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【ネタバレ】ボストン1947|あらすじ結末感想と評価考察。祖国への思いを胸に走るマラソン選手の挑戦を描く

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

実話を元に祖国のため、ボストンマラソンに挑む人々を描くヒューマンドラマ

1936年、ベルリンオリンピック。

マラソン競技に参加し、金メダルと銅メダルを獲得し、世界新記録を樹立したソン・ギジョンとナム・スンニョン。

しかし、彼らは日本のチームとして参加し、その記録も日本の記録でした。

そんな2人は若手選手ソ・ユンボクと共に“祖国の記録”を取り戻すため、数々の試練に立ち向かいながら1947年のボストンマラソンでの勝利を目指していきます。

『シュリ』(1999)、『ブラザーフッド』(2004)のカン・ジェギュが監督を務めました。

金メダル選手ソン・ギジョンを『白頭山大噴火』(2019)のハ・ジョンウ、銅メダル選手ナム・スンニョンを『藁にもすがる獣たち』(2021)のペ・ソンウが演じ、若手選手のソ・ユンボクには、『非常宣言』(2022)のイム・シワンが演じました。

映画『ボストン1947』の作品情報


(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CONTENT ZIO Inc. & B.A. ENTERTAINMENT & BIG PICTURE All Rights Reserved

【日本公開】
2024年(韓国映画)

【原題】
1947 보스톤(英題:Road to Boston)

【監督】
カン・ジェギュ

【脚本】
カン・ジェギュ、イ・ジョンファ

【キャスト】
ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン

【作品概要】
1947年のボストンマラソンに挑んだ人々の知られざる実話を元に、『シュリ』(1999)、『ブラザーフッド』(2004)のカン・ジェギュ監督が映画化。

1936年のベルリンオリンピックに日本の選手として参加し、マラソンで金メダルを獲得したソン・ギジョンを『チェイサー』(2008)で注目を浴び、実話を元にした『1987、ある闘いの真実』(2017)からエンタメ大作の『白頭山大噴火』(2019)など幅広く活躍するハ・ジョンウが演じました。

若手選手ユンボクには、ボーイズグループZE:Aとしてデビューし、『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』(2017)や『非常宣言』(2022)など俳優としても高く評価されているイム・シワンが務めました。

他のキャストは、『藁にもすがる獣たち』(2021)のペ・ソンウ、『焼肉ドラゴン』(2018)のキム・サンホ、『THE WITCH/魔女 -増殖-』(2023)パク・ウンビン。

映画『ボストン1947』のあらすじとネタバレ


(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CONTENT ZIO Inc. & B.A. ENTERTAINMENT & BIG PICTURE All Rights Reserved

1936年、ベルリンオリンピック。日本はマラソン競技で金メダルと銀メダルを獲得し、世界記録をも樹立しました。

しかし、日本人選手として走ったのは、日本名の孫基禎と南昇竜として参加した韓国のソン・ギジョンとナム・スンニョンでした。ソン・ギジョンは、日本の国旗を隠して表彰台に立ったとして、日本によってラジオで引退宣言をさせられます。

第二次世界大戦が終結し、日本から解放された朝鮮半島。ソンは、マラソンから離れていましたが、ナムは大学で学生にマラソンの指導をしていました。

そんなナムが気にかけていたのは、若手選手のソ・ユンボクでした。病気の母と暮らすユンボクは、そば屋のバイトで出前の配達をし、大学よりもお金を稼ぐことに必死でマラソンにはあまり興味を持っていません。

そんななか、ソン・ギジョンの名前を冠したマラソン大会が行われ、ユンボクが優勝しました。遅刻してお酒の匂いのするまま表彰式に参加したソンにナムはマラソンのコーチをしないかと誘います。

乗り気ではなかったソンでしたが、アメリカ当局に、日本の記録として登録されているため、韓国の公式記録はないが、ボストンマラソンに出場すればオリンピックの道も見えてくると言われ次第に乗り気になっていきます。

ソンは、走るためのコツはフォームにあるといい、ユンボクの走りを否定します。ユンボクは反発し、自分はお金が必要なだけで、マラソンの練習をするくらいなら手に職をつけて働くと言って立ち去ります。

そんなユンボクに、ナムはソンに内緒でユンボクにお金を渡すことを条件にマラソンの練習に参加するように言います。

マラソン選手の育成だけでなく、ソン達にはボストンに行く資金の問題がありました。独立国として世界に承認されていない韓国はアメリカ政府下の国という扱いです。ボストンに行くには、アメリカ在住の保証人が必要になります。

保証人を探し、頼んで宿を探すにも資金が入ります。その資金を集めるため第二のソン・ギジョンと宣伝をして、実際のマラソンよりも短いコースで、大会をすることで資金を募ろうと計画します。

アメリカの要人も招いて行われた大会で、ユンボクの勝利とソンに匹敵するほどのタイムを出すことが期待されていました。ユンボクは一位を走っていましたが、コースを事前に確認しておらず違う道を走ってしまいます。

結果、人より多く走ってしまったユンボクは優勝することもできず、タイムを出すことも出来ませんでした。そんなユンボクの心の甘さを理解させるため、ユンボクだけではなく大学のマラソン選手らに更に追加で走らせ、ナムより早く走るように命じます。

そして、ナムに「絶対生徒に負けるな、特にユンボクに負けるんじゃない」と釘を刺します。ユンボク以外の選手は途中でリタイアし残るはナムとユンボクになります。

しかし、すでに人より多く走っていたユンボクは疲れで足が前に出ません。倒れるようにリタイヤしたユンボクに、ソンはマラソン選手の心得をときます。

マラソン選手にとって必要なのは、コースを把握し、きちんとタイムをコントロールすること。その冷静さが必要なのです。負けず嫌いなユンボクの心に火がつきはじめますが、ユンボクの母親は体調を悪くし、ユンボクは気がかりでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ボストン1947』ネタバレ・結末の記載がございます。『ボストン1947』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CONTENT ZIO Inc. & B.A. ENTERTAINMENT & BIG PICTURE All Rights Reserved

ソンがユンボクをマラソンに集中するよう説得しに家に向かうと、そこにユンボクの姿はなく、病気の母親が寝ていました。苦しそうな母親の姿を見て、ソンは病院へ入院させます。

そしてユンボクの家でソンは、自分について書かれた記事の切り抜きが壁に貼ってあるのを見つけます。ユンボクにとってソンは憧れの選手だったのです。

ソンとナムで入院した母親の様子を見ているとユンボクがやってきます。とうとうユンボクは選手としてボストンでの優勝を目指す決意をします。

ソンとナムによる特訓が始まります。ソンは自分の家にマラソン選手を泊らせ強化合宿を始めます。ボストンのコースには、心臓破りの坂と言われる坂があり、そこが難所とされていました。

しかし、ユンボクは子供の頃からお腹がすいいたら自分の家の裏手にある山を登って祠にあるお供物をこっそり食べていたと言い、坂を走り抜けることに慣れていました。これがユンボクの大きな武器となります。

資金や保証人など困難があっても祖国のために頑張ってほしいと支援する国民や、彼らに心を動かされたアメリカの協力もあり、ナムとユンボクはボストンマラソンの参加資格を得ました。ソンはコーチとして同行することになります。

アメリカのジェット機に乗り、アメリカに降り立った3人を現地メディアが囲みますが、英語が分からない3人は覚えた少ないワードだけ話して保証人と合流します。

保証人は金を受け取れば何でもすると言い、この国では何をするにもお金がいると説明します。初めてやってきたアメリカに3人は驚きっぱなしです。緊張と興奮でそわそわする3人。

そんな3人がマラソン大会の登録をして渡されたユニフォームには、何とアメリカの国旗がついていました。今度こそ、太極旗をつけて、祖国のために走りたいと思っていた3人は抗議します。

「韓国は独立国家ではなく、君たちはアメリカ管轄下の難民として今大会に参加するからアメリカの国旗がついているのは当たり前だ。規則として変更はできない」

3人の抗議を大会側は聞き入れようとしません。ユンボクはそれでも、ここまで来たのだから走ると言いますが、ソンは自分のように屈辱を背負ったまま走ってほしくないと思っています。

ソンは、急遽会見を開くことなし、各国のマスコミや大会の会長を前に祖国が置かれている状況、祖国への思いを語ります。

大会の精神にも反していると熱く訴え、その熱き思いに各国のメディアは「彼らのユニフォームに祖国の国旗を!」と訴え、大会側もとうとうユニフォームの変更を約束しました。

そうして迎えた大会当日。ラジオの中継をはじめとしたメディアは無名のユンボクに全く注目せずどうせ上位には来れないと決めつけているかのような話しぶりです。

ナムはユンボクのペースメーカーとして参加していますが、そんなナムも参加選手のなかでは高齢のため注目されていません。

遠くの韓国では、人々がラジオをつけユンボクとナムの挑戦を見守ります。

とうとうマラソンが始まります。ユンボクはナムの後ろについてペースを保ちながら走りますが、無名の選手の登場に他の選手から妨害を受けてしまいます。

ついカッしてしまうユンボクに挑発に乗らず、自分のペースを守るようナムが諭します。

中盤までペースをキープして走っていた2人ですが、途中に来てナムが「ぶちかませ」とユンボクの背中を押します。

すると、ユンボクをペースを上げていき、どんどん前を走る選手を追い抜き上位グループに浮上してきます。

無名の選手の追い抜きに中継ラジオは驚きの声を隠せません。あっという間に先頭に追いつき先頭まだ追い抜かし、ペースが落ちることのないユンボクに会場は沸きます。

好調で走っていたユンボクを思わぬアクシデントが襲います。

犬を連れて見学していた観客がリードを手放してしまい、ユンボクの前に犬が飛び出してきたのです。

ユンボクは驚いて転んでしまいます。突然転んだことで筋肉が痙攣しなかなか立ち上がることも出来ません。

ラジオ中継は、健闘していたけれど、ここで終わったとユンボクはもう追い上げることはできないと決めつけます。

しかし、人々の予想を裏切ってユンボクは立ち上がり走り出し、徐々に元のスピードを取り戻していきます。

そんなユンボクにとって追い風となったのは心臓破りの坂でした。

誰もが坂の苦しさにペースを落としている中、子供の頃から山道を駆け上っていたユンボクは、心臓破りの坂もものともせずそのままのペースでどんどん追い抜いていきます。

大会もラストスパートとなり、ラジオ中継はゴール手前で選手を待ち構えています。

ソンも見守る中登場したのは優勝候補の選手とユンボクでした。アクシデントにより、上位に浮上することは不可能だと思われていたユンボクの登場に会場はどよめき大きな声援をおくります。

両者は互角の戦いで競っていますが、先にテープを切ったのはなんとユンボクでした。

誰も知らぬ無名の選手が優勝を果たし、それまで世界記録であったソンの記録を上回り、新記録も達成したのです。

遠くの韓国で見守る人々もユンボクの優勝に沸き立ち涙を流して喜びます。

ソンも興奮に包まれながらユンボクと抱き合い、ゴールを目指し走るナムの到着を待ちます。

参加者の中では高齢ながら健闘したナムにソンとユンボクを駆け寄ります。

祖国のために走り、見事優勝を果たした3人は祖国に帰り、彼らの健闘を祝福する人々に出迎えられるのでした。

映画『ボストン1947』の感想と評価


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第二次世界大戦の終結により、日本から解放されますが、すぐに北にはソ連軍、南にはアメリカ軍が占領統治することになります。

その時期の朝鮮半島は南北共に臨時政府ができていましたが、未承認で国として不安定ななかにありました。

1948年に大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国が樹立し、独立国家となります。そして、その2年後である1950年に朝鮮戦争が勃発します。

朝鮮戦争や国が独立する前の不安的な時期に、祖国のため走った人々がいたという歴史を映画化したのが『ボストン1947』なのです。

朝鮮戦争が始まる以前の朝鮮半島を舞台にした映画はそう多くありません。また、韓国の人々にとっても、その時代のことはよく知られている訳ではないといいます。

ボストンマラソンについても、1947年の大会より、韓国選手が1〜3位を独占した1950年の大会の方が広く知られています。

そのようなあまり知られていない歴史を映画にすることで、人々の思いを受け継ぐというのは、映画が持つ一つの大きな力と言えるでしょう。

『シュリ』(1999)、『ブラザーフッド』(2004)のカン・ジェギュ監督のもと、韓国を代表する俳優であるハ・ジョンウが一見厳しいけれど面倒見が良い人間味溢れるソン・ギジュンを演じます。

そして、若手の選手を演じたイム・シワンはマラソン選手としての説得力を保つため体脂肪を絞り、マラソン選手の肉体を作り上げたと言います。

また、イム・シワンが演じたソ・ユンボクはマラソン選手としては小柄な人だったと知られています。

そんな小柄な人が人々を追い抜いていき、優勝するというマラソンのシーンにはスクリーンの向こうで誰もが手に汗を握りゴールを見守ったのではないでしょうか

様々な困難に立ち向かいながらも祖国のため、ひたすらに走る姿は、当時の人々にどれほどの勇気を与えたのか、スポーツの持つ力を改めて感じさせてくれます

まとめ


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『ボストン1947』が公開された2024年夏はまさにパリオリンピックが開催されました。

しかし、世界を見渡せばロシアのウクライナ侵攻やイスラエルによるガザの虐殺と至る所で未だ終わらぬ戦争や虐殺があります。

そんななか開催されたパリオリンピックは、戦禍のなかオリンピックはどうあるべきか問われているという指摘もありました。

近年、オリンピックの商業主義な姿勢や相次ぐ汚職も耳にするなか、私たちにとってもオリンピックとは何かと考えるきっかけになったでしょう

本作も祖国のために走りたいという真っ直ぐな思いと、そんな思いを理解されず最初はアメリカの国旗が書かれたユニフォームが渡されました。

ソンを始め3人の必死の思いが通じ、祖国の大極旗を胸に走ることができましたが、そこにあるのは世界の無関心です。

今なお続く戦禍のなか、無関心な私たちは無邪気にスポーツを楽しんでいます。それは決して悪いことではないとはいえ、ふと立ち返ってみる必要もあるかもしれません。



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