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Entry 2019/10/10
Update

【藤田恵名インタビュー】映画『WELCOME TO JAPAN』言えない事は歌の中へ込め、なりふり構わず闘い続ける

  • Writer :
  • Cinemarche編集部

映画『WELCOME TO JAPAN 日の丸ランチボックス』は2019年10月11日(金)より、「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」にて限定上映!

1968年に創設され、スペイン・バルセロナのリゾート地シッチェスで毎年10月に開催されている「シッチェス映画祭」は、SF・ホラー・サスペンスなどのジャンル映画に特化した《世界三大ファンタスティック映画祭》の1つ。

そして、シッチェス映画祭公認の映画祭「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション」での上映が決定されたのが、西村喜廣監督の『WELCOME TO JAPAN 日の丸ランチボックス』です。


(C)Cinemarche

過激さとバイオレンスが盛り沢山な本作の主演を務めたのは、「今一番“脱げる”シンガーソングライター」と称され、様々なメディアで話題沸騰中の藤田恵名さん

映画祭での作品上映を記念し、このたび藤田恵名さんへのインタビューを敢行。自身のMVから端を発した映画の制作経緯やシンガーソングライターとしての歌への思いなど、貴重なお話を伺うことができました。

夢はゴールデン街のママ


(C)Cinemarche

──今回の映画では観光客が多く登場しますが、その光景は現在の新宿ゴールデン街などを強く連想しました。

藤田恵名(以下、藤田):私、ゴールデン街で雀卓のあるスナックを開くことが最終的な夢なんです!新宿という場所が大好きです(笑)。

──本作は外国人に対する「日本ガイド」という語り口で構成されていますが、中には「なんじゃこりゃ」と思う部分もありました。

藤田:そうですね。「もう日本人はサムライじゃない」がやっと周知の事実になっているので、ポップに受け取ってもらえたらいいなと思います。

確かに思想は強いけれど、あれを観て怒ったり、やいのやいの言う人は器の小さいんじゃないかと(笑)。一生懸命撮った一方で、こっちが言うことじゃないですが「エンタメとして、お手柔らかに観てください」という感じです。

ただSNS上では、日章旗のアイコンの方から「君もそっちの子なのね」と味方を見つけたかのようなコメントを頂いたりもしたので、「本作の思想は1ミリも私の思想ではない」「あくまで西村監督の思想が作品の思想だ」と声を大にして言いたいです。

「映画ではできる」から「歌ではできる」へ

藤田恵名・MV『言えない事は歌の中(検閲済ver.)』
実は「未検閲ver.」も同時公開されており、YouTubeにて視聴可能!

──本作はMV『言えない事は歌の中』の映画化作品にあたりますが、その経緯をお聞かせいただけますか?

藤田:当初は「MVから派生した長篇映画を作る」というコンセプトだったんですが、結局同時進行で撮りました。

スタッフさんもあまり経験したことがない制作体制だったみたいで、複雑でハードな撮影だったんです。特に三社祭を背景にしたゲリラ撮影などは、実現できるか否かの瀬戸際でした。墓場で戦うシーンも、最初はMVでも使う予定だったのかな。西村監督の世界観や思い切りの良さで何とか乗り切った感じです。

西村監督の噂もご一緒する時から聞いていて、「すげえ世界観の監督だな」と思いました。女殺し屋キカの役をいただいた時、学園ラブストーリー自体はありふれているかもですが「こんなビジュアルの役が自分に来ることは、これを逃すときっとないだろうな」と(笑)。それに脚本を読んでいくうちにキカの宿命や「本当は寂しくて悲しい子なのかもしれない」を感じて、大事に演じようって思いました。

キカって、いつも“アンテナ”を張っているんです。一方で私は、小さい頃、自分の足を踏んでコケていたような子なんですよ。「キカのように強い女性になりたいな」「そうやって年を重ねてくのか」と思いましたし、もう少し、女性らしさと強さを兼ね備えなくちゃいけないですね。


(C)2019キングレコード

──膨らませてほしい歌詞の一節など、自身が作った楽曲の映像化にあたって西村監督と話し合ったことはありましたか?

藤田:全くないですね、お任せで。西村監督が歌を聴いて「こう撮りたい」と思ったことが、MVや映画の答えかなと思っています。演技でも脚本から意図を汲む以上のことはしてません。どうしても読み取れない部分はさすがに聞きましたが、感情面に関しては聞かなかったです。

──藤田さんが作られる楽曲は、そういった映画・MVなどの映像作品から影響を受けることはないのでしょうか?

藤田:直接的なものかは微妙ですけど、「現実世界では無理なことを映画ではやれる」ということを、歌に対しても置き換えられるようになってきました。

「ここまで攻めていいんだ」「何を今まで怖がっていたんだろう」と感じ、当たり障りない歌詞を書くのではなく「歌になら乗せられる、乗せていいんだ」という開き直りにも似た、自分の引き出しを拡げられるきっかけになったなとは思いますね。

でも本当は、人が死んでしまう映画は苦手です(笑)。「誰も死ぬな」と。

アンチも苦しみも金に変えてやる!


(C)Cinemarche

──映画でも描かれていますが、藤田さんの多くの楽曲作品には“影の存在”あるいは“もう一人の自分”というテーマがあります。『言えない事は歌の中』はどのように作られたのでしょうか?

藤田:この曲を作っていた時期は、名前を認知されメディアにも出してもらえたことで、いわゆる“アンチ”も増えてきた時期と重なります。

下積みは長くやっていましたし、以前からアンチとも接する機会はありましたが、SNSで書いたら絶対だめな言葉をぶつけられるなど、言葉の恐ろしさを思い知らされました。

それでも、「この感情は歌の中に秘めよう、歌っている自分が解決してくれる」と思い続け、その思いにもとづいて『言えない事は歌の中』の歌詞を書いたんです。

今は苦しんで終わらせないようにして、「これを金に変えてやるぞ!」ぐらいに思ってます(笑)。今までは「エーンエーン」と枕を濡らしていたのですが、「この感情に負けっぱなしはやだ」「そうじゃないとフェアじゃない」と思えるようになってきました。

「戦闘少女」の最前線


(C)2019キングレコード

──劇中では本格的なアクションにも初めて挑まれていますが、そもそも歌手を目指された最初のきっかけが『セーラームーン』だと聞きました。「戦闘少女」のまさに最前線に藤田さんがいるわけですが、アクション撮影はいかがでしたか?

藤田:「みんなそういったことを考えながら、アクションをやってるんだ」という驚きを感じました。その一方で、自分は体力はあっても運動神経はないということも稽古の中で思い知りました。

坂口拓さんの稽古場でやっていたので、参考資料として彼のアクション映像は沢山見ましたね。ただ普通に再生していても早送りみたいな動きの速さなので、運動神経がない自分があまり参考にすることはできませんでした。

結局、「カッコよくできなくても、“必死でこいつを殺したい”って気持ちがあればなんとかなる」という精神論によって、思い切りぶつかりました。その代償でケガをすることもありましたが、何とか乗り切ることができました。

でも確かにそうですね、『セーラームーン』(笑)。その時から体を動かしとけばよかったなと思います。

なりふり構わず、「くそったれ」と叫び続ける

「ドルチェ」ライブ映像(2015年5月4日、渋谷GUILTYにて)

──女殺し屋キカの姿は、「ドルチェ」(※1)としての活動なども含め、「他人の目なんてくそったれ」という藤田さんの歌手としての戦闘的な姿勢と重なります。そもそもその戦闘的な姿勢が、歌手活動の中で表れていったのはなぜでしょう?

藤田:「ドルチェ」まで知ってくださっている、嬉しいなあ。

元々幼少期や小・中学生の時は、“みんなが共感できる歌”しか聴いてこなかったんです。だから上京した時には、「こんなにもいろいろな音楽をやっている人がいるんだ」って現実にまず打ちのめされました。

いろんな人と会っていくうちに世界や世の中を知っていくわけで、このままの感性だと押しつぶされちゃうと思って、強く振る舞ったり、嘘がつけるようになりました。すると次第に「みんな明日も頑張ってね」とか「君が好きだよ」といった言葉を歌えなくなりました。

どうせなら、生きていく中で増え続けるフラストレーションやマイナスの感情を歌にした方が、私らしい。そう思うようになっていったんです。それまでは競争心もない中でやってきたんですが、その頃から「負けっぱなしはやだ」という強い気持ちが芽生えたわけです。


(C)Cinemarche

──この映画の感動は何よりも、なりふり構わず闘い続ける藤田さんの姿勢そのものにあると感じています。今後、藤田さんはより過激な方向へと突き進んでいくのでしょうか?

藤田:落ち着くことはないと思います(笑)。

思い切りのよさや「今一番“脱げる”シンガーソングライター」というキャッチコピーも武器にしつつ、「私はここまでしたぞ」という自負が少しでも音楽の説得力に加わってくれればいいなとは思ってます。

どんな仕事においても常になりふり構わず、です。例えばスロット関係の仕事では、喉にはあまりよくない環境でもとにかくしゃべり続ける。そして翌日のライブでも前日のことなんて考えず、ためらわず喉を酷使します。歌手として「ライブが絶対」と思っているので。

※1:「ドルチェ」……ティラミス・ミルフィーユ・タルトの3名で構成される、イギリスを拠点に活動中のポップスバンド。2013年に行われた藤田恵名ワンマンライブのオープニングアクトとしてデビュー。ボーカル担当のティラミスは「シンガーソングラドル・藤田恵名の後輩妖精」とされており、藤田恵名自身はあくまで「ドルチェ・ライブの物販スタッフとして活躍している」とのこと。

「自分」を演じ続けた成果


(C)Cinemarche

──「MVの監督」という新たな挑戦も控えていますが、今後の映画に関するご予定はいかがですか?

藤田:そもそも、「女優をしている」っていう自覚がまずないんです。だから「次はこういう役がいい」というこだわりも特にはないんですよ。せいぜい「次は、死んだり殺したりじゃない作品がいいなあ」ってくらいです(笑)。

──「女優の自覚はない」と仰いましたが、藤田さんは「何が何でも歌手になるんだ」と覚悟を決められた瞬間から、いろんな“自分”を演じられてきたように思えます。その意味では、元々女優としての高いポテンシャルがあったのではないでしょうか?

藤田:今回、役作りで困ったことがそれほどなかったんですが、そう考えるとポテンシャルがあるのかな(笑)。

NGカットも出しましたが、感覚的に演じたからこそよかった場面も多かったんです。それに日頃生きていても、文字を見ると映像が結構頭に浮かぶんですよ。ある曲の歌詞を聴いて「きっとこういう場面かな」みたいに。

大女優になれるとは思わないですけど、もし映画のお話を今後も頂けるのならぜひやりたいです。だから、また死んだり殺したりな映画に出ることになった時は、懲りずに誰かを殺しているかもしれない(笑)。

インタビュー/吉岡雅樹
構成/河合のび
撮影/出町光識

藤田恵名さんのプロフィール


(C)Cinemarche

1990年生まれ、福岡県出身。プラチナムプロダクション所属。

歌手活動と並行してグラビアアイドルとしても活躍中。キャッチコピーは「いま一番”脱げる”シンガーソングライター」。自分自身で作詞作曲をし、精力的にライブ活動を行っている。自らが音楽制作会社スタッズプロダクションを立ち上げ、キングレコードよりCDをリリースしている。

グラビア活動においては「ミス東スポ2014」グランプリ、「ミスiD2017」を獲得。CX「佳代子の部屋」レギュラー出演や「アウト×デラックス」への出演で話題となり、その後も数々のテレビ・ネット配信番組に出演。

本作は2016年の『EVIL IDOL SONG』に続き二度目の映画主演となる。

映画『WELCOME TO JAPAN 日の丸ランチボックス』の作品情報

【日本公開】
2019年(日本映画)

【監督・原案・編集・キャラクターデザイン】
西村喜廣

【脚本】
継田淳、西村喜廣

【キャスト】
藤田恵名、屋敷紘子、サイボーグかおり、笹野鈴々音、鈴木希実、鳥居みゆき

【作品概要】
「今一番“脱げる”シンガーソングライター」として話題の藤田恵名が女殺し屋キカとして主演を務めたバイオレンス映画。

監督は、『蠱毒 ミートボールマシン』などで知られる西村喜廣。藤田が2018年にリリースし世界に衝撃を与えた楽曲『言えない事は歌の中』のMVをもとに、同MVも手がけた西村監督自らがさらなる過激さをもって長編映画化した。

2019年10月11日から11月21日まで、渋谷・名古屋・梅田を股にかけて開催される映画祭「シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019」の上映作品。

映画『WELCOME TO JAPAN 日の丸ランチボックス』のあらすじ


(C)2019キングレコード

鎖国により日本古来の文化が保たれていた過去を重要視し、現状の外国人が入り乱れる日本を憂う極右組織に育てられた殺し屋キカ(藤田恵名)。

日本で悪事を行う外国人を殺害するためキカは世に放たれるが、殺人を繰り返す中で大切な「何か」を見つけていき…。





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