Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/10/09
Update

【シンデレラ(2021)】ネタバレ結末感想と評価解説。実写で歌曲を取り入れたAmazonミュージカル映画をケイ・キャノン監督が魅せる|Amazonプライムおすすめ映画館4

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「Amazonプライムおすすめ映画館」第4回

ケイ・キャノンが脚本・監督を務めた、2021年製作のイギリス・アメリカ合作のミュージカル・ファンタジー映画『シンデレラ』。

大きな夢を抱く野心家のヒロインが、魔法使いファビュラス・ゴッドマザーの魔法の力を借りて、自分の夢を実現させようと奮闘する姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

誰もが知る有名なおとぎ話『シンデレラ』を、世界的大ヒットポップソングで彩る現代風のミュージカル映画として描いた『シンデレラ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「Amazonプライムおすすめ映画館」記事一覧はこちら

映画『シンデレラ』の作品情報


(C)Amazon Studios

【日本配信】
2021年配信(イギリス・アメリカ合作映画)

【原作】
シャルル・ペローの童話『シンデレラ』

【脚本・監督】
ケイ・キャノン

【キャスト】
カミラ・カベロ、イディナ・メンゼル、ミニー・ドライバー、ニコラス・ガリツィン、ビリー・ポーター、ピアース・ブロスナン、マディー・ベイリオ、シャーロット・スペンサー、タルーラ・グレイベ、ジェームズ・コーデン、ジェームズ・エイキャスター、ロメシュ・ランガナタン、ベン・ベイリー・スミス

【作品概要】
「ヒッチ・パーフェクト」シリーズのケイ・キャノンが、脚本・監督を務めたイギリス・アメリカ合作のミュージカル・ファンタジー作品。

原作は、フランスの詩人シャルル・ペローの童話『シンデレラ』です。

アメリカのガールズグループ「フィフス・ハーモニー」の元メンバーで、脱退後はソロアーティストとして躍進し、グラミー賞にノミネートされたシンガーソングライターのカミラ・カベロが主演を務めています。

共演は、人気ドラマシリーズ「glee」や「アナと雪の女王」シリーズのイディナ・メンゼルと、『ハートビート』(2016)のニコラス・ガリツィンら豪華キャスト陣です。

映画『シンデレラ』のあらすじとネタバレ


(C)Amazon Studios

昔々、古い伝統としきたりに囚われたある王国がありました。疑問も持たずに、定められた人生を受け入れて暮らす王国の住民たち、誰も気づいていませんでしたが、この国は変わりつつあるのです。

それまで王国の民は、何世代も前からずっと、毎日生活のために同じ仕事をして過ごす働き者でした。

街外れにあるみすぼらしい一軒の家から、物語は始まります。家の主の名はヴィヴィアン、2人目の夫に先立たれ、独身のままで現実主義者に変わってしまいました。

ヴィヴィアンには3人の娘がいました。捻くれ者のマルヴォリアとナルシストのナリッサ、そして薄汚い地下室で暮らす継娘のエラ、彼女は義姉たちから「シンデレラ」と呼ばれていました。

いつも埃まみれで体中が汚れていたシンデレラは、夢を見ていました。不幸で惨めな今とは違う、何もかも望み通りの人生を送る夢を。

シンデレラが夢にそう望むのは無理はありません。だってシンデレラの現実は、いつも継母であるヴィヴィアンに小言を言われながら、料理や洗濯、家の掃除といったヴィヴィアンたちの世話をさせられているのですから。

「この世はお金がものを言う、男の価値は金でしかない」という現実主義者のヴィヴィアンは、何不自由のない生活を送るために、3人の娘たちに早く金持ちの男を捕まえて結婚するよう言います。

そう言われたシンデレラは、誰かと結婚して幸せになるという平穏な人生を送ることなんて望んじゃいません。

そりゃあ真実の愛を求めているけれど、それよりもシンデレラは、「ドレスを作る仕立屋として成功したい」という長年の夢を叶える方が大事なのです。

仕立屋となって成功すれば、きっと皆が自分の存在を認めてくれる、そうシンデレラは信じていました。

シンデレラは、いつか出店する自分の店「エラのドレス」開業のため、今日も地下室でドレスづくりに励みます。

その頃、街の市場では、城のお触れ役タウン・クライヤーが陽気な楽器隊を従えて、あくせく働く王国の民たちにある知らせを伝えました。

「近々行われる衛兵の交代の式典は今までとは違い、ローワン国王とベアトリス女王、ロバート王子、グウェン王女ら国王一家が勢揃いすることになった」

衛兵交代式当日、シンデレラは王国の民が城に集まるこの日は、自分が作ったドレスを売り込み、夢の実現への第一歩を踏み出すチャンス。と思っていましたが、ヴィヴィアンに怒られ、出鼻をくじかれてしまいます。

一方宮殿では、ローワン国王が自身の息子ロバート王子が、名家の王女との縁談を断り続けることに頭を抱えていました。

というのも、ロバート王子がまともに王族としての務めを果たさず、親友のウィルバー伯爵と、友人グリフとヘンチと一緒に遊び惚けているからです。

ローワン国王は結婚さえすれば、ロバート王子は馬鹿げた振る舞いはしなくなり、民たちに笑い者にされるのではなく、王位を継ぐ覚悟が出来たと認めるだろうと思い縁談を勧めていました。

それでも難色を示し反抗するロバート王子に、ローワン国王は言いました。「お前が立派な国王となるために、花嫁探しの舞踏会を開いた。しかるべき身分の女性を一堂に集めた舞踏会に、必ず出席しろ。これは命令だ」


(C)Amazon Studios

憂鬱な気分で臨んだ衛兵交代式、そこでロバート王子が宮殿のバルコニーから見たのは、背が低くて人だかりの後ろから見えないからと、ローワン国王の肖像によじ登って観覧するシンデレラの姿でした。

ローワン国王に注意されても臆さず、堂々として振舞いを見せて去っていくシンデレラに、ロバート王子は一目で恋に落ちました。

それからというもの、ロバート王子は嫌がっていた舞踏会への出席を決め、その代わり条件を付けました。「舞踏会には身分を問わず、国中の若い女性も招待してほしい」

ロバート王子は直接シンデレラを舞踏会へ招待するため、変装して街へ繰り出します。同時刻、シンデレラもヴィヴィアンたちの目を盗んで街へ繰り出し、自作のドレスを王国の女性たちに売ろうと奮闘しました。

しかし、現実はそう甘くありません。市場で出店しているのはどれも男性の店ばかり、女性が商いをしている姿はないどころか、自作のドレスを主人から盗んだものと勘違いされ、罵倒されてしまいます。

そんなシンデレラの姿を見ていたロバート王子は、彼女に声を掛け、彼女の亡き実母の形見であるブローチをつけたドレスを、高値で買い取ろうと言います。

2人がドレスについて話していたその時、街にタウン・クライヤーが現れ、新たなお触れを民たちに伝えました。

「今から2週間後に、王国中の未婚の女性を招いた舞踏会が城で開かれる。ロバート王子が花嫁を探すためだ」「どん底な人生も、一夜にしてバラ色の人生に変わっちゃうチャンスだ」

ロバート王子は当然、シンデレラが舞踏会へ来ると思っていました。ロバート王子が勇気を出して尋ねてみると、シンデレラは「ヘンテコで古いしきたりみたいだから、舞踏会に行かないし興味ない」とまさかの参加拒否。

さらにシンデレラからは、「ロバート王子って噂どおり、“問題を起こすだけの役立たずでマザコン”なんだわ。王室を支えているのはキレ者のグウェン王女」と言われてしまうのです。

けれどロバート王子は、是が非でもシンデレラを舞踏会へ来させたいため、諦めません。

「古いしきたりが多いこの国だけど、舞踏会には世界中から、偏見にとらわれない新しい考え方を持つ大金持ちが集まってくる。よかったら僕の知り合いを紹介するよ」

「会ったばかりなのに、なぜそんなに親切にしてくれるの?」「定められた人生から抜け出したいっていう君の気持ち、僕にも分かるから」

シンデレラは自分と同じ価値観を持つロバート王子の説得に応じ、舞踏会に行くことにしました。

以下、『シンデレラ』ネタバレ・結末の記載がございます。『シンデレラ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Amazon Studios

シンデレラはロバート王子と別れ、ドレスを買ってくれた彼から貰った代金を手に、市場で上質な布を入手。舞踏会に向けて、新作のドレスの製作に取り掛かります。

それから2週間後、舞踏会当日。薄桃色の生地に花をあしらったドレスを完成させたシンデレラは、自らそのドレスを着て、舞踏会に出席しようとします。

しかしロバート王子の花嫁となるべく、2人の娘に花嫁修業させていたヴィヴィアンは、シンデレラのドレスを素直に褒める一方、彼女に残酷な現実を突きつけるのです。

「舞踏会に行けるのは未婚の女性だけ。あなたは既に、うちと懇意にしてくれていた男性トーマスと婚約したんだから行く必要はない」

そう、実はヴィヴィアンはシンデレラに内緒で、トーマスからのシンデレラへの求婚に応じてしまっていたのです。

シンデレラは当然ロバートとの結婚を拒否しますが、ヴィヴィアンに黒いインクでドレスを汚され、挙句の果てに「天涯孤独の身になりたくなかったら、舞踏会には出ず、トーマスとの結婚を受けるのよ」と脅迫されてしまいます。

その日の夜、王国中の未婚女性が着飾って舞踏会へ出席する中、1人留守番を言い渡されたシンデレラは、悲しみに暮れていました。

泣いているシンデレラを慰めようと、彼女の唯一の友達である3匹のネズミ、ロメシュとジェームズとジョン、彼女が助けた蜘蛛に食べられそうだった幼虫が羽化した蝶が集まってきます。

蝶はみるみるうちに姿を変え、シンデレラのお助け役である魔法使い、ファビュラス・ゴッドマザーとなって彼女の前に姿を現しました。

そう、蝶の正体はファビュラス・ゴッドマザーだったのです。ファビュラス・ゴッドマザーは命を救ってくれた恩返しとして、シンデレラを舞踏会へ行かせてあげようとしました。

そのために必要なドレスを、ファビュラス・ゴッドマザーはシンデレラのデザイン画から1つ選び、家の庭に咲く白い花を使って、魔法でそのドレスを再現させます。

さらに魔法でドレスに似合うガラスの靴を出しました。あとは庭に置かれた木箱を使って舞踏会へ行く馬車に、ロメシュたちを馬を操縦する馭者に魔法で変身させます。

そしてファビュラス・ゴッドマザーは、シンデレラを舞踏会へ送り出す際にこう忠告しました。

「時計の針が12時をさしたら、宮殿から走ること。でないと魔法が解けてしまう」

一方宮殿では舞踏会が開かれ、ロバート王子が出席。すると会場に集まった未婚女性が一気に色めきだち、ロバート王子への熱烈なアピールをしていきます。

その後、シンデレラが遅れて舞踏会へ出席。高貴な姫を演じるシンデレラに、他国の女王タチアナが声を掛けてくれました。

タチアナ女王はシンデレラがデザインしたドレスを褒め、「海外の大きな式典に着ていく、気に入った服がなくて困っているの。素敵な服を作ってくれる人と、一緒に世界を旅して回りたくて。興味はあるかしら?」と仕事のオファーまでしてくれたのです。

喜んで受けたシンデレラは明日、午後4時に市場の港でタチアナ女王と会う約束をしました。

有頂天なシンデレラがふと下の会場を見下ろすと、招待客にシンデレラとの出会いを赤裸々に語るロバート王子の姿がありました。


(C)Amazon Studios

ロバート王子の話を聞いて、市場で会った親切な人が王子であったことを知って驚愕するシンデレラ。とんでもないことを言ってしまったと焦る彼女は、宮殿を出ようとした際にタンバリンを落としてしまい、その音でロバート王子にバレてしまいます。

シンデレラはパニックになりながら、嬉々として近寄ってきたロバート王子に謝罪し、夢を実現するチャンスをつかんだからと帰ろうとしますが、彼から「まだ見ていないドレスがある」と言われ、引き止められてしまうのです。

ロバート王子がシンデレラに見せたいドレス、それは妹のグウェン王女に着せたシンデレラのドレスでした。

自分のドレスを王女が着ているという夢のような奇跡に、感極まるシンデレラ。ロバート王子はそんな彼女に、ダンスのお誘いをします。

シンデレラは、自分にここまで優しくしてくれたロバート王子に恋に落ちました。運命の出会いを果たした2人は、愛する人とダンスを踊れる幸せに浸ります。

招待客が呆然と立ち尽くす会場を抜け出し、ピアノが置かれている宮殿の部屋で2人きりの静かなひと時を過ごすシンデレラたち。

その時ロバート王子は、昔鎧をまとって戦いに赴く父親の勇敢な姿に憧れ、国王になりたいと思ったこと。

でもいざ大人になってみたら、古い伝統やしきたりに雁字搦めとなり、周りに言われるがままに人生を過ごしてきた自分は、本当は望んでいるのか分からなくなってしまったことをシンデレラに打ち明けます。

ロバート王子はシンデレラに求婚しますが、妃となって王室に入ってしまえば、夢を実現できないと分かった彼女に、叶えたい夢の実現を優先され拒絶されてしまうのです。

本当はシンデレラも、ロバート王子と結婚して幸せになりたい。だからこそ彼女は、後ろ髪引かれる思いで12時の鐘が鳴るとともに、彼の元から走り去ってしまいます。

魔法が解けかかっているシンデレラは、走りにくいガラスの靴を宮殿前で脱ぎ捨て、馬車に乗ってその場を立ち去っていきました。

しかしその道中、ジェームズたちや木箱にかけられた魔法も解けてしまい、シンデレラは歩いて帰る羽目になってしまったのです。

一方ロバート王子は、未来の王妃が誕生したかと思えばフラれたという結果に怒り心頭のローワン国王から、ローラ王女という他国の姫と結婚するよう命じられてしまいます。

そんなローワン国王の元へ、シンデレラにガラスの靴を投げつけられたウィルバー伯爵が現れ、彼女が残したガラスの靴を見せます。

宮殿には片方のガラスの靴が、もう片方のガラスの靴は、徹夜でドレスをデザインしているシンデレラが持っていました。

ヴィヴィアンはシンデレラに、ロバート王子がローラ王女と結婚することが決まったことと、これまでシンデレラにキツくあたっていた理由を話します。

「私はあなたに好きで意地悪しているんじゃない。誰にも話したことがなかったけれど、昔私はピアニストとしての才能があったの」

「最も権威ある音楽学校で学ぶチャンスを得て挑戦したけれど、当時の私には2人の子供と優しい夫がいた。なのにそれ以上のものを望んだからか、結局学べたのはたったの1ヶ月」

「家に戻ると、主婦なのに身勝手すぎると思った夫は去ってしまった」「本当に意地悪をしているのなら、叶わないはずの夢を追えと言っているわ」

その時、ジェームズが身を乗り出して聞き入ってしまったため、3匹が入った箱に隠していたガラスの靴が床に落ち、ヴィヴィアンにロバート王子に見初められた姫の正体がシンデレラだと知られてしまいました。

舞踏会で魔法のドレスに身を包んだシンデレラは、ロバート王子以外は彼女だと分からないようになっていました。

ヴィヴィアンは目の色を変えて、ロバート王子との結婚を勧めますが、シンデレラは頑なに彼との結婚を拒否。すると彼女は、シンデレラにトーマスとの結婚を強要します。

一方宮殿では、国王の義務だと言って王室の名誉を守ることしか考えていないローワン国王に、ベアトリス女王は怒り、「ロバートが結婚に乗り気でないのは、幸せは保証されない私たち国王夫妻を反面教師にしているからなのよ」と糾弾していました。


(C)Amazon Studios

ベアトリス女王の魂の叫びが心に響いたのか、ローワン国王はロバート王子に自分が間違っていたと謝罪し、彼にこう言いました。

「このガラスの靴の持ち主を探せ。結婚するかしないかはお前の好きにしろ」

その後、ロバート王子はウィルバー伯爵たちを連れて市場へ繰り出し、ガラスの靴の持ち主を探し回りました。

午後3時45分。トーマスとの結婚のため、彼とヴィヴィアンと一緒に馬車に乗って移動していたシンデレラは、ロメシュたちの協力を得て馬車から飛び降り脱走。

午後3時55分。タチアナ女王が待つ市場へ走って向かうシンデレラは、自分を探していたロバート王子に見つかり、彼から改めて求婚されます。

「僕が望んでいるのは国王になることじゃない、君と一緒に人生を歩むことなんだ」

シンデレラは彼の求婚を受け入れ、熱いキスを交わします。ところが、すぐに目的を思い出したシンデレラはロバート王子に、馬に乗って市場へ向かって欲しいと頼みました。

同時刻、ローワン国王は新婚当初の思い出を再現し、ベアトリス女王に愛と謝罪を込めた歌を捧げます。

午後4時。無事にタチアナ女王との待ち合わせに間に合ったシンデレラは、彼女にドレスのデザイン画を見せた結果、無事彼女の専属の仕立屋に採用されました。

シンデレラとロバート王子は、無事和解した国王夫妻の元へ行き、「すぐに結婚はせず、2人で世界を旅してまわりたい」と話しました。

それを快く受け入れ、賛成してくれたローワン国王が、次期国王に選んだのはグウェン王女でした。前から国のためになる政策を提案し続けていたグウェン王女は、喜んで拝命しました。

その後開かれた祝賀会にて、王位を継承し国王となったグウェン王女は、シンデレラにブローチを渡します。

踊って騒ぐことが大好きなベアトリス女王の呼びかけにより、王国中がお祭り騒ぎとなり、市場で踊っていたシンデレラは、そこにいたヴィヴィアンと一緒に歌を歌って和解。

ヴィヴィアンもマルヴォリアたちも入れて、皆で市場で歌って踊って、楽しい時間を過ごしました。

おとぎ話はこれでおしまい、シンデレラストーリーを歩んでいくシンデレラことエラは、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

映画『シンデレラ』の感想と評価


(C)Amazon Studios

自分が望む人生を掴んだシンデレラたち

住む世界が違うシンデレラとロバート王子ですが、「窮屈で苦しい生活から抜け出して、何のしがらみにとらわれることなく、自由に自分の人生を選んで生きていきたい」という気持ちと願いは一緒です。

運命的な出会いをし恋に落ちたシンデレラたちが踊る、舞踏会でのダンスはとてもロマンチックで、思わず招待客たちと一緒に見惚れてしまいます。

同じ悩みを抱え苦悩し、もがき続けた末に自分の幸せを掴んだシンデレラたち。一度は結婚しないのかとヒヤヒヤさせられましたが、無事ハッピーエンドになって嬉しいです。

ヴィヴィアンの不器用な継娘への愛情


(C)Amazon Studios

おとぎ話の『シンデレラ』とは違い、本作ではシンデレラの義姉である、捻くれ者のマルヴォリアとナルシストのナリッサはシンデレラをいじめたりしません。

シンデレラに意地悪を言っていじめるのは、彼女の継母であるヴィヴィアンだけです。悉くシンデレラの邪魔をするヴィヴィアンの姿が目立つ一方で、物語の後半では彼女の印象がガラリと変わります。

ヴィヴィアンがシンデレラをいじめていた本当の理由は、昔自分が夢を追いかけたせいで、愛する人との幸せを失った経験から、血が繋がっていないとはいえ、娘のシンデレラにそんな苦労をさせたくない一心からでした。

つまりヴィヴィアンは、心の底ではシンデレラを娘として愛していたのです。ヴィヴィアンの不器用な愛情が分かった途端、彼女を見る目が変わり、彼女というキャラクターが愛おしく感じることでしょう。

シンデレラのおかげで変わった国王夫婦


(C)Amazon Studios

シンデレラのおかげで変われたのは、ロバート王子やヴィヴィアンだけではありません。

シンデレラとロバート王子の恋をきっかけに、これまでローワン国王に意見することが許されなかったベアトリス女王が、初めて自分の気持ちを夫に伝えるのです。

笑顔でバルコニーから手を振るベアトリス女王の姿からは想像もつかない、王室に入ってからの苦悩、新婚当初から変わってしまった夫への不満が語られています。

妻の本心を知ったローワン国王もまた、古い伝統やしきたりに囚われ、王室の名誉を守ることに固執していた自分を変えていきました。

シンデレラたちに負けないぐらい、仲睦まじい国王夫婦の姿に、思わずほっこりとした気持ちになります。

まとめ


(C)Amazon Studios

真実の愛を探し求めるだけでなく、自分の長年の夢の実現のために奮闘するシンデレラの姿を描いた、イギリス・アメリカ合作のミュージカル・ファンタジー作品でした。

本作の見どころは、シンデレラとロバート王子の運命的な出会いと真実の愛、2人を取り巻く人間模様です。

ミュージカル映画である本作は、おとぎ話『シンデレラ』にはない、シンデレラたち登場人物のそれぞれの気持ちを表す歌が披露されています。

物語の最初から最後まで、登場人物の心情にあった歌と踊りが描かれている場面。時に心躍って楽しく、時に感情移入して泣けるほど素晴らしいものばかりです。

国王になるという夢を叶えたグウェン王女、仕立屋になるという夢を叶え、真実の愛も一緒に手に入れたシンデレラ。2人の女性の夢が叶い、皆がハッピーになった結末に感動します。

現代風のミュージカルで彩られた、おとぎ話とはまた違う新しいシンデレラストーリーを描いた、ミュージカル・ファンタジー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

【連載コラム】「Amazonプライムおすすめ映画館」記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

NETFLIX韓国映画『人狼』ネタバレ感想と評価。実写版ラストは押井守アニメと異なる!?|SF恐怖映画という名の観覧車68

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile068 予算や技術の都合上、アニメーションでしか描けなかったSF映画の世界が時代の進化により実写で描けるようになった現代。 20周年を迎えたSF …

連載コラム

映画『ティーンエイジ・パパラッチ』感想とレビュー評価。13歳少年が手にしたカメラが過熱セレブリティの実像を活写|だからドキュメンタリー映画は面白い35

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第35回 少年パパラッチが、お騒がせセレブたちに突撃取材! 今回取り上げるのは、2010年にアメリカ公開されたドキュメンタリー映画『ティーンエイジ・パパ …

連載コラム

映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。ゾンビによる仲間たちの死と強盗計画の裏にあるタナカの思惑|Netflix映画おすすめ40

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第40回 2021年5月21日(金)にNetflixで配信された、アメリカのゾンビアクション・アドベンチャー映画、『アーミー・オブ・ザ・デッ …

連載コラム

【映画考察】プリンス ビューティフル・ストレンジ|感想評価から紐解く“稀代のミュージシャンの音楽センスとルーツ”|だからドキュメンタリー映画は面白い83

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第83回 今回紹介するのは、2024年6月7日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開される『プリンス ビューティフル・ストレンジ』。 2016年に5 …

連載コラム

映画『ある殺人、落葉のころに』感想評価と考察解説レビュー。三澤拓哉監督が描く“現代の歪な物語”からの救済のメタ構造|映画道シカミミ見聞録53

連載コラム「映画道シカミミ見聞録」第53回 こんにちは、森田です。 今回は、2021年2月20日(土)/東京・ユーロスペース他での劇場公開後も、4月23日(金)/京都みなみ会館にて、4月24日(土)/ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学