連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第276回
映画『もういちどみつめる』は、釜山映画祭正式出品作品『HER MOTHER 娘を殺した死刑囚との対話』(2016)の佐藤慶紀監督の作品です。
分かりあえないからこそ対話を続ける必要があるのではないかと、本作でも佐藤慶紀監督が探求し続けています。
映画『もういちどみつめる』は、2025年11月22日(土)から新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開!
一見他の人と変わらないように見えるのですが、他者とのコミュニケーションに生まれながら難を抱える典子役で筒井真理子、複雑な家庭環境や過去を抱える18歳の青年・ユウキ役で髙田万作がW主演を果たしています。
映画『もういちどみつめる』の作品情報

(C)Aerial Films
【日本公開】
2025年(日本映画)
【監督・脚本・編集・プロデューサー】
佐藤慶紀
【撮影】
喜多村朋充、大渡仁
【音楽】
中野晃汰
【キャスト】
筒井真理子、髙田万作、にしやま由きひろ、徳永智加来、中澤実子、吉開湧気、リコ(HUNNY BEE)、内田周作、川添野愛
【作品概要】
2022年の少年法の改正で18、19歳を厳罰化することになったことに疑問を持った佐藤慶紀監督。本作で「生きづらさ」を抱える思春期の青年や大人、女子学生との交流を通して、言葉にして対話をすることの重要性を描きます。
主演に『淵に立つ』(2016)『よこがお』(2019)『波紋』(2023)など全ての作品で圧倒的な演技を魅せ、多数の主演女優賞を受賞している唯一無二の名優筒井真理子と、三宅唱監督のロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門金豹賞受賞作品『旅と日々』(2025)で大注目の髙田万作を迎えています。
映画『もういちどみつめる』のあらすじ

(C)Aerial Films
山のキャンプ場を営む典子の元に、1年前に少年院を出所した甥っ子のユウキが突然やって来ました。
ユウキは、典子の姉である母親を探していると言います。典子が義理の兄に電話すると、ユウキと義理の兄はうまくいっていないとのこと。
その後、典子はユウキにキャンプ場でバイトをさせます。人と会話をせず、何を考えているのかわからないユウキに「私にできることは、あなたの話を聞くことだけ」と寄り添う典子。
近所に住む明夫はユウキに、典子は人の表情を読み取るのが苦手で、言葉で気持ちを表すのが大事なのだと言いました。
「世界の見方は皆同じじゃない」と言う典子に、ユウキは次第に心を許していきます。
そんなある日、典子の息子でユウキの同い年の従兄弟である健二が、大学の友達とキャンプにやって来ました。
森の植物や星など、ユウキと大学生の由香理が共通の話題で盛り上がるのを見て嫉妬した健二は……。
映画『もういちどみつめる』の感想と評価

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ほとんど喋らず、何を考えているのかわからない甥・ユウキと、言葉でコミュニケーションを取っていた叔母の典子。
ユウキが実母の行方を捜して叔母が経営するキャンプ場を訪れたところから物語は始まります。
行く宛のないユウキを、典子はバイトとしてキャンプ場で働いてもらうことにしました。
言葉をかわさないユウキですが、受け答えはできますから、典子は何とかユウキの心を開こうとしますが、上手くいきません。
人とのコミュニケーションが得意でない典子は、苛立ちを隠せずに、ユウキに「話してくれないと私にはわからない」と言い放ちました。
自分の殻に閉じこもっている人には、ここまではっきりと言わないと、自分の考えが伝わらないのがわからないのです。
自分の気持ちや考えが第三者に伝わって初めて、自分というものを知ってもらえるのです。人と人との対話がいかに大事なことなのかとよくわかります。
本作は自然の中で生活しながら、自分をみつめなおす叔母と甥を、優しい視線で描き出しています。
まとめ

(C)Aerial Films
普通の人のように感情を読み取れず、言葉でコミュニケーションを取るしかない叔母典子と、少年院を出て屈折した心を持ち、自分の殻に閉じこもっている青年ユウキの触れ合いを描いた『もういちどみつめる』。
「私にできることは、あなたの話を聞くことだけ」と語る典子に、次第に心を開くユウキ。言葉というものがどんなに大切かを教えてくれる作品です。
美しい森林に囲まれたキャンプ場で織りなす人と人との触れ合い。大自然は嘘をつきませんが、人もまた嘘をつかない優しい心を持っています。
典子の誠意はどこまでユウキに通じるのでしょうか。頑ななユウキの心をいつか開いてくれるのではないかと期待が高まります。典子とユウキの“心の真剣勝負”をそっと見守りたくなる作品です。
映画『もういちどみつめる』は、2025年11月22日(土)から新宿K’s cinemaほかにて全国順次公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


































