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映画『ブルーノ』感想とレビュー評価。サシャ・バロン・コーエンが仕掛ける過激なドッキリ|だからドキュメンタリー映画は面白い31

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第31回

『ボラット』のサシャ・バロン・コーエンが、ゲイのファッション・レポーターに扮して大暴れ!

今回取り上げるのは、サシャ・バロン・コーエン主演の2010年公開作品『ブルーノ』。

ハリウッドの問題児、サシャ・バロン・コーエンが、『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2007)に続き、突撃ゲリラ取材を敢行します。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

映画『ブルーノ』の作品情報

(C)2009 MRC II Distribution Company LP

【日本公開】
2010年(アメリカ映画)

【原題】
Bruno

【監督】
ラリー・チャールズ

【脚本】
サシャ・バロン・コーエン、アンソニー・ハインズ、ダン・メイザー

【キャスト】
サシャ・バロン・コーエン、グスタフ・ハマーステン、ボノ、エルトン・ジョン、スティング、スヌープ・ドッグ、スラッシュ

【作品概要】
『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』でブレイクしたサシャ・バロン・コーエンが、ブルーノというゲイのオーストリア人ファッション・レポーターに扮したコメディドキュメンタリー。

『ボラット』同様にコーエンが脚本、製作総指揮を兼任し、アメリカのみならず中東にも赴き、テロリストをもターゲットに、各方面で大暴れします。

監督のラリー・チャールズとは、『ボラット』や『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』(2012)でもタッグを組んでいます。

映画『ブルーノ』のあらすじ

(C)2009 MRC II Distribution Company LP

オーストリア出身のファッション番組の司会をするブルーノは、ミラノ・コレクションで全身マジックテープ状の服を着て取材に臨みショーをメチャクチャにしたことで、業界から追放されてしまいます。

しかし、ハリウッドでセレブ入りを目論む彼は、有名人や政治家らを相手に、次々と過激な行動に出るのでした…。

やりたい放題なブルーノに密着


(C)2009 MRC II Distribution Company LP

前作『ボラット』ではカザフスタンのテレビリポーターに扮して、アメリカ国民のリアルな反応を笑い者にしたサシャ・バロン・コーエン。

本作『ブルーノ』では、ブルーノという名のオーストリア出身のゲイのファッション・レポーターとなり、さらに過激な笑いを追求します。

今回はアメリカのみならず、海外にも足を運びます。

紛争激しい中東レバノンのテロリストに「私を誘拐して」と頼みこめば、アルカイダのオサマ・ビン・ラディンを「ホームレスのサンタ」と一刀両断。

ほかにも、半裸に近い格好でイスラエル原理主義のメッカを歩き回る、アメリカ南部に行って同性愛者を嫌う猟銃ハンターに全裸で迫る、あげくの果てには金網のオクタゴン(格闘場)で、男同士のラブシーンを観客に見せるという、ゲイキャラクターを生かした様々なドッキリを仕掛けます。

それでいて、「有名人になるためのお約束事」とばかりに、イスラエル人とパレスチナ人の間に入って和平交渉の場を設けたり、アフリカの貧困問題解決としてiPodと交換に幼児を養子にするといった人道行為(という名の嫌がらせ)も。

ハリウッドセレブになるべく、ブルーノは世界を奔走するのです。

命がけで人を怒らせる精神力

参考動画:『ブルーノ』の撮影裏側について語るサシャ・バロン・コーエン

基本的にゲリラ撮影を敢行した本作は、当然ながら危険と隣り合わせの連続だったようです。

警察に逮捕されないよう、コーエンのみならず撮影クルーは常に「逃げる」ことを念頭に置いて臨んでいたそうですが、パレスチナでの撮影ではテロ組織に脅迫声明を出されています。

また、オクタゴンでの男同士のラブシーンは、実際に使用された映像は2回目の撮影バージョンで、最初の撮影時は、怒りが頂点に達した観客の暴動が起こる寸前までいったのだとか。

「怒らせる」ことを前提でその場に赴いているわけですから、そうなるのも当然なのですが、そんな状況下にあっても、ブルーノというキャラクターを貫き通すコーエンの精神力はすごいの一言に尽きます。

SNSやYoutubeに過激な動画をアップする者は今も絶えませんが、コーエンが彼らと違うのは、数々のドッキリを通して、世間が密かに抱える潜在意識や妙な価値観をさらけ出す点でしょう。

そして本作のエンドロールでは、ブルーノがボノやスティング、エルトン・ジョンといったミュージシャンに交じって、バンドエイドの「Do they Know it’s Christmas?」ばりのチャリティソングを合唱。

顔ぶれの豪華さとは不釣り合いな、バカバカしさ満載の歌詞も必聴です。

サシャ・バロン・コーエンの現在

参考動画:『ザ・スパイ -エリ・コーエン-』予告

本作『ブルーノ』を製作して以降のサシャ・バロン・コーエンは、コメディ『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』で北アフリカのハチャメチャな独裁者役を演じるかたわら、ミュージカルの『レ・ミゼラブル』(2012)では意外ともいえる美声を披露。

『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)では、フレディ・マーキュリー役の第一候補にも挙がっていました。

2019年のNetflixドラマ『ザ・スパイ -エリ・コーエン-』では実在したイスラエル人スパイを演じるなど、演技面での活躍も目覚ましいコーエンですが、本業(?)のコメディアンとしての顔も忘れてはいません。

2018年に、2002年の『アリ・G』以来のテレビバラエティとなる『Who Is America?(アメリカって誰?)』を発表。

この番組でのコーエンは、特殊メイクで架空の人物に扮して全米中にドッキリを仕掛けるという、やっていること自体は『ボラット』や『ブルーノ』と変わっていません。

しかし、ドナルド・トランプ政権下となったアメリカにおいて、彼のドッキリは以前よりも毒っ気が増した感があります。

例えば、イスラエルの政府高官に扮したコーエンが、銃規制に反対する団体を通じて幼児に銃の訓練をさせる法案の提出を促したり、映画『バイス』(2019)の主役にもなったディック・チェイニー元副大統領に、イラク戦争の正当性を自身の口で認めさせたりします。

さらには、元共和党議員と黒人ギャングスターラッパーを招いて対談を設け、そこで議員の持つ人種差別意識を引き出し、これまた物議を醸しました。

多彩な顔を持つサシャ・バロン・コーエンの、次なる仕掛けに期待しましょう。

次回の連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』もお楽しみに。

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