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『青くて痛くて脆い』映画と原作の違いをネタバレあらすじと考察。キャスト吉沢亮と杉咲花出演を解く|永遠の未完成これ完成である17

  • Writer :
  • もりのちこ

連載コラム「永遠の未完成これ完成である」第17回

映画と原作の違いを徹底解説していく、連載コラム「永遠の未完成これ完成である」。

今回紹介するのは『青くて痛くて脆い』です。

『君の膵臓をたべたい』の作家・住野よるが、『キミスイ』の価値観をぶっ壊すため描いたとされる衝撃作『青くて痛くて脆い』が、吉沢亮と杉咲花出演で映画化となりました。

大学でサークル「モアイ」を立ち上げた、田端楓(吉沢亮)と秋好寿乃(杉咲花)。同じはずだった2人の想いがすれ違い、向かった先とは。

この青春には嘘がある。あなたは、その嘘を見抜くことが出来るでしょうか?

映画と原作との違いを比較し、より深く映画を楽しみましょう。

【連載コラム】「永遠の未完成これ完成である」記事一覧はこちら

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映画『青くて痛くて脆い』の作品情報


(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
【公開】
2020年(日本)

【原作】
住野よる

【監督】
狩山俊輔

【キャスト】
吉沢亮、杉咲花、岡山天音、松本穂香、清水尋也、森七菜、茅島みずき、光石研、柄本佑

映画『青くて痛くて脆い』のあらすじとネタバレ


(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
田端楓には、生きる上でのマイルールがあります。それは、「あらゆる自分の行動には相手を不快にさせてしまう可能性がある。そのため、人に不用意に近づきすぎない。誰かの意見に反する意見を出来るだけ口にしない」ということでした。

そんな楓が大学で出会ったのは、自分の理想論を語りぐいぐい近づいてくる、まさに楓とは正反対の秋好寿乃でした。

どうゆう訳か秋好に気に入られた楓は、自分のペースを乱されながらも行動を共にするようになります。

秋好は「世界を今より良くしたい」という熱い想いを持ち、そんな活動ができるサークルを探していました。

自分の思い描くサークルがないと嘆く秋好に、「自分で作ればいいよ」と勧めたのは楓でした。「じゃ、一緒にやろう」。こうして、秋好と楓の2人だけのサークル「モアイ」が結成されました。

秋好と楓は、不登校の子どもたちが通うフリースクールで、ボランティアを始めます。勉強を教えたり、行事を手伝ったりと子どもたちとの交流を深めていました。

「モアイ」の活動に共感し協力してくれる大学院生の脇坂も加わり、「モアイ」のメンバーは徐々に増えていきます。活動範囲も広がり、「モアイ」は今や大学を代表するサークルまでに成長したのです。

楓は、「モアイ」の成長を喜びつつも、秋好との距離が離れていることに寂しさを感じていました。さらに、秋好は脇坂と付き合いを始めたようでした。

そんな楓を気遣い、秋好は声をかけます。「モアイは楓と2人で作ったものだから、楓にとって違い方向に向かっていると感じたら言って欲しい」。

楓は、何も変わっていませんでした。反する意見はなるべく口にしない。「僕には違うとかは、ないよ」。

その後月日は流れ、楓は大学3年になっていました。就職も内定をもらい一段落した楓は、ある決意をします。「秋好はもういない。今のモアイをぶっ潰す」。

以下、『青くて痛くて脆い』ネタバレ・結末の記載がございます。『青くて痛くて脆い』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
かつて、楓と一緒にサークル「モアイ」を立ち上げた秋好はもういない。当時の秋好の想いを引き継ぎ、自分は本来の「モアイ」を取り戻さなければならない。

大学で人気サークルになった「モアイ」の現状は、様々な企業と繋がる意識高い系の就職斡旋サークルに成り上がっていました。

楓は、同級生の前川董介を誘って、「モアイ」を潰そうと企みます。さらに、今の「モアイ」の内情を探るために、「モアイ」に所属している董介の後輩・ポンちゃんを利用し、情報を集めます。

「モアイ」の実質ナンバー2に位置する天野巧、通称テンに近付く董介。テンは、いわゆるチャラ男でパリピ。就職セミナーと称し、合コンのように振る舞っているとの噂が耳に入ります。

決定打としては弱いネタですが、楓たちはテンの行動をマークします。連絡先を交換するまで詰め寄った楓と董介は、テン主催のバーベキュー会に誘われます。

その場に、現「モアイ」の代表が姿を現しました。なんと、楓の中で存在を消されていた秋好寿乃、本人でした。

秋好は今もなおサークル「モアイ」の代表として、多くの生徒から慕われ忙しく動いていました。

楓の「モアイ」解散計画は、秋好のためではなく、自分のエゴのためでした。「モアイを奪った者こそ、秋好だ。秋好は、嘘つきだ」。

楓と董介は最近、迷惑メールが増えたことに気付きます。それは、とある企業からの勧誘メールでした。テンとメールアドレスを交換したあたりから頻繁に送られてきます。

これは、証拠を掴めば個人情報の漏洩でとんでもない事件へと発展させることが出来るかもしれない。楓は「モアイ」のメンバーを装い、企業側に流された生徒の情報を回収することに成功します。

これで、秋好の過ちを自分が正してあげられる。楓は、ネットに記事をあげます。あっという間に膨れ上がるコメントの数々。「モアイってヤバい」「最悪のサークル」「犯罪じゃん」。

企業に生徒の個人情報を渡していたテン本人は、そこまで事の重要さを把握しておらず、軽いノリの一環としてやってしまったことでした。

しかし、責任を取って「モアイ」の代表・秋好が謝罪会見を行うことになりました。楓は、会見が行われる会場へと足を踏み入れます。

会見の時間まではまだあります。笑みを浮かべる楓の前に現れたのは、秋好でした。

「あのネットの記事あげたの、田端君だよね」。秋好は、ネットに書かれた一文が、楓の言葉だと確信していました。

「何のこと?」。楓は白を切るも、どうしても秋好に助言をしたくなります。「ちゃんとしたモアイを作り直した方が良いよ。俺も協力するから」。

「何を言っているの?おかしくなったの、そっちでしょ」。秋好の態度に動揺する楓。秋好のためを思ってやったのに。

「いらなくなったら俺を切ったんだろ」。「勝手に出て行ったんじゃない。もしかして、好きだった?気持ち悪いんだけど」。「はぁ?お前は誰でもよかったんだろ、間に合わせだったんだ」。「そうかもしれない」。「お前なんかいなきゃ良かった…」。

楓と秋好、何年か振りの会話はあまりにも残酷で悲惨なものになりました。腹が立つも、悲しみに苛まれる楓。

その日のサークル「モアイ」の報告会の様子をネットで見つけます。秋好は、モアイの始まりを懐かしそうに話し「モアイは大切な場所でした。でも解散します」と、泣き崩れていました。

それを見た楓は、自分のやりたかったことは秋好を追い込み苦しめることではなかったと後悔します。こんなはずじゃなかった、秋好に謝らないと。駆け出す楓。

無我夢中で走り回った楓は、結局秋好には会えませんでした。最後に向かった先は、脇坂の場所でした。

ボロボロの姿で現れた楓に驚きながらも脇坂は、話を聞いてくれました。「どうしてそんなことをしたの?」脇坂の質問に「切り捨てられたと思った」と楓は答えます。

脇坂は言います。「人は皆誰かを間に合わせにして生きてるんじゃないかな。間に合わせでも、その時必要とされたんだから」。

「僕はどうしたら?ずっとあそこに居たかったんです」。楓は、謝罪文をネットに流します。「僕は大切な人を傷つけてしまいました」。

もし、自分から秋好に歩み寄っていたら…。世界は平和に変わっていたかもしれない。なりたい自分にはなれなかった。そして、何も変わらなかった。

楓は大学を卒業し社会人となっていました。大学の後輩から就職セミナーに誘われ参加をします。そのサークル名は「moai」でした。

帰り間際、見覚えのある後ろ姿を見つけます。秋好…。「傷つきたくない、怖い」以前の楓なら避けて通る道でした。

「でも、もう一度。拒絶されても良い。その時は、ちゃんと傷つけ!俺!」。楓は勇気を出して秋好に駆け寄るのでした。

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『青くて痛くて脆い』映画と原作の違い


(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
住野よる著『青くて痛くて脆い』は、2018年の「二十歳が一番読んだ小説」に輝きベストセラーとなっています。若者を中心に人気の作家・住野よるが贈る、まさに痛くて脆い青春ミステリー。

そして映画化では、これまた若者からの人気も高く、実力派俳優の吉沢亮と杉咲花の共演が注目されました。

大切な仲間と自分の居場所を奪われた主人公・田端楓の復讐劇が幕を開けます。原作と映画とではどんな違いがあるのでしょうか。

サークル「モアイ」の活動

原作でのサークル「モアイ」の活動は、秋好と楓が美術館や展覧会、映画や講演会と好奇心を刺激し知識を与えてくれるイベントに参加するというものでしたが、映画ではフリースクールへのボランティアが主な活動になっています。

フリースクールでは、楓と不登校の少女・瑞樹との交流が描かれ、サークル「モアイ」の活動がよりリアルに意味のあるものになっています。

瑞樹(森七菜)は、映画だけのオリジナルキャラとなっています。瑞樹が少しづつ心を開き、なりたい自分になっていく姿は、楓と対照的です。

また、瑞樹の学校の先生・大橋(光石研)が、無理やり瑞樹を学校へ連れて行こうとするシーンは、見当違いな大人の考えが滑稽に現れます。

楓が秋好のためにと思って行動をおこしたように、良かれと思ってしたことが相手にとって良いこととは限らないという教訓になっています。

楓VS秋好

物語のクライマックスには、楓と秋好が互いに溜めていた黒い感情をぶつけ合うシーンがあります。

原作でも衝撃的な言葉のラリーとなりますが、映画ではさらに吉沢亮と杉咲花の凄みの演技バトルで、緊迫した衝撃のシーンとなっています。

切れ長の目が本当に美しい吉沢亮が、その目に狂気を宿した時。その迫力にビビります。

おっとりしたイメージの杉咲花が、ふんっと鼻で笑い怒涛に喋り出す姿は、杉咲花の新たな一面が見られます。

注目すべき登場人物


(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
楓の友達で、共にサークル「モアイ」を潰そうと協力する前川董介(岡山天音)。始めは軽い気持ちで乗っかるも、楓の狂気に触れ良心を取り戻します。

また、楓と董介の企みに一早く気付く後輩・本田朝美(松本穂香)、通称ポンちゃん。一見、お調子者で軽い女の子に見えますが、実は賢く誰よりも大人です。

そして、サークル「モアイ」のナンバー2・天野巧(清水尋也)、通称テン。チャラ男でパリピ。悪い事とは知らず事件を起こしてしまう犯人ですが、面倒見が良くどこか憎めない人物です。

最後に、秋好の活動を応援してくれる先輩・脇坂(柄本佑)が、物語の重要な役割を担っています。どうしていいのか分からず後悔する楓に、指南してくれるのも脇坂です。

それぞれが原作の人物を見事に演じていて、主演の2人を盛り上げます。

まとめ


(C)2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
吉沢亮と杉咲花のW主演で映画化された『青くて痛くて脆い』を、住野よるの原作と比較し紹介しました。

大切な仲間と自分の居場所を失くした青年が、再びそこに戻りたい一心で起こした事件。気付いた時には、大切な人を残酷に傷つけていました。

相手のためを思い、良かれと思ってしたことが、本当に相手のためとは限りません。

『青くて痛くて脆い』は、自分本位になってしまいがちな人間関係の怖さを浮き彫りにした作品と言えるでしょう。

次回の「永遠の未完成これ完成である」は…


(C)2020「おらおらでひとりいぐも」製作委員会
次回紹介する作品は『おらおらでひとりいぐも』です。

第158回芥川賞と第54回文藝賞をダブル受賞し話題となった、岩手県遠野市出身の作家・若竹千佐子のベストセラー「おらおらでひとりいぐも」。

突然、夫に先立たれた75歳の女性が、孤独のなかで生んだ「心の声=寂しさたち」。世界は途端に賑やかに動き出します。

映画公開の前に、原作のあらすじと、映画化で注目する点を紹介していきます。

【連載コラム】「永遠の未完成これ完成である」記事一覧はこちら

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