Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2019/03/22
Update

映画『バイス』あらすじネタバレと感想。実在の副大統領ディック・チェイニーを知っていますか

  • Writer :
  • 村松健太郎

映画『バイス』は4月5日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

歴代最強の副大統領と呼ばれるティック・チェイニー副大統領(H・W・ブッシュ大統領政権)の半生をクリスチャン・ベールの超なりきり演技で見せる政治&伝記映画。

監督はマイケル・ムーアの企画にも関わったことともある『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のアダム・マッケイ。

主演のクリスチャン・ベールに加えてエイミー・アダムス、スティーヴ・カレル、サム・ロックウェルなど賞レースの常連が集結しました。

第91回アカデミー賞で8部門にノミネートされ、メインキャストを実在の政治家に化けさせたメイクアップ部門を受賞しました。

またイラク戦争開戦の前後の出来事については映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』(2018)で見ることもできます。

映画『バイス』の作品情報


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Vice

【製作】
ブラット・ピット ウィル・フェレル

【製作・脚本・監督】
アダム・マッケイ

【キャスト】
クリスチャン・ベール、エイミー・アダムス、スティーブ・カレル、サム・ロックウェル、ジェシー・プレモンス、アリソン・ピル、リリー・レーブ、タイラー・ペリー、ジャスティン・カーク、リサ・ゲイ・ハミルトン、シェー・ウィガム、エディ・マーサン

【作品概要】
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2016)のスタッフ&キャストが再結集し、ジョージ・W・ブッシュ政権でアメリカ史上最も権力を持った副大統領と言われたディック・チェイニーを描いた社会派エンタテインメントドラマです。

これまでも数々の作品で肉体改造を行ってきたクリスチャン・ベールが、今作でも体重を20キロ増力。髪を剃り、眉毛を脱色するなどしてチェイニーを熱演しました。

本作でクリスチャン・ベールは第76回ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞を受賞。

チェイニーの妻リン役に『アメリカン・ハッスル』(2014)『メッセージ』(2017)のエイミー・アダムス、ラムズフェルド国防長官役に『フォックスキャッチャー』(2015)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のスティーブ・カレル、ブッシュ大統領役に『スリー・ビルボード』(2018)のサム・ロックウェルと、アカデミー賞常連の豪華キャストが共演しています。

ブラッド・ピットの製作会社プランBも製作に携わっています。


映画『バイス』のキャラクターとキャスト


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)
フォード政権で史上最年少の首席補佐官になり、以降父親ブッシュ政権で国務長官などを務め、ジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領に就任した。共和党系の大物政治家。

リン・チェイニー(エイミー・アダムス)
ディック・チェイニーとは高校時代からの付き合いで、後に妻となる。チェイニーの野心の源になる存在に。

ドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)
フォード政権で史上最年少の国防長官に、ジョージ・W・ブッシュ政権ではチェイニーに請われて再び国防長官に。チェイニーの政治上の師匠格に当たる。

ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)
第43代アメリカ大統領。父親は第41代大統領でもある。大統領就任前はテキサス州知事を6年務めた。

コリン・パウエル(タイラー・ペリー)
湾岸戦争の指揮を執り、当時は英雄的な人気を誇った。ジョージ・W・ブッシュ政権では国務長官を務めた。国連でのイラクが大量破壊兵器を保有しているというスピーチをした。

コンドリー・ライス(リサゲイ・ハミルトン)
ジョージ・W・ブッシュ政権では大統領補佐官を経て、パウエルの公認でアフリカ系アメリカ人の女性として初の国務長官に。

映画『バイス』のあらすじとネタバレ


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

秀才の恋人リンの引き合いもあって名門大学に入ったものも、酒のトラブルで早々に退学になってしまった青年期のディック・チェイニー。

野心家のリンに焚きつけられるように、ワシントン議会のインターンの機会を得ます。

そんな時、たまたま彼の前に現れたのが過激な言動で注目を浴びていた共和党の若手議員ドナルド・ラムズフェルド。

全て本音で語り、野心を隠さないラムズフェルドに親近感を感じたチェイニーは、彼のもとで徐々に出世をしていきます。

ニクソン政権でラムズフェルドが大統領補佐官に就任しますが、キッシンジャー長官との政治的対立に敗れ、ヨーロッパに事実上の左遷を受けてしまいました。

ところが、ニクソンがウォーターゲート事件で失脚すると、当時の副大統領フォードが昇格。

ニクソン色を払しょくするために閑職に追いやられていたラムズフェルドが史上最年少で国防長官に就任します。

そして、ラムズフェルドに付き従ってきたチェイニーは史上最年少もまた史上最年少で首席補佐官になりました。

その後、下院議員を6期務めて政治家としての地位を高めたチェイニーはロナルド・レーガン政権で国防長官に就任。

そして父親の跡を狙って大統領選挙に打って出るジョージ・W・ブッシュに副大統領候補として立候補して欲しいと言われるようになります。

以下、『バイス』ネタバレ・結末の記載がございます。『バイス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

リンからは副大統領は“大統領の死を待つだけ”の職だと言われるチェイニー。

しかし、ジョージ・W・ブッシュの政治家としての資質を軽く見積もっていたチェイニーは、副大統領に就任するや否や、法解釈を駆使して副大統領の権限を強めていきます。

その隣には師匠でもあるラムズフェルドが国防長官として支えます。

そして、アメリカ同時多発テロが発生。

テロを指導したウサマ・ビンラディンが潜伏すると言われていたアフガニスタンに米軍の侵攻を進めさせたチェイニー。

更に、イラクへの侵攻を狙います。

曖昧な情報を有利になるように拡大解釈したり、自分たちの利益につながる情報を取捨選択したりと強引な政治手腕を発揮。

イラクに大量破壊兵器が存在するという推論を掲げ、根拠無しにイラク戦争を始めます。

しかし、同時多発テロの直後は政府の施策を無条件に支持してきた国民から、時間が経つにつれて徐々に疑念の声が上がり始めました。

多くのメディアから、イラクの大量破壊兵器保有に対する反証が行わるようになり、チェイニーは徐々に批判の対象へと変わっていきます。

形勢が悪くなったチェイニーはやむを得ず、ラムズフェルドを解任するところまで追いつめられるのでした。

退任後も保守系政治家として行動するディック・チェイニー。

史上最強の副大統領(バイスプレジデント)と呼ばれた男は今も健在です。


映画『バイス』の感想と評価


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

副大統領を知っていますか?

アメリカ合衆国。ひいては世界のリーダーでもあるアメリカ大統領。

さすがに名前がわからないという人は少数派ではないでしょうか?

2019年3月現在はドナルド・トランプで、その前がバラク・オバマです。

近頃は大統領選挙が政治ショーとなってきたので、大統領候補が決まった時に副大統領候補も名前が出るようになりました。

以前より多少は認知度もあると思いますが、それでも現役副大統領を知っているという人は少ないでしょう。

大統領選挙のときに任期の終わった大統領の公認候補として、当時の副大統領が決まってやっとそこで、ああそんな人だったなぁということも多いのではないでしょうか?

例えばニクソンも元副大統領候補としてケネディ大統領と大統領選挙を争っているんですよ。

地球温暖化を扱った『不都合な真実』(2006)で知られ、後にノーベル平和賞を受賞したアル・ゴアがクリントン政権時の副大統領だったんです。

劇中では“ただ、大統領の死を待つだけ”の職と表現される副大統領。

そんな中で、その老練な手管で強い権限を得たディック・チェイニーは現職でありながらも大きな認知度を残した副大統領でした。

ちなみに現在の副大統領はマイク・ペンスです。

ある意味最高の称賛アカデミー賞受賞(メイクアップ&ヘアスタイリング賞)


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

映画『バイス』は第91回アカデミー賞で8部門にノミネートされました。

2019年のアカデミー賞どの部門でも激戦で、『バイス』は結果として競合作品に競り負ける形になってしまい、最終的にはメイクアップ&ヘアスタイリング賞の受賞にとどまりました。

しかし、考えてみるとある意味、最も適した称賛が与えられたのではないかとも思います。

この映画の売りはなんといってもクリスチャン・ベールを筆頭とするメインキャストの“なりきりぶり”です。

アカデミー賞にノミネートされたクリスチャン・ベールのディック・チェイニー元副大統領とサム・ロックウェルが演じるジョージ・W・ブッシュ大統領はもちろん、スティーヴ・カレルのラムズフェルド元国防長官のなりきりぶりも見事なものです。

また、出番は短いもののタイラー・ペリーが演じるコリン・パウエル元国務長官とライス補佐官もそっくりです。

ご当人の写真や動画と見比べていただきどれだけ似ているかを是非、確認していただきたいです。

元々の俳優の素顔を見る限り必ずしも同系統の顔つきでも無いように見えますが、見事に仕上げています。

メイクアップ全般を手掛けたのがロビン・ウィリアムスが女装した『ミセス・ダウト』やブラット・ピットがどんどん若返っていく『ベンジャミン・バトンの数奇な人生』を手掛けたグレッグ・キャノンということを知るとなるほど納得の仕事ぶりです。

特に、一枚絵(写真)の時よりも動画の時にそのそっくりぶりを感じることができるので、劇中で本編を見ていただくとより一層堪能できます。

まとめ


(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

第91回アカデミー賞では、俳優部門を総ナメし8部門(作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞:クリスチャン・ベール、助演男優賞:サム・ロックウェル、助演女優賞:エイミー・アダムス、編集賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞)にノミネートされた本作。

受賞したのはメイクアップ&ヘアスタイリング賞で、それも納得の役者陣の変身ぶりです。

自国を風刺しきった本作は、歪んだ権力に対して満面の笑みで切り込みました。

政治映画、伝記映画としても、一つのドラマとしても楽しめる映画となっています。

映画『バイス』は2019年4月5日(金)より全国ロードショーです。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

『ピッチパーフェクト3ラストステージ』ネタバレ感想。結末までのあらすじも

世界中を熱狂させた人気シリーズ『ピッチ・パーフェクト』が、3作目にしてついに最終章! 大学で結成されたアカペラグループ「バーデン・ベラーズ」のメンバーは、大学を卒業しそれぞれの道を歩んでいました。 そ …

ヒューマンドラマ映画

映画『ラフラフダイ』あらすじ感想と評価解説。“笑い死にという奇病”が蔓延する世界で人として生きて死ぬためにはどうすべきか

映画『ラフラフダイ』は2023年4月15日から21日まで東京・K’s cinemaにてレイトショー上映、全国順次公開 映像制作チーム・シネマ健康会の松本卓也の監督作『ラフラフダイ』が202 …

ヒューマンドラマ映画

映画MR.LONG/ミスター・ロン|あらすじと感想。チャン・チェンが座頭市のような勇姿を見せる!

2017年公開される映画のなかで文句なしにベスト級な作品なのが『MR.LONG/ミスター・ロン』。 ドイツ・香港・台湾・日本合作で製作された本作は、ベルリン映画祭コンペティション部門に正式出品され、主 …

ヒューマンドラマ映画

『大河への道』ネタバレあらすじ感想と結末の解説評価。伊能忠敬のすごいエピソードを時代劇と現代劇の2つの視点から功績を解く

伊能忠敬は、日本地図を完成させていなかった!? 地域活性化の為に、伊能忠敬を主役に大河ドラマを誘致しようとする、千葉県香取市役所の職員が直面する、日本地図完成に隠された、真実の物語を描いた映画『大河へ …

ヒューマンドラマ映画

映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』あらすじ感想と評価解説。ナチスの悪名高い医師の逃亡から“裁かれなかった悪”の辿った運命を描く

2026年2月27日(金)より映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』は、シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開! 歴史的な悲劇の舞台ともいえる第二次世界大戦時のアウシュビッツ強制収容所。その中で「 …

Cinemago|想像力の海へ、シネマダイビング。
ACT1|次の物語は、人からはじまる。
Cinemagoオンラインショップ|DVD・鑑賞チケット・オリジナルグッズ
『血を吸うスマトラオオコンニャク』
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学