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Entry 2020/05/23
Update

実話映画『グランド・ジャーニー』あらすじと感想レビュー。人間が親鳥となって野鳥と空を飛んだ

  • Writer :
  • 松平光冬

野鳥に“渡り”を教えた驚きの実話の映画『グランド・ジャーニー』は2020年7月23日(木・祝) より公開。

フランスで2019年の映画興行収入TOP10入りを記録した映画『グランド・ジャーニー』。

日本でもヒットを記録したドキュメンタリー映画『WATARIDORI』(2003)の制作に参加した鳥類研究家のクリスチャン・ムレクが実際に挑んだ、超軽量飛行機でのノルウェーからフランスまでの旅を映画化。

ムレクは脚本や飛行シーン撮影の協力もしており、監督を『狩人と犬、最後の旅』(2006)、『ベル&セバスチャン』(2016)のニコラ・ヴァニエが務めます。

絶滅危惧種の渡り鳥たちと一緒に、飛行機でノルウェーからフランスへ向かう父子を描いた、実話をベースにしたハートフルドラマです。

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映画『グランド・ジャーニー』の作品情報

(C)2019 SND, tous droits reserves

【日本公開】
2020年(フランス・ノルウェー合作映画)

【原題】
Donne-moi des ailes

【脚本】
マチュー・プティ、クリスチャン・ムレク、リル・フォッリ

【監督・共同脚本】
ニコラ・ヴァニエ

【製作】
クレマン・ミゼレ、マチュー・ワルテル

【撮影】
エリック・ギシャール

【編集】
ラファエル・ウルタン

【キャスト】
ジャン=ポール・ルーヴ、メラニー・ドゥーテ、ルイ・バスケス、フレッド・ソレル、リル・フォッリ、ドミニク・ピノン、アリアンヌ・ピリー、フィリップ・マニャン

【作品概要】
日本でもヒットを記録したドキュメンタリー映画『WATARIDORI』(2003)の制作に参加した鳥類研究家のクリスチャン・ムレクが実際に挑んだ、超軽量飛行機でのノルウェーからフランスまでの旅を映画化。

ムレクは脚本や飛行シーン撮影の協力もしており、監督を『狩人と犬、最後の旅』(2006)、『ベル&セバスチャン』(2016)のニコラ・ヴァニエが務めます。

ムレクがモデルとなった父親クリスチャン役を、『愛しき人生のつくりかた』(2014)では監督業に進出し、『セラヴィ!』(2018)などに出演するジャン=ポール・ルーヴが演じ、息子トマ役には、オーディションで数千人の中から選ばれた新人ルイ・バスケスを抜擢。

そのほか、『シンク・オア・スイム イチかバチか俺たちの夢』(2019)のメラニー・ドゥーテ、『アメリ』(2001)のフィリップ・マニャンなどが脇を固めます。

2019年に本国フランスで公開されるや、環境問題に熱心な国民から大きな反響を呼び、名だたる大作を抑えてその年の国内映画興行収入TOP10を記録するヒットとなりました。

映画『グランド・ジャーニー』のあらすじ


(C)2019 SND, tous droits reserves

南フランスの町カマルグで雁の研究をしている気象学者のクリスチャンは、周囲から変わり者扱いされながらも、超軽量飛行機(ULM)を使って渡り鳥に安全な飛行ルートを教えるというプロジェクトに取り組んでいました。

そのクリスチャンの息子で、今は離婚した母パオラと暮らす14歳のトマは、夏休みにもかかわらずゲーム三昧の日々を送っていましたが、母の仕事が多忙となるために、父のもとで5週間過ごすことに。

インターネットもつながらないカマルグでの生活に暇を持て余していたトマですが、ある日、父が孵化させようとしていた渡り鳥のカリガネガンの卵から雛が誕生する光景を目の当たりにしたのを機に、次第に愛情を抱くようになります。

やがてトマは、人生を変える驚くべき冒険に出ることになるのです……。

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映画『グランド・ジャーニー』の感想と評価

(C)2019 SND, tous droits reserves

「バードマン」ムレクの実話を映画化

本作『グランド・ジャーニー』は、気象学者にして鳥類愛好家の顔を持つ、クリスチャン・ムレクをモデルとしています。

制作協力をしたドキュメンタリー映画『WATARIDORI』でも証明されたように、野鳥たちと優雅に空を自由に飛ぶ姿から、「バードマン」の愛称で親しまれているムレク。

その彼が取り組んでいたプロジェクトとは、ヨーロッパ南東部での乱獲が原因となり、伝統的な渡り先であったノルウェーのラップランドから姿を消してしまっていた、渡り鳥たちの保護と繁殖です。

ムレクは、独自に開発した超軽量飛行機に乗り、自ら親鳥となって雛たちに“渡り”のルートを教え、かつて彼らが繁殖していたラップランドへ帰らせる、という無謀とも思える試みを1995年から開始。

試行錯誤の末、ついに2000年に、33羽のカオジロガンとの渡りを初めて成功させました

参考映像:『WATARIDORI』(2003)

心が離れていた父子の成長と冒険を描く

(C)2019 SND, tous droits reserves

そんな「バードマン」ムレクの偉業を、本作監督のニコラ・ヴァニエは、父クリスチャンと息子トマの物語としてフィクションドラマ化しました。

ムレク本人も脚本に参加しており、「多くの観客に見てもらおうとすれば、メッセージに力を与えるためにフィクション映画であることが不可欠。巨大スクリーンで観客が渡り鳥と一緒に飛ぶことができるのは素晴らしい経験であり、どんな媒体であれ、私は情熱を共有したい」と、本作をドラマ化させた理由を語っています。

疎遠となっていた父子の関係を描く一方で、本作はトマの心の成長にも焦点を当てています。

(C)2019 SND, tous droits reserves

最初こそ、会話も乏しい父との暮らしが退屈だったトマですが、偶然にも孵化をはじめるカリガネガンの雛たちと対面したことで、彼の運命が変わります。

「鳥は初めて見たものを親だと思う。お前がこの子たちの親になるんだ」という父の助言のもと、トマは手違いで紛れこんだ一羽のカオジロガンに「アッカ」と名付け可愛がるように。

この名は劇中でも名前が出てくる、セルマ・ラーゲルレーフ著の児童書『ニルスのふしぎな旅』に登場する、鴈の群れの隊長である「アッカ」にちなんでいます。

妖精に魔法をかけられて体が小さくなった少年ニルスが、モルテンという名のガチョウの背に乗って鴈の群れと一緒に国中を飛び回るように、本作のトマも、自らが親鳥となってアッカたちを導くことで、大人となっていくのです。

まとめ

(C)2019 SND, tous droits reserves

映像面においては、ノルウェーのほか、フランスのカマルグ、オー・ド・フランス、ロワール・エ・シェール、パリなどヨーロッパ中でロケを敢行し、飛行シーンの撮影ではムレク自身が超軽量飛行機に乗り、野鳥たちと空を舞いました

その鳥の飛翔シーンも、嵐のシーンを除きCGを使用しておらず、まるで空を飛んでいるかのような浮遊感を観客にもたらしてくれます。

人間と動物による種別を超えた絆と、父と子の家族愛。そして少年が大人へと羽ばたく様を描いた映画『グランド・ジャーニー』は、2020年7月23日(木・祝) より新宿バルト9ほか全国ロードショーです。

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