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Entry 2022/04/30
Update

実写『ホリックxxxHOLiC』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。原作とは異なる映画化を見せる女郎蜘蛛編を蜷川実花によって艶やかに彩る

  • Writer :
  • 糸魚川悟

伝説的人気漫画を幻想的に映像化した新感覚オカルトファンタジー映画

「魔法騎士レイアース」や「カードキャプターさくら」など、時代を代表する作品を手掛けてきた作家チーム「CLAMP」が2003年から連載を開始した人気漫画「XXXHOLiC」。

オカルトを題材としながらも現実社会にも通ずる残酷さと対峙し成長していく主人公を描いた物語が人気となり、アニメや舞台、そして実写ドラマなど多くのメディアミックス作品が誕生した「XXXHOLiC」が遂に初めての実写映画化。

今回は唯一無二のタッチで映画を彩る蜷川実花監督によって制作された映画『ホリック xxxHOLiC』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『ホリック xxxHOLiC』の作品情報


(C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
蜷川実花

【脚本】
吉田恵里香

【キャスト】
神木隆之介、柴咲コウ、松村北斗、玉城ティナ、趣里、DAOKO、モトーラ世理奈、西野七瀬、大原櫻子、てんちむ、橋本愛、磯村勇斗、吉岡里帆

【作品概要】
CLAMPによる人気漫画を『ヘルタースケルター』(2012)や『Diner ダイナー』(2019)を手掛けた蜷川実花が映像化した作品。

『桐島、部活やめるってよ』(2012)の神木隆之介と『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)や『容疑者Xの献身』(2008)などで知られる柴咲コウが主演を務めました。

映画『ホリック xxxHOLiC』のあらすじとネタバレ


(C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

幼いころから「アヤカシ」が見えてしまう高校生の四月一日君尋は、その特性がゆえに誰とも関係を深めず人生を歩んできました、

四月一日がビルの屋上から自殺を考えていると一匹の蝶が目の前に現れ、その蝶に着いていくと路地裏にある不思議な「ミセ」へと辿り着きます。

「ミセ」の主人である壱原侑子は、対価を差し出す代わりにどんな願いでも叶えると言い、自己紹介すらしていない四月一日の名前や悩みを見抜きました。

侑子は四月一日の悩みである「アヤカシ」を見てしまう特性は根深く、取り除くためには「一番大切なもの」が対価として必要であると言います。

しかし、四月一日は自分自身の「一番大切なもの」が分からず、「一番大切なもの」を理解するまでの間、私生活が壊滅的である侑子の「ミセ」で家政婦として働くこととなりました。

誰とも関わることのない学校生活を過ごしてきた四月一日は学校内で同級生の百目鬼静と九軒ひまわりと出会い、2人は四月一日にとって初めての友人となります。

ある日、侑子の要望で酒の買い出しに出掛けた四月一日は帰路の途中で銀髪の青年に道を尋ねられ近隣の寺へと案内すると、その寺が退魔師の一族である百目鬼の実家であることを知ります。

百目鬼がその場に居たひまわりや四月一日を伴い本堂に案内すると、その場には百目鬼の一族が「アヤカシ」を封印した箱があり、青年はその箱を見ることが目的だったと話します。

青年は「退魔師」の人間が居ると厄介であると言い「アヤカシ」の力を使い百目鬼を襲いますが、「アヤカシ」に気が付いた四月一日が百目鬼を庇うことで難を逃れました。

その場に侑子が現れ青年が「女郎蜘蛛」の仲間であることを明かし、強い力で青年(アカグモ)を追い払い、負傷した四月一日を連れて帰宅します。

四月一日は負傷しながらも「アヤカシ」が見える能力が初めて役に立ったと喜びを隠せませんでした。

その日以降、「ミセ」での仕事と学校での百目鬼やひまわりとの生活に楽しみを見出し始める四月一日。

四月一日の誕生でもある4月1日が迫ると、百目鬼が自身の寺で行われる祭事の準備のため学校を早退する日が増え始め、その話を聞いた侑子は「ひまわりちゃんは大変でしょうね」と言います。

ひまわりは百目鬼の居ない日は四月一日を避けており、四月一日はそのことを彼女を問い詰めますが「分かっているくせに」とだけ言うと彼女はその場を去ってしまいます。

実はひまわりは両親が「幸運を呼び寄せる」特性を持った代償として「不幸を招く」特性を生まれながら背負ってしまっており、「退魔師」の一族である百目鬼の力によって特性が弱まる時だけ四月一日と関わるようにしていたのです。

四月一日は自身の特性で彼女の特性を初めて会った日から見抜いていましたが、「他人と深く関わらない」と言う一心から見て見ぬふりをしていました。

しかし、四月一日はひまわりを放っておくことが出来なくなり、侑子に彼女の特性を取り除くように懇願しますが、侑子は想像も出来ないほどの対価が必要になると首を縦に振らず、痺れを切らした四月一日は1人で学校へと向かいます。

階段でひまわりを見つけた四月一日は腕を掴み、彼女に憑いた「アヤカシ」を自分に移した四月一日でしたが、夥しい量の「アヤカシ」に憑かれた四月一日は階段の吹き抜けから落下してしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ホリック xxxHOLiC』のネタバレ・結末の記載がございます。『ホリック xxxHOLiC』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

気を失う四月一日は現れた女郎蜘蛛によって、力を引き出すとされる四月一日の片目を奪われてしまいます。

「ミセ」で目を覚ました四月一日は身体に落下した傷もなく、女郎蜘蛛に奪われたはずの目もあることから先日の出来事が現実か夢かが分からなくなり始めます。

他人のために自身の命を投げ出す四月一日の行為を「助けられた側の気持ちを考えていない」と評する侑子に反発した四月一日は、「ミセ」を飛び出た先に現れた女郎蜘蛛に身を委ねてしまいました。

翌日の4月1日、前日の記憶が曖昧な四月一日は作った朝食が侑子に好評であり、夜には侑子に百目鬼の寺で行われる祭りに行くようにと勧められます。

百目鬼の祭事を見届けた四月一日は百目鬼に誕生日祝いとして「イチゴチョコ」を貰い帰宅します。

翌日、朝食を用意した四月一日は前日と同じような反応を見せる侑子に戸惑いながらも、今日も行われている祭りへと行きます。

再び「チョコイチゴ」を奢る百目鬼にそのことを尋ねたことで、四月一日は自分だけが4月1日を繰り返していることに気づきました。

3回目の4月1日、「ミセ」を飛び出た先で女郎蜘蛛と出会った四月一日は、彼女が四月一日から奪った目の力で「何も起きず」「誰も傷つかない」1日を永遠に繰り返すと聞かされます。

四月一日は毎日続く1日を受け入れ始めますが、ある回でひまわりの身体に大きな傷があることに気づきます。

四月一日が階段から落下した日、蝶に導かれ「ミセ」へと辿り着いたひまわりと百目鬼は四月一日を救う「願い」を叶えるために、「対価」として彼の傷を自分へと移していました。

さらに百目鬼は四月一日が女郎蜘蛛に奪われた目の視力を肩代わりしていたことを知り、問い詰められた百目鬼は「お前が俺でも同じことをしただろ」とだけ言うとその場を去ります。

ひまわりは「この地で四月一日と出会えて良かった」と言うと、ひとつの場所に留まることは出来ないと別れを言い去っていきました。

2人の想いから「自分の大切なもの」を知った四月一日は4月1日を終わらせることを望むと、侑子から女郎蜘蛛と対峙するために彼女のブレスレットを授かります。

百目鬼に協力を求めた四月一日は女郎蜘蛛と対峙すると、百目鬼の「破魔矢」によってアカグモを倒すことには成功しますが、女郎蜘蛛の強大な力に成す術無く囚われてしまいます。

囚われた四月一日に女郎蜘蛛は「自分自身を差し出すなら、百目鬼や他の人間は助ける」と言いますが、四月一日が拒絶すると侑子に貰ったブレスレットが光り女郎蜘蛛を吹き飛ばしました。

その場に侑子が現れ女郎蜘蛛を圧倒しますが、追い詰められた女郎蜘蛛は百目鬼一族による封印の箱を解放し、現れた強大な「アヤカシ」に喰われてしまいます。

「アヤカシ」を侑子が抑えている間に「破魔矢」を拾い上げた四月一日は、百目鬼と共に弓を引き「アヤカシ」へと射込みました。

力を失った「アヤカシ」を抱える侑子はその身と共に封印の箱の中へと向かっていきました。

翌日、誰も居ない「ミセ」で目を覚ました四月一日は侑子と出会います。

昨日の「アヤカシ」との戦いで侑子がその身を犠牲にしたことを知る四月一日は侑子に「どんな対価でも支払うから消えないで欲しい」と願いますが、侑子は四月一日に「ただこの世界で生きていて欲しい」と伝えると四月一日を「君尋」と呼び、消えていきました。

数日後、四月一日は百目鬼に「ミセ」を継ぐことを決めたと話すと百目鬼は彼の選択を認めます。

開店した「ミセ」に客が現れると、四月一日はまるで侑子のような口ぶりで客を迎え入れました。

映画『ホリック xxxHOLiC』の感想と評価


(C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

艶やかな映像で描かれる「等価交換」の物語

この世のものではない存在である「アヤカシ」が見えてしまう性質に悩まされる主人公の四月一日は、蝶に導かれたことで願いを叶える「ミセ」に辿り着きます。

「ミセ」の主人である侑子は「等価交換」を何よりも重んじており、どんな願望も成就させる代わりとして願いに匹敵する相応の対価を求めます。

そこまでして手にした願いが必ずしもその人間を幸福にするとは限らず、時に対価として手放したものの重要さを知り、時に分不相応な「願い」に押し潰される残酷さが特徴でもある「XXXHOLiC」の世界。

実写映画版となる本作では現実社会とも繋がる原作の残酷さと、人との正しい繋がりの意味を教えてくれるような暖かさはそのままに、蜷川実花監督が得意とする演出によって原作の持つ独特な雰囲気がさらに引き出されています。

「アヤカシ」や「ミセ」がメインとなるシーンでは赤や青などの原色を多用することで、美しく魅力的だが残酷な世界を映像からも作り上げており、原作の世界観を目だけで感じ取れる「XXXHOLiC」らしいとさえ言える映像化作品となっていました。

原作とは異なる展開を見せる女郎蜘蛛編


(C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

原作では自分のせいで蜘蛛の恨みを買ってしまった百目鬼の肩代わりしたことで、四月一日の片目が女郎蜘蛛の手に渡ってしまいます。

四月一日を想う座敷童は目を取り戻すために単身で女郎蜘蛛に挑み命の危機に陥り、百目鬼は自身の視力を差し出すことで四月一日の視力を回復させます。

この一件で四月一日が「自己犠牲」が何を生むのかを学ぶ、原作の中でも特に人気の高いエピソードである「女郎蜘蛛編」ですが、本作では大きな脚色が加わっていました。

原作の女郎蜘蛛は「蜘蛛の巣」を壊された「対価」として四月一日の目を求め、「自己犠牲」を嫌う性格から彼を追い詰めはするものの、悪人としては描かれてはいませんでした。

しかし、本作では女郎蜘蛛を悪役として位置付け物語を展開させることで、ひとつのエピソードを大きく越えて「19巻」までで描かれた第1部の物語を描き切ることに成功。

大胆過ぎる脚色で「四月一日と侑子の物語」を完成させていた、「実写化」としても異質の作品でした。

まとめ


(C)2022映画「ホリック」製作委員会 (C)CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

登場人物の関係性や哲学的なセリフの数々が魅力的な人気漫画「XXXHOLiC」。

その魅力をそのままに、蜷川ワールド全開の原色塗れの色彩で彩られた全く新しい実写化作品となった映画『ホリック xxxHOLiC』。

洋服好きである主演の柴咲コウが絶賛した、登場シーンごとに変化する侑子の衣装にも大注目の本作は、原作を全く知らない人にもその魅力が伝わるような作品です。

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