Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

映画『きらきら眼鏡』の犬童一利監督インタビューとあらすじ。上映館情報も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

映画『きらきら眼鏡』は、9月7日(金)TOHOシネマズららぽーと船橋にて先行上映

また、9月15日(土)より有楽町スバル座、9月29日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

映画『きらきら眼鏡』の演出を担当したのは、映画『カミングアウト』や『つむぐもの』で知られる犬童一利監督。

今回は監督のプロフィールと、『きらきら眼鏡』のインタビューをご紹介します。

映画『きらきら眼鏡』の作品情報

【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
森沢明夫「きらきら眼鏡」(双葉文庫) 

【監督】
犬童一利

【キャスト】
金井浩人、池脇千鶴、古畑星夏、杉野遥亮、片山萌美、志田彩良、安藤政信、鈴木卓爾、大津尋葵、成嶋瞳子、菅野莉央、大西礼芳、長内映里香、山本浩司、モロ師岡

【作品概要】
森沢明夫の同名小説を原作を『カミングアウト』『つむぐもの』の犬童一利監督が新人俳優の金井浩人と演技派女優の池脇千鶴のダブル主演で映画化。

主人公の明海役を映画デビューとなる金井浩人、ヒロインのあかね役を池脇千鶴が演じ、あかねの恋人役を安藤政信、そのほか古畑星夏らが脇を固めています。

脚本は犬童監督と学生の頃から交友のある守口悠介が担当。またエンディング曲「Reminiscence〜回想〜」は柏木広樹feat.葉加瀬太郎&西村由紀江。 

映画『きらきら眼鏡』の犬童一利監督のプロフィール

監督作品『カミングアウト』(2014)


犬童一利は1986年生まれの神奈川県の厚木市出身で、人間の心の機微を描くことに定評がある若手映画監督。

2008年に中央大学商学部卒業を卒業した後、2010年に短編映画『フリーバイバイ』でSHORT FILM FESTA NIPPON 2010に入選。

2012年の『SRS ありきたりなふたり』にて、第1回氷見絆国際映画祭の優秀賞受賞。また、関西クィア映画祭2012や第8回香川レインボー映画祭で上映されます。

2014年には『カミングアウト』が、第23回東京国際レズビアン&ゲイ映画祭と第26回香港レズビアン&ゲイ映画祭で上映作品に選ばれます。

監督作品『つむぐもの』(2016)

2015年に『早乙女4姉妹』を発表し、2016年には『つむぐもの』が、第11回大阪アジアン映画祭コンペティション部門や第19回上海国際映画祭パノラマ部門に正式出品されました。

映画『きらきら眼鏡』に掛けた犬童一利監督のインタビュー

映画『きらきら眼鏡』の企画の発端は?


森沢明夫著:双葉社 (2015)

「前作の『つむぐもの』を気に入って頂いていた原作者の森沢先生からお声掛けを頂きました。森沢先生は船橋出身在住で、小説も船橋が舞台です。昨年が船橋市の80周年で、船橋市の方々と映画化の話があがった際にご指名を頂きました」

『きらきら眼鏡』の原作と映画の違いは何でしょう?

「原作を「恋愛観7:死生観3」とすると映画は「死生観7:恋愛観3」にしました。それに伴い、設定もかなり変更させて頂きました。明海が抱えているものや主演二人の職業も変えています。ただ、原作の魂の部分をしっかり宿した物語になっていると思います」

明海役を務めた金井浩人さんとは?


(C)森沢明夫/双葉社 (C)2018「きらきら眼鏡」製作委員会

「主人公の“明海”は、2017年の春に行ったワークショップの参加者の金井くんにしたいと思いました。彼は俗に言う「新人」で当時事務所にも入っておらず、商業作品のキャリアもほとんどありませんでした。ただ、彼自身に明海を重ねあわせたのが大きな理由でした。「過去に恋人を亡くした」という設定は、原作にはなく映画のオリジナルです。キャスティングの話などはせずに、プライベートで一緒に飲みに行ったりして、彼自身の人生や恋愛観などを聞いていきました。とはいえ、これだけ多くの方が関わっている商業作品で、かつ監督の僕は無名。そんな中、この思いを受け入れてくれたプロデューサーや原作の森沢先生には本当に感謝しています。プロデューサーと深夜に新宿の居酒屋に彼を呼び出して、主演のオファーをしました。彼は最初は言葉の意味が分かっておらず、やっと理解すると「生きててよかった」と涙しました。そして、クランクアップの時、彼はスタッフキャストの前で同じ台詞を、また涙を流しながら口にしました。役作りで実際に駅で丸2日間働いてもらったり、勝浦に1週間住み込んでもらったりもしました」

ヒロインあかね役を演じた池脇千鶴さんとは?


(C)森沢明夫/双葉社 (C)2018「きらきら眼鏡」製作委員会

「“あかね”はとても難しい役だと思いました。余命宣告を受けた恋人を持ちつつ、物語のテーマの「きらきら眼鏡」をかけている女性。ただ見た目の可愛さとかだけではない、なにか不思議な魅力がある役者さんにやってもらう必要があると思っていました。池脇千鶴さんは『ジョゼと虎と魚たち』や『そこのみにて光輝く』で昔からとてもとても大好きな方でした。脚本を気に入って下さり、オファーを受けてもらえると聞いた時は「やったー!」と声をあげたのを覚えています。現場での池脇さんはとにかく明るく、場の雰囲気を和やかにしてくれました」

金井さんと池脇さんにどのような演技指導をされましたか?

「金井くんには、撮影に入る前からお互いに「明海でいること」ばかりを考えていましたが、周囲のアドバイスもあり、撮影の少し前くらいから、そこに頓着しすぎないようにしていきました。もう役の要素は入っているし、そもそも明海っぽいという理由でオファーをしているのだから、金井くんの本人がそこにいれば良いと思えるようになりました。最初の方、特にクランクイン初日はもの凄く緊張しており、一同不安がよぎりましたが、日をおうごとに、みるみる彼の良さが出てきました。ここに関しては、カメラマンの根岸さんを始めとしたベテランスタッフ、そして池脇さんにとても多くの力を貸して頂きました。

いきなり初主演で池脇さんや安藤さんとの共演という大役をやり切った彼に僕自身も力をもらいました。

池脇さんは顔合わせの際に、すでにあかねっぽいと思いました。ご本人も、脚本を読んだ時に、一切あかねに対して疑問がなかったと仰っていたのもあり、声のトーンや動きの指示は何度かさせて頂きましたが、多くを池脇さんに委ねました。オフの時の池脇さんは現場を暖かくするために、いつも明るく振る舞ってくれていましたが、本番に入った時にいきなり涙を流したりするのをみると、さすがだなと感心してしまいました。また是非ご一緒させて頂きたいです」

映画『きらきら眼鏡』で伝えたいテーマは?


(C)森沢明夫/双葉社 (C)2018「きらきら眼鏡」製作委員会

「原作には本当に沢山素敵な部分があり、脚本家と何度も話し合いましたが、最終的にはシンプルに「劇場を出た人がきらきら眼鏡をかけていること」を目標にしました。「きらきら眼鏡」は心にかける眼鏡で、普段見過ごしてしまうようなモノや感謝に気付かせてくれ、世界を輝かせてくれる眼鏡です。これは今の日本にこそ本当に必要な考え方だと思っています。裕福で恵まれているのに、SNSの普及もあって、愚痴っぽくなってしまったり、人の悪いところばかりを見てしまう「くもり眼鏡」を無意識にかけることが多いとずっと感じていました。個人的には「生への感謝」がきらきら眼鏡の主成分だと思っており、物語や登場人物、ロケーションなど映画の世界を通して、このマインドを伝えたいと思っています。一方、無理してきらきら眼鏡をかけることが本当に正しいのかという問題提起もしたいと思っており、そのあたりをあかねに投影しています」

映画『きらきら眼鏡』のあらすじ


(C)森沢明夫/双葉社 (C)2018「きらきら眼鏡」製作委員会

高校時代の恋人の死後、周囲に心を閉ざしたまま、駅係員の仕事でやり過ごすように日々を過ごす立花明海。

毎日、同じ落とし物を探しに来る訳ありの乗客に対し、冷たい対応を見せる同僚の女性駅係員の松原弥生がこぼす愚痴を、明海は上手く聞き流していました。

読書家である明海は非番の日に立ち寄った古書店で『死を輝かせる生き方』という気になった本を購入。

その本のページをめくると、ある一文が明海の目に飛び込んできました。

「自分の人生を愛せないと嘆くなら、愛せるように自分が生きるしかない。他に何ができる?」

そこには「大滝あかね」と書かれた一枚の名刺が挟まっていました。

他人と関わりを避けてきた明海でしたが、名刺に記された人物に興味を抱き、その本を返すため会う約束をします。

待ち合わせの喫茶店に現れたあかねは、産業廃棄物処理場で事務員として働く、よく笑う女性でした。

彼女は何もない空に美しさを感じ、またゴミを生きている証だという少し風変わりな女性で、「私ね、きらきら眼鏡、かけることにしてるんです。見たものぜんぶ輝かせる眼鏡」と、あかねは笑いながら明海に話しました。

やがて明海は、あかねと度々会うようになり、奇妙な交流が始まります。

しかし、時たまスマホを気に掛けるあかねには、肺を患った余命わずかの木場裕二という恋人がいました…。

まとめ

犬童一利監督は、本作ほ映画制作を快く迎え入れた船橋の人たちのためにも、この映画を多くの観客に映画を観てもらいと語っていました。

そのような状況の犬童監督を大きく支えたのは、脚本を担当した守口悠介の存在がありました。

犬童監督は前作の映画『つむぐもの』に続き、守口悠介と映画制作のタッグを組んだのです。

脚本家の守口悠介は、日本ラオス国交60年記念作品『ラオス 竜の奇跡』(2017/熊澤誓人との共同)や、映画『名前』(2018)、テレビドラマ『相棒』の執筆で知られたクリエーター。

そんな守口と犬童監督は、大学時代からの親友であり、本作の準備段階から密に連携をとっていたそうです。

その時の守口とのことを犬童監督はこう振り返ります。

「明海とあかねの職業を決めるときや癌患者の方への取材も一緒に行いました。明海の故郷をどこにするか決めるのにも、二人で1泊2日で房総半島を1周して勝浦に決めました。原作の森沢先生からは内容は完全に預けて頂いたので、原作の魂を宿すことだけは徹底しつつ、映画として表現をするのにベストな形を広い視野で模索したつもりです。意見はお互い出し合いつつ、進めていきました」

友人の守口ともにロケーションハンティングに向かい、映画化する登場人物の背景やキャラクター作りなども共に行っていたのです。

そんな親友同士が、“夢描いた映画”ということも、かつての同級生の呑み会や故郷に戻ったシークエンスに滲んで垣間見れたような気がしました。

映画『きらきら眼鏡』は、9月7日(金)TOHOシネマズららぽーと船橋にて先行上映

また、9月15日(土)より有楽町スバル座、9月29日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次公開

ぜひ、お見逃しなく!

本作を上映する劇場情報

【北海道地区】
北海道 シアターキノ 近日公開

【関東地区】
東京 有楽町スバル座 9月15日〜
東京 シネマート新宿 9月29日〜
東京 イオンシネマむさし村山 9月28日〜

神奈川 シネマジャック&ベティ 近日公開
神奈川 小田原コロナシネマワールド 9月29日〜

千葉 TOHOシネマズららぽーと船橋 9月7日〜

【東海・北陸地区】
愛知 名演小劇場 9月28日〜
愛知 イオンシネマ名古屋茶屋 9月28日〜
愛知 中川コロナシネマワールド 9月29日〜
愛知 半田コロナシネマワールド 9月29日〜

岐阜 大垣コロナシネマワールド 9月29日〜

福井 福井コロナシネマワールド 9月29日〜

【近畿地区】
大阪 第七藝術劇場 9月29日〜

京都 イオンシネマ京都桂川 9月28日〜

【九州地区】

福岡 小倉コロナシネマワールド 9月29日〜

*上記の情報は7月10日現在のものです。作品の特性からセカンド上映や全国順次公開されることが予想されます。お近くの劇場をお探しの際は必ず公式ホームページを確認の上お出かけください。

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『猫は逃げた』あらすじ感想と評価解説。今泉力哉×城定秀夫のL/R15で描く“夫婦とその恋人”が織り成す人間ドラマ

映画『猫は逃げた』は2022年3月18日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー。 映画『猫は逃げた』は、『街の上で』(2020)の今泉力哉による監督で、『アルプススタンドのはしの方』(2020)の …

ヒューマンドラマ映画

【映画ワンハリネタバレ感想と考察】タランティーノが『ワンスアポン・ア・タイムインハリウッド』で見せた魔法とは

クエンティン・タランティーノ監督9作目の新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が、2019年8月30日に公開されました。 1992年『レザボア・ドッグス』で鮮烈デビューしたクエンティン・ …

ヒューマンドラマ映画

『女優は泣かない』あらすじ感想と評価解説。スキャンダル俳優と夢を追う若手ディレクターの崖っぷちコンビが見出した“自分の居場所”

映画『女優は泣かない』が2023年12月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか、12月15日(金)よりシネ・リーブル梅田、アップリンク京都、12月23日(土)よりシアターセブン、来年1月5日( …

ヒューマンドラマ映画

映画『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』あらすじ感想評価と美術的考察の比較解説。歴史的アーティストの真実をジャック・ドワイヨン監督が描く

弟子入りを熱望した女性彫刻家カミーユ・クローデルと師匠オーギュスト・ロダンの関係を解く 2017年11月に没後100年を迎える“近代彫刻の祖”オーギュスト・ロダン。映画『ロダン カミーユと永遠のアトリ …

ヒューマンドラマ映画

アンドリュー映画『ブレス しあわせの呼吸』あらすじと感想。キャストの演技力と息づかい

映画『ブレス しあわせの呼吸』は、9月7日(金)角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー。 実在した主人公ロビン役に『ハクソー・リッジ』のアンドリュー・ガーフィールドが好演を見せ、献身的に愛した妻ダイアナ …

U-NEXT
【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学