Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

インタビュー特集

Entry 2020/04/22
Update

【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける

  • Writer :
  • 河合のび

ドラマ『そして、ユリコは一人になった』はU-NEXTにて独占配信中!

U-NEXT・カンテレによるミステリードラマシリーズ「『このミス』大賞ドラマシリーズ」の第5弾作品にして、シリーズ最終作となるドラマ『そして、ユリコは一人になった』。

ある伝説が語り継がれている学園を舞台に、そこで巻き起こる連続殺人の全容と伝説の正体に迫ろうとする謎多き女子高生の姿を描きます。


photo by 田中舘裕介

このたび、主人公・嶋倉美月役を演じた玉城ティナさんにインタビュー。

ミステリアスなキャラクターを演じるにあたって意識されたこと、女優という仕事に対するご自身の思いなど、貴重なお話を伺いました。

“ユリコ”と対をなすキャラクターに


(C)U-NEXT・カンテレ

──本作にて美月というミステリアスな雰囲気を漂わせるキャラクターを演じるにあたって、当初はどのようなことを意識されていましたか。

玉城ティナ(以下、玉城):本格的なミステリー作品に携わるのも初めてでしたし、連続ドラマへの出演自体もとても久しぶりだったので、実際の現場に入るまでは手探りな部分もありましたが、一度現場に入ってしまったら美月としてのキャラクターは割とすんなり掴むことができました。監督たちと自身の役についてお話しさせていただいた時にも、そこまで解釈というものに違いがなかったので、予想していたよりはすんなりと演じられましたね。

また岡本夏美が演じた百合子は結構感情をあらわにする場面もあるんですが、対照的に私が演じた美月は淡々としているというか、感情の起伏を顔に出さないので、ユリコの感情に引っ張られないようにしようと気をつけていました。

あと美月を演じていると、自分が瞬きを全然していないことに気づいたんです。それは半ば無意識のことだったんですが、下山天監督に「瞬き、全然してないよね」と言われてからは、「じゃあ、しないキャラクターでいこうかな」と思って。

百合子は感情的にしゃべっていることもあって、劇中でも瞬きが多いんです。それと対比できるように、立っているときも線がぶれない子になるように美月を演じました。

表情に秘められた“謎”


(C)U-NEXT・カンテレ

──瞬きのお話のように、撮影現場の中でご自身が演じられた役のキャラクターが定まっていったことは他の場面でもありましたか。

玉城:役のキャラクターや雰囲気、その上での演じ方については現場に入っての空気感で本当に変わっていくものなので、私は演技についてあまり決め込み過ぎずに、個々の場面にあわせて正解を探し求める感覚で現場では演じていました。また監督たちの演出も的確な一方で、その中でも自由に演技をさせてもらえたので、その擦り合わせを続けながら演じ続けていった感じです。

──その中でも、敢えて監督陣から言われた言葉などはありますか。

玉城:うーん……監督たちが「1日1回、美月のアップを撮らないと終われない」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。

──その理由はお聞きになられましたか。

玉城:何だろう……美月はとても難しい役ではあったんですが、目線や表情の一つ一つに読み取れない、けれどどこか読み取れそうな意味、それも重大な意味を持っているキャラクターなんです。アップで映し出された瞬間に彼女は何を見ているのか、何を考えているのかなど、それらの意味は最終回である第8話で全てが明らかになるため、作品の中に込められた謎を描くためにも非常に重要だったんだと思います。

ただ実際の演技に関しては下山監督も杉山嘉一監督も割とお任せにしてくれていたので、撮影の打ち上げの際に「何でそこまでお任せしてくれたんですか?」とお聞きしたら「“言うことなし”です」と答えてくださいました。その言葉はとてもありがたかったです。

女優としての新たな表情


(C)U-NEXT・カンテレ

──表情についての話題が上がりましたが、玉城さんはご自身の「女優」としての表情をどう捉えられていますか。

玉城:自分で言うのも何ですが、いい意味で特徴的な顔をしていると思うんです。だからこそ「アップのショットに強い」ということは女優として「基本の言葉」を持っているからなんだろうと思いますし、他の女優さんと並んで見ても大きく異なるわけですから、他の方とはまた違う表情ができるじゃないかなと感じています。

──ご自身にとって初の本格ミステリー作品だった本作では、これまでにはない「新しい表情」は現れましたか。

玉城:言葉では説明しにくいですが、それはありましたね。どの役でもやはり「新しい自分に出会いたい」と思いながら演じてはいますし、作品ごとに異なるキャストの方と現場でお話をさせていただき、お芝居をともにさせていただくという時点で自分の知らない一面や表情は出てくると思います。自分から演じようとしなくても、他の方の演技のおかげで引き出されるということも沢山ありますから。今回の作品だったら、私の演技はどちらかといえば「静」の方であり、他の方の演技は「動」であることがとても多かったので、対比という形でも私の演技や表情が引き出されていたと感じています。

ただ、キャラクターの「裏」を見せずに演じ続けるという「ミステリーならでは」の演技や表情は少し難しかったですね。事件の全容や謎の正体を理解していたとしてもそれを表に出さずに演じることには「“ミステリー”側の人間ってこういう気持ちなのかもしれない」と感じさせられました。

──玉城さん演じる美月のアップで映し出される表情が、ドラマ『そして、ユリコは一人になった』に秘められた謎を象徴しているわけですね。

玉城:そうですね、それは物語の展開を抜きにしても、そうなんだろうと感じています。

“向いている”ではなく“適している”


photo by 田中舘裕介

──最後に、玉城さんの女優としての目標、或いは女優というお仕事に対する模索を今後も続けていくにあたって意識されていることはありますか。

玉城:何度やっても、分からない仕事だなと思うんですよね。決して「満足」はできない仕事といいますか。もちろん個々の作品自体は撮影を終え、完成され、いろんな方に観ていただけるわけですが、そこで満足し切ってしまうことに対して何となく恐れのようなものを感じるんです。満足してしまった時点で、「また新しいものに挑戦できる」という思いもなくなってしまう気がして。だからこそ意識的にしているわけではないんですが、できるだけ満足しないように生きています。

もちろんその中では「自分を高みに持っていくために何ができるんだろう」と日々考えたりはするんですが、それは考え過ぎたとしても自分一人で判断できることだけではないので、あくまで一日一日で自分にとっての本当の決断を続けているといいますか、自分なりの正解を突き止めていけたらなと思っていますね。その正解が女優なのか、或いは別の何かはまだわかっていませんが、何よりも「自分にとっての“表現”とは何なのか」への答えを探し続けています。

──自己にとって表現を模索される中で、2020年現在の玉城さんが「女優」を続けられている理由、或いは自身が「女優」という表現に向いていると思われたきっかけとは何でしょう。

玉城:女優という仕事に対して、いまだに私は「向いている」とは思わないんですよね。ただ、「適している」とは感じています。

微妙なニュアンスの違いですし、なぜ違うのかを説明することも非常に難しいんですが、多分私は一つの人生だけで満足できる性格ではないので、役を通していろいろな人生に触れられるのはとても得なことだと捉えていますし、その経験が自分自身に還元されていくというサイクルがすごく好きだと思っています。結局は自分というものへとつながっていくことに女優という仕事の面白さを感じています。

──ある意味では「玉城ティナ」という人間として生きるためにも、女優としてのお仕事を続けられているということでしょうか。

玉城:その言い方は、ちょっとカッコよすぎるかもしれないですね(笑)。女優はあくまで泥臭い仕事だと思いますし、体力勝負なところもありますから。今思うと、私は「耐える力」が強いのかもしれないですね。それもまた「適している」理由かもしれません。

インタビュー/河合のび
撮影/田中舘裕介
スタイリスト/丸山佑香 (まきうらオフィス)
ヘア&メイク/今井貴子

玉城ティナ プロフィール


photo by 田中舘裕介

1997年生まれ、沖縄県出身。講談社主催の「ミスiD2013」で初代グランプリに輝き、14歳で講談社「ViVi」の最年少専属モデルとなる。

2014年、ドラマ『ダークシステム 恋の王座決定戦』で女優デビュー。また翌年の2015年には『天の茶助』でスクリーンデビューを飾り、その後も2016年の『貞子VS伽椰子』、2017年の『PとJK』『暗黒女子』、RADWINPS「光」MVなど次々と話題作に出演。

2018年には写真集『渇望』のコラボムービーとして制作された山戸結希監督の『玉城ティナは夢想する』が、同年のショートショート・フィルムフェスティバル&アジア2018のブランデッドショート部門にてグランプリを獲得。

2019年にも『チワワちゃん』『Diner ダイナー』『惡の華』『地獄少女』など数々の映画作品に出演、第44回報知映画賞にて新人賞を受賞。また2020年1月には入江悠監督の映画『AI崩壊』が公開された。

ドラマ『そして、ユリコは一人になった』の作品情報

【配信・放送情報】
U-NEXTにて独占配信中
またドラマ最新情報はカンテレ公式サイトにて

【原作】
貴戸湊太『そして、ユリコは一人になった』(宝島社文庫)

【監督】
下山天、杉山嘉一

【脚本】
杉山嘉一

【クリエイティブアドバイザー】
佐藤二朗

【キャスト】
玉城ティナ、岡本夏美、小越勇輝、紺野彩夏、柴田杏花、森迫永依、天野はな、大原梓、中尾有伽、野々村はなの、小平大智、平岡祐太

【作品概要】
U-NEXT・カンテレによるミステリードラマシリーズ「『このミス』大賞ドラマシリーズ」の第5弾作品にして、シリーズ最終作にあたる作品。ある伝説が語り継がれている学園を舞台に、そこで巻き起こる連続殺人の全容と伝説の正体に迫ろうとする謎多き女子高生の姿を描きます。

主人公・美月役の玉城ティナをはじめ、岡本夏美、小越勇輝、紺野彩夏、柴田杏花、森迫永依、天野はな、大原梓、中尾有伽、野々村はなの、小平大智、平岡祐太などが出演。また『このミス』大賞ドラマシリーズの過去4作に全て特別出演している佐藤二朗がクリエイティブ・アドバイザーとして脚本開発およびキャスティングに参加。本作でも重要な役柄で出演しています。

ドラマ『そして、ユリコは一人になった』のあらすじ


(C)2019 U-NEXT/カンテレ

嶋倉美月(玉城ティナ)の通う百合ヶ原高校では、オカルトめいた伝説が語り継がれている。それは、「ユリコ様伝説」と呼ばれ、学内の生徒の中で深く信じ込まれていた。学園のトップに君臨する「ユリコ様」という存在は崇められ、その不思議な力によって逆らうものを不幸にしてきた。

「ユリコ様」になれる唯一の条件、それは「ユリコ」という名前であること。そして、学内に「ユリコ」が複数いる場合、たった一人の女王「ユリコ様」を除いてすべての「ユリコ」が淘汰される。

新学期、新たに始まる「ユリコ様争い」。一人、また一人と失われる命。脱出不可能な争いに巻き込まれた親友・矢坂百合子(岡本夏美)を救うため、天才女子高生・嶋倉美月は立ち上がり、連続死の真相と伝説の謎に挑んでいく……。





編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。

2021年にはポッドキャスト番組「こんじゅりのシネマストリーマー」にサブMCとして出演(@youzo_kawai)。


photo by 田中舘裕介

関連記事

インタビュー特集

【本田望結インタビュー】『きさらぎ駅』ホラー映画初出演での学びと“みんなが応援してくれる選択”の先の幸せ

映画『きさらぎ駅』は2022年6月3日(金)より全国ロードショー! 『凪待ち』『タイトル、拒絶』などで知られる恒松祐里の映画初主演作『きさらぎ駅』。 ネットの匿名掲示板発の“現代の神隠し”として人々の …

インタビュー特集

【谷口悟朗監督インタビュー】『BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇』“観るためのパワー”を持つ人々への映画×持ち続けたい“どんな作品も”という自由さ

映画『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』は全国絶賛上映中! 魔改造された実験都市「東京」を舞台に、改造人間となった男、それを追うヤクザ、そして異形の者たちの壮絶で血みどろな三つ巴の戦いを描 …

インタビュー特集

【壷井濯監督インタビュー】映画『サクリファイス』を通じて現代の孤独と闇に向き合う

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019にて壷井濯監督作品『サクリファイス』が7月15日に上映 埼玉県・川口市にある映像拠点の一つ、SKIPシティにて行われるデジタルシネマの祭典「SKIPシティ国際D …

インタビュー特集

【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』俳優という仕事で追い続ける“あの時”と生きることを“ナメてはいけない”理由

映画『逃げきれた夢』は2023年6月9日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラム他で全国ロードショー! 誰にも訪れる人生のターニングポイントを迎えた男が、新たな一歩を踏み出すまでのおかしく …

インタビュー特集

【大庭功睦監督インタビュー】映画『滑走路』原作歌集の短歌という“点”を結んだ存在と未来が過去を見つめる瞬間

映画『滑走路』は2020年11月20日(金)より全国順次ロードショー! 32歳でその命を絶った歌人・萩原慎一郎のデビュー作にして遺作となった唯一の歌集を映画化した映画『滑走路』。年齢も立場も異なる男女 …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学