Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2021/09/09
Update

映画『硫黄島からの手紙』ネタバレ感想とあらすじ結末の評価解説。史実を基に二宮和也・渡辺謙が演じた“父親たちの星条旗”の別側面

  • Writer :
  • 秋國まゆ

硫黄島の戦いを日本側の視点で描いた映画史上初の2部作の第2弾。

クリント・イーストウッドが製作・監督を務めた、2006年製作のアメリカの戦争ドラマ映画『硫黄島からの手紙』。

太平洋戦争最大の激戦だったといわれる、硫黄島の戦い。参加した1人の若き日本軍の兵士の視点から見る、約2万2000人の日本軍を率いたアメリカ帰りの名将栗林忠道中将たちの戦いとは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

アメリカ側の視点で硫黄島の戦いを描いた映画『父親たちの星条旗』と対になる映画『硫黄島からの手紙』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。

スポンサーリンク

映画『硫黄島からの手紙』の作品情報


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

【公開】
2006年(アメリカ映画)

【原作】
栗林忠道『「玉砕総指揮官」の絵手紙』

【監督】
クリント・イーストウッド

【キャスト】
渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、松崎悠希、中村獅童、裕木奈江、ルーク・エバール、マーク・モーゼス、ロクサーヌ・ハート、尾崎英二郎、渡辺広、山口貴史、阪上伸正、安東生馬、サニー斉藤、安部義広、県敏哉、戸田年治、ケン・ケンセイ、長土居政史、志摩明子、諸澤和之、アキラ・カネダ、ブラック縁、ルーカス・エリオット、サイモン・リー、樗沢憲昭

【作品概要】
父親たちの星条旗』(2006)のクリント・イーストウッドが製作・監督を務めた、アメリカの戦争ドラマ作品です。

原作はアメリカ帰りの陸軍中将・栗林忠道の手紙を後にまとめた『「玉砕総指揮官」の絵手紙』。太平洋戦争最大の激闘といわれる「硫黄島の戦い」を日米双方の視点で描いた映画史上初の2部作であり、『父親たちの星条旗』(2006)に続く第2弾の作品でもあります。

ラスト サムライ』(2003)や『沈まぬ太陽』(2009)、『GODZILLA ゴジラ』(2014)など国内外で活躍する俳優・渡辺謙が主演を務めています。

映画『硫黄島からの手紙』のあらすじとネタバレ


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

2005年、東京都小笠原諸島にある硫黄島。太平洋戦争最大の激戦が繰り広げられたそこには、硫黄島の戦いで戦没した者の慰霊碑や、戦争が終わった今も残されたままの塹壕や重砲、戦車がありました。

戦跡の調査隊は数ある塹壕の中で、何かが土に埋もれているのを発見。それは61年前の1944年、硫黄島で戦った日本軍の兵士たちが、家族に宛てて書き残した数百通もの手紙でした。

1944年6月。日本陸軍第109師団長兼小笠原兵団長を務める陸軍中将・栗林忠道が、硫黄の臭気が立ち込める灼熱の島「硫黄島」に降り立ち、硫黄島守備隊の新たな指揮官として着任しました。

栗林は着任早々、海岸で上官から体罰を受けていた陸軍一等兵の西郷昇と樫原を助けます。そのおかげで西郷たちは、自分たちが所属する機関銃中隊の谷田陸軍大尉から休憩を貰うことができ、1日中塹壕のための穴掘り作業をしていた疲れを癒すことが出来ました。

その日の夜。栗林は海軍部隊の指揮官の1人である伊藤海軍大尉からの報告を受け、摺鉢山地区指揮官である足立陸軍大佐率いる陸軍と、海軍が上手く連携が取れていないという問題点に気づきます。

翌日。栗林は副官である藤田正喜陸軍中尉と共に硫黄島内を視察し、避難できていない島民たちがいることを知り、本土に戻すよう命じました。

そんな栗林の元に、硫黄島に新しく派遣された軍人であり、戦車第26連隊長の西竹一陸軍中佐が馬に跨って現れました。西は1932年のロサンゼルス五輪における馬術障害飛越競技の金メダリストであり、避難した島民たちの住居の解体作業を行っていた西郷たちにも、自慢の馬術を披露していました。

騎兵科出身の栗林と西は、共に馬を愛する者同士気が合い、その日の夜は一緒に食事をとりました。その際に栗林は西から、自分が思っていた以上に戦況が悪化している事実を聞かされます。

「我々日本軍は、制海権・制空権ともに無きも同然。先日のマリアナ沖海戦で空母の艦載機が撃墜され、連合艦隊は壊滅。この状況で最も賢明な判断を下すとしたら、この孤立した島を海の底に沈めることでしょう」


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

翌日、栗林は地図を見直し、藤田と一緒に再度海岸を視察。そして彼は、藤田にアメリカ海軍の兵士の役をやらせ、塹壕に適した場所はどこかを探します。栗林は駐在武官としてアメリカに駐在した経験があり、陸軍では数少ない「知米派」でもありました。

その後、栗林は従来一般的であった水際防衛作戦を否定し、内地持久戦による徹底抗戦への変更を決定。硫黄島の元山・東山・摺鉢山一帯にかけて、洞窟を掘り地下要塞を構築するよう命じました。

それは、圧倒的な軍事力と技術力を誇るアメリカ海軍が、確実に海岸線を突破するという確証があるため、そこに兵力を集中させてしまっては勝ち目がないと踏んだ判断でした。

食料も水も満足にない過酷な状況で、西郷や彼と同じ隊に所属する野崎陸軍一等兵たちと、新たに派遣された元憲兵の清水洋一上等兵が洞窟を掘り進め、地下要塞を築いていきました。

そんな中、西郷と野崎は、小銃手なのに拳銃を携行している清水上等兵のことを、「俺たちを見張りにきたスパイ」と勘繰ってしまいます。

特に西郷は、憲兵に対してあまり良い印象を持っていません。それは戦局が悪化して以降、西郷と彼の妻である花子が切り盛りしていたパン屋から、憲兵隊があらゆるものを奪っていき、店を畳むことになってしまったからでした。そしてそれから間もなく、西郷は軍隊への招集がかかり、自分の子供を身籠った花子を残して硫黄島へと向かうことになったのです。

一方、栗林の命令を受けた海軍少将の大杉、陸軍少将の林らは水際防衛作戦と飛行場確保に固執し猛抗議します。それに対し栗林は、こう答えました。

「この島に配備されている戦闘機は全て、本土に帰還することになった。もはやこの島は孤立したも同然」「この島での防衛戦は無理なのかもしれない。しかしそれでも、我々はこの島を死守せねばならない、最後の一兵にいたるまで」

「我々の子供が日本で1日でも長く、安泰に暮らせるのなら、洞窟を掘り進めている我々の1日には意味がある」

そして栗林は最後に、大杉に対して海軍からの支援を要請しましたが、彼が頷くことはありませんでした。

以下、『硫黄島からの手紙』ネタバレ・結末の記載がございます。『硫黄島からの手紙』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

1945年2月19日。大杉は硫黄島を去る時、見送りに来た林に「栗林中将は、参謀本部で机にかじりついている方がお似合いだ」と、栗林への愚痴をこぼしていました。その話を、馬の世話をしていた西に聞かれているとは気づかずに……。

西はすぐさま栗林の元へ行き、「林少将には気をつけてください」と警告しました。しかしその詳細を栗林が西から聞く前に、硫黄島はアメリカ軍による砲爆撃を受けてしまいます。

建設した基地は悉く破壊されていき、多数の死傷者が出てしまい、西が硫黄島に連れてきていた愛馬も死亡。さらに、西郷と同じ隊にいた兵士の山崎も、椅子に座ったまま爆撃を受けて死亡しているのを西郷が目撃します。

それから間もなく、アメリカ海軍が硫黄島に接近。その直前、栗林は地下要塞にて、西郷たち兵士全員にこう言いました。

「いよいよ我らの真価が問われる時がきた。日本帝国軍の一員として、皆が誇りを持って戦ってくれると信じている」

「この硫黄島は日本にとって最重要拠点だ。もしこの島が敵の手に渡れば、敵はこの地から、本土への攻撃を始めることだろう」「本土のため、祖国のため、我々は最後の一兵になろうと、この島で敵を食い止めることが責務だ」

「10人の敵を倒すまで死ぬことを禁じる! 生きて、再び祖国の地を踏めること無きものと覚悟せよ」

この栗林の言葉をきっかけに、硫黄島にいる西郷たち日本軍の兵士は死を覚悟し、最愛の家族に宛てた手紙を綴っていきます。

ついにアメリカ海軍が硫黄島に上陸し、戦闘機から摺鉢山への攻撃が始まりました。硫黄島の海岸がアメリカ海軍の海兵隊で埋め尽くされたその瞬間、栗林からの攻撃命令が発動。海岸や摺鉢山に設置された掩蔽豪から、機関銃や重砲による一斉射撃が開始されます。

それこそが、栗林が考えたアメリカ海軍を打倒する秘策でした。しかし、アメリカ海兵隊の第2小隊による火炎放射器の攻撃により、一部の掩蔽豪が焼かれてしまい、掩蔽豪にいた日本兵は火だるまに。

さらに西郷がいた掩蔽豪も攻撃を受け、機関銃が破壊された挙句、機関銃を撃っていた彼と同じ隊の小澤陸軍一等兵が戦死してしまいました。

西郷は中隊長の谷田に命じられ、足立の元に機関銃の補給を要請しに向かいます。その間、足立から救援要請を受けた栗林は、「救援に向かう余裕はない。摺鉢山を死守せよ」の一点張りでした。

摺鉢山は陥落寸前にまで追い込まれ、絶望した足立は自決を決意。到着した西郷に、その旨を記したであろう手紙を上官に渡すよう命じました。


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

この手紙を受け取った谷田は、西郷たち部下に自決するよう命じます。西郷の目の前で、次々と谷田たちが手榴弾や拳銃を使って自決してしまいました。

西郷はたまらず外へ飛び出そうとしますが、小銃を構えた清水に呼び止められます。西郷は清水に対して、無線で栗林が話していた、元山の掩蔽豪にいる部隊と合流しようと説得します。

清水は葛藤の末、生きるために西郷と行動を共にすることに。しかしその道中、2人は別の部隊の兵士たちが、1人のアメリカ海兵隊員を拷問、虐殺する場面を目の当たりにしてしまいます。

この間、栗林が出した伝令により、西郷たち以外の他の部隊も皆、元山の掩蔽豪に向かい始めます。闇夜に紛れた行進も、アメリカ海軍が放った照明弾により位置が特定されてしまい、多くの兵士が機関銃による攻撃を受けてしまいました。

翌朝。摺鉢山から無事元山の掩蔽豪に辿り着けたのは、西郷や清水だけでした。元山の塹壕にいた伊藤は、自決しなかった2人を激しく罵倒し、刀で殺そうとします。

そこに現れたのが、伝令が帰ってこないことを心配して駆けつけた栗林でした。

栗林に、二度も助けられた西郷。しかし伊藤から「摺鉢山が落ちた」と報告を受けた栗林は、掩蔽豪から顔をのぞかせ、摺鉢山の山頂に星条旗が立てられたのを目撃します。

大杉同様、栗林へ不満がある伊藤と林は、掩蔽豪に留まるよう指示した栗林の命令を無視。彼らは独断で総攻撃を仕掛け、摺鉢山を奪還しようとします。そして西郷と清水も、その部隊に強制的に参加させられてしまいます。

その時、栗林に伝令を任された西が駆けつけ「林少将たちの摺鉢山奪還作戦における突撃命令は、栗林中将によって却下された」と通達。さらに西は、反抗する伊藤に「これは上官に対する反逆だ、そのせいで兵が無駄死にしていることが分からんのか」と怒鳴りつけ、持ち場に戻るよう言い渡します。

しかしそれでも、伊藤率いる部隊は、摺鉢山への突撃を続行。ところがその道中、伊藤は何を思ったのか、いきなり敵の戦車もろとも自爆する道を選んだのです。残された西郷たちと伊藤の部隊は、伊藤が別れ際に行くよう命じた、西方面の尾根へと向かうことに。

その尾根では、西率いる連隊が掩蔽豪や塹壕から、進軍するアメリカ海兵隊を、機関銃や迫撃砲によって食い止めようとしていました。

西郷たちは、西の連隊と無事合流。西中佐はまだ生きているアメリカ海兵隊員サムを、捕虜にして情報を聞き出そうとし、部下の遠藤陸軍衛生伍長に敵兵の手当てを命じます。

その間、「もう終わりだ」と自暴自棄になった西郷は、清水に自分を捕まえるよう言います。しかし清水は「俺がここにいるのは、憲兵をクビになったからだ」と答え、スパイではないと身の潔白を訴えました。

清水は憲兵時代、上官である岩崎陸軍憲兵大尉との巡回中、国旗を掲げていない一家を訪問。岩崎陸軍憲兵大尉は話の最中、ずっと吠えている一家の飼い犬を目障りに思い、清水に犬の始末を命じます。

清水は泣きながら許しを請う女性とその子供たちの姿を見て、飼い犬を殺したフリをして去ろうとしました。しかし立ち去る間際、また犬が吠えてしまったため、岩崎に殺していないことがバレてしまい、犬は彼が射殺。清水は上官への反逆罪に問われ、憲兵をクビになったのです。

この間、栗林は息子宛ての手紙と、アメリカにいた頃の絵を書いていました。栗林はまだ大尉だった頃、アメリカ陸軍の将校たちと交流を深めていました。

また日本に戻る日、栗林はアメリカ陸軍将校から、友情の印にと拳銃コルト1911の45径を贈られ、栗林は硫黄島にその拳銃を持ってきていました。

回想の中で、栗林はアメリカ陸軍将校とその妻に「もしアメリカと日本が戦争したら、どうなると思う?」と尋ねられます。栗林は「日本はきっと、アメリカの素晴らしい同盟国になれるはずだから、アメリカと絶対戦うべきではない。でももしそうなったら、国のために務めを果たす」と答え、彼らから真の軍人だと賞賛されました。

翌日。懸命な治療もむなしく、サムは戦死。西はサムが持っていた、彼の母親からの手紙を読み上げます。それは母親から息子に宛てた、戦場から生きて帰ってきて欲しいという願いが込められた手紙でした。

手紙の内容は、祖国に家族を残してきた西郷たちの心にも響きました。感傷も束の間、西方面の尾根に敵からの爆撃が降り注いできます。

敵の爆撃に見舞われた西は、両目を負傷。しかし残っていた薬はサムの治療に使ってしまったため、手当てをすることができません。西は部下の大久保陸軍中尉に自身の連隊を託し、残り僅かな弾薬と食料を持って、生き残った兵と共に北部へと避難するよう命じました。

大久保は葛藤の末、西郷たちを率いて北部への移動を開始。その直後、西はライフル銃を手探りで操作し、1人残った掩蔽豪内で自決してしまいました。

北部の塹壕へと無事避難できた西郷たち。西郷は妻とまだ見ぬ我が子にもう一度会うため、清水は無駄死にしたくない一心で、アメリカ海軍への投降を決意します。

しかしすぐに大久保に見つかってしまい、清水に便乗して脱走しようとした日本兵の1人が、大久保に背後から撃たれ死亡。無事脱走し、捕虜として投降した清水もまた、アメリカ海兵隊員によって射殺されてしまいました。

清水を捜しに来た西郷たちは、射殺された彼の遺体を発見。西郷は清水の死を、嘆き悲しみました。しかし、敵兵が機関銃を持って待ち伏せている前線を突破しなければ、北部に避難することができません。

大久保は弾切れとなった銃を捨て、他の者を逃がすべく手榴弾を持って敵兵に特攻。しかしその直前で彼は射殺され、彼が死んだ後に手榴弾は起爆しました。

無事前線を突破した西郷たちは、北部にある作戦司令部へ到着し、そこにいた栗林・藤田と合流。西郷はようやく、栗林に助けて貰ったお礼を言うことが出来ました。

本土からの通信で、西郷たちの元に栗林の故郷・長崎の子どもたちの歌声が届きました。気持ちを奮い立たせた栗林は、西郷に軍事機密の文書を燃やすよう命じ、部隊を率いて敵軍への総攻撃を仕掛けます。

雨が降り注ぐ闇夜の中、日米双方の兵士たちが、激しい死闘を繰り広げていきます。

生き残った兵たちを鼓舞し指揮を執っていた栗林は瀕死の重傷を負い、戦場から助け出した藤田に介錯を頼みます。藤田が葛藤の末、栗林の首を落とそうとしたその瞬間、彼は背後にいたアメリカ海兵隊員によって射殺されてしまいました。

西郷がその場に駆けつけると、栗林から「誰にも見つからぬよう、埋めてくれ」とお願いされます。

硫黄島が日本の領土であると、西郷に確認を取った栗林は拳銃を使って自決。西郷は彼の願いを叶えた後、駆けつけたアメリカ海兵隊に包囲されてしまいます。

西郷は、1人のアメリカ海兵隊員が栗林の銃を持っているのを見た途端、シャベルを使って暴れ出しました。そんな西郷は、アメリカ海兵隊に銃で殴られ倒れました。

その後、海岸には負傷したアメリカ海兵隊員が次々と運び込まれ、傷の手当を受けていました。その内の1人が、新たに運び込まれてきた西郷をじっと眺めていました。

それから61年後、あの時西郷が土の中に埋めた、彼と栗林たちの手紙が、戦跡の調査隊によって発見されました。

スポンサーリンク

映画『硫黄島からの手紙』の感想と評価


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

戦場で生まれた友情

硫黄島守備隊に所属する陸軍一等兵の西郷と、新たに硫黄島に派遣された上等兵の清水。元憲兵ということでスパイと疑われた清水上等兵は、西郷に反発されてしまい、2人は打ち解けることなく戦闘が始まります。

ところが、守備に就いていた摺鉢山が陥落寸前、彼らの隊は2人を残して皆手榴弾や拳銃を使って自決。生き残った西郷と清水は、何が何でも生き残るために行動を共にするようになるのです。

摺鉢山から元山の掩蔽豪、島の西方面の尾根へと逃げ、共に戦場を駆け抜けてきた西郷と清水は、少しずつ話すようになっていきます。そして、清水が憲兵を辞めさせられた理由を聞いて以降、西郷の中で清水に対する印象が変わったのでしょう。

西郷と清水上等兵の間に友情が生まれた瞬間と、2人で脱走を企てた場面は、それまでの彼らの関係性を考えると、とても感慨深いものがあります

そしてだからこそ、脱走し捕虜となった清水が射殺され、その遺体を見て西郷が涙を流す場面は、本作が描く「戦争の無情さ」を象徴する場面の一つとして、観る者の記憶に強く焼き付けられます。

届かなかった家族への手紙


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

指揮官として硫黄島に来た中将・栗林と、彼に度々命を救われた西郷。共に兵士である以前に「夫」であり、子供を持つ「父親」でもあるという共通点があります。

2人は硫黄島の戦いが始まる前も、また始まってからもずっと、心の安寧を保つかのように家族に手紙を書き続けていました。

栗林と西郷の手紙の内容を描いた場面は、彼らの家族に対する深い愛情を感じることができ、特に子供を持つ親にとって涙する場面でしょう。西郷たち、硫黄島で戦った者たちが書き続けた家族宛ての手紙が、届いて欲しい家族に届かなかったことはあまりにも切ないです。

また日本軍に捕虜として捕らえられた、アメリカ海兵隊員サムが持っていた母親の手紙の内容もまた、観る者の心にもジーンと響きます。そして「敵」として争いを続けている相手にもまた、栗林や西郷たち同様に「祖国に家族を残してきた人間」であり、同時に本作と対をなす『父親たちの星条旗』の新たな意味に気づかされるのです。

まとめ


(C)Warner Bros. Entertainment Inc.(C)DreamWorks Films L.L.C.

太平洋戦争最大の激戦といわれる「硫黄島の戦い」を日本軍視点で描いた、アメリカの戦争ドラマ作品でした。

本作の見どころは、戦場で生まれた1つの友情と西郷たち日本兵による硫黄島での防衛戦、何よりも西郷たちの手紙です。

硫黄島の戦いは、前作『父親たちの星条旗』にて描かれたアメリカ海軍の視点とはまた違う、戦いの過酷さを体感できます。

栗林が考えた作戦により、硫黄島に上陸したアメリカ海軍に一泡吹かせることが出来たかと思いきや、圧倒的な軍事力と技術を誇る敵に追い込まれてしまう日本軍。そして日米双方の兵士たちが、祖国のため家族のため仲間のために命懸けで戦う姿は、有無も言わせぬ映像としての迫力、そして戦争の無情さを観る者に突きつけてきます。

そして『父親たちの星条旗』における重要なモチーフが「写真」というメディアであったように、『硫黄島からの手紙』もまた「手紙」というメディアが物語の重要なモチーフとして描かれるのです。

家族のため戦い生き抜こうとした、或いは生き抜きたかった人々が、どのような想いを未来へ託そうとしたのかを描いた戦争ドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。






関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『奪還者』ネタバレあらすじと感想!動画無料視聴方法も

映画『神様メール』や『殿、利息でござる!』など、作品の内容とメインビジュアルの不一致について言及しましたが、この度新たにビジュアルギャップのある作品を発見! デビッド・ミショッド監督の作品『奪還者』を …

ヒューマンドラマ映画

映画『ゲット・オン・ザ・バス』ネタバレ感想と結末あらすじ解説。スパイクリーが黒人の人権問題を歴史的背景と内省を込めて描く

Black Lives Matterを掲げる黒人の人種問題を描いたロードムービー 『マルコムX』『ブラック・クランズマン』で知られるスパイク・リーが監督を務めた1996年の映画『ゲット・オン・ザ・バス …

ヒューマンドラマ映画

映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』感想レビューと考察(ネタバレあり)。施設を飛び出した青年がプロレスラーを目指す理由

運に見放された漁師とダウン症の青年の心の交流 トラブルメーカーの漁師と、プロレスラー志望のダウン症青年の旅路を描く映画『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』が、2020年2月7日(金)よりヒューマントラ …

ヒューマンドラマ映画

映画『人魚の眠る家』あらすじネタバレと感想。ラスト結末も【篠原涼子&西島秀俊共演】

映画『人魚の眠る家』2018年11月16 日(金)全国公開されます。 東野圭吾の同題ベストセラー小説を『天空の蜂』で、すでに東野作品の映像化に経験済みの堤幸彦監督が映画化。 時にソフトな平和な時の家族 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ペーパームーン』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

1973年の公開された『ペーパー・ムーン』は、名匠ピーター・ボグダノヴィッチ監督の代表作! 2017年に「午前十時の映画祭8」にて、デジタルリマスター版として再公開されています。 ペテン師の男と9歳の …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
映画『哀愁しんでれら』2021年2月5日(金)より全国公開
映画『写真の女』
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学