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Entry 2020/03/04
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【渋川清彦インタビュー】映画『酔うと化け物になる父がつらい』モデルから俳優への道、そして“ひとりの監督作品”で演じ続ける理由

  • Writer :
  • 大窪晶

映画『酔うと化け物になる父がつらい』は2020年3月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。

原作は、アルコールに溺れる父を持った作者・菊池真理子の実体験に基づくコミックエッセイ。

監督・脚本は、2018年に映画『ルームロンダリング』で「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM FILM2015」にて準グランプリを受賞した片桐健滋が務めます。


(C)Cinemarche

今回は、アルコールに溺れる父親トシフミ役を独特な存在感で演じた渋川清彦さんのインタビューをお届けします。

本作での試みや、俳優を始めたルーツなどお伺いしました。

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ひとりの監督の作品に出続けるこだわり


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

──本作に出演したきっかけは?

渋川清彦(以下、渋川):片桐健滋監督の「演ってください」のひと声です。片桐監督とは助監督をやっている時からよく知っていて、片桐監督にしかない独自の世界観があるから面白いんです。

彼はフランスに映画を学びに行っていたこともあって、ウィット感や、物語にある種の切なさがあったり、音楽も洒落たものを使っていたりと、僕にとっては他にはあまり見かけない監督さんです。演出では多くを言わず、自由に演らせてくれました。それは無言ながらも「お前はコレをどう考えて演じるのか」と言われているように受け止めていました。

それと片桐監督とは、長編映画監督デビューした『ルームロンダリング』から関われているので、この先も片桐監督作品には全部出演したいなと考えています。また、彼の師匠筋の監督に豊田利晃監督がいますが、豊田監督作品にもドキュメンタリー作品以外はワンカットだけでも全てに出演させてもらっています。ひとりの監督作品に出続ける。そういう俳優は中々いないと思うので、これは今後も僕のやっていきたいことでもあります。

アルコールに溺れる父・トシフミを演じる


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

──本作では酔っ払いのお父さんトシフミ役でしたが、演じてみていかがでしたか?

渋川:トシフミは昭和の頃の「ひと昔前のお父さん」というイメージ、人付き合いが良くて誘われたら断れない人で、基本的には脚本に描いてあったことを演ろうと心掛けていました。今回の役のトシフミが、お酒に頼ってしまうところは分からなくもありません。トシフミ自身も自分のあり方を肯定もしていないし、否定もしていない。僕自身も、コミュニケーションの手段としてお酒を飲むことも結構ありますし、居心地が良くない時などは早くお酒を飲んでしまいたいと思うこともあります。

物語としては、父親はアルコールに溺れていて、母親は新興宗教にハマって最終的には自死をしてしまうという大変な話ですが、原作の漫画は柔らかな可愛いタッチで描かれていて絶妙なバランスで描かれていると感じています。映画でも片桐監督が、ポップで見やすいがそれだけで終わらない作品に作り上げています。

──そこには渋川さんの笑いながらも目が笑っていない、狂気的な魅力がスパイスとしてあって、あらゆる感情を内包して生きているように感じ取りました。役作りとして意識して取り組んできたことなのでしょうか?

渋川:大昔に豊田監督にもオーディションで「お前は笑っているようで目が笑っていない」と言われたことがあります(笑)。俳優を始めて20年近く経って、こうしたらこう見えるというような演じ方が少しだけ分かるようになって、今回も意識的に演っていったところはあるかもしれません。

また、僕にとって今回初めての試みとして、実際にお酒を飲んでいるシーンでは本当にお酒を飲んで挑みました。監督も受け入れてくれて、専用の水筒まで用意してくれました。でも撮影では集中もしているし、したたか酔っ払うということは無かったですね。周りの目もあるので隠れてチョコチョコっとやっていました(笑)。

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写真家ナン・ゴールディンとの出会いで生まれた“映画俳優”への道


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──渋川さんはモデルとしてキャリアをスタートさせましたが俳優を志したきっかけは?

渋川:写真家のナン・ゴールディンに面白がられてモデルをやることになったのですが、彼女の写真は、どこかに遊びに行って自然体を撮るというものでしたので、商業的なモデルとは少し違うところがあります。当時、ナン・ゴールディンとアラーキーこと荒木経惟さんとで行った『TOKYO LOVE』という写真展があって、そのフライヤーのポストカードに僕のポートレートも使われていました。

それを豊田監督が見ていてポストカードをご自宅に貼っていたらしく、映画『ポルノスター』のオーディションに行った時に監督が「コイツ見たことがある」ということで、映画に使ってくれたんです。

ですからナン・ゴールディンとの出会いに映画で俳優を始める全てのきっかけがあった。人との出会いや、その時代に流れていた「流れ」があったり、それに運良く乗れたことで今があるのだと思っています。

“映画”を楽しんで生きる


(C)Cinemarche

──俳優を続けている今、改めて俳優という仕事をどのように考えていますか?

渋川:俳優として自信がある訳ではありませんでしたが、色んな方たちが使ってくれて続けているうちに、ちょっとは俳優になってきたのかなと感じるところも最近やっと出てきました。かといって「演技がしたい、芝居がしたい」ということで演っている訳ではないのですが。なんで俳優を続けているのか、性に合っているのかな(笑)。

──渋川さんの出演した映画を拝見すると役を通して渋川さんご自身が存在していて、映画を使って楽しく生きていると感じることがたくさんあります。

渋川:その表現はイイですね。仰るように映画によって楽しく生きれているかもしれません。僕にとって映画は説明できない魅力が詰まっています。その魅力とは何なのかは今も模索中です。

インタビュー/大窪晶
撮影/出町光識

渋川清彦(しぶかわきよひこ)プロフィール


(C)Cinemarche

1974年生まれ、群馬県渋川市出身。モデルでの活動を経て、『ポルノスター』(1998/豊田利晃監督)で映画デビュー。

2013年に『そして泥船はゆく』(渡辺紘文監督)で映画単独初主演。2016年には、『お盆の弟』(大崎章監督)で第37回ヨコハマ映画祭にて主演男優賞を受賞し、数多くの映画やテレビドラマ、その他CMなどにも出演しています。

近年の出演作は『モーターズ』(2015/渡辺大知監督)、『アレノ』(2015/越川道夫監督)、『蜜のあわれ』(2016/石井岳龍監督)、『下衆の愛』(2016/内田英治監督)、『榎田貿易堂』(2018/飯塚健監督)、『柴公園』(2019/綾部真弥監督)、『閉鎖病棟 -それぞれの朝-』(2019/平山秀幸監督)など。片桐監督とはパンクロッカーの幽霊役で出演した『ルームロンダリング』(2018)に続き、2度目のタッグとなりました。

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映画『酔うと化け物になる父がつらい』の作品情報

【公開】
2020年(日本映画)
 
【原作】
菊池真理子『酔うと化け物になる父がつらい』(秋田書店刊)
 
【監督】
片桐健滋
 
【キャスト】
松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、恒松祐里、濱正悟、安藤玉恵、宇野祥平、森下能幸、星田英利、オダギリジョー、浜野謙太、ともさかりえ
 
【作品概要】
監督・脚本の片桐健滋は、2018年に映画『ルームロンダリング』で「TSUTAYA CREATOR’S PROGRAM FILM2015」にて準グランプリを受賞した新鋭監督。過去にはフランソワ・トリュフォーの編集で知られるヤン・デデ氏の下で映像を3年に渡り学んでいます。近年では人気漫画のドラマ化『きのう何食べた?』で監督を務め、話題を呼びました。

共同脚本を務めたのは久馬歩。ザ・プラン9結成後、上方お笑いコンテスト優秀賞など数々の賞を受賞し、お笑い芸人として活躍する一方で作家としても、映画、ドラマ、バラエティー番組の脚本を多く手掛けている多彩な人物です。

主演は松本穂香で、その父親役に渋川清彦と、母親役にはともさかりえが扮します。妹役には欅坂46の元メンバー今泉佑唯。父の同僚に、ファンクバンド・在日ファンクのリーダー兼ボーカルの浜野謙太。友人役に『散歩する侵略者』や『殺さない彼と死なない彼女』に出演していた恒松祐里など、個性的な俳優が名を連ねています。

映画『酔うと化け物になる父がつらい』のあらすじ


(C)菊池真理子/秋田書店 (C)2019 映画「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

主人公のサキは、酒浸りの父親と新興宗教にハマっている母親、素直な妹と四人家族。

酔って帰ってきては玄関で寝てしまう父を布団に連れて行ったり、休日は遊びに行く約束をすっぽかして飲み仲間たちと麻雀に興じる父にうんざりしながらも「これが普通なんだ」と自分に言い聞かせて暮らしていました。

ある日、父の癌が発覚してサキはやり場のない怒りや虚しさを募らせていき…。

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