映画『愛なのに』は2022年2月25日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。
『アルプススタンドのはしの方』(2020)の城定秀夫監督×『街の上で』(2020)の今泉力哉監督が脚本を務めた本作。
城定秀夫と今泉力哉が互いの脚本を提供し合い、R15+のラブストーリー2本を制作するプロジェクトL/R15による1作目の映画です。
古本屋の店主、多田と彼に好意を寄せる女子高生の岬。そして多田が忘れられない女性、一花は婚約中。それぞれの想いが交錯する大人のためのヒューマン・ラブコメディ作品となっています。
多田役には多数の話題作に出演する瀬戸康史。多田に想いを寄せる女子高生役を河合優実が好演しています。他にも、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)のさとうほなみや、『偶然と想像』(2021)の中島歩など、話題作への出演が絶えない俳優陣が名を連ねています。
それぞれ別方向に向かう恋の行方はどうなるのか、R15+作品として大人の事情も織り交ぜつつ優しさとユーモアが詰め込まれた本作についてご紹介していきます。
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映画『愛なのに』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【監督】
城定秀夫
【脚本】
今泉力哉
【キャスト】
瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実、中島歩、向里祐香、丈太郎、毎熊克哉、オセロ(猫)
【作品情報】
監督の城定秀夫は、Vシネマやピンク映画など100タイトルもの作品をまとめあげ 『アルプススタンドのはしの方』(2020)やコミックの映画化『性の劇薬』(2020)を手がけました。
本作の脚本を務めた今泉力哉は、『たまの映画』(2010)で商業映画デビューを果たし、『愛がなんだ』(2019)が大ヒット。その後も続々と話題作を制作しています。
そんな現代の日本映画界を牽引する2人が、互いの脚本を提供し合いR15+のラブストーリー映画を制作する企画L/R15(えるあーるじゅうご)の第1作目となるのが本作です。
主人公の多田浩司役を演じたのは、瀬戸康史。ドラマ「透明なゆりかご」(2018)、連続テレビ小説「まんぷく」や、濱口竜介監督の『寝ても覚めても』(2018)、『人間失格 太宰治と3人の女たち」(2019)、『事故物件 恐い間取り』(2020)、『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2022)など出演作の絶えない俳優の一人です。
多田に想いを寄せる女子高生役は、『佐々木、イン、マイマイン』(2020)『サマーフィルムにのって』(2021)、『由宇子の天秤』(2021)などで圧倒的存在感を示す若手女優の河合優実。
他にも、『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020)やNETFLIX『彼女』(2021)に出演している、さとうほなみや、『愛がなんだ』(2019)、『偶然と想像』(2021)などの中島歩。『そして、バトンは渡された』(2021)の向島祐香などが出演しています。
映画『愛なのに』のあらすじ
古本屋の店主の多田(瀬戸康史)は、女子高生の岬(河合優実)に突然、結婚してほしいと告白されます。
突然の告白に戸惑う多田。30歳の多田は、岬との年齢差を気にするのと同時に、昔バイト仲間だった一花(さとうほなみ)のことを忘れられずにいたからです。
一方で一花の婚約者の亮介(中島歩)はウエディングプランナーの美樹(向里祐香)と男女の関係になっていました。
そのことを知らない一花でしたが、結婚式の準備が進むにつれ亮介との関係に変化が現れはじめます。
映画『愛なのに』感想と評価
女子高生の岬(河合優実)が古書店の店主、多田(瀬戸康史)に一途に思いを寄せる甘酸っぱいストーリーと、結婚を間近に控えた男性が浮気をしてしまうというダークなストーリーが同時に進行します。
そのどちらにも関わってしまうことになった主人公の多田は、「好き」とは「愛」とはなんなのかということに真正面から向き合うことになるのです。
「好き」と「嫌い」と「無関心」
多田には昔、告白して振られてしまったものの、忘れられない女性が居ました。
好きな人に振り向いてもらえない気持ちを知っている多田は、自分に好意を寄せる岬のことをぞんざいに扱うことはできませんでした。
誰かを好きになったとき、相手からどう思われているか考えるのは自然なことです。
多田は、好きでも嫌いでもなく、「どうでもいい」と思われていることが、どれほど傷つくかを次第に理解していくのです。
自分の気持ちに嘘をつかず、かつ相手を傷つけないようにと多田が出した答えは、とても誠実で実直なものだったと思います。
その上で、彼が感じた「愛なのに」…に続く思い、そのまっすぐな心の叫びは胸に響きます。
誰かを好きになるということは、時には気持ちだけではどうにもならない側面が邪魔をして、複雑になる場合もあるでしょう。
時に尊く、時に滑稽にもなる人間の心理や行動は、だれにも操れるものではないということを独特の優しさとユーモアをもってこの映画は教えてくれているようでした。
ピュアな想いと本能的欲求
そして、本作はR15+作品ということで、性の問題が大きく絡んできます。
愛だけではどうにもならない性欲の行き場…。その行く末は一体どこなのか。
なんとも泥沼になりそうなテーマですが、ここをコミカルに描いているのも、本作の大きな魅力の一つだと言えます。思わず何度も笑ってしまいました。
だれもが「愛されたい」と願う世の中で、互いに同じだけの愛情や思いやりを持つことがいかに難しいのか。
そして、誰かと結ばれることがどれほど尊いのかということを感じさせてくれる映画だといえます。
そして、純粋な想いを乱してしまうどうしようもない欲求とも私たちは、上手く付き合っていかなければいけないのかもしれません。
まさに大人向けヒューマン・ラブコメディとして見どころが詰まった一作だと言えます。
まとめ
甘酸っぱい恋の物語と、大人ならではの一筋縄ではいかない現実的な事情…。そのどちらの魅力も満載に描いている本作。
登場人物同士のやりとりの些細なニュアンスや距離感からその関係性を繊細に描いていることで、切ない恋心もアダルトな一面もより印象深くなります。
絶妙なバランス感を持った城定秀夫と今泉力哉のタッグ作品の魅力は、きっと多くの人の心を掴むはずです。
L/R15の第2作目は、山本奈衣瑠、毎熊克哉、手島実優らが出演の『猫は逃げた』。こちらは、2022年3月18日(金)に公開予定となっています。
『愛なのに』は2022年2月25日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開。