもだったサキは大人になり、父に対する嫌悪感が増していきます。後半になるにつれて内容もヘビーになり、ラストがどうなるのか気になる展開になっていきます。

本作は最後まできちんと現実を受け止めて、そこで感じる虚しさやもやもやとしたわだかまりに寄り添っていました。

父の飲み仲間たちやサキの友人との関係性もぐっと盛り上がりを見せて、感動のラストシーンへと繋がるのです。

主人公のサキの30年間の蓄積された感情が溢れ出すラストは必見です。

キャストの演技力で原作とは異なる魅力が


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

原作のコミックエッセイは一話目がウェブサイトで公開されるや否や、サーバーがパンクするほどの反響を呼びました。

多くの人が、「私の父も依存症だったんだ」「この苦しさは自分以外にも経験している人がいるんだ」という衝撃や共感を得た結果だったようです。

もし原作を読んでいない場合は、映画を観た後に読むことをお勧めします。映画は原作に無いシーンもありますが、何も知らない状態で観たほうが展開が楽しめるはずです。

この映画が単純な家族愛の物語になっていたら、原作のファンの期待を裏切ってしまうでしょう。

ですが心配はいりません。ただの家族映画ではなく、依存症のこわさもしっかりと描いた上で、家族の絆を伝える映画になっています。

原作を既に読んでいる場合は、俳優たちの見事な演技で映像化された本作を、原作とは別な視点でも楽しむことができるのではないでしょうか。

まとめ


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

アルコール依存症という重い内容ながらクスっと笑えてほろりと泣けてまう映画です。

渋川清彦はどんな役でも彼の色に染める個性を持っていますが、彼にしては珍しい父親役でした。だらしなさすぎるのに憎めない可愛さは彼でなければ出せなかったでしょう。

最近では、ふくだももこ監督の『おいしい家族』や、中川龍太郎監督の『わたしは光をにぎっている』で主演を務めるなど、注目度が高い松本穂香。

本作の重要なシーンは彼女の複雑な感情が爆発するシーンですが、ワンテイクでオーケーだったとか。この演技は心に残ります。

片桐健滋監督と共同脚本の久馬歩は、原作者の菊池真理子と映画の完成イメージについて打ち合わせを行い、原作と違う内容を盛り込みながらも菊池の納得する形で脚本を固めていきました。

完成した映画を観た菊池真理子は号泣してしまったそうです。原作のファンにも受け入れられるだろう一作になっています。

映画『酔うと化け物になる父がつらい』は2020年3月6日公開です。ぜひ劇場でご覧ください。





関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画プリレジェ『PRINCE OF LEGEND』ネタバレ感想。LDHのブランド拡大とキラキラ映画へのアンチテーゼ

映画『PRINCE OF LEGEND』は3月21日(木・祝)より全国東宝系にて公開! 「HiGH&LOW」のチームが再結集!大型企画プリンスバトルプロジェクトの一つの節目になる劇場版『PRINCE …

ヒューマンドラマ映画

映画『アガサと深夜の殺人者』ネタバレあらすじ感想と結末ラスト評価解説。本格ミステリーで事件解決の小説家の苦悩に共感できる

世界的推理作家が消えた原稿の行方と、殺人事件の真相を追うミステリードラマ ジョー・スティーヴンソンが監督を務めた、2020年製作のイギリスのミステリードラマ映画、『アガサと深夜の殺人者』。 戦争が激化 …

ヒューマンドラマ映画

『500ページの夢の束』日本公開予告とポスター解禁【ダコタ・ファニング主演作】

映画『500ページの夢の束』は、9月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。 人気女優ダコタ・ファニングと、『JUNO/ジュノ』や『マイレージ、マイライフ』のプロデューサーが贈る、人生をあき …

ヒューマンドラマ映画

韓国映画『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』あらすじネタバレと感想。チャン・リュル監督が死生観を静かに鮮やかに表現

『キムチを売る女』、『春の夢』など世界の映画祭で注目を集めてきた韓国の名匠チャン・リュル監督が描く男と女、生と死の物語 チャン・リュル監督の2014年の作品『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』が、全国順 …

ヒューマンドラマ映画

草刈正雄映画『体操しようよ』あらすじネタバレと感想。永遠の二枚目スターが見せた第二の人生の楽しみ方

新しい朝が来た。 今日もそこそこ元気に楽しくやりましょう! 国民的スター草刈正雄が、定年退職を迎えた冴えないお父さんを演じます。 シングルファザーで家のことは娘に任せ、仕事ばかりしてきたお父さんが、定 …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学