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Entry 2020/02/25
Update

韓国映画『スウィング・キッズ』ネタバレ感想とレビュー評価。タップダンスでミュージカルのごとくバンドとの掛け合いが必見!

  • Writer :
  • 西川ちょり

朝鮮戦争の最中、捕虜収容所で結成された国籍も身分も異なる5人のタップダンスチーム!

『サニー永遠の仲間たち』で知られるカン・ヒョンチョル監督待望の新作『スウィング・キッズ』。

1951年、朝鮮戦争最中の巨斉(コジェ)捕虜収容所を舞台に、タップダンスに情熱を注ぐ、「スゥイング・キッズ」のメンバーたちの姿を感動的に描いています。

と、同時に戦争の恐ろしさ、忌まわしさがこれでもかとばかりに伝わってきます。衝撃的なラストとは!?

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映画『スウィング・キッズ』の作品情報


(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

【公開】
2020年公開(韓国映画)

【原題】
스윙키즈/英題:SWING KIDS

【監督】
カン・ヒョンチョル

【キャスト】
D.O.<EXO>、ジャレッド・グライムス、パク・ヘス、オ・ジョンセ、キム・ミンホ、ロス・ケトル、イ・デビッド、パク・チンジュ

【作品概要】
『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル監督が、D.O.とがっちりタッグを組み、朝鮮戦争時に実在した捕虜収容所を舞台に、タップダンスに熱中する人々が、国籍や、イデオロギーを越え、友情を築いていく姿を描くヒューマンドラマ。

ベニー・グッドマンの「シング・シング・シング」や、デヴィッド・ボーイの「Modern Love」など数々の名曲が使われています。

映画『スウィング・キッズ』あらすじとネタバレ


(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

朝鮮戦争最中の1951年。

国連軍が巨済島(コジェド)に作った捕虜収容所には、北朝鮮軍や中国軍、避難する最中に「アカ」と間違われて収容された民間人までもが入り乱れ、17万人以上の人々が収容されていました。

収容所の中では、「反動分子」を探し出しては制裁が加えられるなど、反共と親共で捕虜たちが対立しあい、それを武力でアメリカ軍が抑えると、国際的に批判が高まり、所長が退任に追い込まれるという事態が発生しました。

新しく赴任してきたロバート所長は、収容所のイメージアップのために、捕虜のダンス団を結成させることを思いつきます。ブロードウェイのダンサーだったジャクソン軍曹が沖縄で日本女性との間に子どもをもうけた話を伝え聞き、所長は、日本に向かう発令を出してやる代わりにタップダンスチームを作るよう命じます。

ジャクソンはアジア人にはタップダンスは無理だと乗り気ではありませんでしたが、北朝鮮軍捕虜の暴れん坊ロ・ギス、4か国語が話せ、通訳の仕事を求めてやってきた若い民間人女性・ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すために有名になることを望むカン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの実力を持った中国人のシャオパンの四人が彼の周りに集まってきました。

ジャクソン軍曹は黒人であるために、しばしばアメリカ兵から不当な差別を受けていました。国籍も皮膚の色もイデオロギーも違う5人は、タップダンスを通じて、次第に絆を深めていきます。

ジャクソンは彼らのために闇の取引でタップシューズを手に入れていましたが、彼らのことをよく思っていない米兵の裏切りにより、その現場をおさえられ、さらに彼が受け取った紙袋の中に反米のビラがはいっていたため、収監されてしまいます。

ジャクソンがいないという絶望的な状況でタップダンスチームは赤十字訪問の当日、民族衣装で顔を隠してダンスを披露し、大喝采されます。記者や赤十字団も彼らに興味を持ちました。気を良くした所長は記者たちにこのメンバーでクリスマスの公演を行うと公言し、ジャクソンも開放されます。

ジャクソンは、公演に対して複雑な思いを持っていました。ロ・ギスは仲間から批判されないだろうかと心配だったのです。危険すぎるのではないかと所長に訴えますが、所長は相手にしてくれません。

ロ・ギスは前線の英雄として活躍する兄を持ち、北朝鮮軍捕虜の仲間から一目置かれた存在でした。アメリカのダンスに夢中であることがわかると、どんな目にあうかわかりません。しかし、彼はすっかりタップダンスの虜になっていました。

そんな中、新たに収容された北朝鮮軍の捕虜グァングクは、仲間たちがすっかりアメリカになびいている姿に激怒し、米兵らが祖国に何をしたか、自分たちの家族にどれほどひどいことをしたか思い出せ、と叱咤します。彼の指揮のもと、反動分子の徹底的排除が行われ、収容所内は騒然とします。

ロバート所長は一体誰がこの騒ぎを起こしているのか把握するために、なんとしても祖母に会いたいと願っているひとりの捕虜をつかまえ、婆さんに会わせてやるからと口説き密偵に仕立て上げました。

彼の密告により、グァングク一派は、集会現場を抑えられ、米兵に皆殺しにされてしまいます。

このような雰囲気の中、ロ・ギスの兄が収容所にやってきます。ロ・ギスと兄は久しぶりの再会を果たし喜びあいます。実は兄は体は大きいものの、頭脳は5才児ほどで、ロ・ギスは兄の前で動物の真似を披露して、昔のように兄を笑わせるのでした。

一方、チームの皆は、めきめきと力をつけてきました。互いの信頼感も増し、クリスマスの舞台のために汗を流していました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『スウィング・キッズ』ネタバレ・結末の記載がございます。『スウィング・キッズ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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水面下では北朝鮮の陰謀が着々と進んでいました。所長の下働きとして働き、身を隠していた男が北朝鮮軍の連絡係をしていたのです。

男は、ロ・ギスにクリスマスの公演当日、舞台を終えたら所長を殺すよう命じ、武器を楽屋裏に隠しておくよう支持しました。ロ・ギスは断ることが出来ません。拒否すればこの場で殺されてしまったでしょう。

ついにクリスマス公演の日がやってきました。チーム「スウィング・キッズ」の出番を皆がまだかまだかと待ち構えていました。

いよいよ、出番となったとき、ジャクソン軍曹は、一人舞台に立って、聴衆を見渡して言いました。戦争がなければ、今頃、「スウィング・キッズ」の仲間たちはそれぞれ自分たちの才能をいかして幸せに暮らしていただろうと。ロ・ギスはカーネギーホールの舞台にも立てる才能があるとジャクソンは認めていました。

所長は苦虫を噛み潰したような顔をしていましたが、ついに「スウィング・キッズ」の公演が始まりました。楽団とも掛け合いながらの素晴らしい舞台に聴衆は熱狂しました。公演が終わりメンバーが舞台のそでに引っ込んだ瞬間、ロ・ギスは一人舞台に戻りタップダンスを踊り始めました。

ジャクソンには彼がまるでカーネギーホールで踊っているかのように見えました。踊り終えた瞬間、ロ・ギスがジャクソンに向けた表情は爽やかな笑顔でした。しかし、彼はすぐに楽屋裏に駆け込みます。

するとそこには兄が待ち構えていました。兄は銃を取ろうとする弟を制し、自分が銃を持って、舞台に向かい、米兵に向かって乱射し始めました。

アメリカ兵たちはすぐに反撃し、兄を射殺しました。あわてて避難しながら所長は怒りにまかせて「黄色いクズ野郎を皆殺しにしろ!」と怒鳴りました。

これにより、ジャクソン以外の「スゥイング・キッズ」は皆全て射殺されてしまいます。米兵に羽交い締めにされながらジャクソンは叫び続けました。

数十年後、UN退役軍人の韓国訪問ツアーのバスから一人の老人が降り立ちました。巨済島捕虜収容所は1953年に閉鎖され、現在は記念公園になっています。老人はひとり、ホールに入っていきました。

かつて「スウィング・キッズ」として仲間と共にタップダンスを踊った場所・・・。「ジャクソン!」と呼ばれ老人はゆっくりと振り返りました。

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映画『スウィング・キッズ』の感想と評価


(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

様々な見せ場が目一杯詰め込まれ、凄まじいエネルギーが充満している圧巻の133分です。

17万人もの捕虜が収容されていた巨済島(コジェド)の捕虜収容所には、北朝鮮軍、中国軍をはじめ、「アカ」の疑いをかけられて収容された韓国人もいたそうです。

複雑にごった返す巨大収容所に金目当てでやってくる女たちも含め、苦難の境遇にありながらたくましく生きる人間の姿がムンムンと伝わってきます。

広大な収容所をカメラは大胆に横切り、捕虜やそれを管理する米兵の営みを映し出し、そこに溢れる人々の息遣いをとらえます。米兵が女たちと開くダンスパーティーでもカメラは上下、左右に自在に動き、カットを割らないワンショットで、会場の興奮を伝えてくれます。

暴力や抗争が絶え間ない負のエネルギーが充満する中、D.O.が扮する主人公のロ・ギスが音楽=タップダンスと出会うことで、物語は明るく、生命感溢れるものへと変わっていきます。

さまざまな日常の音がリズムのように響き、眠っている人々のいびきの音さえも、ロ・ギスの耳をリズミカルに襲い、彼をタップダンスへと誘います

カン・ヒョンチョル監督は、『サニー 永遠の仲間たち』(2011)でも、ポップミュージックを物語の世界に効果的に使用していましたが、本作でも大胆な選曲を行っています。ロ・ギスと、パク・ヘスが演じるヤン・パンネがまったく違う場所でタップを踏み跳躍する姿を交互に映し出す場面で、デヴィッド・ボーイの「Modern Love」を使用しているのです。

まったく違う時代の楽曲が流れるにも関わらず違和感はなく、むしろそれは、彼らの躍動に、心からの歓びを与えています。

クラッシク、ジャズ、はてはエンディングのビートルズと、多様な楽曲を自在に使用し、観るものの気分をジェットコースターのように激しく揺らします。

クリスマスの公演はまるでミュージカルのごとく。バンドとの掛け合いをはじめ、生きていることの歓びが爆発します。

ところが、高揚感が頂点に達した時、登場人物も観客も奈落の底につき落とされてしまうのです。そして、この映画の背景が、朝鮮戦争という痛ましいものであったことを思い出させるのです。

親共、反共というイデオロギーの争いで1つの国が分断され、ロシアとアメリカ、はては中国の参戦で、朝鮮半島が互いの面子をかけた代理戦争の舞台となり、何の罪もない人々が容赦なく殺されていく。そんな戦争の実態そのものがあの衝撃的な場面に集約されているのです。

あまりにも救いのない結末に呆然としてしまいますが、それだからこそなおさら、ロ・ギスが最後に一人でタップを踏み、振り返ったときの最高の笑顔が心に深く焼き付けられ離れないのです。

まとめ


(C)2018 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & ANNAPURNA FILMS. All Rights Reserved.

映画の原作は、朝鮮戦争時、巨斉捕虜収容所で、仮面をかぶり自由の女神像の前で踊っている捕虜の姿をアメリカの従軍記者ワーナー・ビショフが撮った一枚の写真から想像を膨らませて作られた創作ミュージカル『ロ・ギス』です。

朝鮮戦争という悲しい歴史と、ミュージカルというまったく異質な素材をミックスさせたこのユニークな原作をもとに、カン・ヒョンチョル監督が新たな世界を築き上げました。

ダンスという文化が、いがみ合う人々の心を1つにし、人種も、性別も、イデオロギーも関係なく、友情を築き、互いを尊重しあえることが、まっすぐに描かれています。音楽、さらには映画など、「文化」というものが持つ偉大な力を証明してみせるのです。

『7号室』や、「神とともに」シリーズでの活躍も記憶に新しく、俳優としてのキャリアを確実に築いているD.O.。今回は、アイドルとして鍛え抜かれたダンス力を遺憾なく発揮し、見事なパフォーマンスをみせています。

また、4ヶ国語を駆使し、幼い兄弟を養うために懸命に生きる女性ヤン・パンネに扮したパク・ヘスの存在感も素晴らしいものがあります。序盤のダンスパーティーでの堂々たるヴォーカルぶりも忘れがたく、今後が大変楽しみな女優がまたひとり登場しました。



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