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Entry 2021/04/26
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シンウルトラマン予想|怪獣ネロンガ/ガボラを原作ネタバレ解説!共通点から映画登場の理由を考察【邦画特撮大全87】

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第87章

2022年に劇場公開が予定されている映画『シン・ウルトラマン』。

2021年1月末に初公開された本作の特報では、特撮テレビドラマ『ウルトラマン』に登場する透明怪獣ネロンガ、ウラン怪獣ガボラの姿が描かれていました。

今回はネロンガの登場する第3話「科特隊出撃せよ」、ガボラの登場する第9話「電光石火作戦」のネタバレあらすじを紹介。

そして2体の怪獣の共通点から、なぜ『シン・ウルトラマン』にネロンガとガボラが登場するのかを推理していきます。

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特撮テレビドラマ『ウルトラマン』の作品情報


(C)円谷プロ

【放送】
1966~1967年

【監修】
円谷英二

【監督】
円谷一、飯島敏宏、野長瀬三摩地、実相寺昭雄、満田かずほ、樋口祐三、鈴木俊継

【特殊技術】
的場徹、高野宏一、有川貞昌

【脚本】
金城哲夫、関沢新一、千束北男、南川竜、山田正弘、藤川桂介、上原正三、佐々木守、若槻文三、海堂太郎、宮田達男

【キャスト】
小林昭二、黒部進、桜井浩子、石井伊吉(現:毒蝮三太夫)、二瓶正也、津沢彰秀、古谷敏、石坂浩二、浦野光

『ウルトラマン』第3話「科特隊出撃せよ」の作品情報

【放映】
1966年7月31日

【脚本】
山田正弘

【特殊技術】
的場徹

【監督】
飯島敏宏

『ウルトラマン』第3話「科特隊出撃せよ」あらすじとネタバレ

不気味な音がするという城の古井戸の調査に出かけたフジ隊員とホシノ少年。ホシノ少年は井戸の底で、巨大な目玉を目撃しました。その後、姿の見えない巨大な物体が近くの発電所を襲います。巨大な物体が引き起こした山崩れによってフジ隊員とホシノ少年は古井戸に閉じ込められてしまいました。

音信不通のフジ隊員たちを心配する科学特捜隊(科特隊)の面々は事件を聞きつけ、発電所へ出動。発電所では時おり出力が急激に落ちる現象が起きていたのです。フジ隊員とホシノ少年は井戸を伝って海岸から脱出し、無事に保護されました。

別の送電所で電圧が急激に下がり、辺り一帯は停電になります。送電所へ駆けつけたハヤタとアラシの前に、発電所を襲った巨大な物体の正体・透明怪獣ネロンガが姿を現しました。ネロンガは触角から電気を吸い取っていたのです。

ネロンガは古くから伝わる怪獣で、かつて村井強衛門という侍に退治され古井戸に封じられていました。しかしネロンガは電気をエネルギーに変えることを覚え巨大化し、古井戸から地中へ出て来たのです。

ネロンガが次に襲撃するのは第三火力発電所と想定し、科特隊は防衛線を引きます。ホシノ少年はネロンガに仕返しするため、科特隊の武器スパイダーショットを勝手に持ち出し、第三火力発電所までついてきてしまいました。

予想通りネロンガが出現し第三火力発電所を襲います。ホシノ少年はネロンガの左目を負傷させますが、転倒し気を失ってしまいました。

ハヤタとアラシはホシノ少年を保護。ハヤタはアラシに後を任せ、ウルトラマンに変身!スペシウム光線でネロンガを討ち果たしました。

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『ウルトラマン』第9話「電光石火作戦」の作品情報

【放映】
1966年9月11日

【脚本】
山田正弘

【特殊監督】
高野宏一

【監督】
野長瀬三摩地

『ウルトラマン』第9話「電光石火作戦」あらすじとネタバレ

台風13号が伊勢に上陸し北上していました。キャンプ中の山岳少年団は大雨によってバンガローへ取り残され、予備の食糧も流されてしまいます。翌朝台風は去りましたが、橋が流されてしまい食料が届きません。山岳少年団の武と敏男は食糧調達に向かいます。

地下で異常な振動が発生し、台風被害からの復旧はなかなか進みません。振動の正体は、地中に潜伏していたウランが好物の怪獣ガボラ。安倍町のウラン貯蔵庫を狙い地上を進行するガボラを、科学特捜隊は火炎放射によって阻止しました。

進路を変えたガボラでしたが、その先には山岳少年団のバンガローがあったのです。ハヤタ隊員はヘリでウランの入ったカプセルを吊り、ガボラを誘導していきます。

しかしヘリの進路には武と敏男がいました。フジ隊員とホシノ少年が2人を無事保護しますが、ハヤタはヘリの故障でカプセルを切り離せません。ガボラの攻撃を受けハヤタの操縦するヘリは墜落。

ハヤタはウルトラマンに変身。ウルトラマンはガボラの首ヒレを引き千切り、打撃技でガボラを倒します。怪獣による危機は去り、ハヤタとフジたちは山岳少年団へ食糧を届けるのでした。

『シン・ウルトラマン』ネロンガ&ガボラの登場理由とは?


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

怪獣ネロンガ&ガボラにある共通点

透明怪獣ネロンガとウラン怪獣ガボラ。ガボラは『シン・ウルトラマン』監督・樋口真嗣も参加していた日米合作『ウルトラマンパワード』(1995)にも登場、ネロンガは透明になるという特性から近年のウルトラマンシリーズにもよく登場する怪獣として知られています。

しかし『シン・ウルトラマン』の特報が発表されたとき、ネロンガとガボラが登場したのには誰もが驚いたでしょう。ファンの誰もが、『シン・ウルトラマン』にはベムラーとバルタン星人が登場するものだと思っていたからです。

『ウルトラマン』のリブート作品である『シン・ウルトラマン』に登場する怪獣や宇宙人を考えると、ウルトラマン誕生のきっかけとなった第1話に登場する怪獣ベムラー、ウルトラマンのライバルとして高い知名度を誇るバルタン星人の名が挙がるのは妥当と言えます。

ではなぜネロンガとガボラの2体が数多いるウルトラ怪獣の中から選ばれ、『シン・ウルトラマン』に登場するのか。2体の怪獣の共通点から、その理由を推理していきましょう。

ある怪獣から“進化”した2体の怪獣

まずこの2体の怪獣は、東宝特撮映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(1965)に登場する怪獣バラゴンの着ぐるみを改造した怪獣なのです。

ネロンガの角やガボラの大きな首ヒレなど、視聴者の注意を大きく引く特徴を顔に配置することで巧く別怪獣として成立させていますが、プロポーションや背中のヒダを見ると同じ着ぐるみから作られたことがわかります。

『シン・ウルトラマン』に登場するネロンガとガボラのソフビ人形がすでに発売されています。2体のソフビ人形を見比べると四肢の形状やプロポーションがそっくりなのが解ります。

この点からの推理ですが、ネロンガとガボラは「同一個体から別進化を辿った怪獣」として登場するのではと考えられます。さらに飛躍した考えですが、『シン・ウルトラマン』は円谷プロダクション、カラー、東宝の3社による共同製作のため、「2体の進化前の怪獣」として東宝が権利を持つバラゴンの登場もあり得るのではと思えてしまいます。

また『フランケンシュタイン対地底怪獣』は『ウルトラマン』の前年に公開された作品であり、巨人フランケンシュタインと怪獣バラゴンの戦う構図は『ウルトラマン』の前身とも言えます。バラゴンから改造された怪獣を登場させることで、初代『ウルトラマン』のさらに前身である『フランケンシュタイン対地底怪獣』へもオマージュを捧げているのではないでしょうか。

『帰ってきたウルトラマン』に基づく怪獣キャスティング?

また『シン・ウルトラマン』企画・脚本の庵野秀明と監督・樋口真嗣の両名は、ウルトラマンシリーズの中でもとりわけ『帰ってきたウルトラマン』(1971~1972)から強く影響を受けたと語っています。

『帰ってきたウルトラマン』に登場する怪獣たちの多くは、古代怪獣や地底怪獣でもともと地球に生息していた生物でした。そして『帰ってきたウルトラマン』の怪獣たちと同じく、ネロンガとガボラも地中から登場した怪獣でした。

この点から『シン・ウルトラマン』は、物語や設定の基本ベースには初代『ウルトラマン』を用いながら、怪獣の解釈に関しては『帰ってきたウルトラマン』を基にするのではないかと考えられます。

またネロンガの登場する第3話「科特隊出撃せよ」には、発電所や変電所で高圧鉄塔などの発電設備が多数登場しました。庵野秀明と樋口真嗣は両名とも電柱や高圧鉄塔に強いこだわりがあり、これらはそれぞれの作中に頻出する要素でもあります。

『シン・ウルトラマン』の特報には鉄塔越しに立ち上がるウルトラマンのカットもあり、2人のフェティシズムを強く反映できることからも、発電所を襲う怪獣ネロンガが選ばれたとも考えられます。

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まとめ


(C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (C)円谷プロ

透明怪獣ネロンガとウラン怪獣ガボラの2体の怪獣が、なぜ『シン・ウルトラマン』に登場するのか、登場する場合はどのような設定なのかを2体の共通点から推理していきました。

しかし『シン・ウルトラマン』はまだ解禁されていない情報も多いため、ひょっとするとこの2体の怪獣以外にもベムラーやバルタン星人などの人気怪獣たちが登場するかもしれません。

むしろ、『シン・ウルトラマン』がこうした前予想をいい意味で裏切った作品になることを、『ウルトラマン』という伝説的作品のリブートとなる同作にファンが強く望んでいるでしょう。

次回の邦画特撮大全は…


(C)2021 東映ビデオ・東映AG・東映 (C)テレビ朝日・東映AG・東映

次回の邦画特撮大全は、Vシネクスト『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』(2021)を紹介します。お楽しみに。

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