Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』あらすじ感想と評価解説。歌手Siaが映画音楽にて“人生の再起”の喜びを託す

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』は、2022年2月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショー。

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』は、ソウルフルな歌声と独創的なミュージックビデオで、世界中から注目を集めるシンガーソングライターのSiaによる初監督作品。

半自伝的映画として、依存症やトラウマなど人生の困難に直面しながらも、音楽と愛する人々に支えられ強く生きていく女性の姿を描いています。

「シャンデリア」や「アライヴ」「チープ・スリルズ」など数々のヒット曲をもち、グラミー賞9回ノミネートという経歴をもつ歌手Siaが、13年もの構想期間をかけて完成させた渾身の一作です。

映画『あの頃、ペニー・レインと』(2000)のケイト・ハドソン、Siaの「シャンデリア」のミュージックビデオの出演等で広く知られるマディ・ジーグラーがミュージカルシーンで繊細なパフォーマンスを見せ、ゴールデングローブ賞最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル)にノミネートされています。

Siaが本作にどういう思いをこめたのか、その魅力と共にご紹介していきます。

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』の作品情報


(C)2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【監督・脚本・原案・製作・音楽】
Sia(シーア)

【キャスト】
ケイト・ハドソン、レスリー・オドム・Jr、マディ・ジーグラー、メアリー・ケイ・プレイス、べト・カルビーヨ、ジュリエット・ルイス、キャシー・ナジミ―、ティグ・ノタロ、ベン・シュワルツ、ヘクター・エリゾンド

【作品情報】
世界的に注目を集めているシンガーソングライターのSia(シーア)が自身の半生を投影させた初監督作品。Siaが書き下ろした12曲の楽曲も使われています。

主人公のズー役にはケイト・ハドソン。『あの頃、ペニーレインと』(2000)での演技が評価され、アカデミー助演女優賞にノミネート。ゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞しました。

ズーの妹のミュージック役を務めたのは、Siaのミューズとして知られ、スティーブン・スピルバーグ監督によるリメイク版『ウエスト・サイド・ストーリー』(2022)にも出演するマディ・ジーグラー。

ズーとミュージックを支える青年のエボ役を務めたのは、歌手としても活動しているレスリー・オドム・Jr。

撮影監督を担当したのは、「シャンデリア」のミュージックビデオで撮影監督を務めたセバスチャン・ウィンテロです。

振付は、「シャンデリア」をはじめとするSiaのミュージックビデオの振付で知られるライアン・ハフィントン。彼は『ベイビー・ドライバー』(2017)、『tick, tick…BOOM! チック、チック…ブーン!』(2021)なども担当しました。

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』のあらすじ


(C)2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

アルコール依存症のリハビリに通うズー(ケイト・ハドソン)は、祖母が急死したことで自閉症の妹のミュージック(マディ・ジーグラー)と同居することになります。

薬物の売人で稼ぎを得て生活していたズーは、自分のことで精一杯でとてもミュージックと一緒には暮らせないと困り果てていましたが、マンションの隣室に住む優しい青年エボ(レスリー・オドム・Jr)との出会いをきっかけに、考え方が変わり始めます。

3人で過ごす心地よさと幸せを感じるようになった矢先、ズーの元に問題が押し寄せます。

映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』感想と評価


(C)2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

歌姫Siaが伝えたかった愛の物語

Siaの半自伝的映画ということで、アルコールや薬物依存、恋人との死別などSiaの実体験が盛り込れたストーリーとなっています。

自身の暗い過去、絶望に暮れた経験とそこから救い出してくれた友人や音楽への感謝が込められた作品です。

ミュージックという名の自閉症のキャラクターが登場するのは、Siaが依存症者のための集会で出会った自閉症の子を持つ母親の言葉がきっかけでした。

「私がいなくなったら、誰がこの子を愛してくれるのかしら?」という一言に衝撃を受けたことでSiaは本作の原案にとりかかっています。

作中で互いに支え合うミュージックとズーの姿を観ていると、誰もが愛され、愛するためにこの世に存在して、その繋がりがあって人は希望を見出せるのだというメッセージが込められているようにも感じられます。

また、ミュージック(マディ・ジーグラー)の視点で見せるカラフルでハッピーな世界観は、今の世に愛や希望を持つことは必要不可欠だという強い信念を読み取ることもできます。

上手くいかないことの多い人生、災難はなぜかいっぺんに降りかかり、全てを投げ出したくなる。そんな困難にぶつかった人に向けた応援歌とも言える映画です。

ミュージック 


(C)2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

本作はシリアスなドラマの中に、マディ・ジーグラー演じるミュージックというキャラクターの想像の世界として、ミュージカルシーンが挿入される構成になっています。

このミュージカルシーンの独自性の高いパフォーマンスが本作の魅力を語るには欠かせない点のひとつです。

カラフルでポップな衣装や細部までこだわり尽くされたセットの数々。

まるで夢の中のような空間で歌い踊り、コロコロと表情を変えるキャスト陣の繊細かつエネルギッシュな姿からは目を離せません。

特にその存在感が光るのは、Siaの「シャンデリア」でのパフォーマンスが世界中で反響を呼び、Siaのミューズとして知られるマディ・ジーグラーです。

ダンスのみならず歌声や演技とあらたな一面が披露され、彼女の類まれな才能を目の当たりにすることができます。

そして彼女を安定感ある演技で導いたのは、ズー役を演じたケイト・ハドソンに違いありません。トラウマや依存症に苦しむ女性の姿を丁寧に表現した演技と、ソウルフルな歌声は観客の心を揺さぶります。

まるで舞台劇を見ているようでもあり、ミュージックビデオのようなハイセンスさも感じられる、そのパフォーマンスシーンに注目して観てはいかかでしょうか。

まとめ


(C)2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

2022年は、ジョエル・コーエン監督によるAppleオリジナル映画『マクベス』やジョー・ライト監督による『シラノ』、スティーブン・スピルバーグ監督によるリメイクでゴールデングローブ賞作品賞を受賞した『ウエスト・サイド・ストーリー』など音楽映画が豊富な年となっています。

そんな中でも、個性が光る本作はミュージシャンSiaの世界観を堪能できる貴重な作品だと言えるでしょう。

ぜひ、大きなスクリーンと映画館の音響で堪能することをおすすめします。

『ライフ・ウィズ・ミュージック』は2022年2月25日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次ロードショー

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『それだけが、僕の世界』あらすじと感想レビュー。パク・ジョンミンら俳優陣の演技力は必見!

イ・ビョンホン主演『それだけが、僕の世界』が、12月28日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー。 伝説的スターであるイ・ビョンホン、超大型の若手俳優パク・ジョンミン、ベテラン女 …

ヒューマンドラマ映画

映画『否定と肯定』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

ユダヤ人女性歴史学者とホロコースト否定論者のかつてない対決の行方は?! ミック・ジャクソン監督、レイチェル・ワイズ主演の『否定と肯定』をご紹介します! CONTENTS1.映画『否定と肯定』作品情報2 …

ヒューマンドラマ映画

『静かな雨』小説あらすじネタバレ。映画化で結末のキャスト仲野太賀と衛藤美彩が選ぶものは

人間ってなんでできてると思う? 人が記憶でできてるだなんて断固として否定する。 宮下奈都の小説『静かな雨』が、仲野太賀と、元乃木坂46で初の映画出演となる衛藤美彩の共演で映画化です。2020年新春に公 …

ヒューマンドラマ映画

映画『チィファの手紙』感想と考察評価。岩井俊二監督が中国で『ラストレター』のもうひとつの物語を描く

岩井俊二監督初の中国映画『チィファの手紙』は2020年9月11日(金)より全国ロードショー予定。 『スワロウテイル』『花とアリス』の岩井俊二監督。彼の初長編映画作品である『Love Letter』(1 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ザ・プレイス 運命の交差点』ネタバレあらすじと感想考察。結末まで謎の男の正体とは

謎の男が真実を見抜く 2019年4月5日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて公開の映画『ザ・プレイス 運命の交差点』。 全編カフェの中というワンシチュエーションで進んで行く本 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学