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Entry 2019/04/03
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大工原正樹映画『やす焦がし』あらすじと感想。映画美学校の講師と生徒が紡ぐ奇想のメルヘン|ちば映画祭2019初期衝動ピーナッツ便り4

  • Writer :
  • Cinemarche編集部
  • 河合のび

ちば映画祭2019エントリー・大工原正樹監督作品『やす焦がし』が3月31日に上映

「初期衝動」というテーマを掲げ、2019年も数々のインディペンデント映画を上映するちば映画祭。

トークショーにて映画制作の過程を語る大工原監督


©︎Cinemarche

そこで上映された作品の1つが、大工原正樹監督の26分の短編映画『やす焦がし』。

男女4人が繰り広げる、まるでおとぎ話のような、奇妙な恋愛関係を描いた恋愛映画です。

【連載コラム】『ちば映画祭2019初期衝動ピーナッツ便り』記事一覧はこちら

映画『やす焦がし』の作品情報


©2017 THE FILM SCHOOL OF TOKYO

【公開】
2017年(日本映画)

【脚本・監督】
大工原正樹

【キャスト】
鈴木睦海、松下仁、佐伯美波、金岡秀樹、志和樹果

【作品概要】
キツネに憑かれやすい繊細な女性・きょんを巡り、彼女を含む男女4人の奇妙な恋愛関係を幻想的な映像や笑いと共に描く。

大工原監督が講師を務めている映画美学校の、フィクション・コース第20期初等科で行われたミニコラボ実習内で制作された映画です。

ちなみにミニコラボ実習とは、講師が監督を行い、受講する生徒たちがスタッフやキャストとなり実際に映画を作ることで、演出や映画制作を学ぶ実習のことです。

映画『やす焦がし』のあらすじ

古民家を借り、そこで手作り雑貨とカフェ・バーを取り扱う店「Puffin」を営んでいる女性・きょん。

そこに集まるのは、きょんの夫だという安男と、安男が初めてきょんと出会ったのと同じ日に彼女と出会い、結婚した今もきょんを想い続けているという拓平。

非常に繊細で、非常に情緒不安定なきょんを、安男と拓平は優しく見守っていました。

しかし、きょんの母親が突然亡くなったことで、彼女の心と体は大きくバランスを崩してしまいます。

母親の葬式後も、きょんの精神状態と体調は崩れたままでした。

きょんのいとこ・奈津も彼女の体調を心配して「Puffin」で暮らすようになりますが、やがてきょんの様子は豹変し、4人の関係は大きく変化してゆきます。

大工原正樹監督のプロフィール

1962年生まれ。高校時代から自主映画に没頭し、大学在学中に中村幻児の雄プロダクションに所属します。

フリーランスの助監督として廣木隆一監督、石川欣監督、鎮西尚一監督らの助手を務め、その後は廣木監督たちが設立した制作会社フィルムキッズに所属。

1989年に映画『六本木隷嬢クラブ』で監督デビューを果たします。

以降の監督作品には、『もう・ぎりぎり』(1992)、『未亡人誘惑下宿』(1995)、『のぞき屋稼業 恥辱の盗撮』(1996)、『同・夢犯遊戯』(1996)、『風俗の穴場』(1997)などがあります。

テレビドラマでは『真・女神転生デビルサマナー』(2000)、『七瀬ふたたび』(2000)、『ミニチカ』(2006)などの演出を務めたほか、音楽ビデオ、企業コマーシャル、テレビ番組、VP等の演出は数百本にも及びます。

また映画美学校では、『赤猫』(2004)、『姉ちゃん、ホトホトさまの蠱を使う』(2010)、『坂本君は見た目だけが真面目』(2014)の監督も務め、『ファンタスティック ライムズ!』はオムニバス映画『LOCO DD』の一篇として2017年に公開されました。

映画『やす焦がし』の感想と評価

映画『やす焦がし』の上映後に行われたゲストトークショーでは、大工原監督やきょん役で主演を務めた鈴木睦海をはじめ、安男役の松下仁、奈津役の佐伯美波、拓平役の金岡秀樹と多くのキャスト陣が登壇しました。

その際、大工原監督は、本作におけるアイデアは全て、スタッフである映画美学校の生徒たちが生み出したものであることを語りました。

それはスタッフクレジットにおいて、「原案」が「ミニコラボ大工原班全員」と明記されていることからも明らかです。

大工原監督はその生徒たちが生み出したアイデアをまとめ、洗練し、脚本へと落とし込むことで映画『やす焦がし』を形作っていったのです。

キツネ憑き場面など怪演ぶりに驚かされた主演の鈴木睦海さん


©︎Cinemarche

また劇中において、きょんがキツネに取り憑かれ、それを追い出そうと奈津が除霊を試みる場面があります。

次々と色が変化する電球に照らされながら、きょんと奈津が狂ったように踊り続ける映像はとても幻想的で、本作を語る際に観客の多くが話題に上げるシーンです。

その印象的なシーンを生み出すことに尽力したのが、撮影・照明を担当した中瀬慧であったと監督は語りました。

安価で揃えた大量の電球と調光アプリを駆使し、実習作品という決して潤沢とは言えない予算の中にも関わらず、その豊かな発想と工夫によって素晴らしいシーンを撮影することに成功したのです。

時に妖艶な姿を見せる奈津役を演じた佐伯美波さん


©︎Cinemarche

「キツネ憑き」と「恋愛」を中心に紡がれるメルヘンな物語、そしてその最後に訪れる意外な結末は、笑いと驚きに満ち溢れ、映画『やす焦がし』はまさに「奇想」という言葉でしか捉えようのない、唯一無二の作品となっています。

そんな「奇想」の映画は、大工原監督だけでも、キャスト・スタッフである映画美学校の生徒たちだけでも生み出すことはできませんでした。

未熟で、しかし情熱の滾る生徒たちのアイデアを、成熟し、彼ら彼女らの情熱を真摯に受け止められる大工原監督が、その技量によって洗練してゆく。

そうすることで、初めて「奇想」は「奇想」となり、映画『やす焦がし』は観客を驚かせ、楽しませてくれる映画となったのです。

まとめ

熟練の大工原監督と若き映画美学校の生徒たちが、お互いの全力をぶつけ合うことによって一つの作品を生み出しました。

それが「奇想」のメルヘンと言える映画、映画美学校の講師と生徒が紡ぎ上げた唯一無二の恋愛映画『やす焦がし』です。

観客に驚きと笑い、そして恋愛映画としての切なさを必ずもたらしてくれる、エンターテイメントな映画であること間違いなしです。

【連載コラム】『ちば映画祭2019初期衝動ピーナッツ便り』記事一覧はこちら

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