Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

Entry 2016/12/09
Update

映画『ぐるりのこと。』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【木村多江×リリー・フランキーと橋口亮輔監督の傑作にして代表作】

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

「ステキだな〜!」「めんどうくさい!」「一緒にいたな〜!」

このような夫婦生活の様子を描いた映画は、数え切れないほどありますが、近年公開された邦画で特に秀でた傑作といえば『ぐるりのこと。』。

今回は、橋口亮輔作品が、10年間の夫婦の軌跡を描いた『ぐるりのこと。』をご紹介。

ぐるりのこと。
(C)2008『ぐるりのこと。』プロデューサーズ

スポンサーリンク

映画『ぐるりのこと。』の作品情報

【公開】
2015年(日本)

【脚本・監督】
橋口亮輔

【キャスト】
木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、柄本明、寺田農、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人、加瀬亮、新井浩文、片岡礼子、木村祐一、斎藤洋介、峯村リエ、温水洋一、山中崇、光石研、田辺誠一、横山めぐみ

【作品概要】
寡作で知られる橋口亮輔監督が、前作『ハッシュ!』についで6年ぶりにつくった作品。

裁判所のテレビニュース用に挿絵を描く法廷画家の夫と、小さな出版社勤務する妻。

2人のありふれながらも、かけがえのない10年間の愛の軌跡を描いた作品。

初主演作となる木村多江とリリー・フランキーが名演技のエチュードを見せる出世作。

また、名バイプレイヤーの倍賞美津子、柄本明など実力派俳優の演技にも魅了される作品です。

映画『ぐるりのこと。』のあらすじとネタバレ

ぐるりのこと。
(C)2008『ぐるりのこと。』プロデューサーズ

小さな出版社に勤務する妻の佐藤翔子は、しっかり者で明るい性格。一方で、靴修理スタンド勤務の夫の佐藤カナオは、マイペースで女にだらしない性格。

そんな2人は、結婚式も挙げぬまま夫婦となっています。

ある日、カナオは、美術大学時代の夏目先輩と呑み屋に行きます。夏目は、日東テレビ勤務の美術スタッフ。

カナオが後輩であるのを良いことに、1枚7000円という収入の良い法廷画家の仕事に誘うのです。

その夜に遅く帰ったカナオを、しっかり者の翔子は、夜の夫婦生活を色気なくカレンダーにあるように週3回の約束の日だと誘いますが、カナオは色気がないと細々とした要求をします。

やがて、1993年7月、カナオの子どもを、翔子の理想である計画通りに妊娠。

法廷画家の仕事を始めたカナオ。新たな職場のクセの強い同僚たちと出会っていきます。

ベテラン報道記者の安田邦正や、元新聞の風刺漫画家で、今は法廷画家の吉住栄一たちと、かつての美大生の時のように上手く付き合いながら、自分なりの生き方を模索しています。

以下、『ぐるりのこと。』ネタバレ・結末の記載がございます。『ぐるりのこと。』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

スポンサーリンク

しかし、1994年2月、カナオと翔子が暮らす部屋には、生まれてくるはずだった赤ん坊の位牌が寂しげに置かれています。

これをきっかけに、少しずつ翔子の心は精神的に病んでいきます…。

翌年には、新たな子どもを身籠った翔子。前の子どもへの罪悪感からか、自暴自棄で浮かない様子の翔子は、独りよがりな決断で中絶手術を受けてしまいます。

彼女のうつ状態は、ますます闇のように広がります、それはまるで、カナオが、裁判の法廷で見つめる社会不安な事件や、凶悪化する事件と同じくも見えてくるのです。

1997年10月、出版社も辞めてしまい心療内科に通う翔子でしたが、台風の夜に、ついに自分だけでは気持ちを抑え切れずに、カナオに中絶の告白をします。

翔子とカナオは、やっと、お互いの気持ちを2人だけの夫婦でぶつけ合い、新たに絆を確認するのです。

その翌年、尼の住職のお寺に通うようになった翔子は、以前のような精神的な落ち着きをを取り戻す。

そこで住職から、かつて画家の道を志して翔子に、本堂の天井画を描く依頼を受けます。

翔子は、久しぶりに好きな色の画材を選び、自分の描きたいものを見つけていくのです。

そんなある日、元気になった翔子に、親族から頼まれごとを受けます。自分たちを捨てていった父親が末期ガンに犯されようなので、名古屋まで行き様子を見てきてほしいと言うのです。

気の進まない翔子でしたが、カナオは自分も名古屋の裁判所で仕事があるので、名古屋で待ち合わせをして一緒に見舞いに行こうと誘い出します。

名古屋の待ち合わせ場所で、見ず知らずの派手な結婚式を見かけた2人は、悪戯げに金屏風前で2人並んで写真を撮ります。

その報告の家族会議の場で、実は父を裏切ったのは母の波子の方だったと聞かされる。カナオが描いた似顔絵で、夫との対面を果たす波子。

2001年7月、翔子の渾身で描いた本堂の天井画が完成。そして、2人の部屋には、金屏風の前で仲良く並んだ翔子とカナオの写真が飾られいます。

まるで新たに結婚したかのように…。

スポンサーリンク

映画『ぐるりのこと。』の感想と評価

橋口亮輔監督が、結婚から10年の夫婦の歩みを、1990年代の社会情勢と共に描いた作風は、大きな影響を与えた映画があります。

1957年に製作に製作された、木下恵介監督の名作『喜びも悲しみも幾歳月』です。

どちらも作品も夫婦の生活を見つめながら、その時代背景と共に描いていきます。

また、子どもを失ってしまう理由は異なりますが、そのような類似点や、嵐の中で夫婦が絆を深める様子は、同様な構成のひとつと考えても過言ではないでしょう。

橋口監督が尊敬をしてやまない監督の1人が、木下恵介監督。

元記者であった木下監督のジャーナリズムのある作風と、繊細なまでに細かい点をリアルに描いていく様も、橋口作品と木下作品の共通点です。

また、違った観点から見ると、製作された時代と共に夫婦の役割や性格なども興味深いところです。

そんな男女の立場を比較してみるのも面白いかも知れません。

まとめ

ぐるりのこと。

橋口亮輔監督は、自身を見失ってしまった登場人物が、人々との関わりの中でゆっくりと再生する姿を描きました。

それは、「冬来りなば、春遠からじ」という言葉を思い起こします。

花のように春には、「ぐるり」と再生する。人間の強さを感じさせる映画です。

希望を失った妻と、一見頼りないが妻を愛する夫の姿を描いた名作です。

初主演の木村多江は、第51回ブルーリボン賞主演演女優賞、
同じく、初主演のリリー・フランキーも同映画賞新人賞。

2人の演技は、この年の数々の映画賞に輝いた代表作となりました。

関連記事

ラブストーリー映画

映画『パラレルワールド・ラブストーリー』あらすじネタバレ感想。原作は東野圭吾の異色恋愛小説

映画『パラレルワールド・ラブストーリー』は、2019年5月31日(金)より全国ロードショー! 東野圭吾の同題作品を多作ではないものの『宇宙兄弟』『聖の青春』と良作を発表し続ける森義隆監督が映画化。 主 …

ラブストーリー映画

映画『真っ赤な星』あらすじネタバレと感想。キャストの小松未来(陽役)が見せた強いまなざし

誰がこの心の空白を埋めてくれるの。 映画『溶ける』で高い評価を受け、史上最年少でカンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門に正式出品されるなど、国内外で注目を集める井樫彩監督の初長編作品です。 悲しみを抱 …

ラブストーリー映画

おとなの恋の測り方キャストとあらすじ!映画試写会情報も

大ヒット映画『最強のふたり』のスタジオ×オスカー俳優ジャン・デュジャルダン! 逆身長差だけど“最強のふたり”が紡ぐフレンチ・ラブストーリー『おとなの恋の測り方』をご紹介します。 スポンサーリンク CO …

ラブストーリー映画

映画『ロマンスドール』ネタバレ感想とレビュー評価。高橋一生×蒼井優をキャストにタナダユキ監督が自ら執筆した小説を実写化

映画『ロマンスドール』は、2020年1月24日(金)より全国ロードショー! 2008年に『百万円と苦虫女』、2012年には『ふがいない僕は空を見た』などで知られるタナダユキ監督が、10年前に発表した同 …

ラブストーリー映画

映画『夕霧花園』感想評価とレビュー解説。阿部寛が海外マレーシアの主演作品で“自分らしさ”を発揮する

映画『夕霧花園』は2021年7月24日(土)より全国順次ロードショー! 阿部寛出演、戦後のマレーシアを舞台にとある日本人庭師が一人の女性との出会い、そして激動の中でたどり着いた愛の姿を描いた映画『夕霧 …

U-NEXT
CINEMA DISCOVERIES【シネマディスカバリーズ】
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学